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わたくしが毒殺して差し上げますわ! 

唐突に書きたくなった作品を、一万文字程度でまとめたものです。

お楽しみ頂ければ幸いでございます。

「完璧ですわ……この場所から料理を出せても、この場所へ料理風景を覗くことは出来ない。

この場所からはいつでも抜け出せて、この場所へはぐるっと回らないと食事処へは辿り着けない。

わたくしの想定した通り……ホーッホッホッホッホ! まずは第一婦人から毒殺して差し上げますわ! 

そうすればわたくしがまずは第一婦人として迎えられ、何れは……」


 部屋で一人高笑いをするレミス・アルアン・シュトローエンは、復讐の念に駆られていた。

 彼女の部屋には様々な本があり、早速どのような毒を用いるか、本を読み考える。

 これだと決めた彼女は更に高笑いを重ねるのだった。


 月日は流れ――「レミス・アルアン・シュトローエン様。本日はお食事にご招待下さり

有難うございます。エレン・ノルド・カルシフォンですわ」

「あらエレン様。お越し頂き有難うございます。男爵はお元気かしら?」

「はい! 父も婚姻が決まって安堵しておりますの。私、レミス様と家族になれるの、とても

嬉しいんです!」

「あーら、そうなのね。わたくしもとーっても楽しみですわよ。さぁ席にお座りになって。

わたくし少々用事があるので席を外しますわ。ローラン。相手をして差し上げなさい」

「承知いたしました。さぁエレンお嬢様、あちらに」


 綺麗な顔。伯爵にとってあの男爵は確かに重要な人物ですものね。それにしても……何が楽し

みですって! 腹立たしいですわ! 直ぐ楽ーにして差し上げますわよ。

 待っていなさいエレン。お命頂戴するわ! 悔しがる伯爵の顔が目に浮かぶようですわね。

 

 ――仕込みを終えていたレミスは、直ぐに料理をカウンター越しに幾つか出すと、自分もエレン

の許へと戻る。

 ローランが上手く話を伸ばしてくれていたようで、まだ肝心の食事の蓋は開けられていない。



「お待たせしたようね。ご免なさい。少々従者との話が長くなってしまいましたの。

さぁ早速料理を開けてみて頂戴」

「まぁ。随分と大きな入れ物ですのね。では……」


 エレンは大きな蓋を開け……たのだが、直後、固まってしまった。

 目の前にあるのは鉄の兜。そう、どうみても焼けた兜だった。



「ま、まぁ。このような料理、食べたことがございませんわ! 凄い料理人がいらっしゃるのね」

「ええ。さぁ遠慮せず口をつけていいのよ」

「はい。頂きます! ……まぁ、とっても美味しいですわ! どのような香草が入って

らっしゃるの?」

「香草? ですからこれは鳥料理で……可笑しいですわね。わたくしは何を……」

「ご一緒にワインをどうぞ。当領地で作られた物でございます」

「美味しい……信じられないですわ。私の領地で飲むワインより圧倒的な濃いこの味。

そしてこの鳥料理。私、正直これほどもてなしてもらえると思って無くて、うぅっ、私

が第一婦人だなんて可笑しいと伯爵にお伝えしましたのに……私、決めました。あんな

ことがあったのに私とも仲良くして下さるレミス様こそ第一婦人として相応しいと! 

一緒に伯爵と戦いましょう!」

「あ、あら……そんなに気に入って頂けましたの。それでその、お加減は如何かしら?」

「とても元気になりました。本日は有難うございました。またお食事に誘って頂けると嬉

しいですわ」

「お、おほほほほ……そうですわね。また、機会があれば、そのうちに……」



 おかしいですわ。

 なぜ何ともありませんの? わたくしは確かに料理を出したのに。

 ……鳥の落とし物のように醜くわたくしの頭にワイングラスを落とした罰を伯爵の関係者に

与えるには相応しいと思ったのに! 

