女子会 7 すみれ
「私は、やっぱり負け組かな。
マコトさんに何であんなに言われ続けたのかしら。もっと思っている事言えば良かったかな。
『今日私が不満を言ったら、また不機嫌な毎日が来る。子供達もにこやかだから、我慢しておこう』って心の底に閉まっておくのよ。それがどんどん積み重なってね。
どう言ったらケンカにならないかしらとか悩んでいたわ。
それに父の多少のわがままを母は、何となく聞いていたじゃない。私が我慢したら丸く納まるって考えていたのよ。いつかマコトさんが、気づいて昔の優しいマコトさんに戻ると期待していたの。」
すみれは、俯いたまま話しだした。
「『負け組』なんて言わないの。まだまだ60歳代、好きな事やらなきゃ!」と大人しかったあんずが口を挟んだ。
さくらは、そっと言う。
「学生時代のマコト君は、優しかったよね。
新婚の頃お邪魔してもよく気が利く人だなって見ていたよ。」
「男って変わっちゃうの?」
「こんな言い方悪いけど、すみれが優しすぎたんじゃない?」
「いや、すみれの優しさを感じたら、大人の男性は、自ら改めて行くでしょ。
マコト君は、少し心が幼かった。大人に成り切れていない部分があったわね。」とあんず。
「子供を育てていて思ったのは、子供って自己中だけどだんだん我慢する事を覚えて出来るようになるのよね。兄弟できたり、幼稚園行ったりすると『順番ね』って場面に合うじゃない。
でも、マコトさんは、いつまでも子供みたいに自分優先なの。」とすみれが何かを思い出すように言った。
「『子供の機嫌取ってんじゃねぇ。オレの飯!』って。」
「子供じゃん。」
「親世代は、お父さん一人働けば家族皆ご飯食べられた。皆を養えたよね。
多少我儘なお父さんでも専業主婦が文句言わず暮らせたのよ。それだけ収入あったよね。だからワンマンが多少許されたよね。
でも低収入で家計費少なくてワンマンは、やってられない。」
「すみれ、家計費いくらだった?」
「多い時で20万。」
すみれの声に皆が固まったのが、すみれ自身にも判った。
「20万って食費と何?」
「家賃以外かな。」
「3人の息子達が食べ盛りで学費あってどうやってたの?すみれが働いている頃?」
「パートに出る前ね。
OL時代の自分の貯金を引き出してね。次に家計費もらったら、また戻すの。でもまた足らなくなる。
お義母さんに話すと
『アンタの貯金を使えば良いことでしょ。』と言われたしね。」
「なんでパチンコ行くなって言わなかった。」力強くあんずが言う。
「言えなかった。
私のやり繰りが下手だと怒鳴るからね。
『オマエが食わなきゃいんだろ』って。
将来家を建てたいからと貯金してた。」
「現実逃避の男か?」誰かがあきれ顔で言うとかえでが、話始めた。
「ウチは、両親共働きだったのね。だから母の残業の時は、父が、料理したの。母がいても『今日は、オレの海鮮焼きそば』と言って自慢気に作ってた。掃除なんかも父は、細かい所までやっていたの。それが、一般的だと思っていたのよね。」
職業に熱中していた看護師らしい意見だった。
「ウチの父は、ステーキだけは、皆の分焼いてくれた。」とさくらも思い出し始めた。
「にんじんのグラッセとポテトの付け合わせ。いっつもその二つなのよ。」
すると一人が、
「妻が女優になって
『あら、お父さんの料理美味しい❢ めっちゃいいね。また作ってね。』とのせることも必要なのよ。うちは、結構乗りやすいタイプだったからその気なって良く料理していた。とにかく褒めまくったの。ただキッチンが散らかってしょうがないのよ。
それに続いて息子も作ってくれたわ。
癌がみつかってからも時々料理していたわ。」
すみれは、色々な夫婦があるのだと感心しながら聞いていた。
あんずが話し出した。
「実はね。娘が孫連れて帰って来てね。ムコとケンカしたんだって。
『食器洗っといたよ。』『洗濯物干しといたよ。』『トイレ掃除したからね。』とムコが連発するんだって。
私なんてしてもらわなかったから言われた気持ちが分からなかったけれだね。娘が言うには、
『初めのうちは、『ありがとう』って言ってたけど何だか、恩着せがましいくてイライラする』って。
娘もパートに出ているしね。そのうち、あんまり連発するから、『パンツ洗っといたよ。』って言ってみたんだって。」
「へー。何々どうなった。」
「小さな事でも鼻に付くと苛立つのね。『ありがとう』で聞き流せなくなるのね。」
「それであんずちゃんの所に帰って来た訳?」
「数日は、孫っちと寝られて楽しかったのよ。でもあの子育てペースってもうついていかれないのね。
疲れて仕方ないのよ。
それで娘のいない時間にムコに電話して、迎えに来るように頼んだわよ。
『プライド捨てて迎えに来てちょうだい。子供達に会いたいでしょ。』って。」
「最近のダンナは、何でも家事やるわよね。それが当たり前なのよね。
すみれみたいに『つくす』とか、『夫を立てる』なんてないのかな。」
「『夫を立てる』かあ。そりゃ、明治時代か?」
「争いや戦争のある時代は、男は、必要だったからね。
今や男子に出来て女性に出来ない事は、無いものね。」
「男は、マンモスの時代からすぐ忘れる生き物で、マンモスと争った辛い事忘れるんだって。だからお腹空いたらまたマンモス追いかけに行くんだって。」
「マンモス時代から男は、進化してないみたいじゃん。」
女性たちの男性評価には、厳しい。時代の変化に敏感なのは、女性特有のものなのだろうか? マンモスを追いかけない女性は、情報交換に優れ、新しい植物、調理方法を習得していったのかもしれない。
女子会は、大笑いで盛りあがった。やっぱり女性は、精神的に強い。
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