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1日目~国語・英語・理科~

 テスト1日目。

 教科は、国語、英語、そして理科。

 3人が3人、それぞれに自分のやってきた対策を発揮する必要がある、1日目にして最大の要所。

 まぁ、賭けをしているとはいえ、これはゲームだから、3人は特に緊張する様子もなく登校して、朝のホームルームを待っていた。


 次朗の目標は、国英で、研究に基づいて自分の得点を推測し、最後、ある程度得意の社会で今日の合計スコア21の倍数になるよう、合わせること。調べてきた情報でどこまで確信の持てる自己採点ができるかが、鍵だ。しかこの作業を、テスト時間中にする必要がある。

幸平の目標は、国英満点。数学での調整にしか21の倍数合わせの手段がない幸平にとっては、この国英満点を逃すと絶望的といえる。しかしそこは幸平のこと、ある程度の自信を持てるまでには、行動を積んできたようだ。

 由香の目標は、これといったところ、はっきりしていない。しかし、由香は由香なりに、国英のテストを受けるときは気を張ることになるだろう。


 

 朝のホームルームが終わり、いつもの始業のチャイムが鳴る時間よりも少し早めに、テスト監督の先生が問題用紙と解答用紙の束を小脇に抱えてやってきた。筆記用具以外の持ち物を廊下に出し、そのまま廊下で教科書などに目を通していた生徒たちが、その姿を見て、教室の中に入る。


 生徒たちが席に着き落ち着いたのを見て、監督の先生は解答用紙を事前に配ってしまう。

 一瞬にして空気が静かになり、テスト時独特の雰囲気が教室を覆う。」


 解答用紙が回ってきたのを見た時、次朗はほっと一安心した。斎藤先生が言っていた通り、やはりテスト作成者は藤田先生のようだ。研究段階で何度となく目にした解答用紙と、やはり雰囲気が似ている。これならば、それなりに思い通りの採点ができる気がする。


 開始のチャイムが鳴って、監督の先生が問題用紙を手際よく配布した。

 一教科目、国語。

 

 幸平はペンを取り、第一問に目を走らせる。

(ん……)

 珍しいタイプの問題形式だ。漢字の書き取りが最初にない、というテストを受けたのは久しぶりなように思う。もちろん、初めてというわけではないが。幸平は少し調子を外された感じで、しかしそれでも落ち着いて、問1の答えとなる部分を文章中から探し始めた。

 久しぶりの形式を意識したのは、由香も同じだった。いつも通りのテンポで解答を進めたいと思ったので、問題用紙をめくって漢字の問いを探す。一番最後に用意されているようだ。由香は解答用紙の該当場所を間違えないように注意しながら、シャーペンを動かし始めた。

 一方、次朗は。

(やっぱり、漢字は最後にするんだな、藤田先生)

 予想通りの問題順番に次朗は再度安心する。藤田先生の漢字の書き取り問題は、量が多い代わりに配点が1点。1日目の最後が国語だったとしたら、、次朗はこの感じで点数合わせをする計画を立てていただろう。実際は一番最初であるから、その作戦は実行できないのだが。



 テストが始まって、50分中、30分が経過した。

 幸平はすでにテスト問題の3分の2を終え、今、最後の大問5に入るところだった。

(いまのところ、解答に不安はないから。このままいけば、100点、とれるはず)

 大問5の問1を見ても、すぐに答えるべき内容が浮かぶ。

(なるほど、漢字の問題は最後か。そういえば、前に漢字が最初になかった時も、そうだったっけ)

 問1の解答となる部分を目で探しながら考える。

(お、ここかな)

 見失わないように、その部分を丸で囲み、解答用紙を手元に引きよせてシャーペンを握りなおす。問題の指定は『書き抜きなさい』。該当箇所さえ見つけてしまえば、減点される可能性もない。丸で囲んだ部分とシャーペンの先を交互に見ながら、一字一句落とさないように書き写す。

(よし)

 問2。

『傍線部2の部分で、作者が言いたいことは具体的にはどういうことか。第ニ段落に書かれていることを参考に、40字以内で述べよ』

 この手の問題は、校外で作られた確認テストでなどでは満点の解答は難しいが、授業で扱った文章を使い校内で作る定期テストでは、授業中に同じ問題の答えを先生が述べていることが多い。幸平は事前に見直していたプリントの中に、全く同じ問題があったのを覚えていた。第ニ段落を見なくても、答えは覚えている。

 極論を言ってしまえば、国語や英語であっても、定期テストでは暗記科目だ。究極、数学でさえそうだと言ってもいい。

 

 幸平が問3の答えを解答欄に書きいれている途中、教室のドアを開けて、テスト作成者の先生が生徒の質問を受け付けるためにやってきた。

(今回、作ったのは藤田先生か)

 幸平はまだ解いていない問題にサっと目を通したが、質問しなければならないような問題はないように思えた。「何か質問はありませんか」という

先生の声を気にせず、問3の解答を続けた。

 