 それにしてもあの子……中々見どころがあるようね。わたくしに第一婦人を譲ると。

 それであれば手出しは無用かもしれないわ。

 わたくしの料理に心酔するというのも良いことだわ。

 せっかく伯爵の未亡人となっても話し相手がいないのはつまらないものね。


 よろしい。

 見逃して差し上げますわ。

 では次は……わたくしにハンカチを差し出してあざ笑ったあの従者ですわね。

 ……惨めな死にざまを晒すといいのだわ! 


 ――後日。

 伯爵邸へお借りしたハンカチを返却する旨をしたためた手紙を出していたレミスは、引き

取りに来た伯爵の従者である、アルシディアへ面会する。


「ご機嫌ようアルシディア。せっかくお越しになったのだから、わたくしの振る舞いを

受けて頂きたいのだけれど」

「レミスお嬢様。私のような従者にかくも特別な労いのお言葉。恐れいります。

しかし私は伯爵の従者です。奥方様となられるはずのレミス様にお食事を振舞わ

れては、主に何と言われるか。どうかご容赦を」


 ……ふん。

 相変わらずいい男で真面目なカタブツですわね。

 ですがここで引き下がるわけにはいかないわ。

 何せもう、用意してしまったのだから! 


「あら。わたくしのお願いを断られるのですか。それは残念です。わたくし自慢の料理人

の味を、あなたの口から伯爵にお伝えして頂きたかったのですけれど。それとも……好き

嫌いがおありなのかしら」

「いえ……でしたら少しだけ、お食事を頂戴致します。レミスお嬢様」

「ええ、そうして下さると嬉しいわ。ではローラン。案内を」

「こちらです。アルシディア殿は実に幸運ですな」

「ええ。フローネ殿、このようなもてなしを受けるとは思いもよりませんでした。

しかも律儀にハンカチをご返却頂けるとは……レミスお嬢様は本当に良く出来たお

方ですね」


 ……よくもまぁいけしゃあしゃあと……わたくしがどれだけ恥を忍んだか、分か

らせてあげますわ! 

 駆けつけたこの男にハンカチを頭にかぶせられて、さぞ惨めだったに違いありま

せんもの。死んだもののようだったのでしょうね。

 わたくしはその後気を失っていたけれど、この恨み、この恨み……お命、頂戴するわ! 


