第十六戦闘行動 白金次元断裂時空砲
〜惑星の記憶〜
突如として鳴り響く轟音。「ハの国」全域にまで響き渡ったその轟音は、遂に別れの日が来た事を告げたのだった——
ジャスティスファイブの面々は次々に迎えに来た金ピカ戦闘機に乗り込んで行く。一人を除いて皆の面持ちはとても晴れやかだった——
しかし、その場に見送りの者は誰一人として来ていない。「別れは悲しいものだ。だから見送りは要らない」それが事前に通達された内容であり、「ハの国」に住まう者達は空に輝く金ピカ戦闘機をその場で見送っていた。
遠く遠く遠ざかり、その音が聞こえなくなるまでジャスティスファイブに対して畏敬の念と感謝の気持ちを捧げながら手を止め、顔に涙を浮かべていた——
「さて、久しいのぉ。元気ぢゃったか?」
「ねぇ、ブラック……この人がゴールド?」
「そおぢゃ。ワシがトウチョウゴールドぢゃ。そして、こっちが……」
「メモハモホワイトト、モウシマス」
「改めて簡単な自己紹介は済んだコトぢゃし、さっそくこれより皆を元の時代に戻すとするかのぉ」
「今更だがゴールド……本当にそんなコトが可能なのか?」
ブラックは金ピカ戦闘機に拠って連れて来られた北の大地で改めて聞く事にした。どうやってこの時代に来たのか分からない以上、その方法を試す事は出来ない。だが、新たな方法があるにしても、時空を超える事が出来るとはどうしても思えなかったのである——
「まぁ、ワシが観測した結果、「可能」となったのぢゃから問題は無いと思うわい。まぁ、ぶっつけ本番なのがタマにキズぢゃがな」
「うわぁ、ぶつけたタマタマにキズだって、痛ったそー。レッドも一回ヤってもらったら?ブな顔が少しは笑えるようになるかもよ?」
「なんで俺が!ってか、“ブ”とかうるせぇしッ!それにどうやったらそんな話しになるんだよッ!それこそお前が……いや、何でもない」
「アタシがなんだってぇ?セクハラかな?セクハラだよね?へぇ、レッド……アタシにセクハラなんていい度胸ね?むぎゅッ」
「話しが先に進まなくなる。少し黙っててくれないか?」
「ところでゴールド、イエローは無事なのか?帰る為にはイエローも必要なのだろう?」
「あぁ、無事ぢゃよ。だがイエローは最後の最後に放り投げる。ぢゃから気にせんでいいわい」
ゴールドが言った「放り投げる」と言うセリフに反応したのはブルーだった。これから自分の身に何が起きるのか心配しているのだろう。ちなみに、ピンクは口元を押さえているブラックの手を必死に舐めていた——
「では、始めるぞい!メモハモホワイト、コード666起動ぢゃッ!」
「コード666、キドウカイシシマス」
「変形!」
「ガッタイ」
「ジャスティスプラチナムぢゃッ」
「カッコいいッ!本当に兵器だったんだ?でもあれ?僕達は兵器に乗って帰るんじゃないの?」
「ブルー、ワシらは一緒には行けん。行くのはお前達だけぢゃ」
ブラックは理解していたが、ジャスティスプラチナムに乗って帰ると考えていたレッドとブルーは驚いている様子だ。ピンクに至っては身悶えしており、話しなど最初から聞いていない——
「お前達はこの時代にやって来た者達。ワシらはこの時代まで残った者達。ワシらまでお前達と共に行けば、元の時代に居てはならない存在となる。だから、帰るのはお前達だけぢゃ」
「あぁ、そっか!ゴールド達は僕達が戻った後で開発されるんだもんねッ!じゃあ、元の時代で会った時は「ハジメマシテ」になっちゃうんだ?」
「そう言うコトぢゃ。まぁ、歴史が変わるから同じ姿のワシらとは限らんが、新しいゴールドとホワイトにヨロシクな!」
「おう、任せておけッ!俺達がちゃんとコキ使って、アクトウダンを滅ぼしてやるぜッ」
「それではこれより、白金次元断裂時空砲を使う。これの効果がどれだけ保っていられるかは分からん。ぢゃから早めに穴が開いてる内に飛び込むのぢゃぞ?皆が一緒でなければ、元の時代に戻れる確率は下がる。タイミングを間違えば、時空の狭間に囚われる可能性もある。心を合わせタイミングを合わせて、せーのっで飛び込むのぢゃ」
元より仲間意識も低い、連帯感も無い自分勝手なジャスティスファイブに対して、「心とタイミングを合わせる事が如何に難しいコトなのか、分かっているのか?」……とブラックは言いたげだった。
だが、そんなコトを言った所で何も変わらない。そんなコトを言った所で意識が変わるハズもない。「余計なコトを言わぬが花」……そんなどことなく諦めた表情になっていたかも知れない——
「では行くぞ!ジャスティスプラチナム、コード999」
がしゃんッ
がしゃんッ
うぃーん
ジャスティスプラチナムが伝えたコードに拠って、肩の二門の砲が変形して行く。形状を変え、二つの砲の中心に強い磁場が現れ、濃縮された高密度のエネルギーが凝縮して行くのが容易に見て取れる。その異質なエネルギーの塊に対して三人は息を飲み、「ゴクリ」と言う音が微かに響いた頃、ジャスティスプラチナムから新たに言葉が紡がれて行った——
「白金次元断裂時空砲、ジャスティスファイヤーッ!」
しゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん
どッ
空に向けて放ったそのジャスティスファイヤーは、砲門の目の前に穴を開けると余韻は全て穴の中に飲み込まれて消えていた。これが“兵器”としての一撃ならば、敵は誰一人として倒せない事は間違いがないと言える。
強烈なエネルギーが直進し敵を装甲ごと薙ぎ払って消失させるビーム砲のイメージとは裏腹な光景に対して、特にブラックはツッコミを入れたかったが、既に時空の穴は開けられてしまったのだ。故に、今はツッコミよりも心とタイミングを合わせて飛び込むのが先決……のハズだった。
「俺が一番乗りぃッ!」
「「「「あっ!?」」」」
こうしてレッドの暴挙にジャスティスプラチナムまで盛大に驚きの声を上げた後、ブルーとブラック、そしてブラックの腕にしがみついていたピンクの順で穴へと入って行った。最後にジャスティスプラチナムからイエローが急いで雑に穴に放り込まれたのは言わなくても分かるだろう——
「全く……アイツらは人の話しを聞いておらんな……しかし、これでこの世界に残ったジャスティスファイブはワシらだけになった。ワシらは再び眠りに付くとしよう。ワシらみたいな“兵器”が必要のない世界になる事を祈っておるぞ。“神”が新たに創り上げた新人類達よ」
ジャスティスプラチナムはその姿のまま、北の大地で眠りに付く事を選んだ。
北の大地に住まう種族はもういない。蟲族ですらもこの大地に現れる事は無い。だからこそ、この大地を選んだ。もう場所すら選定済だった——
雪と氷に覆われながら、“兵器”として今後使われる事が無い事を祈り、この時代にとっての異物である遺物はこれより先、長い長い眠りに付く事を選んだのである。
再び“セイギノミカタ”が必要になるその日まで——




