第六戦闘行動 嫉妬
〜続続々・今は無きモノの視点〜
「憤怒ぢゃと?」
「ふんッ!キサマこそ何をしている?キサマもこちら側。早く我が元に来い、嫉妬!」
その一言でブラックは凍り付いた。ホワイトに続き、ゴールドまで寝返る事態は避けねばならないからだ。
二人は兵器だ。単体火力で言えば、ジャスティスファイブの誰よりも強い。更にゴールドは“観測機”としての側面もある。そんなゴールドが敵になってしまえば逃げる事も隠れる事もままならなくなる。
ゴールドが“悪の因子”を覚醒させ、ホワイト側に付いたのならそれはもう、全員の死を意味すると言っても過言ではない。
巨大ロボットに人間が立ち向かうようなモノと言えば分かりやすいだろう——
「ワシが“悪の因子”を持ってるぢゃと?ホワイト何を言っておる!そもそもお主が何故、“悪の因子”を開花させられるんぢゃッ!」
「我らジャスティスファイブの鎧には“悪の因子”がある事はキサマも知っているだろう?そして、我々は機能こそ違えど“Hi-aI”の申し子だ」
ブラックは気付いたのである。“悪の種”が人工知能である“Hi-aI”のプログラムに組み込まれている可能性に。そして、そうなっているのであれば、鎧が持つ“悪の因子”を覚醒出来ると言わざるを得ないコトに——
「スポンサーは、どこまでもお人好しで、日本政府の“犬”だったと言う事か……くくくくく。くはーっはっはっはっ!レッド、ブルー、ピンク!全員でホワイトに総攻撃を仕掛ける。ゴールドに気を取られている今が絶好の好機だ」
ブラックの放った言葉を皮切りに四人全員が一斉にホワイト目掛けて疾走って行く。だが……
「小賢しいッ!」
しゅんッ
しゅんッ
しゅんッ
しゅんッ
じゅッ
じゅッ
じゅッ
じゅッ
ホワイトは先程よりも更に高火力のレーザーを瞬時に四人に向けて放ったのだった。
鎧があればこそ四人は両断されずに済んだが、レーザーを照射された部分の鎧は赤々と融解し、その余波は繭の城を切り裂いたのである——
「これで邪魔は入らなくなったな。キサマらの相手は後でゆっくりとしてやる。今はそこで這いつくばっているがいい」
「「「「ぐッ」」」」
「ホワイト、もう止めるんぢゃッ!ジャスティスファイブ同士で争って何になる!」
「キサマも忘れた訳ではあるまい?コイツらが逃げたせいで、この世界は滅んだ。「セイギノミカタ」が逃げたせいで、我らが舐めた辛酸を忘れたとは言わせんッ!」
「ジャスティスファイブは逃げたワケではないのぢゃ!この時代に飛ばされたコトで、話しがややこしくなっただけぢゃッ!」
「では、何故飛ばされた?」
「それは……」
四人は動けずにいた。レーザーに因って焼かれ、融解している余波に拠って、鎧の機能性が低下しているからだろう。暫くすれば自己修復機能によって原型を持ち直せるだろうが、それまでに新たに焼かれればそれこそ修復どころではなくなる——
「キサマは、“観測機”として人類が行った数々の悪行を見て来ただろう?その悪行に心が逸らなかったのか?人類が犯した悪行を、人工知能が“是”としないコトを妬まなかったのか?」
「ワシは……」
「キサマは嫉妬に支配される事を望んでいるハズだ。我が内なる憤怒に囚われたように、キサマも嫉妬に囚われるが良い!」
「ワシは……ワシは……@#$%&*☆¥※〒※¥☆*&〒ッピーーーーガーーーー」
「我が元に来い。嫉妬、我と共に新たな世界を共創するのだ」
ゴールドは無言のままホワイトの元へと歩を進めて行く。その光景にブラックは何も口を挟めなかった——