「ではアルディシア様。わたくし少々席を外しますわ。直ぐ戻って参りますから。フロー

ネ。お願いね」

「はい。婚姻の儀における日程について少々お話をしましょうか」

「分かりました。こちらとしては……」


 急いで厨房へと赴いたレミスは、最後の仕込みだけすると、直ぐに料理を提供する。

 準備を整え終わると、席に戻り何事も無かったかのように姿勢を正す。


「こほん。大変お待たせしましたわ。どうぞお召し上がりになって」

「いえ。私は従者の身。これから主となられるお嬢様より先に食事を頂くなど……」

「わたくしがいいといったらいいのよ。遠慮せず。わたくしはまだ伯爵婦人ではないの

だから」

「……承知いたしました。では……これは、パンにスープですな。しかも良い香りがし

ます。美しい色合いだ……それでは頂くと致します……ふう。何と、これは……実に濃

厚な味わい。丁寧に作られた製作者の技量が伺える一品です。従者向けに誂えた食事

で、遠慮せず食べられる配慮まで。レミスお嬢様は細かい配慮まで出来るお方だったの

ですね……じつは私、今回の縁組に少々意を唱えていたのでございます」

「……あら、それはどういった理由でかしら?」

「伯爵は寛大でお優しいお方です。今回の一件、伯爵に十分な落ち度があるとは思いま

す。しかし、レミスお嬢様は本当に婚姻の儀を望んでいたのか。そちらを確かめもせず

婚姻させるのは如何なものかと思ったのです。あくまでお二人で話し合った結果でした

ら何の意も唱えなかったのですが……これは失礼しました。私はこれで失礼いたしま

す。伯爵の目に狂いは無かったと、ご報告させて頂きます。そうそう、こちらのハン

カチですが、やはりレミスお嬢様に差し上げたいと考えておりまして」

「どういうことかしら? わたくしは殿方からの贈り物を受け取るつもりは無いのだけ

れど」

「このハンカチはレミスお嬢様の名誉を守ったものでございます。どうかお傍において

やってはもらえないでしょうか」

「わたくしの名誉を……?」

「はい。あのとき……レミスお嬢様は頭から酷く出血して、ワインと重なり真っ赤なお

顔となってしまわれました。咄嗟にハンカチをおかけしたのは大変失礼かと思いました。

しかし私はあくまで従者の身。衣類を掛けることなど出来ず、すぐさまハンカチを用意し

たのです。レミスお嬢様の美しいお顔の印象を持つものにとってはショックに映る光景

だったかと存じます。私はハンカチにその思いを託し、お嬢様の美しい顔を守らせまし

た。どうかそれを、褒めてやって欲しいのです」

「そう……だったの。分かりましたわ。ではこの白いハンカチは預かります。

もう、お引き取りを……」

「有難き幸せに存じます。それでは」


 ……わたくしを守った。

 何て恰好良い台詞なのかしら。

 あれほどまでに憎く感じたハンカチ一枚が……今では白く精白な守り神に見えてしまう

なんて。

 わたくしってば単純なのかしら。

 でも……わたくしをあざ笑っていたかのようにみえたあの男は、わたくしを心配してい

たのね。

 そう……だったらもういいわ。

 わたくしの標的はただ一人、わたくしにグラスを落とした伯爵のみ。

 いいですわ。

 今度こそ、確実に仕留めて差し上げますわ! 


 そして数日後――アルディシアに話を聴き、更に、食事の誘いを受けた伯爵は、二つ返事

でレミスの許へとやってきた。


 返信の書面には、傷の具合を心配する文面や、アルディシアが何か余計なことをしていな

いかなどといった、男性にありがちな、可笑しい嫉妬の念が記されている。

 文面を見るだけでもはらわたが煮えくり返るレミス。

 

「今までの毒が何故失敗に終わったのか……それは、きっと量が少なかったせいですわ! 

今度こそ。伯爵は良く食べると聞いています。複数の毒を用いて、きっちりと料理して差

し上げますわ。オーッホッホッホッホ!」


 高笑いを上げると、再び本を読み、試行錯誤するレミス。


 ――そして会食当日。


 身なりを整えた、黒い長髪を靡かせるすらっとした伯爵は、黒いいで立ちに、美しい装

飾を整えた姿でレミスへと面会した。

 

「ようこそお越し下さいました。ヴァン・リヒド・レイスフォン伯爵」

「こちらこそ、オルドラ・アルアン・シュトローエン男爵。それよりもレミスは? 彼女

の容体はどうだ? 私は心配で夜もろくに眠れないのだ」

「伯爵にそこまで思われる娘は幸せでございます。娘はあれ以来すっかり回復しておりま

すが……少々気になる点もございましてな。明後日、再度医者に診てもらう予定なのです」

「そうか。国一番の医者に手配を頼んであるか? 何なら私の信用する医者を……」

「伯爵。お気持ちは分かりますが、せめて親の許を離れるまでは手を尽くさせてくだされ」

「……すまなかった。男爵には本当に申し訳ないと思っているのだ。だが、私の気持ちは変

わらない」

「ええ。存じております。今宵は娘自慢の料理人が仕立てたお食事です。どうぞ心行くまで

お食事を。その後少しだけ、娘に会ってやって下さい。本来は婚姻の儀までは合わぬもので

すが、怪我人へ怪我をさせてしまった当人の面会であれば、許されることでしょう」

「……ああ。食事に呼ばれたからといって、許されたなどと思ってはいない。彼女へ与えて

しまった傷の罪は、この身を捧げてでも償うべきだと思っている」

「ではこちらへ。フローネ。後は頼む」

「畏まりました」


 ……いよいよだわ。

 お父様の声、震えていた。

 やっぱりお父様も悔しいのだわ。

 気付かなかった。お父様は傷物の娘が引き取られて喜んでいるものとばかり思っていたわ。

 お父様……わたくしの最後の勝負。

 今度こそわたくしが……お命、頂戴するわ!  



