第二十二戦闘示唆 空の飛び方
〜ブラックの場合 其の拾漆〜
「スの国」の女王・ギョリは利害の一致から協力を快諾してくれた。ただ私は、その言葉に信を置いてはいない。
ギョリが何かを企んでいると、私の心が警鐘を鳴らしていた。まぁ、私がギョリの立場なら同じ事を考えるのは明白だった事から、似た者同士と思えば次の手は容易に想像がつく。故に信を置けなかった。
拠って私の唯一の杞憂はこの国を無事に出られるかどうかだった。私なら国から決して出さず逃さず、捕らえてブルーと同じ状態にすると思ったからなのだが、本当に杞憂に終わったようだ。
まぁそれは、協力をするかどうか以前の問題と言えるだろう。
「ギョリ様、あのブラックを本当に行かせて良かったのですかい?」
「えぇ、構いません。恐らくあのブラックは「マの国」を支配し、そして滅ぼされたのでしょう。あの者の瞳には復讐心が宿っていました。それならばこの国に留め置くのは弊害になります」
「アイツが“魔王”だったと?」
「クジはそんな事も見抜けなかったのですか?それでよく四聖剣が努まりますね?」
「この身は戦闘技能で四聖剣になったワケですからね。ギョリ様みたいに、悪知恵が働かないんですよ」
「また、息の根を止めて欲しいようですね?——まぁ、それは置いといて、ブラックがブルーと同等の力を持っていて、あの頭のキレがあるのなら、国を従えていても可怪しくはないでしょう?それに、ブラックは通常の侵略ならと言いましたよね?」
「はぁ……それが何か?」
「ブラックは「ハの国」を真っ先に滅ぼそうと考えていた……そして、その準備をしていた。と言ってるようなモノでしょう?そんな事も分かりませんか?」
「はぁ……この身にはよく分かりませんが、ギョリ様が仰るならそうなんでしょうね?」
「「マの国」は火山の降灰に因って食糧不足が顕著な国だと考えられます。それならば真っ先に解決すべきは食料問題。自国の食料問題を解決する手っ取り早い考えは侵略ですから」
「そんなモンですかね?」
ギョリとクジはブラックが去った後で話しを重ねていた。ギョリとしては、ブラックもブルー同様に手元に置いておきたかったのは事実だが、自分と同等のキレ者を手元に置く危うさを熟知していたからこそ国を出て行く事を容易く認めた。
だが、ギョリとて他国の侵略を諦めた訳ではない……が、それを表に出すタイミングを計っていると言えるのかも知れない。
「さて、次は空の上にある「カの国」だが、果たして無事に辿り着けるのだろうか……。大地からでは見る事も出来ない国など、空から探すより本当に方法が無いな」
私は途方に暮れる事はしていない。これまで二度、実際に空を飛んでみて舵取りの方法は掴めつつあった。だが、広大な空を漂っている「カの国」を自力で探せるかどうかは、運次第と想像に難くない。
「まぁ、レッド風に言えば「なるようにしかならない」だったか?今はその意見に賛成しておこう。セット!アルティメットキャノン!!フルファイヤッ!」
私の空の飛び方。それは自分の武器を最大出力で放出した力を推進力として飛び立つ方法だ。こんな方法で空が飛べるとは思ってもみなかったのだが、ジャスティスファイブとしてアクトウダンと闘っていた時から、武器の出力が強過ぎると思ってはいた。
だからこそこの時代で実際に空を飛べた時には驚きを隠せなかったし、もしもスポンサーに物言えるのなら出力調整を依頼すると決めた。
流石にアクトウダンと闘っている時に空を飛んだら、それはそれで大問題になるだろうからだ。まぁ、元の時代に戻れるかどうかは知らないが……。
私は轟音を立て空を飛び、ピンクがいるであろう「カの国」探した。実際に私の命令で「カの国」を探したコーが描いた地図は役に立たない。画伯だからと言うのもあるが、空を自在に飛ぶ国に対して、行き方なぞ無意味としか言いようがないだろう。
私は実際に長期戦になる事を予感した訳だ。だが、飛び上がり厚い雲を突き抜け、見晴らしの良い状態になった所で、遠くの空に黒く小さな点を見付けた時には心が踊る思いだった。
「アレが「カの国」……か。こんなにも早く見付けられるとは、僥倖だな」
こうして私は舵取りを入念に行い、空飛ぶ島に向かって行ったのである。
「チッカ様、敵襲……でしょうか?物凄い勢いで近付いて参りますが……」
「いや、恐らく違う。あの迫り来る気配は、ピンク殿に近い。ピンク殿と同等の実力なら単機で奇襲もあり得るだろうが……。まぁそうであるなら誰も敵う者はおるまい。——テーバメ、ピンク殿を呼んで参れ」
「かしこまりました。おねえさまを直ちに呼んで参ります」
しゅたッ
「さて、勝手に入国してしまった訳だが、手荒な歓迎にならなければ良いが……」
「貴殿は手荒な歓迎を所望かな?」
「私はこの国に訪れる危機を伝えに来ただけだ。手荒な歓迎など望むまい」
「それならば良い。余の名はチッカ・ノーアル。貴殿はピンク殿の知り合いか?」
「やっほ〜ブラック!久し振り〜」
私は緊張した空気を返せと言いたくなった。いや、それだけだ。昔からこの女はそうだ。自分勝手で空気が読めないピンクに拠って、これまでにも段取りとかそう言ったモノ全てがブチ壊された記憶がある。
しゅたッ
すたすたすた
だきッ
「あぁん、本物のブラックだぁ!この世界でもやっぱりイ・ケ・メ・ン!ねぇ、ブラック。アタシとシよ?今すぐシよ?とっととシよ?」
「ピンク離せ。そんな事をしている場合じゃない」
「この国ってイケメンがいなくって、アタシのコ・コ・のムズムズが止まらないの。お願い、イッパツだけでいいからシよ?昔みたいにアタシを好きにシて?」
「昔も何も、お前とシた事は無いし、今もこれからもする気は無い」
本当にこの女には困り果てる。一度だけ鎧を脱いだ私の姿を見た時からこの調子だ。黙っていれば勝手に私の身体を弄り、私の手を掴んで自分の胸に股間に押し付けようとする。
自分から触ろうモノなら既成事実と言ってくる手合いだから、私が出来る事は言葉で制止を促す以外にない。
その前に私は女性を見た目で判断しないが、ピンクの素顔と言うものを知らないし、素性が分からない女性を相手にしようとは昔から思ってもいないのだ。




