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2日目~社会・数学~

 テスト2日目。

 本日の教科は残りの社会、数学の2科目。


 本日、3人の中で一番神経を集中するのは、数学に調整の全てをかけている幸平、次点で次朗。

 由香はもう、ゲームの事については、ほとんどやるべきことは終わったようなものだと考えていた。


 そんな中、テスト2日目の一時間目、社会が始まろうとしていた。


 

 解答用紙が手元に回ってきたとき、由香は少し違和感を覚えた。

(あれ……)

 左手に取ったそれをなんとなく見ながら、残りを右手で後ろに回す。

(なんか、見たことない感じだな)

 テストを作った先生がいつもとやり方を変えたのか、それとも、自分たちのテストを作るのが初めての先生なのか。

(まぁ、別に悪いことはないけど)

 そう考えながら、体を落ちつけて、テスト開始のチャイムが鳴るのを待った。


 由香と同じ違和感をより強く感じていたのはやはり、こういうことへの観察力に長ける次朗だった。

(この感じが昨日こなくてよかった)

 国語や英語でテスト形式が全く新しくなってしまっていたら、昨日の時点で次朗はブラックジャック・ゲームを降りていただろう。

 

 開始のチャイムが鳴った。


 監督の先生が、急いで問題用紙を配り始める。次朗は、自分の列の一番前の席に座っている生徒が先生から用紙を受け取ったのを見ていた。一人ずつ、用紙の束が後ろへと回される。

 次朗のところまで問題用紙が回ってきた。一枚とって、残りを後ろへと回す。

 そして、問題用紙に目を通し、目的のものを探した時、次朗は声をあげそうになった。

(やばい……)

 予想に反して、配点が問題用紙に書かれていなかった。もちろん、問題用紙にもそんな文字はない。


((どうしようもないな……))


 次朗と同じタイミングでそう思ったのは、幸平だった。

 彼もまた、社会の点数が分かることを前提とした作戦を立てていた。それらをすべて計算した上で、後の教科数学での調整、である。

(解答欄の大きさとか問題形式から、配点を予想するしかないな)

(どうやって?)

 幸平は大問1に眼を通しながら、作戦を考える。

(っていうかこのアクシデント、次朗にとっても由香にとっても、かなりやばいことなんじゃないか? 答えがはっきり決まっている教科、社会での配点が分からないっていうのは……)

 

 幸平はそのように考えているが、由香は問題の雰囲気がいつもと違うことを感じていただけで、ゲームに関しては特に焦ってもいなかった。

(しかし、今回のこれ、難しいなぁ……)

 雰囲気の違う問題内容に加えて、その難易度自体が高いようで、大問1にして、由香は苦戦していた。しかし、なんとか記憶を掘り出して、解答欄を順々に埋めていく。


 幸平は一つの方法を思いついていた。

(社会でも、……100点)

(そうすれば、、数学での調整もできる)

 例え配点が分からなくても、満点を取っておけば、何の問題もない。





       *

 どうも、作者winxです。

 やはり、予想外のアクシデント、イレギュラーが起こってしまったようですね。次朗と幸平の2人にとっては、かなりの痛手なのではないでしょうか。次朗は、その観察力を持ってして、自分の得点の推測を目指すことにしたようです。

 しかし、幸平の作戦はどうでしょうか。満点をとればいい、というのは、確かに理屈の上ではその通りですが、社会という科目は(いや、テストならばどれでも)その場で満点をとろうと思ってとれるものではないですよね。モチベーション、やる気、集中力、直しの回数などによって、数点から十数点のアップは可能ですが、満点というのは全く別の話ですから。

 しかも、由香によれば今回の社会は難しめだとのこと、さて、幸平の様子はどうでしょうか?

 ではまた。

       *





 ニ十分後、幸平はすでに満点を諦めていた。

(今回の社会、難しいな……)

 普段はあまり動きの止まらない幸平のシャーペンも、今回は動いては止まり、止まっては動きを繰り返していた。


 次朗と幸平は点数推測をしながら解答を進めた。



 2時間目、中間テスト最後の科目、数学。


(予想外なことになったな)

 チャイムが鳴ってから2分ほど経っていたが、幸平の前に置かれた用紙にはまだ何も書きこまれておらず、当の幸平は、シャーペンを握ってさえいなかった。

 自己採点の結果、幸平が社会でとっているであろうスコアは87点。前日の理科では96点。国語英語が100であると仮定しても、幸平が目標としている483点をとるためには、この数学、やはり100点が必要であった。

 幸平のとった作戦の弱点は、数学までの教科で18点以上落としてしまったら、その時点で目標点を21点も落とさなければならないことだ。しかし、幸平はそれをあまり問題視していなかった。国語英語で100点をとることを前提とした作戦であったことと、これまで理科と社会では18点、落としたことがなかったからである。

 そこにきて今回の社会の難易度は、次朗にとっては予想外だった。

(まぁ、いつも通り、100点がとれれば、大丈夫。数学に関しては、自信は持てる)

 幸平は一度深呼吸して、シャーペンを握った。


 次朗は、このテスト期間中最も勉強してきた数学、最低でもいつもよりは手ごたえを感じていた。

(社会でかなりやばいことになったから、数学でもかなり落とさないといけないと思っていたけど、21点上、いけそうだな)

 社会の予想点は41。ちょうど良く合わせるために、次朗は数学で43点が目標になるだろうと思っていたが、このままの調子でいけば、一周上の64点を狙えるかもしれない。

 

 一方、由香は。

(あー、やっぱり。数学って駄目だな)

 数学を前にした時の閉塞感のようなものを、やはり今回も、由香は感じていた。

 いつも通り、60点台になって、合計点数の足を引っ張ってくれることになるだろう。

(昨日はかなり調子良かったから、今回、結構期待していたんだけど、やっぱり数学は克服しないとなー)

 

((よし……))

 幸平と次朗は、満足げにシャーペンを置いた。

(あとはケアレスミスさえなければ)

(さて、計算計算)

 2人とも、再び用紙に目を通し始めたのは、テスト終了の10分前だった。


 結果的に、次朗も幸平も、自分が目当てとする点数に、解答を調整することができていることが分かり、それなりに明るいテンションでテストを終え、数学にやられてテンションを落とした由香とは対照的だった。

 しかし結果的に、ブラックジャック・ゲームの勝者という意味では、次朗も幸平も自信があまりなかった。

 

 



 テスト期間、終了。


 答案の返却は、土日が明けた月曜日だ。




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