 厨房で最後の仕込みを終えると、いつものようにカウンターから料理を出した。

 今度は厨房から出るのではなく、そこで話し声を聞くことにした。


「これは……キノコ料理か。一つ一つ丁寧に紅葉のような色へ染まっている。

何というキノコか存じているか?フローネ」

「それはヒラタケと申します」

「ヒラタケか。奇しくも今回の一件。このように平らに治められればどれほどよかったか。

自ら愛する者を傷つけ、苦しませてしまったのだから……こちらは、卵料理だな。実に小さ

い卵を丹精込めて一つずつ味付けしたものか……どれ……何という良い風味だ。もう一

つ……これは! 味が一つ一つ違うのか。それぞれで楽しめるように……ここまでのもて

なしを考えるとは、実に素晴らしい料理人だ。残りはとても大きい入れ物だが、どれ……」


 伯爵が最後の蓋を開けると、中には大きめの布が一枚入っていた。

 その布を外すと、そこには瑠璃色に染め上げたサラシが巻かれている何かがあった。


「実に趣向を凝らしてある美しい料理だ。どれ……」


 サラシを解いていくと、今度は中にハタという種類の魚料理が顔を出す。

 思わず顔がにやけてしまう伯爵。

 これまで豪勢な食事は幾度も経験したが、これほどの趣向の中にいたのが魚一匹

という事態が楽しくて仕方が無かった。

 このような趣向を凝らした料理は初めてだったのだ。


「お食事に合うワインもお楽しみ下さい」

「いや、酒は遠慮しておこう。恐らくこの膳立てを考案したのはレミスだろう。この瑠璃

色のように美しいレミスを、正式に娶りたいと思ったのは何時からだったか。遠くからみ

ることしか出来なかった勇気のない私。あのときもっとしっかりしていれば、このような

ことには……いや、責任を擦り付けるのは良くない。フローネ。私はこのまま帰るとしよ

う。レミスの気持ちは受け取ったよ」

「僭越ながら伯爵、一つだけお伺いを立ててもよろしいでしょうか」

「何だね? 君はレミスの従者だ。きちんと応じよう」

「有難うございます。私もレミスお嬢様を目に入れても痛くない、孫同然のように可愛

がっておりました。そんなレミスお嬢様を娶るあなたをみると、正直複雑な気持ちでな

りません。なぜ、第二婦人としてお迎えするのか。その儀をお答え頂きたい。返答次第

によっては、あなたを此処から出さないつもりでございます」

「……随分物騒な話だが、本気のようだな。だが、レミスを第二婦人として迎えると

言ったことに変わりは無い。何故なら第一婦人とは、常に他の貴族との会談に出向か

ねばならない立場。レミスが傷のことで愚弄されたり、けなされたりすることは断じ

て許せない。だが、相手は侯爵や王族の可能性もあるのだ。私はもし、レミスが貶さ

れるようなことがあれば、王族にも立ち向かってしまうだろう。そのため、父上に止

められたのだ。本来なら第一婦人として迎えたい。だがこれは……レミスを思っての

ことなのだ」

「……左様でございましたか。ご無礼をお許し頂けぬようであればこの命……」

「良い。それ程までに慕われるレミスは、幸せ者だったのだろうな。婚姻の儀、楽し

みにしている。必ず幸せにしてみせると、フローネに約束するとしよう」

「伯爵……どうかお嬢様をよろしくお願い申し上げます……」


 ……わたくしは、わたくしは何て愚かなのでしょう。

 確かにわたくしは傷物にされた。

