56.わーかれーのときー
さて、お別れの日だ。
誰との、だって? ジンとのに決まってるだろう。
教室の空気がこれまで無かったほどにしんみりしている。悲しそうな顔をしていないのはもはや俺だけなのではなかろうか。いやベルはそこまでっぽい。俺は勝手にアイツにクールなイメージを持っている。
ところで、誰かが転校なりなんなりするとき色紙を渡すことがあると思うのだが、それと似たようなものをジンに渡すことになったようだ。俺も書く羽目になった。
毎度思うけど、こういうのって何書けばいいのかわからん。特に俺とジンは面識があるから下手なこと書けんしなあ、と悩んだ結果「いままでありがとう」という無難なものに落ち着いた。名前は未記入なので無問題。
で、その色紙的なものを渡す儀式をつい先程行った。ジンは感極まった様子で涙ぐみながらみんなに感謝を伝えていたが……少々オーバーリアクションな気もする。まあ、俺の主観なんでこれが一般的な反応の可能性もあるがな。
今日が終われば、ジンはいつも通りの特進クラスとしての生活に戻る。つまりは、まだ今日いっぱいはジンは普通クラス所属ということだな。ジンは結構人気者だから、今日の放課後はすでに予約が入ってるだろう。俺の部屋には来ないはずだ。別に来てほしいとか思ってない。ないったらない。
一旦そんなことはおいておいて。俺はバレンタインデーだとかこどもの日だとかクリスマスだとか、そんな記念日はたいていなにか菓子を食べているが、悲しいかな、この世界にそんな文化はないのでいつも一人で楽しんでいる。しかし夏祭りは例外だ。この世界でも夏祭りに類似した祭りはある。
そしてその開催日が今日だ。売ってんのは綿菓子やチョコバナナなどじゃなくて普通の洋菓子だが、雰囲気はおおむね同じなので気にするところではない。
今横目でジンを見てみると、夏祭り……実際の名前は女神祭、に誘う人が多い多い。ジンはとても嬉しそうだ。時折こちらに視線をよこしてくるのはなんだ? 俺も一緒にいけと? 悪いが、こういうイベントは俺は一人で楽しみたいタイプなんでね、首を降って答えておいた。
ま、またどこかで会えるさ。