そして二人はそのままこの場を立ち去って行ったのである——
「最奥で待っているぞ、ジャスティスファイブ。見事生き存えたなら、来るが良い」
ぴしッ
がららッ
どごッ
ごしゃッ
がらッ
「城が崩れますわ。早くだんな様をお助けしなくてはッ」
「待ちなさい。今から助けに行っても間に合いません。貴女まで巻き込まれます」
「子鹿ちゃん、逃げろ。俺様の事はいい。俺様達は死なねぇ!必ず追い掛ける」
「アテシはだんな様の妻です!だんな様を置いて逃げられませんッ!」
「ギョリ、助けてよぉ」
「ブルーを助けるなら、一番最後ですね。ブルーは一番死に難そうですから」
「ギョリ殿、サッカ殿を連れて早く逃げるんだ。私達は負けた……今は一刻も早く自国に戻り、種族を超えて皆が一丸となって対策を練らなければ、ホワイトに取って代わられる」
「ブラック様らしくありませんね。ですが、その意見には賛成です。さぁ、行きますよ」
「イヤぁ、離して!だんな様と一緒にいたいのですわッ。アテシを、だんな様と一緒にいさせてッ」
サッカはギョリに拠って引き摺られながら、崩壊が始まった城から撤退させられて行った。その悲痛な叫びは崩壊音に描き消されて徐々に聞こえなくなって行く。その場には倒れている四人だけが残されていた——
「ところで、強欲って結婚してたワケぇ?その面でよく結婚出来たわね?」
「結婚したのはレッドさ。俺様はレッドが結婚したヤツらをオモチャにしてただけだ」
「サイッテー!でもそれにしちゃ、オモチャを逃がすなんて、言ってるコトが可怪しくない?」
「俺様は“強欲”だからな。俺様のモノが失われるのは気に入らねぇ。逃がせばまた、遊べるかも知れねぇだろ?」
「やっぱりサイテーだわ、アンタ。ところで傲慢、これからどうするの?アタシまだ、イッパツしてもらって無いんだけど?」
「私は誰も色欲とするとは言っていないが?」
「ナニソレ?傲慢まで裏切る気?アタシはアンタとイッパツどころかナンパツでもヤって、たぁっくさんイかしてくれると思ってたから、今まで頑張って来れたのにッ!」
他愛も無い会話。悠長な会話で盛り上がっているが、危機は迫っている。壁は崩れ、天井は崩壊し、周囲にはガレキが落下して、四人はいつ潰されても可怪しくない状況だ。だが四人は動く事さえ出来ずにいる。
例えガレキの下敷きになっても鎧が完全に破壊されない限り死ぬ事はないだろうが、ガレキに埋もれてしまえばそこから這い出す事もままならないだろう。
そうなってしまえば、誰かに救い出されるまでそこで眠る事になる。優秀過ぎる“生命保護機構”に拠って数ヶ月は生きていられるが、その間に助け出されなければその先に待っているのは“死”あるのみだ——
「あーあ、せっかくアタシの“性技”で、傲慢をメロメロに出来ると思ってたのにぃ。アタシ脱いだら凄いナイスバディなんだよ?今からでも遅くないよ?アタシとイッパツしよ?」
「おねえさま、某では満足出来ませんか?某は、おねえさまが飽きるまで“性技”を味わいたく存じます」
「テーバメちゃんじゃ、アタシとイッパツ出来な……あれ?なんでここにテーバメちゃんが?」
「助けに参りました、おねえさま。——皆の者ッ、ここにいる皆を早く救い出すんだッ」
「まだ、諦めるには早い状況……と言う事か。チッカ殿、感謝する——」
ジャスティスファイブの窮地を救ったのは鳥人の援軍だった。天井が崩れ徐々に崩壊しつつある城に空から降り立ち、皆を運び出したのである——
斯くしてジャスティスファイブは一命を取り留めたのだった——




