第十八戦闘行動 Before I dedicate my last story to you, I want to say one thing.
〜惑星の記憶〜
「あぁ、おいどんは……なんで生きてるんだろ?確かにあの時……バロン男爵の攻撃で土手っ腹に大っきな穴が開いたハズなんだけどなぁ……それにしてもここ……どこだろ?おいどんの郷里じゃないな……都会っぽいし……」
イエローは雑居ビルの屋上にいた。気付いた時、ビルの屋上のフェンスの外側で足を投げ出して寝ていたのだ。
そのままむくりと上体を起こすと遠くの空を眺め……るには近くに高層ビルがあるので見えないが、道路を挟んで対面している高層ビルの中にはイエローを見ている人が確認出来た。
「きっ……キミ!落ち着け、はやまるなッ!」
「(んえ?なんだろ?人が集まって来てる……ビルの下にも人だかりが出来てるし……何か悪い事したかな?)」
「自殺なんかしちゃダメだッ!親御さんが悲しむぞッ!」
「(あぁ、そういう事か。こんな所で寝てたから……勘違いさせたんだな)」
「よっと、おっととと」
「きゃあぁぁぁぁぁッ」
「キミぃ、はやまるなっ!」
ビルの屋上で寝ていたイエローを発見したのは向かいの高層ビルに出社した女性であり、通報からは既に時間が経過している。道路に面しているビルの下にはレスキューマットが敷かれ、交通規制が行われており、厳戒態勢が敷かれている様子だ。
イエローはこれ以上、迷惑を掛けてはいけないと感じ、立ち上がろうとした訳だが、狭い屋上のへりで上手く立ち上がれずそのままバランスを崩したのである——
「で、キミの名前は?住所は?これは任意同行だけど、さっき全裸になってた訳だし、ちゃんと協力してくれないなら公然わいせつ罪で逮捕になるから気を付けてね」
「えっ……俺……逮捕されるんです?」
「それはキミの協力次第。通報があったから現地に行っただけだったのに、あんなモノ見せられちゃったんだから、責任取って調書書くの協力して。まぁ、わたしだけが被害者だから、多少は大目に見てあげる」
「それはその……なんかスイマセン」
「で、今日は2026年の七月九日……っと」
「えっ?今……なんて?」
「今日の日付けは、2026年の七月九日よ?大丈夫?まさか薬物とかやってないわよね?これ以上の面倒事はカンベンしてよね……」
レッドは漸く違和感に気付いた。レッドが生き抜いていた時代に、警察官はいても今とは制服が異なっている。だからこそ、最初この女性を見ても警察官とは分からなかった。
そして連れて来られた交番。建物に“KOBAN”と書かれた文字を見てもそれが“交番”だとは分からなかったのだ。
拠って結論付けられる答えは一つしかない。今、レッドがいるこの世界は、自分達が本来帰る筈だった時代よりも“過去”だと言う事だった。
「ほら、早く名前と住所を言って!」
「俺の名前は……」
ブイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ
「何よ急にッ!何よこの音ッ!えっ?“Jアラート”?」
「Jアラート?それがどうかしたんですか?」
「えっ?嘘で……しょ?大陸からミサイル?ホント……なの?」
「ミサイル?あぁ、確かにそんな事を昔、小学生の時に学校で習ったような気がするなぁ……。って、そうか「米中大戦」って今日だったのか!」
「米中大戦?キミ何を言ってるの?アメリカと中国が戦争始める訳ないじゃないッ。それにここは日本よ?なんで他の国の戦争で日本が攻められるのよッ!」
「いやその前に、警察のお姉さん早く逃げた方がいい。確か……そのミサイルって数千発だか数万発規模で、日本列島の都市機能はそれだけで麻痺しちまうって話しだったハズだ。ちなみにここは東京か?それならその警報から数分後にはこの街は火の海だ」
「何を言って……」
どごぉぉぉんッ
どがぁぁぁぁんッ
どおぉぉんッ
ごがががぁぁぁんッ
「きゃあぁぁぁッ。キミも早く机の下にッ」
斯くしてレッドが舞い降りた日本の首都・東京は執拗な軍事ミサイル攻撃を受けた。レッド達が産まれる百年以上前に起きた戦争。それは学校で習うだけの歴史だった筈なのだが、実際に目の前で起きてみるとレッドの血は湧き上がって行った。
だが今ならば交番の机に身を隠している警察官を放って、この場から走り去る事も容易だ。任意同行でここまで来たが、これから先、日本は二つの大国の戦争に巻き込まれ、大勢の人が死ぬ事実は変えようがない。
だからこそ、今この場から逃げてもそれどころではなくなるだろう。
「警察のお姉さん、悪い。俺は行かせてもらう。俺には俺のやらなきゃならない事がある。暫くすればこの攻撃は落ち着くけど、また夜になると一斉にミサイル攻撃が来るハズだから、シェルターに逃げておいた方がいいぜッ」
「ちょっと、キミ!待ちなさいッ!今、外に出たら危ないわよッ」
レッドは交番を飛び出した後、今まさに空から降り注いで来ようとしているミサイルを見詰め、混乱の極みに陥った東京の街を疾走って行く。
周囲にあるオフィスビルや商業施設からは人が溢れ返り、我先に逃げようとして混乱を撒き散らしている。
更に各所で湧き上がる悲鳴は次々と恐怖を増長させて連鎖させ、東京の街は地獄絵図のようにもなっていった。
人は自分の前にいる人を突き飛ばして、逃げて行く。
車道にも人は溢れ、車はその人達を跳ね飛ばしながら逃げて行く。
どこに逃げればいいかなんて分からないままに、群集心理に従って一目散に逃げて行く。
時折鳴り響く爆発音、建物が崩れる音。悲鳴と絶叫、怒号とクラクション。
これこそが恐怖に拠って構成されたディストピアと言われても否定する要素などどこにもなく、人間が背負う罪の姿をまじまじと指し示していると言われても、返す言葉の一つも無い。
こうしてこれから数年続く世界的な混乱期に、ジャスティスファイブは陰ながら華麗に参戦する事になる……が、それはまた別のお話しである——
「俺達は“セイギノミカタ”多分戦隊ジャスティスファイブッ!ここでの悪事は俺達が許さないぜッ!!」