 国語のテストの終わりのチャイムが鳴ったころには、幸平は見直しを3周分終えていた。

「ふー……」

 解答用紙を集める最高列に座っているクラスメイトに用紙を渡して、幸平は一息つく。

(疲れた)

 普段は100点を狙って国語を国語を解くことは少ないから、いつも以上に精神を消費した気がする。見直しを3周もしたのも初めてである。普段なら

1周、良くても2周が限度だ。

(国語英語、連続だときついなー)

 そう考えながら席を立ち、廊下に出た。

(まぁ、見直ししてる間に少しは休めたし、次が終われば理科では少しリラックスして受けれらるから、大丈夫だろ)


 

 英語のテスト監督が教室に入り、回ってきた解答用紙を目にした時、1枚を取って後ろに回しながら、次朗は左手で拳を握った。最も力を入れて研究してきた、大谷先生のものらしき解答用紙である。作ったのは結城先生である可能性が高いが、このレイアウトやマス目の大きさを見る限り、大谷先生のものを参考にしたのであろう。

 開始のチャイムが鳴ってから5分後、リスニング問題の放送が始まった。

 大谷先生のリスニング問題の配点は毎回20点。最初の選択問題が2点で3問。単語の書き取りが3点で2問、記述が4点でやはり2問。

 その法則通りの回答欄だった。おそらく配点も同じだろう。 選択問題、書き取り問題、記述問題でそれぞれ一つの空欄を作り、残りは自信の持てる回答を作った。これで11点。

 リスニング問題が終わり、別紙の問題用紙を取りだして、リスニングの問題用紙を脇にどけた。


 35分ほど経ったころ、教室のドアを開ける音が聞こえたので顔を上げると、予想通り、結城先生が少し緊張気味のお面持ちで教室の中に入ってきた。質問するべきことは大して思いつかなかったし、点数計算のために、時間は少しでも無駄にしたくなかったので、次朗は黙々と解答を続けた。

 幸平と由香を含めて4人のクラスメイトが、何事かを質問したようだ。

 

(さて……)

 一通り問題を解き終えた次朗は、自己採点で計算を始めた。

 先ほどの計算通り、リスニングは11点。

 大問1。

(選択問題は一問2点。1、2、3……だから、8点。記述……解答用紙を左から右まで使ってるから、3点。次は……2行か、4点だけど、求められてることの半分しか書けてないから、2点)

 このような調子で進めて計算しいったところ。64点。

(ん……)

 書けてなかった一つの単語の意味を思い出した。

 解答欄に書き足して、66点。

 残りの時間を、見直しに使う。

 

(こんなもんだろ)

 1周、見直しを終えたところで、ちょうどチャイムが鳴った。



 3時間目、理科。

 気を張らなければならない国語英語を終え、由香はリラックスしてシャーペンを握っていた。

(たぶん、国英はいい感じ解けてると思うから、あとは、他の教科で変なミスさえしなければ、なんとかなるはず)

 

 ほとんどの箇所を書き終えたころには、40分が経っていた。見直しも既に一度終えている。そこで、問題用紙に書かれている配点をもとに、点数を計算すると、82点だった。

(わお、高いじゃん)

 理科としては、過去最高に近いかもしれない。国語英語にもそれなりの手ごたえを感じていたので、今回の中間テストは期待できるかもしれない。

(まぁ、それも明日、どれだけ落とされるかだけどな……)

 特に数学を苦手とする由香にとっては鬼門だった。

(しかしまぁ、今日の科目は上出来だ)

 せっかく良い点を取れそうなのだから、ということで、由香は2周目の見直しに入った。


 残り数分、次朗は問題用紙の空きスペースで計算をしていた。採点通りならば、国英の合計得点は141。理科もそれなりに調子が良く、ちょうど70点が取れている。計算したところ、今取るべき点は69点あるいは90点。

(69点だな)

 そこで、解答されていた一つを消し、平仮名で書き直した。平仮名で書いた場合はマイナス1点。

(よし、これでいいだろ)

 チャイムが鳴る。





       *

 どうも、作者winxです。

 特にアクシデントも予想外もなく、3人は1日目のノルマを終えたようですね。このまま2日目が終わればいいですが、果たしてどうなることやら。見ていて、どう考えても上手くいきすぎな気がするんですがね。特に次朗の予想が当たっていたり、思い通りに採点も出来ていること。運を使いすぎではないでしょうか?

 2日目に揺り返しが来ないことを祈るのみです。

 ではまた。

       *


 次朗と由香は今日、調子よく終わらせることができて安心していたが、幸平は、満点をとれているかどうか、可能性はあると思いつつも絶対的な自信を持てるわけではないので、不安が残るところだった。

 しかし、国語英語に手ごたえがあり、理科もかなり解けたので、幸平は上機嫌だった。


 こうして、メンタル面については特に問題もなく、3人はテスト2日目を迎えることになる。




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