 でも、伯爵は……わたくしを気遣っていたのね。

 そして……わたくしはアルディシアを毒殺しようとしたときから気付いてしまった。

 わたくしの頭はどうしてしまったのかしら。

 毒を用いて殺そうとしても、美味しい料理しか出来ない。

 本を読んで、その素材を……正しく理解出来ない。

 でも……これできっと良かったんだわ。

 わたくしはこの家に必要とされていないのかと思っていた。

 フローネは、伯爵の答えによっては本気で殺すつもりだったわ。

 それに何より……わたくしの料理を、三人は本当に美味しそうに食べていた。



 わたくしは料理を作るのが好き。

 それが例え、毒殺目的だったとしても、美味しく作ることに命を賭けていますわ。

 あんな風に食べてもらっては、もう、もう「嬉しくて、涙が出てしまいますわね……」


 調理場で泣き崩れたレミスは、自分のぶつけどころのない感情を、最後に出そうとして

いた、スズメの卵で作ったアイスクリームを食べて。



「うふふっ……ぐすっ。やっぱり、美味しいただのデザートですわね……」


 後日、医者による診断が下された。

 彼女は後天性ディスレクシア。

 形態的に類似した文字への読み間違えを行う症状がみられるとして、日常生活を送るの

に問題は無いが、文字認識における阻害の症状が強くみられることを説明した。

 男爵はその旨を正しく伯爵に伝えたが、伯爵は婚姻を断るどころかレミスの前に急ぎは

せ参じてこう伝えたのだった。



「すべての責任は私にある。それはグラスを落とした責任だけではない。レミスに対する

思いを、私がもっと早く伝えられなかったことを含めての責任だ。私が必ず幸せにしてみ

せる。どうか、婚姻を受けてもらえないだろうか」

「わたくし、安い女ではございませんの。一つだけ条件がありますわ」

「君の条件、飲めるものであるならば出来得る限り叶えよう」

「わたくしのために、わたくしだけが使える、大きな調理場を作って頂きたいの。

あらゆる食材が手に入り、あらゆる料理を作れる。そんな場所を」

「まさか、あのときの料理は君が……いや、皆まで聞くまい。その条件を飲む。

更に、その調理場で作られたものは、屋敷のものが食べれるように手配しよう」

「うふふっ。交渉成立ですわね。つきましては伯爵。風の噂で耳にしたのですが、あのと

き、伯爵は故意にではなく、何かの事故でわたくしの頭にグラスを落としたと聞きました

の。それが誰か……教えて下さる?」

「それは……」


 しばらくして、その場には彼女の幸せそうな高笑いが鳴り響いたという。

 レミスは白いハンカチを口許に置き、心に誓うのだった。

 今度こそ、毒殺してみせますわ! と。





 






 ――――使用を目論んだ毒物一覧はこの先となります。

 筆者のちょっとした思考もそえてあったりします。



 エレン・ノルド・カルシフォン向け


 トリカブト

(鳥兜・草鳥頭)キンポウゲ科トリカブト属 有毒植物の一種。


 日本には約30種が自生しているそうな。

 おっそろしい毒です。

 とても有名ですから、様々な作品に登場します。

 この毒をレミスお嬢様は兜にまるっと鶏肉を詰めて焼いた料理にしてしまったわけですね。


 やってみたい。いや、ぜひやって欲しい! 

 旦那を反省させる料理の一品としてぜひどうぞ! 

