第十四戦闘行動 KY
〜レッドの場合 其のハ〜
「なぁブラック……俺……なんでフラレたんだ?」
「アタシとしては、レッドがその顔面で結婚してた事に驚いてるんですけど?でも一気にバツ五なんて超ウケる!あの時の黒歴史を更に上回る黒歴史過ぎて、超絶ウケるマジウケるッ!」
「ウルせぇよ。俺はこう見えて傷心なんだ、放っといてくれ」
俺はエレファから離縁を言い渡された後、立て続けにノーラ姉妹からも別れを切り出されていた。五人の妻、全員からほぼ同時に別れを切り出され正直な所、病みそうだった。
まぁ、五人中、三人は今にも泣き出しそうな顔をしていたから「何かあったのか?」って感じはしたけど……な。
「レッドは確かにイケメンじゃないけど、とても優しい人だと僕は思ってるよ?大丈夫だよ、そのうち良い事あるよッ!」
「やっぱり女はイケメンなのか?イケメンがいいのか?って事は!ブラック……お前が……お前が皆を誘惑したんだなッ!」
「はぁ?冗談は顔だけにしてよね?ブラックには、アタシって言うオンナがちゃあんといるのッ!ブラックはアタシのモノだし、アタシはブラックのモノ!相思相愛ラブラブなブラックが他の女を誘惑なんて、するワケがないじゃないッ!」
「ブラック……そうだったのか?いや、人の好みに文句は言いたくないが、女はちゃんと選べよ?」
「な……なんですってぇッ!レッドのクセに、アタシに因縁吹っ掛ける気?いい度胸ね!この万年素人ドーテーがッ!」
「ハの国」のとある場所でのジャスティスファイブの話し合い。ブラックに拠って集められレッドの独白から始まったこの話しは、いつしか一触即発の事態になっていた。
だが、レッドが最初に話し掛けたのはブラックであり、ブラックが一言も返していないのに話しはどんどん進み、ブラックはいつしか言葉を返す気も薄れていた。
「ところでさ、ブラック。あと二週間くらいで、そのゴールドって言う兵器がやって来るの?レッドが言ってたけど、金ピカ戦闘機なんでしょ?本当ならカッコ良いよね!僕もコックピットに座ってみたい!」
「ブルー、お前も一緒に乗っただろ?それにその金ピカ戦闘機から俺と一緒に飛び降りただろ?覚えてないのか?」
「僕が飛び降り……る?僕は自慢じゃないけど高所恐怖症だから、そんなコトは無理だよッ」
「なんだ、お前も記憶喪失なのかよ……」
ブラックがこの場に「話し合い」と称して皆を集めたのは、記憶に関する事。即ち“悪の因子”の話しだ。そしてその後、現代日本に「帰りたいか否か」の話しに繋げる予定だった。
ブラックはどうしても皆を現代日本に連れ戻したかった。だからこそ、この中で唯一結婚しているレッドを説得する為にも、婚姻関係にある獣人全員に別れを切り出してもらったのだ。
当初、五人中、三人の妻からの反対は激しかった。それこそ自殺を仄めかす発言や、「レッドを殺して自分も死ぬ」的な発言もあった。だがブラックはその三人を根気強く説得し事無きを得たのである。
しかしブラックの中で意外だったのは、レッドとの別れに積極的だったエレファの存在である。エレファはブラックが話しをする前にレッドの事を捨てたのだから……。
「なぁ、いいか?」
「アタシはいつでもいいわよ?ここで股を開けばいいの?」
「本当にお前達……デキてたのか?!」
「ピンク……話しをややこしくするなら、お前だけ今度から話し合いには呼ばなくなるがいいか?」
「アタシだけ放置プレイにするの?あぁん。焦らされるぅ」
「はぁ……レッド、ブルー。コイツは放っておいて話しを進めるがいいか?」
「あぁん、ブラックが冷たいッ!きっとこれはアタシに対して、むぎゅッ」
「ブラック……本当に女は選べよ……」
ブラックはピンクの口元に手を置き、強制的に黙らせる作戦で話しを切り出す事にした。
口元を塞がれたピンクはそれでも「モゴモゴモ」言っていたが、諦めた様子になるとそのままブラックの手のひらの匂いをクンクンと嗅いだ上で、犬のようにペロペロと舐めて味わう事にした様子だった。
更には時折、身体を身悶えさせおりレッドとブルーはその様子にドン引きしているし、当のブラックは自分の手のひらがヨダレ塗れにされながらも、気にせずに口を開く事にした。
「皆は自分達が記憶喪失だと思っているかも知れないが、それには理由がある」
「ブラック……それってどういう事だよ?俺達は本当に記憶喪失なのか?」
「正確には記憶喪失じゃない。皆が記憶を失っている間、その身体は自分達が知らない者に拠って操作されている」
「多重人格ってコト?僕達の中に別の人格があるって言うの?」
「まぁ、そうだな。その言い方の方が確かに分かりやすい表現かも知れない」
「俺達全員が……いや、ブラックは違うのか?でも、俺達三人が三人共に多重人格者で、タイミングよく全員の人格が変わったりするものなの……か?」
俺は信じられなかった。いや俺だけじゃない。ブルーも同じコトを考えていると思う。ピンクは恍惚感に浸っているようだからよく分からないし分かりたくも無いが、少なくとも直ぐに信じられる話しじゃない事は確かだ。
でもその反面、心当たりがあり過ぎるのも確かだったし、それが原因でエレファやノーラ姉妹から別れを切り出されたのだとしたら、俺自身の問題だから遣る瀬無さを通り越して闇落ちしたくなったってのは当然と言えば当然だろ?
「私とて多重人格者と言われれば皆と同じだ。だが、私の場合は皆と違って記憶を共有している。だから私であって私ではない自分の記憶も、自分が経験した事のように覚えている」
「ぷはぁッ。アタシは分かるよ?アタシが見た事無いテーバメの技を、アタシの身体が覚えてたし……それと同じでしょ?あ、ブラック、口を塞ぐなら唇で塞いでほしいんだけ……むぎゅッ。——ぷはぁ。仕方無いなぁ……。それじゃまた、いっただっきまーす。れろれろれろれろ」
「おいおい、マジかよ……。俺達全員が本当に多重人格だってのか?」
俄には信じられないが、ブラック以外にピンクまでそうだとすれば、妄言とは思えない。まぁ、ピンクは言ってるコトがいつも可怪しいけどよ……。
「ねぇ?ジャスティスファイブは多重人格者の集まりだったってコトなの?僕もそうなの?」
「あぁ、ブルーはどちらかと言うと、ブルー自身が多重人格って扱いなのかもしれない。レッドは五分五分。ピンクはもう一つの人格と一部共有って感じらしい」
「僕がもう一つの人格……本当なのそれ?」
「ショックかも知れないが……」
「僕がもう一つの人格……なにそれカッコいい!サブの人格なのに主人格を制御してるッポくてカッコいい!」
「おいおい、なんでそうなる?」
なんでこんなに柔軟性高いんだ?柔軟剤でも飲んでるのか?俺はそんなに適応力高くないし、割り切れないモンは割り切れない。だからただでさえ、闇落ち仕掛けてるってのに……。
とは言っても、ブラックが言ってるんだから事実として受け止めるしか無いんだろうな。これがピンクの口から出て来た言葉なら信じねぇんだけど……な。




