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第31話 ダーティの怒りと不作の領地


「ラキストよ。なぜ今日貴様を呼んだか分かっているか?」


 一方その頃、アストロメア家のダーティの書斎。


 書斎には青筋を立てて静かに切れているダーティと、その正面に気まずそうな表情をしているラキストがいた。


「ええ。メビウスの件、ですよね?」


「なんだ分かっているじゃないか。それで、いつになったらメビウスの死体を持ってくるんだ? んん?」


 ダーティはそう言うと、ラキストをじろっと睨んだ。睨まれたラキストは静かに視線をダーティから逸らす。


 ラキストはダーティから任せられた領地付近に住んでおり、何度もダーティからメビウスの死体を持ってくるように催促の手紙が届いていた。


 ラキストはすでに調教した魔物を『死地』に放っていた。しかし、いつまで経ってもその魔物たちが帰ってこなかったことから、ラキストはダーティに返事の手紙をかけなかった。


 そのまま放置していた所、ダーティの使いにアストロメア家の屋敷に来るようにと迎えをよこされてしまい、ラキストは渋々屋敷に来たのだった。


 ラキストはいつまでも黙っているわけにいかず、眉を下げて続ける。


「それなんですが、その『調教』した魔物たちが戻ってこなくてですね……」


「戻ってこないだと?」


「ええ。戻ってきたら、すぐに返事を書こうとは思っていたのですが」


 ラキストはそこまで行ってから、顔を上げてダーティの顔を見た。


 するとダーティは顔を真っ赤にさせながらぷるぷると体を震わせていた。


「メビウスに反撃でもされたとでもいうのか? んん?」


「い、いえ、さすがにそんなことはないかと。おそらく、けしかけた魔物が別の魔物にやられたんだと思います」


「それなら、すぐに別の魔物を仕向ければいいだろう! なぜそんなことも考えられんのだ!!」


 ダーティはそう言うと、強く書斎のテーブルをバンバンと叩いた。ラキストはその音に体をびくっとさせて、言い返そうとした言葉を呑み込む。


 ラキストの『調教』は、使えば全ての魔物たちがすぐに言うことを聞くという訳ではない。『調教』のギフトを使っても調教できない魔物もいるし、魔物が大きさや強さによって、『調教』に時間がかかる。


 以前にけしかけたダークウルフとグレーウルフ以上の魔物となると、それなりの準備期間が必要になる。


 だから、すぐにすぐ行動に起こすことは不可能だった。


 ……簡単に父上の機嫌を取れると思ったが、面倒なことに関わってしまったな。


 ラキストはそう考えながら、その考えを表情に出すことなく頭を下げる。


「わかりました。向かわせるようにします」


「まったく……帰ったらすぐに魔物を向かわせるんだぞ」


「い、いえ、すぐにという訳には」


 ダーティはラキストの言葉を聞いて、一度収まりそうだった怒りの感情をまた湧き上がらせた。


ラキストは今にも癇癪を起しそうになっているダーティの表情を見て、慌てて続ける


「ち、父上、メビウスの件を後回しにするつもりはないのですが、いえ、今はそれどころではないのです! 父上から任されている領地なのですが、農作物が不作になりまして、そちらの解決をしなくてはならないのです!」


 ラキストの任されている領地は、農民が多く主に農作物で税を納めていた。しかし、数年前から領地で採れる農作物が少なくなっていた。それに加えて雨季が短かったこともあり、売り物になる農作物は去年の半分ほどに減ってしまった。


 そして、それに加えて一部の領民が逃げ出したこともあり、税を納めることはできても、自分の横領する分が大幅に減ってしまう。


 ラキストがアストロメア家の屋敷への呼び出しに応じたのも、その相談も兼ねてのものだった。


 すると、ダーティはつまらなそうな顔で大きなため息を吐く。


「何かと思えばそんなことか。それがどうしたというのだ。そんなもの貴様の『調教』でどうとでもできるだろう」


「ど、どうにかと言われましても、すぐには難しいですよ。ですから、農作物が不作なので、税を少し下げて頂きたいのですが……」


 ダーティはラキストの言葉にすぐに首を横に振って続ける。


「それは無理だな。また負債が膨らんだんだ。おまえの所の領地の税を上げておけ。農作物が無理なら現金でもいいからどうにかしろ」


「ち、父上。そこを何とかしていただけないですか?」


「ふー……それなら、メビウスの件を片づけたら、考えてやらんこともない」


 ラキストはダーティにそう言われて、顔を俯かせて静かに歯ぎしりをさせた。


死んでもまだ邪魔をするのか、あの愚弟は。


 ラキストはそう考え、メビウスに対する怒りの感情を膨れさせるのだった。


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