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2.

 コスモスクエア。人々を敵から守る役目をもつ「スター・ガーディアン」のチームに入る子供を育成する機関。幼少期に適正検査を受け、選ばれた者しか入学することの出来ない特別な学園である。初等部1年から大学部4年までがコスモスクエアに在籍し、卒業した後スター・ガーディアンとして働くことが出来る。

 スター・ガーディアンの適正がある子供は何らかの力を持つ。首元にチョーカーを埋め込まれ、左手に着けた指輪を首元にかざすことでその力を解放する。力は多岐にわたり、跳躍力や知能の上昇、物体を出したり消したりといったものがあり、その力の強さによって階級が分かれているのだ。


「なんか、バランス崩れるわね。」

スティック状のスナック菓子を1本口に入れながらかなたが呟く。

「まあ仕方ないさ。チームとしては5人のほうが有難いし、倒しやすくなっただろう。」

かなたのお菓子を無断でつまみながら彗も言う。目線は教室の端に居心地悪そうに座っている転入生、宮代すばるだ。先生に押し付けられたとも言える状態だったが、来亜が「ようこそ」なんて言ったものだから、彼女はもう来亜たちのチーム所属のようなものだった。

「こんな中途半端な歳で転入ってなんなんだろう。能力があればもっとちっちゃい時からコスモスクエアに入るはずなのに、なんで今まで見過ごされてたんだろね。」

かなたはツインテールの髪の先をくるくると指にまきつけながら話す。彼女の癖のひとつだ。それを横目に、彗はまたお菓子をつまんだ。

「まだ確定したわけではないがな。まあ……彼女は彼女なりになんかあったんだろう。かなた、お前が声掛けに行かないとあの女1人ぼっちになるぞ。」

「えぇ〜!?まだ気持ちの整理ついてないのにい!バランス崩れるのはヤダ〜!」

かなたはお菓子を今度は3本口に放り込む。ぶうぶうと不貞腐れる彼女を横目に、来亜は1人黙って考えを巡らせていた。

 コスモスクエアは、年齢別のクラスの他に、力の強さでもクラスが分かれている。グリーン、ブルー、ピンク、オレンジ、ホワイトの5種に分かれ、首元のチョーカーやネクタイにも同じ色が刻まれているのだ。これはコスモスクエアでの一種のステータスにもなる。誰もがグリーンに憧れ、敬い、そして薄らと憎みさえある。

 幼少期に何かしら無い限り、能力が見つかり次第選抜されてこの学園へとやって来るのがセオリーだが、この歳になるまで放置されていた彼女には何があったのだろうか。

「来亜〜、アンタがようこそって言ったんだから声掛けてきてよ〜っ!あたしあの子なんか無理!」

「まあそれもありだな。銀河も寝てるし、お前しかいないだろう」

まだ半分くらい残るお菓子をつまみ、かなたも彗も頬杖をついて来亜を見る。というか目配せをする。行け、と押し付けられた来亜は小さく溜息をつき、立ち上がった。

「え、行ってくれるの!?やった〜っ!お願いね!」

きゃあっとかなたは飛び跳ねる。ちらちらとすばるを見ては目が合いそうになりさっとそらすところを見ていると、人見知りの気があるようだ。面倒ではあるが、自分しかいないだろうと、彼女の机へと歩く。そこまで人見知りはしない来亜だ。話しかけるのは銀牙の次に得意である。が、今回ばかりは言葉のチョイスを間違えたようだった。

「君、なんでこの学園に入った?」

「えっ」

え〜、とかなたたちが頭を抱えるのが横目で見えた。ここはもっと気の利いた、自己紹介からいくべきだったか。出てしまったものは仕方ない、言葉は引っ込められない。来亜はもうそれ以上何も言わず、じっとすみかの目を見つめた。

 しかし、ここで想定外の反応が見えたのだ。来亜の言葉に驚いて目をぱちぱちと瞬かせたすばるは、目が合うと瞬時にとろけたような人懐っこい笑顔を見せた。

「話しかけてくれてありがとう、来亜くん。わたし、君に会いたくてここに来たんだよ」


「なにあれ。甘ったるい声に甘ったるい顔面、オマケに高能力者とかもうマンガのかませ犬じゃん。やだ〜」

かなたはお菓子を更に口の中に放り込む。来亜の様子を見ていた彗も、さすがに顔を顰めて「なんだありゃ」と呟いた。

「ヒロイン気取りなのかなんなのか知らないけど、あたしぶりっ子苦手なのよね。友達どころかチームの一員としても受け入れられる気がしなーい」

「初手あれだとなんだか取っ付きにくい感じはあるな。まあ彼女に慣れれば受け入れられるようになるんだろうが……」

「無理」

「そう言い切るな、まだ初日だ」

彗はゆっくりお菓子を咀嚼しながら来亜とすばるの様子を見守る。「君に会いにきた」がどうにも引っかかるのだ。

さっきまでの人見知りのような様子はすっかり消え、すばるは来亜の制服の裾をきゅっとつかみながら見上げている。

「わたし、ここの事なんにもわからないんだ。あっちの女の子じゃなくて、来亜くんにこの学園のこと案内してもらいたいんだけどいいかな?」

きゅるん、と効果音が聞こえるような気がして、かなたは耐えきれず席を立った。

「なーに?あたしじゃなんか不満なワケぇ?言っとくけどね、来亜なんか必要最低限しか案内しないわよ。あたしだったら女の子のことよーくわかるんだから!カフェとかちょっといい感じの庭とか、そんなのまで案内できるんだからね!」

そんなかなたの言葉に、来亜は「頼む」と返す。

「あとはあいつに聞け、根はいい奴だ」

え〜と不満気な声を出すすまかだったが、しぶしぶというようにかなたに向かって小さく、ほんの少しだけ頭を下げた。そしてまたすぐに来亜を見つめる。

「来亜くんも来てよ」

「嫌だ。寝たいからな」

「ちぇ」

ぷく、と絵に書いたように頬を膨らませ、すばるは立ち上がった。

「かなた、サン?来亜くんとは仲良しなんですか?」

「は?まあ幼なじみだから.....」

「ふぅん」

まるで品定めでもするかのようにかなたを上から下まで見ると、すばるはにっこり、来亜に見せたようなとろけた笑顔を見せた。

「かなたサン、よろしくねっ」

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