第二十三戦闘示唆 ヒーローボード
〜ブラックの場合 其の拾捌〜
「カの国」を治めるチッカとの会談は概ね順調に行った。それこそピンクの邪魔が入らなければ、一時間も掛からなかっただろう。しかし、本来であればピンクの協力を取り付けるのが目的だった訳だが、チッカがいた事でスムーズに話しが運んだとも言える。
こうしてこの世界に飛ばされて来たジャスティスファイブ全員と会う事が出来、話しをする事に成功した私は一度、ゴールドの元に戻る事にした。
「カの国」から出ようとする私を文字通り必死に身体を使って止めたのはピンクだったが、そんなモノで止まる気はサラサラない。ピンクは最後までよく分からない事を言っていたが、最終的には無視したから少しは反省してくれる事を切に願っている。
「もし良ければこのまま「カの国」で目的地に向かう事も出来るが?その方がピンク殿も喜ぶのなら……」
「チッカ殿。これ以上、ピンクを甘やかすような事は、私の身が保たないのでやめて頂けると助かる」
「ははは。ピンク殿は激しいからな」
私は発つ前に少しだけチッカ・ノーアルと二人で話しをした。何故二人でかと言えば、ピンクは色欲と記憶の共有が一部しか出来ていないからだ。だが逆に目の前のチッカが強化された個体だと見抜いたからこそ、二人で話しをする必要があった。
「ピンクの“トリガー”をチッカ殿はご存知なのか?」
これから先、ホワイトとの闘いに於いて“トリガー”の存在は重要になる。レッドにブルーそれにピンクはその“セイギ”を使ってその国の人達を強化している。それは即ち、“トリガー”を握られていると言える。その点、私は“トリガー”を失ったとも言えるだろう。
「ピンク殿は闘いの最中に突然豹変するのだ。そしてそれをきっかけに“セイギ”を使う事が出来る」
「闘いの最中に?」
「あぁ。だがそれがどんな闘いでも起こる訳ではなさそうだ。そこはよく分からないのだがな」
それならばピンクは、ピンク一人をホワイト戦に狩り出せれば問題は無いだろう。レッドを握っているサッカや、ブルーを握っているギョリのような存在は不要と言う結論になる。
その方が「人質」に取られる心配をしなくても済むので、安心と言えば安心だった。
しかし“トリガー”とは一体何なのか……それは依然としてよく分かっていない。
斯くして私はゴールドとイエローがいる北の大地へと再び空を駆けたのだった。
「無事に皆の所には行けたようぢゃな?」
「観測していたのか?」
「念の為ぢゃ。ホワイトが妙な行動を起こさんように見張るついでに、お前の動きも観測しとっただけぢゃ」
「なにっ!?ホワイトの位置が分かるのか?」
ホワイトの位置が分かるかどうかは、今後の作戦課題の一つであって、重要かつ最大のキーだ。もしもそれが分かるのであれば、奇襲による最大のメリットを享受出来る。
「そりゃあ、観測機ぢゃからのぉ。それにホワイトを取り戻す事が出来れば……更に皆で協力すれば……お前達は元の時代に戻れるかも知れん」
「なにぃっ?!戻れる……のか?」
「恐らく……ぢゃ。しかし戻った所で、イエローは元に戻せんかも知れんがのぉ」
「だがそれでも……もしも戻れるなら、アクトウダンを壊滅させこんな世界にならないようにする事だって……」
「戦隊ヒーローを捨て、アイドルになろうとしておった男のセリフとは思えんのぉ」
このゴールド、人が……いや、ロボが悪い。正確にはインストールされているAIのタチが悪そうだ。しかしそれは余談として置いておき、この時代から世界が崩壊する前に戻れるなら、やらねばならない事は明白だろう。
そこまで私は異常者ではないと自負している。
「どうやったら元の時代に戻れるんだ?」
「それはその時に教えるから、今はそんな事よりもホワイトを取り戻す事が先決ぢゃろ。淡い期待を持ってても、裏切られたら損するだけぢゃて」
「分かった。それで、ホワイトは今、どこにいるんだ?」
「日本の都道府県の頃の地名で言えば、宮城県と秋田県、それに岩手県にまたがる……」
「栗駒山かッ!?」
「お前はそっちの出身ぢゃったか?」
「いや、それは違うが」
私の行く場所は決まった。次は再びジャスティスファイブの面々と会い、皆を引き連れてそこにどうやって行くかが問題になるだろう。
鎧を着てる我々だけならいざ知らず、“トリガー”を握る者達も連れて行く事を想定するならば、移動手段が必要になるのは目に見えている。
「では、行こうかの?」
ゴールドが発したその一言に因って私は目を疑ったのである。いや、確かにゴールドは兵器として開発されていたと話していたし、結果として小さくなったとも言っていた。それだったら、兵器としての機能など残されていないと思うのが常ではなかろうか?
しかし目の前のゴールドは質量保存の法則を嘲笑うかのように、その姿を変形させて行った。少なくとも文明レベルが低いこの世界に似つかわしくない姿へと……だ。
「これぞワシの真骨頂。ゴールドボード飛行形態ぢゃッ!どうぢゃ?カッコいいぢゃろ?」
レッドなら「カッコいい」とすかさず言うだろう。
ブルーなら「乗ってみたい」と必ず言うだろう。
ピンクなら「それって本物の金?」と絶対言うだろう。
イエローなら「食べれるモノにして欲しい」と多分言うだろう。
私なら……「金のような重たい金属が飛べるのか?燃焼効率の為にも軽量化した金属の方が……」と当時なら言ったかも知れないが、今となっては有難かった。
カッコいいと思うかは別だが……。
「中は意外と広いんだな」
「お前達ジャスティスファイブ五人全員のコックピットと、要救護者を十五人までは収容出来るスペースがある」
「スポンサー、どこまで企業イメージを大切にしたかったんだ?」
「それは知らん。だが、スポンサー企業の戦隊ヒーロー初参戦ぢゃったからな。気合いの入れ方は他の企業とは違ってたんぢゃろ」
私は少しだけ、スポンサーが不憫に思えた。日本の悪政に因って、せっかく輩出した戦隊ヒーローは瓦解し、世界が滅びる事からも救えず、更にはそれを助長させたようにも映る。
もしも私がスポンサーなら、恨み言の一つも言いたくなるだろう。
しかし逆に私達に対して随分と期待をしていてくれたと感じる事も出来た。ここに詰まった技術の粋を見ればそれが容易に分かる。
期待も何も無い者達に、これほどのモノを与える事は絶対に無いだろうからだ。




