67.もっと実験! もっと実験!
「申し遅れました。私はロデル・スーナ・ペルセルネ、エメラルド魔術研究所の副所長をつとめております。以後、お見知り置きを」
そう言うと、副所長、ロデルさんは上品な仕草で礼をする。ミドルネームを持っているのか。貴族なのかな? 仕草もそれっぽいし。ただ、ペルセルネなんて名前の貴族は聞いた事がない。そもそもこの辺りにはあまりない響きだ。他国の人なのかなあ。
「にしても、都合がいい。ディート、よければあなたにジンの検査を手伝ってもらいたいのです」
ロデルさんは姿勢を直すと、俺に向かってこう述べる。
なるほど。確かに、魔法を無効化するジンの剣の検査をするのに、ほぼすべての属性を使える俺は便利な存在だろう。
「ええ、ぜひ」
「感謝します」
「……ねえ、ディートくん。ずっと気になってたんだけど、君、剣属性は使えるのかい?」
「使えるには使えますが、魔法を無効化する力はありません」
俺は手元に剣を生成する。見かけはジンが普段使っているものとおなじだが、その術式は異なる。よく見れば気が付かないくらいの差だけども。
もっとも、魔法を無効化、という力がないだけでそれ以外はまったく同じだ。切れ味も素晴らしいものだし。俺の場合いろいろと試行錯誤したおかげで切れ味を落とすことにも成功した。たぶん、今の切れ味が剣属性として最低の切れ味なのだろう、それ以上下げたら無属性になったんでね。俺はよくペーパーナイフとして使用している。
「ジン、剣を出してもらえますか」
「了解した!」
ジンが剣を出すと、ロデルさんは俺のと見比べる。
「……術式がジンのものと違いますね」
お、気が付いたか。館長はどっちのほうが一般的なんだろう、とかつぶやいている。リフレクションオーブ関連かな? 仕組み知らないから何とも言えないけど。
「ジンと同じものは出せますか?」
「無理です」
実際、初めてやったときはそのまま術式を構築しようとしたらうまくいかなかった。今も試しにやってみたが失敗してしまった。
俺はふと思いついて、防属性の棒( ボウだけに)をジンが手に持っている剣の刃のないところ、確か平と言ったかな? ジンが言っていた、に押し付けてみた。すると棒は触れた部分だけが消えた。ふむ、これはどういうことだろうか。「防壁」や付与などは一部触れただけで全体が解除されたのに。
「……あなた、今、何をしたのですか?」
「防属性の柱をジンの剣に当てました」
「なぜ、触れた部分しか魔法が解除されていないの……?」
俺が説明したことはまさに、それ以上でもそれ以下でもない。ロデルさんの疑問はその通りだし、俺も理由を知りたい。
ロデルさんが俺の出した棒を見たいと言ってきたので貸す。
「これは……変わった構成ね。あなたが考えたの?」
「か、変わった構成?」
何を言ってるんだかさっぱりわからん。構成? なんのこっちゃ。
「あら、無意識にやっていたのですか。ほら、普通の防属性は……」
ロデルさんは手元に外見は全く同じ棒を出す。
「このように、全体で一つの術式をとっています。ですが、あなたのものは細かい、そうですね、いうなれば、結晶が集まったような構成です。一つ一つが魔法として独立している、ね」
いわれてみれば、そうだな。ロデルさんの……というより普通のは全にして個、俺のは個にして全みたいなイメージだろうか。
「実に面白い。ジンはもちろんですが、あなたも非常に興味深いですね……!」
ロデルさんはそう言って口角を吊り上げ、目を細める。
っふ、なるほどな。
この人、マッドな魔法研究者だ。
その後、魔力酔いを起こすまでいろいろと実験に付き合わされた。「魔力酔いがおこるラインは普通なんですね」みたいな事を館長かロデルさんが言っていたのは辛うじて覚えているが、正直それ以外のことはあまり記憶にない。
でも楽しかったからまた行こう。決してМではないぞ、決して、決して!!!
異世界語にも漢字的なものがあります。魔法名が漢字にルビがついているのはそういうことです。
ただ、人物名はその地の古代言語そのまま、ってパターンが一番多いです。




