第十戦闘行動 正統
〜続々・今は無きモノの視点・シン〜
「全て見させてもらった。テーバメの仇、討たせてもらう」
チッカは「カの国」を使って戦場に皆を運んだ後、自分一人だけが城に残った。更には呼吸が出来るギリギリの高度まで「カの国」を上昇させ、そこで戦闘の様子を窺っていたのである。
万が一の時に、質量依存の単純物理兵器として「城落とし」を行う為に……だった——
ごおぉぉぉぉぉぉぉぉッ
どっっっっっごおぉぉぉぉぉぉぉぉん
“メテオ”、“ミーティア”、“メテオロス”など……流星にちなんだ言葉は幾つもある。だが「カの国」はそれとは大分違う。しかしながら大気摩擦で燃え尽きてしまう矮小隕石とは比ぶべくもない質量兵器であり、運動エネルギー弾と言わざるを得ない。
そんな弾丸となった「カの国」は、ジャスティスプラチナム目掛けて特攻し、突貫は成功したのである——
ごおぉぉぉぉぉぉぉぉッ
ぶふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ
「凄い熱量を持った風……チッカちゃんがあの中にいたのだとしたら……もう……。——やっぱりイケメンは嘘吐きね」
「風が強過ぎて先に進めねぇ。このままじゃ、俺様達も飛ばされっちまう。ってか残してきたアイツらは大丈夫か?」
「あわわわわわ。前が何も見えないよぉ。何か掴むモノが無いと、立ってるのも辛過ぎるよぉ」
それは前時代の人類が発明し開発し運用した如何なる兵器よりも、兵器らしからぬ兵器だったと言えるだろう。だがその威力は如何なる兵器であっても太刀打ち出来ない程のパワーを秘めており、爆心地となった蟲族の城があった栗駒山は、原型を留めない程に山体崩壊したのである——
爆発のエネルギーは山を形成する土砂を遥か彼方の上空まで舞い上がらせ、膨大な熱量は残った大地を熔かし赤々と染め上げて行く。衝撃波は大地を駆け巡り超高温の熱を伴った旋風に拠って、あらゆる物を焼き尽くさんとしていた。
それはさながら、生きとし生けるモノ全てに死を撒き散らす“嵐”と言えなくもない様相だった——
先に飲み込まれたレッド達三人に対して死は撒き散らせなかった様子だが、爆心地から離れた場所で蟲族と闘っていた面々の元にも、その“死の嵐”が今まさに到達しようとしていたのである——
「「カの国」を兵器として使ったのか……チッカ殿。——だがこのままでは危険だ。くそッ!私の身体はまだ修復が終わらないのか……誰か、誰でもいい、ここに直ぐ塹壕を掘ってくれ!時間が無いッ!」
「それならば妾がやりましょう。えぇいッ!」
どんッ
ごッ
ぴきびきぴきッ
どごッごしゃッ
「エレファ殿、忝ない。皆、エレファ殿が作ってくれた塹壕に飛び込め!身を低くして頭を抱えて縮こまるんだッ」
こうしてエレファ作の即席塹壕にその場にいた全員が飛び込み、死の嵐が過ぎ去るのをその中で待ち、一難をやり過ごす事にしたのである——
「ブラック様、あの巨大なモノは破壊されたのでしょうか?」
「それは分からない。兵器を破壊し尽くせる程のエネルギーかと問われれば疑問もある。あの質量が見事に直撃していたのであれば、如何に兵器とて無事では済まない甚大な被害を齎しているだろうが……直撃を避けられたなら、多少の損傷で済む可能性も残っているだろう。だが、この死の嵐が収まるまでは様子を見に行く事もままならない」
「先に向かった、だんな様はご無事なのでしょうか?アテシはそれだけが心配ですわ」
「あの三人の鎧は完全に復旧したと言っていた。それを信じるならば無事な筈だ」
「チっ。ブルーだけは、とっとと死んでくれればいいものを……」
鎧の性能は折り紙付きだ。あの爆心地に於いて直撃を受けなければ破壊される事は無い。死の嵐と言えど、鎧の機能を停止させる程のエネルギーでは無い。だが、それはホワイトとゴールドの二人も同じ事。更に付け加えるならば向こうは兵器だ。
鎧と一体化してるジャスティスファイブとは違い、鎧の機能が多少損壊しても二人は平気で動くだろう。一部分が融解しただけで動けなくなったジャスティスファイブとは大違いだ。
拠ってそれはブラックの懸念材料でしかなかった——
「何もかも無くなっちまったな。これじゃ、あの二人もオダブツか?」
ざっざざっ
「まさか、あのような兵器を有し、あまつさえ使用するとは……やはりキサマらは悪しき人間だったと言う事だった訳だな!」
「憤怒!てめぇ、生きてやがったのか?!」
「我は憤怒の化身。怒りがあれば何度だって甦る。怒りの力は絶大なのだッ!旧人類の禍根、星の怒りを我こそが成り代わり鎮めてくれんッ!」
ダッダダダダ
シュバババババッ
「強欲!僕も参戦するよッ」
「ちょッ!ったく怠惰のヤツ、ラクな方に行ったわねッ!清楚で可憐でキュートで天才美少女なアタシ一人にコイツを押し付けるとか、マジで後でブッコロモンよッ」
「ピピピ、ピーガー@#$%&*☆¥※〒ッピピピピーガガガ」
「まぁ、ぶっ壊れモドキなんて、アタシに掛かればラクショーだけどね。——にへらっ」
死の嵐が収まった爆心地にいたのは、ブラックの懸念通り半壊しても尚、憤怒に瞳を燃やしたホワイトと、既に何も話せなくなったゴールドだった——
斯くしてここに、“端から異端のジャスティスファイブ”VS“結果として異端に窶したジャスティスファイブ”の最終決戦の火蓋が切られようとしていたのである——
「よし、私も完全に復旧したようだ。皆、これまで闘ってくれた事、感謝する」
「ブラック様、行かれるのですね?」
「ブラック殿、あるじ様を頼みます」
「ピンク様のお力になって上げて下さい」
「レッド様を、必ずここに連れ帰っておくんなまし」
「あぁ、約束しよう。誰一人欠ける事無く生還してみせる」
ブラックは皆の想いを託された後、歩み始めた。辺りはまだ炎が燻り、この世界に本来住まう者達が身動き出来る状態には無い。生命保護機構を持つ鎧が無ければ生存すら危ぶまれる危機的環境と言っても過言では無いだろう——
そんな中でブラックは一人、皆の期待を一身に背負い歩を進めて行く。その姿は“異端”とは無縁の、正真正銘“正統”な“セイギノミカタ”そのものであったと言えよう——




