たわしわしわしただしわし
この間久しぶりにたわし使ったんですよ。で、ごしごししてたらわしわし聞こえてたわしわしわしみたいなこと考えてたら生まれた作品です。
わしの名前は宮迫ただし。日本の○○県に住み、もうじき孫が生まれることを楽しみにしている49歳のおじちゃんである。いまは毎日の日課である、家の庭にある水道をたわしで汚れをわしわしと落としている。
ふむ、いいかんじじゃな。家の者が全員気持ちよく使えるようきれいにしよう。継続は力なり。
水道を綺麗にして戻ろうと玄関に向かった際、玄関にある柵の向こうからチャラついたようなパリピ集団が出現!目が合い「おはよおさん」と挨拶をしたが無視されてしまった!小声で(丸聞こえ)わしのことを馬鹿にしているのが聞こえたがその若者軍団とすれ違った瞬間、突然の眩しく鋭い光があたりを覆いつくした!
「目が、目が~~~~~!!!!!」
あまりの閃光に目を瞑り、ゆっくりと目を開けたらそこはなんとどこかの異世界!?
外人っぽい頭がカラフルな王様や姫様が「勇者よ、魔王を倒してくれ!」からの一人ひとりステータス確認!わしが一番最後で確認するとなんと【たわし召喚】!
同じ日本からの若者達とお城の人たちから馬鹿にされ、いらないと身一つでお城から捨てられたおじちゃん!わし、これからどうなっちゃうの~?
と少しふざけてみたが、マジどうしよわし。
いま城下町からちょっと離れた草原にて、黄昏れ中なう。
「たわし召喚、のう…」
この年で魔法が使えるのは魅力的じゃが、これからどうしたものか。
幸いと言っていいかわからぬが、殺されなかったことと、わしを捨ててくるよう命令された騎士たちがとても、とても!優しく、少ないけれどとお金をくれたことじゃ。
ほんとにいい子たちじゃった。いつか恩返しができたらのう…。
ぼ~っと風に揺れる草を見つめながら黄昏ていると、何やら争うような声がきこえてきた。
「っ…けて!助けて!!」
「黙れよこのガキ!クッ、この、おとなしくしろや!!!」
振り返ったら遠くのほうで五歳くらいの小さな女の子が薄汚れたいかにも悪者ですって感じの男どもに殴られそうになっていた。
「これはいかん!」
助けねばと慌てて立ち上がり、殴られそうになっていた女の子と悪党の前に走り立ちふさがるおじちゃん。
「あ?何だよこのじじい」
「お、おじさん?どうして…」
「若者よ!小さい子供相手に暴力はいかん!そのこぶしをゆっくりとおろしなさい」
「てめぇには関係ねえだろ!すっこんでろ!」
落ち着かせようと優しく話しかけたのがダメだったのか、彼らはわしを殴ろうと腕を思いっきり振りかぶった。
え、ちょいちょい。待って待って。わし見ての通りひよわじゃからこの勢いで殴られたらわんちゃん死んでしまうのでは?それはまずい!死んだら後ろにいるこのこがどうなるかわからんし何より、生まれてくる孫を見届けるまで死ぬわけにはいかん!死んでも死に切れん!なんかないかなんかないか…はっ!
「こい!たわし召喚!」
眩しい光と主に現れるわしの身長半分くらいのサイズ(80センチほど)のたわしが地面から現れた。
「あ?なんだこの全身とげとげのやつ」
「こ、このたわしは…!!」
わしには分かる。こいつは元の世界で日々庭の水道を共に綺麗にしてきた相棒(276代目)だと!このたわしから、意思を感じる。俺を使え、と!
「行け!たわしよ!この若者たちのすべてを綺麗にするのじゃ!」
あれは幻だったのだろうか。わしにはたわしがグッとポーズを決めながら浮かび上がり、若者たちに突進していくのが見えた。
「いてええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
たわしは若者たちの服を切り裂き、素肌へと特攻を決め、その肌に数多の傷を作っていく。
「あ、たわしを素肌に直でわしわしするとこうなるんじゃな。失敗失敗」
現場は阿鼻叫喚。男たちの悲鳴と血が飛び交うちょっとした地獄絵図になっていた。
「お、おじさん!あのひとたちいたいいたいだよ!もうやめよう?」
「ごめんな、お嬢ちゃん。わし、初めて使ったから止め方知らんのじゃ☆」
「え、」
てへぺろ☆
「いてえよおおおおおおぉぉ!!かあちゃーーーーーん!!!!」
「たすけてえええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!!」
「あ、あ、おようふくが、おはだが…!」
女の子の顔がどんどん青白くなっていく。これ子供が見たらアウトな気がする、とようやく思い立ったおじちゃんが視線を隠そうとすると女の子は両手をバッと上にあげた。
「きて!あわあわ!!」
女の子がそう叫んだ瞬間、若者たちの頭上からたくさんの泡が降ってきた!
