第三戦闘行動 汚点と罪過
〜ホワイトの場合〜
「ふふふ。完成です。龍人に続き、魔人でも、新たなシン蟲族が。あはははは。待っていなさい、ジャスティスファイブ!必ずや、この恨み……はらしてあげます」
彼の者は一人、歓喜に打ち震えていた。四肢を失った少女から産まれ落ちた新たな生命の誕生に……。これまでの龍人と蟲族を掛け合わせたモノとは違う、新たな生命の息吹に。
龍人のような生まれながらの翼を持たず強靭な肉体こそ持っていないが、魔術を操る事が出来る上に、蟲族特有の防御力の高さと攻撃力の高さを有する新たなシン蟲族。
その新たな種族の母親となったモノは既に息絶え、その表情は苦悶に満ちその見開かれた瞳から垂れ流された涙は、床を盛大に濡らしていたが、ホワイトにそれを看取る感情は無い。
その遺骸に対してホワイトは何の感情も湧いてこそいないが、新たな生命の誕生を目の当たりにした興奮は、自身こそが“神”であると言いたげな表情を物語っていた。
「新たに生み出されたこの種族に、龍人の力を交じ合わせれば……あぁ、何と言う事でしょう!次なる生命の息吹は、更なる完全体へと繋がる序曲を奏でてくれる筈です!——さて、それでは更に新たなサンプルを確保する必要がありますね」
ホワイトは狂気に満ちた表情で虚空を見詰め、血の通わぬ自身の身体を抱き締めて打ち震えていたのだった。
〜今は無きモノの視点〜
「どわああぁぁぁぁぁぁぁあッ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬうぅぅぅぅぅぅぅぅッ!」
「吸引ぢゃッ!」
ひゅぽぽぽぽぽッ
レッドとブルーは地面に叩き付けられる寸前で、ゴールド戦闘機の力によって重力に逆らう事が出来た。ブラックとピンクは持ち前の飛び方で着地に成功したが、既に辺り一面蟲族が集結していたのだった——
「ブラック、奇襲になってないじゃんかよッ」
「レッドが奇妙な悲鳴を上げてたからじゃないの?」
「兎に角、今はコイツらを倒して先に進むぞ」
ジャスティスファイブ四人の前には大地を埋め尽くす程の蟲族の群れ。その中に将軍やシン蟲族の姿は無いが、簡単に通り抜けられる数では無いのは一目瞭然だった——
四人は各々の武器を取り出すと活路を開くべく攻撃を開始して行く——
「だぁりゃッ!敵さん多過ぎだろ?これじゃ、先に進めないぜ。ブラック、得意の斉射で道を作れないか?」
「今はまだ駄目だ。やるならゴールド達が合流してからだな」
ブラックは出し惜しみをしていた訳では無い。レッドが言った「斉射」を行えば周囲全てが焼け野原になる。そうなれば、ゴールドやイエローに被害は無くても、サッカやギョリは痛手を負う事になるだろう——
せめてどの方向から合流しようとしてるかが分かればいいが、もどかしかったのは事実だと言える——
「ハラヘッタァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
「ゴールド達はそっちか!?ピンク、合わせてくれ一気殲滅する」
「ブラック分かったわ。アタシも久し振りに大盤振る舞いしちゃうッ!」
ブラックはイエローの雄叫びによってゴールド達の方向を知る事が出来た。結果、盛大な爆発と共に周囲は焼け野原に変貌し、ゴールド達が向かって来るだろう方角以外の蟲族達は殲滅されたのである——
「レッド、ブルー、ゴールド達と合流するぞッ!」
-・-・-・-・-・-・-
「イエロー、お前の食い意地見せてやるのぢゃッ」
「ハラヘッタァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
ゴールドから解放されたイエローは、一心不乱に蟲族を飲み込んで行った。ギョリとサッカの二人は距離を取った安全な所で降ろされ、ゴールドはその姿を変えていく。制御不能なイエローを追い掛ける形で、三人は後に続いて行ったのだった——
その直後に起こった前方での大爆発はギョリとサッカの度肝を抜いていたが、ゴールドは素知らぬ顔で先行し二人が蟲族と闘わなくても平気なように可能な限り薙ぎ払っていったのである——
「イエロー……なのか?お前、大丈夫なのか?」
「ハラヘッタアァァァァァァッ!」
「レッド、イエローは放っておけ。今は合流するのが先だ!」
「レッド様!」
「サッカ、ここだッ!」
斯くして無事にゴールド達は合流出来た。だが、その直後——
ぶしゅッ
「えっ?サッカ……何を?ゔわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
「見ィィィィィィィィィたァァァァァァァァァァぞォォォォォォォォォォ」
サッカは自分の首を掻き切った。意味が分からない光景としか言えない状況に、その場にいた全員が凍り付いていた——
「何あの女、自分の首を切ったんですけど?マジウケる」
「ブラック、レッドが強欲に覚醒したね。ピンクと自分はどうするのさ?おっと、僕もそろそろやっといて貰わなくちゃ」
ブルーは自分の覚醒状態が解けないようにギョリの元へと向かった。ブラックはブルーから言われた事に対して、方法を失っている今の状況で覚醒する事が出来ないもどかしさに身が震える思いだった——
「子鹿ちゃん、また抱いて欲しくなったのか?」
「だんな様……今はだんな様を必要とされてる方がいるので、だんな様にアテシの血を見せたのですわ」
「俺様を必要……だと?」
「久し振りだな、レッド」
「あぁん?お前は傲慢か?それにあっちにいるのは暴食。怠惰までいやがんのか!色欲はいねぇようだが?」
「ピンクにはそのうち会えるさ」
「まぁそんな事はどうでもいいぜ。俺様のモノにならねぇヤツに興味は無ぇからな。ところで子鹿ちゃん、これはどういう状況だ?」
「「ハの国」を襲った蟲族の王の居場所が分かり、皆で倒しに来たのですわ」
「あぁ、そーゆーことか。俺様のモノに手を出そうとしたヤツにはお仕置きくれてやんねぇとなッ!ヒャッハー、野郎共付いて来い!こっからは俺様が仕切らせてもらうぜッ!」
サッカの首切りから一連の流れで、戦力は大幅に拡大していた。そしてその首切りは、更に思わぬ効果を齎していたとも言える——
とぅんく
「何なのこの感じ?あの女の血を見てから、アタシの中に滾る何かを感じる……」
「あぁ、そっかコレって……そうだった。アタシは何よりも血が好きだったんだっけ……」
ピンクの本性……それは色欲の因子を持っている事で、本人の自我が引っ張られ乖離性障害を併発した事にある。
即ち、乖離性障害を発端に解離し独立したサイコパスの影響を受け、彼女は“快楽殺人者”としての一面を兼ね備えているのだった。
これが当時の日本政府が行った政策による弊害。“悪の種”最大の汚点であり、“悪の因子”が与えた罪過であると言えよう。
この汚点であり罪過はそれこそ“悪の種”を与えられた全ての子供達に影響を及ぼした訳ではないが、少なからずジャスティスファイブの全員には影響を齎していたのは事実である。




