第四戦闘行動 トリガー
〜続・今は無きモノの視点〜
「ヒャッハー!オラオラどうしたどうしたッ!こんなん弱っちいザコ共じゃ、俺様は止められねぇぜ!」
「レッド、アンタってそんな性格だったっけ?」
「俺様は昔からこうだぜ、ヒャッハー!」
レッドとピンクの快進撃は続いていた。レッドは二丁包丁を両手にそれぞれ持ち、迫り来る蟲族を近寄らせる事無く微塵切りにしながら屠って行く。一方のピンクはボールで自分の周りに寄って来る蟲族を自動迎撃しつつ、これまた両手に持つリボンを自在に操り、目に止まった蟲族を細切れにしていた——
現状、先頭を行くのはイエローであり、イエローが食べ損ねた蟲族を狩り取っているのがレッドとピンク。それに続くのがブラックとブルーであり、ギョリとサッカは二人とゴールドに守られながら先を進んでいる——
向かう先は遥か彼方に聳え立つ、繭を幾重にも重ねた様相の禍々しい城だ——
「着いたぜ。ここが蟲族の王がいる城だな?ってか、イエローのヤツ、先に行っちまったのか?」
「そのようだなレッド。ならば私達も乗り込む事にしよう。だが、ここから先は死地だ。皆、死ぬなよ」
「僕、なんだかダルくなって来たよぉ……ギョリ、どうせだからギョリの思念で僕の代わりに殺って来てよ」
ギョリはブルーに視線を送った……が、やはり効かない様子だったのは言うまでもない。しかしその時、事態は一気に加速していくのだった——
「ハラヘッタハラヘッタハラヘッタアァァァァ!」
「声が近いようだな……。イエローが足止めされているのか?ピンク、先行して手助けを頼めるか?」
「オッケー。ブラックの命令ならちゃんとアタシは聞くから、後でちゃんと必ずイッパツしてねッ!」
だッ
「ギョリ殿、サッカ殿……ここから先、新たな蟲族や王が出て来たとしたら、二人を守り切れる保証は無い……。——レッドとブルーの覚醒は暫く保つのだろう?それならば今のうちに二人は引き返す事も可能だが?」
「アテシは結末を見るまで引きません。アタシのこの命は……だんな様に既に捧げたモノ。もうアテシのモノではありませんわ。それに、だんな様が手放す事はしない筈ですわ。だんな様は凄い欲しがりですもの」
「わたくしも引くに引けません。その奇怪な蟲族を見るまでは何が何でも生き延びますし、見たら見たで帰るまで死ぬに死ねません。帰ってもすぐすぐ死ぬ訳にも参りません」
サッカの言いたい事は分かったが、ギョリの言ってる事はサッパリなブラックだった。だが、二人が付いて来る気概を持っている事だけは承知し、「最低限守れるように努める」と心に決めると歩を進めて行った——
「へぇ?あのイエローが苦戦してやがる。ってかヤツら、随分とけったいなナリしてやがんだな」
「へぇ?アレが新しい蟲族ってヤツぅ?殺し甲斐がありそうね」
シン蟲族はイエローから距離を取り、捕まらないようにしながら闘っていた。更にはイエローの攻撃を躱した後で、確実に一撃入れて離脱するスタイルで苦戦を強いたのである。
イエローに追い付いた二人は加勢しようとしたが、その矢先更に現れたシン蟲族に因って加勢するのは不可能になっていた——
「コイツら意外とヤるわね。アタシのリボンでも捕まえられないし、ボールも躱すなんて」
「オラオラ!ちょこまかちょこまかとッ!」
シン蟲族はゾロゾロと集まりつつあった。この時点で既にジャスティスファイブ一人につきシン蟲族が五匹程度、更にはそれぞれが連携を取りながら闘っている為、一撃も入れる事は出来ないばかりか、逆にシン蟲族の攻撃は受ける形になっていた……が、ジャスティスファイブの面々にそこまでのダメージは無い。そしてまた、ジャスティスファイブは連携などする筈も無い——
「ブルー、広範囲に“脱力”を振り撒くんだッ」
「えぇ、面倒だよぉ。ギョリも手伝ってよ」
「それならアテシが補助しますわ。猛獣戯画!馬と鹿」
「まぁ無いよりはいいか。じゃあ行くよぉ!精技・精鋼雨毒大器蛮精」
「カカ、ナナナン……カカカガ……」
「ダメみたい。堕ちないね」
「いや、充分だ。セット!アルティメットキャノン、三点バーストサンセット!!」
どどどぉん
どどどぉん
どどどぉん
ブルーの“精技”に拠って、多少なりとも行動が鈍くなったシン蟲族に牽制打を与えたのはブラックであり、その牽制打に拠って隙を付いた三人に拠って、群がっていたシン蟲族は一掃される事になった。要するに連携さえ出来ればジャスティスファイブとて強いのである。
ただ自己主張が強過ぎるあまりソロプレイが多くそれが弊害になっていても尚、直そうとしない我の強さがあるだけだ——
拠って連携を取った後の行動は皆が皆、一様にソロプレイである。イエローは一瞬の隙を付いて周囲のシン蟲族を丸呑みにし、レッドとピンクは持ち前の武器で文字通り血の雨を降らせた。
その血は紅く蒼く、凡そ人間らしからぬ色合いをしていたが、ピンクはその血に拠って高揚していったのである——
じゅん……
にたぁぁぁぁぁぁぁ
「あぁんッ!もうサイッコーーーの気分!アタシがこれから解剖して解剖して解剖しまくって、血の沼に沈めてあげるッ」
「けっ、相変わらず気色悪いな、色欲!だが、俺様の分まで奪ったら許さねぇからな」
「そういう事か!ピンクは戦闘行為ではなく高揚感がトリガーと言う事なのかッ!」
ブラックの腑に落ちなかった事が漸く腑に落ちた瞬間だった。イエロー以外のトリガーに対してブラックは、納得がいってなかったと言える。
何故ならば「血を見る」「思念を味わう」「魔術を味わう」などの現象がトリガーだとは到底思えなかったからだ。
“悪の種”は心の内に宿った“因子”であって、“因子”自体が“現象”なのだ。“現象”に対して“現象”がトリガーであるなら、“現象”同士が対消滅する可能性が考えられる。しかしブラック自身、何度もコーの魔術を味わい傲慢に覚醒した記憶がある。拠ってその可能性は無いと感じ取っていた。
こうしてブラックは、“感情”がトリガーであると結論を得たのである。
「感情がトリガーなら、私も覚醒出来る可能性があると言う事になる。だが、魔術がどのようにして感情に結び付くと言うのだ?」
斯くしてブラックは自分にもまだチャンスがあると感じながらも、頭を抱えていた。しかしそんな悠長に構えていられる時間的余裕がある訳も無く、シン蟲族達との戦闘はこれを機に激化していく事になるのだった——




