第十七戦闘行動 日本のとある風景
〜惑星の記憶〜
「ここは……はッ!日本……か。ここは日本なのか?」
「何あの人、変な格好の人がいるわ。何かのコスプレかしら?」
「ママー、アレって何の戦隊ヒーローかな?」
「ダメよボクちゃん、指をさしたら……ほら、行くわよッ」
「そう言えば、他の皆はどうした?ここにいるのは私だけ……なのか?」
一際緑を強調するように人工的に植林された公園にブラックは寝ていた。少なくとも聞こえてくる言語は日本語で、見た目は日本人な人種が自分を珍しがって好奇な視線を投げていた。
「二十二世紀じゃ、戦隊ヒーローは珍しくも無い筈なんだが……ジャスティスファイブの知名度もまだまだだな。いや、そうだッ!早くこの時代に帰って来た事をスポンサーに伝えなければッ!そしてこれから未来に起こる事も説明して、ジャスティスファイブを継続してもらえるように説得しなければッ!急がねばなるまい」
ブラックが珍しく盛大な音量で発した独り言に拠って、周囲にいた人達は驚いている様子だった。少なくとも彼らにとって、目の前にいるブラックは異質な存在に見えたのかも知れない——
「もしもーし、大丈夫ですか?生きてますか?」
「ふぁ?あれ?あぁ……大丈夫。生きてる」
「あぁ、良かった生きてるんだね?ところでキミは酔っ払い?公園に人が倒れていると通報があって来たんだけど、キミのそれはコスプレかな?」
「いや、これはコスプレじゃない。俺は戦隊ヒーローの者だ!“元”だけど……ごにょごにょ」
「戦隊ヒーロー?何言ってるの?それは職業じゃないでしょう。その被ってるの取れる?顔を見せれる?」
「あぁ、それならこのボタンを……ぽちッ」
ぼわわわ〜ん
「ちょっ!キミ、なんで裸なのッ!?」
「えっ?俺……なんで裸なの?」
「それはこっちが聞きたいよッ!服は持ってないの?兎に角何か着て!前を隠して、ほら早くッ!それじゃないと現逮するよ?いいの?」
レッドはブラック同様に公園で寝ていた。そして運悪く通報され駆け付けた体格の良い女性警察官に拠って起こされた様子だ。
更に運が悪い事に鎧を解除したレッドの姿は全裸だったのである。まぁ、腰に変身用のベルトは巻かれているままだから全裸と言うのも可怪しいが、半裸と言える姿でもない。更には突然コスプレ衣装が消え、全裸男が現れたのだから、警察官は動揺して当然だった。
「あ……あの、俺……服着てないみたいなので、鎧着てもいいですかね?」
「アクティブスーツ?まぁ、さっきのコスプレ衣装しか持ってないなら早く着なさい!でも、任意同行で交番まで来てもらえるかな?」
斯くしてレッドは任意同行と言うよりはほぼ強制的に最寄りの交番まで連行される事になったのだった——
「ふわぁ……よく寝た。アレ?ここは誰?アタシはどこ?いやいや、ここは日本?アタシはピンク!」
ピンクは雑居ビルに挟まれた裏路地で目を覚ました。場所が場所だけに誰からも心配される声は上がらなかったようだ。
「人がいる!歩いてる!変な虫モドキじゃないし、尻尾とか翼とかも無い、普通の人だぁッ!アタシ帰って来れたんだ!それじゃ、近くにブラックがいるの?ブラックはどこ?」
ピンクの視界に入って来たのは、表通りを歩く人達の姿。それは暫く見た記憶がない、人間の姿だ。「無事に日本に帰って来れた」その感情はピンクの心を揺さぶっていたが同時に、しがみついていたブラックの姿が無いことに不安を覚えていた。
「でも、このカッコで人目に付く所をウロチョロするのって目立つし、ジャスティスファイブのアタマピンクだってバレたら、ストーカーされちゃうッ!イケメンストーカーならアタシは喜んで受け入れちゃうけど、ブサキモだったらイヤだし、かと言ってボコボコには出来ないし……そうだ!脱げばいいんだ、アタシってば頭ったまイイ〜!ぽちッ」
ぼわわわ〜ん
「えっ……うそ……ちょっ@#$%&*☆¥※〒ッ!これじゃただの露出狂じゃんッ!いやいや、流石に昼間っから人目があるところで全裸はマズい、イケメン以外に見られたらアタシ、玉の輿に乗れなくなっちゃうぅぅ」
レッドと同じ事をピンクもしていた。だが、レッドとの違いは人目があるかないか。それだけの事で事態は雲泥の差だったと言えるだろう——
「ここ……は、どこ?」
「あぁ、目覚めたか?変なコスプレニーチャン」
「えっとぉ……ここ……は?」
「いやぁ、助かったぜ。ニーチャンがいきなり空から降って来てよ、オレに絡んでたヤツらを下敷きにしてくれたお陰で、オレは命を救われたんだ」
「えっ?僕が空から降って……きた?」
「でも、ニーチャン自殺志願者か何かか?正直、オレを襲って来たヤツらを下敷きにしてくれたから、ニーチャンも死んだと思ってたんだが、無事そうだな?」
ブルーは薄暗い部屋に寝かされていた。そんなブルーに向かって「ニーチャン」と呼ぶのはかなりガラが悪そうな人。派手な柄のシャツを着て、髪の毛はキンパツでグラサンを掛けている。耳には幾つもピアスを開けていて、時折覗かせる舌にもシルバーに輝くモノが見えた。
ブルーが絶対に絡みたく無い人ランキングを作ったとしたなら、絶対的上位にランクインしてる……そんな人物だった。
「ところでさ、なんでいつまでもコスプレしてんだ?ニーチャンはあのビルから飛び降りたんだろ?コスプレしたまま死にたかったのか?」
「いや、僕は……」
「まぁいいさ、死にたいくらいイヤなコトがあったんだろ?ここなら少しの間は見付からねぇ、オレの自慢の隠れ家だ。もてなしは出来ねぇが、ニーチャンはオレの恩人に変わりはねぇ。相談なら乗るぜ?ヤって欲しいヤツがいんなら、オレが格安でヤって来てやんぜ?なんせニーチャンはオレの恩人だからよッ!」
「ヤる?それって人を殺すってコト?いやいやいや、僕は“セイギノミカタ”だよ?戦隊ヒーロージャスティスファイブのココロブルーだよ?“元”だけど……」そんなコトをブルーは考えながらも口に出せないでいた。
それもその筈だ。ブルーはヤンキーやヤクザと言った人種と話した事もなければ、関わらないで一生を過ごせるなら関わりたくないと考えている。それほどに臆病な側面も持っている。
アクトウダンがそれらに類推する集団だとは思いながらも、仕事と割り切って闘っていたし、仕事だと思えばこそ立ち向かう事も出来た。
だからこそ、プライベートでは拒絶反応すら見せる程に関わりたく無いと思っていたのだ——