こ、これは…!!
「泡がたわしに付着したことでなめらかとなり、目の前の若者たちを傷つけることなく綺麗に磨き上げていくぞ!すごい!わしも負けてられん!たわしよ、わしわしじゃあ~!」
「ぎゃああああああああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
おじちゃんと女の子は気付いていないが、たわしにこすられ傷つき血がでた体に泡が付着することで、めっちゃ染みる。痛い。これは痛い。叫ぶのも無理はない。心も体もきれいになるまで終わらない。数分ほど若者たちの絶叫が続いた。
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「「「すいませんでした。僕たちは心を入れ替えてもうわるいことはしません」」」
「うむうむ。よいこころがけじゃな。綺麗になったのを見るとわしも嬉しいぞい」
「ごめんなさい…ほんとうにごめんなさい…」
肌の傷がいつの間にか消え、心なしか全身うっすらときらきら光って見える憔悴した若者たち。
心を入れ替えてくれてにっこにこ笑顔のおじちゃん。
なぜかおじちゃんの行動についていたたまれなくなり謝る女の子。
カオスである。
だがこうやって謝ってはくれているものの、ちょっと不安が残るおじちゃん。一応念押ししとくかのう。
「若者達よ、もう悪いことはしたらめっ!じゃぞ。わかったな?」
「「「はい!ぼくたちわるいことはもう絶対にしません。ええ、絶対に!!!!」」」
「よし。では解散じゃ!」
「「「はい!!!!」」」
勢いよく町のほうへ駆けていく若者たち。意外と元気じゃな。なるほど。もう少し綺麗にしたりもできるんじゃろうか…。ふむ。
「おじさん、いま何考えてたの?」
「いや、特に何も考えてなかったんじゃが…」
「そう…(少しだけぞくっとしたんだけど、気のせいかな?)」
そういえば…この子はこのあとどうするんじゃろうか。
「お嬢ちゃんもあの町に住んでいるのかい?良ければ入口まで送っていこうか?」
「ダメ!…っあ、の、わたし、その…」
女の子の体が少し震えている。う~ん、そうじゃのう。
「もしよければわしと一緒に旅をせんか?」
「え?」
「実はわし、あそこから追い出されてしまってなぁ。行くところがないから旅をしようと思うのじゃが、一緒にどうかと思ってのう」
一瞬すごい形相で(なにやったんだこのじじい)みたいな顔をされたような気もするがきっと気のせいじゃろう。気のせいじゃ。
女の子は少し考えた後、わしの顔を見て何かを決意したのか片手を差し出してきた。
「行きます。あなたと一緒に」
わしは差し出された手を取り、ぎゅっと握った。
「改めて自己紹介じゃ。わしの名前はただしじゃ。よろしくのう」
「わ、わたしは…ミーニャ。ミーニャって言います」
「ミーニャちゃんか、可愛い名前だのう」
もし孫が女の子ならミーニャちゃんみたいな子になるのかのう…
「コンセプトはじじまごで!ぜひわしのことをおじいちゃんと呼んでくれんか?」
「わかった!おじいちゃん!」
「孫(みたいな子)と一緒におでかけ楽しみじゃな~♪」
「(このおじいちゃんをひとりにしてはいけない!一人にしたら絶対に何かしらやらかす!)」
こうして認識の違いがありつつ旅をすることになったおじいちゃんとミーニャなのであった。
***
後の人々はこう語る。
「鋭い棘を全身に身に着けた神が、虹色に輝く慈悲の泡とともに罪人へ罰を下す」と。
その神の名は…「たわ神」
教祖ただし様とその孫、聖女であるミーニャ様による異世界懲罰物語がいま、幕を開ける!(大嘘)
「たわしをわしわしして掃除してたら
なぜかわし、ただしが聖人と呼ばれた件について。
略して(ないけど)」たわしわしわしただしわし