高級シルクのパジャマ
夕食を済ませて何となく皆テレビを見ていた、そんな時間に電話がなり、すみれが出た。
「えぇ、はぁ、えぇ。」
「いつだかのプレゼントのパジャマは、袖が長くてお義母さまご迷惑かけてしまったんです。だから今回は、半袖にしたんですが。シルクのいい品だと選んだんです。
お袖長いですか?」
マコトは、テレビに夢中だったが、電話の相手は、すぐ判りすみれの長い説明が、気になった。
「お嫌いなお色でしたか?」
「えっ。はい。すみません。」
「すみません。」
廊下で切れた受話器を持ったまま、すみれがうなだれている。
子供達に
「歯ブラシちゃんとするのよ」とすみれは、言い残し寝室へ入って行った。
マコトには、何が起きたのかさっぱり分からない。子供の大笑いにつられてテレビに見入っていたが、ふと時計を見て、
「おい、もう9時だぞ、歯ブラシして寝なさい。」と言ってみたが、
「明日休みじゃん」の子供達の声に負けてしまった。
そのうちアルコールの入ったマコトの方がうたたねをしてしまい、気づくと12時。子供達は、それぞれ部屋に散ったようだった。
マコトが寝室に入るとすみれは、ワインを飲んでいた。ほぼ1本空けたようだった。
恐る恐る声をかける。
「どうした?いい気持ちに酔ったか?」
「何言ってるのよ。呑気だよね。」
アルコールに弱いすみれが、一本飲んでしまったという事は、なんとなく心配だった。
「どうした?さっきの電話か?なんだって?」
「何よ今頃。さっきじゃなくて、何時間も前でしょ。
一万以上したシルクのパジャマが、お気に召さないって。
なんで喜ばないの?
お義母さんにプレゼントした時もいつも不満を言われる。
『ユリコは、気が利くのよ。すみれさんは、何か違うね。』って。
お父さんの誕生日だから、いつだかのプレゼントは、袖が長くてお義母さんが、直すのに手間取って散々文句言ってたでしょ。だから半袖。それも高級シルク。我が家の1か月生活費の10%よ。あんな肌触りのいいシルクになんで文句が言えるの。」
すみれは、相当酔っている割には、しっかり計算が出来ているとマコトは、違うことに感心する。
「すごいな。10%か。」
「電話の向こうでお義母さんも笑いながら『気が利かないね。いつものことだよ。』って。聞こえたわよ。私のする事は、いつも不愉快みたいだよね。」
すみれは、大きなため息をついたかと思うと、
「私、嫁失格かしらね。私は、半日かけて選びに選んで、高いけど買ったのよ。高級シルクよ。」
言い終わると泣き出した。
泣いたかと思うと部屋を出て行った。
マコトは、そのまま睡魔におそわれた。次に目が覚めたのは、2時。いつもの習慣でトイレに行くとすみれが、いた。
「何やってんだよ。」
ぐったりとしたすみれは、
「気持ち悪い」と答え目が、虚ろだった。
「一人でワイン飲んだ罰だよな。バカなヤツ。」
翌日、パチンコをしながらマコトは、1か月程前のオヤジとのやり取りを思い出した。