第二戦闘行動 終わりの始まり
〜レッドの場合 其のイ〜
「おいおい、なんだ……アリャ?」
「空を飛んで来ますわね……レッド様、アテシの後ろに隠れていておくんなまし!」
突如として鳴り響いた轟音に俺は単純に驚いていた。この世界……いや、この時代に来てから聞いた事がないジェット戦闘機の轟音を聞いたからだ。
そしてソレは城の中庭に降り立った。
「新王陛下、一体何が?」
「あるじ様ーーッ!ご無事ですかッ!」
「ごしゅじん様、これは何があったんだよ?」
「レッド、なんでサッカお姉ちゃんの後ろに隠れているの?」
なんか、俺の妻の一人だけが冷ややかな視線を向けてる気がしなくもないんだが、俺はそういう性癖はないから安心してくれ。
ってか、この金ピカ戦闘機って、カッコいいって思ったんだが……どうなんだろ?
「迎えに来たぞ、レッド!!」
「ブラック……か?」
「やっほー、レッド。アタシもいるけど?」
「ピンク……なのか?」
金ピカ戦闘機から聞こえて来たのは、ブラックと久し振りに聞いたピンクの声。ブラックはジャスティスファイブの全員がこの時代に来たと言っていたが、聞いた話しと実際に聞くのでは確かに何かが違った。
とは言え、ピンクとの思い出に良い物は何も無いけどな……。
「あの中に、ブラック様がいるのですか?あの変な空飛ぶ箱の中に?どうやって声を発しているのか不思議ですわ」
少なくとも俺は不思議じゃないが、そんな技術を知らないサッカを含めて、エレファやイッマ、アッヌやヌッコは不思議だと思うのは当然だろう。
まぁ、俺としてはそんな技術があるのは知ってるが、どんな仕組みかは知らないから深く突っ込まれると何も言えないんだが、そんな心配を他所に、金ピカ戦闘機からよく知った面々が現れた事で心配は払拭された。
「蟲族の王の居場所が分かった?それ、本当かブラック!」
「あぁ。だからこれからその地に奇襲を掛けに行く。急だが来れるか?いや、来れなくても来てもらうんだが」
「あるじ様、闘いに赴かれるならアタイも一緒に!」
「アッヌ、俺は本当は誰も連れて行きたくはない」
「いやその話しなんだが、レッド……。サッカ殿だけは連れて来てくれ」
俺はなんとなく釈然としなかった。ブラックは何故、サッカだけを指名したんだ?いや、確かに前に来た時にサッカとは面識があるからってのは分かるが、そんなまさかッ!ブラックのヤツ、サッカに一目惚れとか言わないよな?
いや、確かにサッカはいい女だけど、俺には勿体無いくらいの女性だけど、今は俺の妻の一人だ。もし、ブラックがサッカの事を誘惑するってんなら、俺だって出るトコに出ないワケには行かないよな?
「なんでサッカを?敵が強大なら、妾の方が役に立つ筈です」
「エレファ……」
「私は貴女を知らない。それにこれには条件があるのだ。しかし、その条件を伝える訳にはいかない。察して欲しい」
「そうそう、この中に入れるのは、ブラックが認めた人か、アタシよりおっぱいが小さい人だけなんだからッ!」
「ピンク……話しをややこしくしないでくれ」
俺は突然のピンク節に吹き出しそうになっていた。ピンクが言った事を真に受けたのが少なくとも二人いたからだ。だが、俺としてはちょっと胸熱だった。
「よし、これで揃ったな。じゃあサッカ殿は別室でお待ち頂くとして、皆には話しておかなければならない事がある……」
がちゃッ
「あら?先客がいたのですわね?」
「獣人ですか。アナタも誰かの鍵なのですか?」
「そう言うのであれば、水人のアナタも鍵なのですわね?」
「えぇ、そうですね。わたくしの「スの国」とアナタの「ハの国」近い国ではありませんから、わたくしはアナタの名を知りません。聞いても良いですか?」
「そう言えばそうですわね。アテシもアナタの事は知らないですわ。今回の闘いが終わればもう、会う事も無いと思いますけど……名前くらいは覚えておいても良さそうですわね」
斯くして別室に於いても、二人の奸智に長けた策士が自分から名乗ろうとしない闘いを繰り広げていた。
「おいおい、ホワイトにゴールド?俺達が知らないジャスティスファイブだって?それに二人増えたらジャスティスセブンじゃないかッ!」
「はぁ?レッドが頭オカシイのは前からだけど、ジャスティスファイブが五人じゃなきゃいけない理由なんて無いでしょ?」
「@#$%&*☆¥※〒ッ?!ファイブって“5”じゃないのかよ!」
ブラックが「覚醒」以外の知り得る話しを三人にした所、三人はそれぞれ……いや、ブルー以外の二人は……いや、レッドのみが衝撃を受けた様子だった。
そもそもブルーは怠惰であってブルーではないからそんな事を気にしていない。ピンクはなりたくて戦隊ヒーローになったワケではないので、それが根底にある以上、「我関せず」なのは当たり前だった。
更に言えば「覚醒」の事を伏せている手前、「イエローは別室にいる」の一言で気にもされていない。
「ワシらは元々、兵器として産まれるハズぢゃったからな、頭数には入っておらん。ホワイトもワシも、後付けでそうなったに過ぎん。だが、ワシ同様にホワイトも兵器としての側面を持っておる。ヤツの火力は随一ぢゃ。死にたくなければ心して掛かるコトぢゃな」
「なぁ、ホワイトはどんな武器を持っているんだ?」
「私が見た、ホワイトの武装は高出力のレーザーだ。人体を軽く両断出来る程の高出力さだった」
「それって、アタシ達の鎧も切れちゃうワケ?」
「いや、鎧を両断出来る程のレーザーではなかったハズぢゃ。それに、もしもお前達の鎧に穴が開こうモンなら、お前達は即座に死ぬのでな、気を付けるのぢゃぞ」
「俺達は鎧と一体化してるんだから、そもそも穴が開いたら死ぬよな?」
ブラックが話した内容の中に、「鎧と一体化してる件」は含まれていない。何故ならばその事も「覚醒」に絡む案件だからなのは、言うまでもないだろう。
「ところでブルー。お前本当にブルーか?」
「ブルーは昔から陰キャだったし、こんな感じじゃなかった?」
「僕はこの世界に来て、色々と疲れてるんだ。そっとしといてよ」
「そうなのか?体調悪いのか?それなら……」
「レッド、雑談はそこまでだ。そろそろ目的地に着く。準備に掛かってくれ」
「えっ?準備?なんのだ?」
「そんなの決まってるじゃない!飛び降りる準備よ!」
「マジかよ……こっから飛び降りるなんて、聞いてないぞ?」
「そりゃ、言ってないからな。それに奇襲なら悠長な事をしてる暇は無い。ゴールド、レッドとブルーの対応と別室の二人、それとイエローを頼めるか?」
「それじゃ、ピンク。ハッチを開けるからレッドを突き落としてくれい。ブルーもレッドが落ちたら続いて行ってくれい」
「ななな、本気か?奇襲以前に自殺になるんじゃ……いや、これじゃ殺人だろ!」
「いいからとっとと逝けッ!」
どんッ
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ」
こうして上空より突き落とされたレッドの悲鳴が、これから始まる最終決戦の開幕を告げる事になったのである。




