第九戦闘行動 決死の覚悟の果て
〜続・今は無きモノの視点・シン〜
「あれはティア・マト?——ッ!?まさか……龍公女が先祖返りを……?」
「状況は掴めないが、その“原初の龍”がいれば、戦況を覆せるかも知れない。ギョリ殿、すまないが私を立たせてもらえるか?」
「えぇ、それくらい構いません。クジ、手伝いなさい」
「あれが“原初の龍”……だが、一体何を目論む?あの龍は何をしようと言うのだ?それに、何故ホワイトもゴールドも音沙汰が無い?」
ブラックは自分の目で現況を確かめる事にした。最奥の城には巨龍が取り付き、今にも城を破壊せんとしている。その瞳は憎悪に燃えているかの如くであるが、差し当たって何かの行動に直ぐすぐ出る気配が見られないのも事実だった——
その時、一条の煌めきが光の束となって城の中から外に向けて……その遥か彼方に向けて伸びて行った。その光に貫かれた“原初の龍”は城から剥がれ落ちるように大地に背を付けたのである。それは大地を盛大に揺らし、城が崩れる以上の大音量を掻き鳴らし、突風をも巻き起こしてガレキや砂塵と共に蟲族を吹き飛ばして行った。
更には城の中から目が眩むばかりの金色に輝く光が放出され、城は盛大に音を立てて崩れて行ったのである——
「な……何が、起きた?龍が撃たれ、城が崩れた……だと?ま……まさ……か……」
「ブラック様、これは一体?あのホワイトと言う者が、“原初の龍”を撃ったのでしょうか?」
「恐らく……あの一撃であの龍が死ぬとは思えないが、問題はそこじゃない。その後のあの光……あれは……兵器の輝きだ。——非常にマズい、サッカ殿、ギョリ殿、それにキーラス殿!皆を退かせてくれ、ホワイトの攻撃が来るッ!」
ブラックの懸念。それは兵器の出現だった。ゴールドもホワイトも元を正せば兵器。最終的に人間大のサイズに収まったと言っていたが、ゴールドは実際に戦闘機サイズまで変形している。
要するに、ホワイトとゴールドが合体する機構が生きていれば、「戦隊ヒーローが搭乗する戦闘ロボットにだってなれる筈だ」という懸念がそこにあった。
そうなれば巨大ロボットと闘って勝てる見込みは無い。だからこそブラックは三種族に撤退を要請したのである——
それこそ無駄に命を散らせるよりはマシ……程度の考えだったかも知れないが……。
「くっくっくっ。いつまで経っても来ないから、腹立たしくもこちらから撃って出る事にしてやったわ。我が名は“ジャスティスプラチナム”世界に混沌を齎す支配者だッ!だが……先ずはこの用無しから血祭りに上げてくれる。我に歯向かった事、我を苛立たせた罪に因り、地獄に堕ちよ!ダブルレーザーカノン、ダブルファイヤーッ」
ぎゅいぃぃぃぃぃん
きゅんきゅんきゅんきゅん
しゅうぅぅぅぅぅぅぅぅッ
ゴッ、ドオォォォォドォォォォォォドドッゴオォォォォォン
「ゴガアァァァァァァァァァァァァッ」
「そんな……あまりにも惨いですわ……」
「一撃で“原初の龍”を?!」
幾重にも及ぶ驚愕が周囲を凍て付かせていた。先ずは完全崩壊した城から現れた荘厳な佇まいの巨大ロボット。“悪の因子”の影響を受けたのだろう、厳かでありながら禍々しさをも纏っている兵器がそこにあった。拠って、どこからどう見ても“セイギノミカタ”には見えない姿である。
そして次にその巨大ロボットの肩に装備されている二門のカノン砲が火を噴いたその威力だ。“原初の龍”ティア・マトはその火力の前に蒸発し壮絶な雄叫びと共に消えた。そしてその熱風は離れた場所でその光景を見ていた全員の肌をジリジリと焼くほどであり、先程の突風と併せてこの熱風の影響で周囲の蟲族は軒並み死滅した。
上空で闘っていた鳥人達も撤退が遅れていたなら影響は少なからず免れなかっただろう——
「最悪の事態だ……皆、早く!一刻も早くこの場から逃げるんだッ!」
「ブラック殿、こうなっては何処に逃げたとしても生き存えるのは無理と言うもの。それならばこの不肖テーバメ・ガーエシ、一太刀でも入れて華々しく散るが誇り!——おねえさま、短い間でしたが今までありがとうございました。どうぞお元気で」
ばさッ
「ま、待って、テーバメちゃん。死にに行っては……ダメェッ。まだまだアタシは調教し足りないんだから……」
テーバメは死を覚悟し、ピンクにこれまでの感謝を伝え、自身の持てる最速で空を駆けて行った。ジャスティスファイブの寝ている一人を除く三人は、未だ復旧が追い付かない身体に焦りを募らせていた——
「某の命を乗せて放つ、一世一代最後の一太刀!秘剣・鳥獣伎楽・最大出力最大速力・燕雀安んぞ鴻鵠の志を……知らんやッ!!」
がっきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん
ぴしっ……
「某の刀……がッ」
どごおぉぉッ
「——ッ!?テーバメちゃんんんッッッッッッ!!」
渾身の一撃を入れたテーバメの刀は、その威力と兵器の硬さに負けて折れた。そしてその直後、テーバメの身体を襲ったのはジャスティスプラチナムの文字通りの鉄拳制裁である。
テーバメは遥か彼方に向かって力無く弾け飛ばされて行った。その耳にピンクの悲痛な叫びが届いていたかは定かでは無い——
「テーバメ殿……見事な散り際だったぞ。——だがもうダメだ……万策尽きた……こうなっては私の策など児戯に等しい」
「諦めるなッ!俺様はもう闘える、完全復活したぜッ!おら、ブルー起きろ!お前も治ってんだろ?」
「あぁ、レッド痛いよぉ。それに僕はまだ眠いよぉ。寝かせてよぉ……Zzz」
「うん、アタシも治ったっポイ?ブラックはまだ?それなら先にアタシは寝込みを襲わせて貰うとして……」
がしッ
「ピンク、行くぞッ!咲かせて見せよう惡の華、“セイギノミカタ”ってヤツの出番だッ!」
「はーなーしーてーよー、アタシはブラックとイッパツしてからイクのーッ!」 / 「僕はねーむーいーのー、闘いたくなーいーッ!」
一足早く治ったレッドは時を同じくして修復が終わった二人を引き摺りながら、ジャスティスプラチナムに対して挑むべく歩を進めて行ったのである——
ごおぉぉぉぉぉぉぉぉッ
「おいおい、なんだアリャ?」
突如として大地に木霊する不協和音がそこにあった。それをいち早く発見したのはレッドだったのか、はたまたブラックだったのか……。だがその不協和音は刻一刻とその音量を増して行く。
どこから鳴っている音なのか気になったレッドが辺りを見回し、見上げた空にソレはあった——
「う……そ……待って!ダメッ!絶対にダメッ!テーバメちゃんに続いて、貴女まで死ぬつもりなの?チッカちゃんッッッッッ!!」
ソレは大気との摩擦で真っ赤に燃え滾る程の熱量を持った、隕石のような「カの国」の姿だった——