「あなた、今日の料理よ。有難く食べなさい。私の特性鳥兜。勿論、食べるわよね……?」



 伯爵従者、アルシディア向け。

 ドクニンジン――(セリ科の有毒植物)

 かつてソクラテスの処刑で用いられたとされる多年草植物。

 ドクと名の付く恐ろしいものですが、これは医薬品として使われてきたものだったりするんですね。

 レミスお嬢様はこれを、ニンジンを溶いたスープにしてしまったんです。

 つまりキャロットスープですね。

 そいつをドクドクと注いでパンと一緒にお出ししました。

 パンは勿論キャロットパン。

 

「今日はキャロットスープよー……うふふふー……」と、紫芋のすりおろしを添えて

出してあげましょう! テーブルの上にドクニンジンの説明紙を置いておくと効果的です。 


 ヴァン・リヒド・レイスフォン伯爵向け。

 スギヒラタケ

(キシメジ科スギヒラタケ属のキノコ)

 実はこれ、作中に登場させるか凄く迷ったんです。

 というのも二〇〇四年までは食用キノコ扱いだったんです! 

 二十年前ですよ。

 びっくりでしょう? 慌てて農林水産省が食うなって言った代物です。

 それまではお店に並んでて……うおお、怖いよ……ってなったキノコです。

 これは感染症関連項目を指摘された流れによるものがあり、詳しく記すとコノコ小説と早変わりしそうなので

あえて書かないのですが、気を付けて欲しいなという意味もこめて用いました。


 明らかにただのヒラタケとは違いますし、似たキノコでいうとツキヨダケといういい名前のキノコとなります。

 紅葉の様に染め上げたキノコ料理、ちょっと食べてみたい。

「今日の食事はキノコよー。いい杉の香りがするでしょう……? うふふふ……」

 まさに現代の毒殺ミステリーに使われても可笑しくない代物ですね。

 

 ウミスズメ

(フグ目・ハコフグ科)

 はい、盛大にやらかしたレミスお嬢様です。

 これは雀の卵ではねぇ! ウミスズメは魚です。いえ、ウミスズメというスズメもいるんですけど。

 それをスズメが産んだ卵……つまり産みスズメにしちゃったんですね。

 どっちかっていうと産め! スズメだ。

 それを丁寧に茹で上げて一つ一つに味付けの趣向を凝らしてみせる料理好きのレミスお嬢様。

 いや素晴らしい。

 料理に手抜きをみせない! 

 ちなみにスズメは一昔前まで食用として大変用いられていたそうな。

 現在みかけることは早々ありませんけれども、一部捕獲されているそうな。

 私には到底食べられそうにない……。

 

「う、うずらの卵にしておいたわ……今回は失敗したようね……勘弁してあげるわ」


 ヌノサラシとルリハタ

(ハタ科ヌノサラシ属、スズキ目・ハタ科ルリハタ属)

 どっちもハタです! ハタハタって美味しいですよね(現実逃避)

 ヌノサラシは南日本でみられる、暗褐色の魚です。

 ルリハタもそうなんですが、グラミスチンという毒を持ちます。

 大変危険ですので毒液には触れないで下さいね。

 アブラウオともよばれるルリハタってとっても綺麗なんですよ。

 皮膚から粘液毒を出す肉食魚……ですけどね。

 こちらも食用ではありません。


 ここでピンときた方は凄い。私の作品のファンに違いありません。

 私の作品は含みとか頭を使うのが多いのですが、このグラミスチン。


 グラスミスったチーンみたいなイメージでこの作品を考えました(あーっと!)

 そういうの、好きなんですよね……あははは。いえ、そういう含みじゃないのを多用してるんですが。


「今晩はハタのグラタンスミ焼きよー。チーンして温めて食べてねー!」


 おあとがよろしいようで。


 お楽しみ頂けたなら幸いでございます。

 また面白い作品を手掛けるよう、頑張ります! 

 ってこれ、後書きやないかーい! 

こういった突発的作品を書くのも好きですが、基本的には長編作家をしております。

読んで気に入って頂いた方は、ぜひ他の作品も見て頂けると嬉しいです。


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