第十七戦闘示唆 キンピカ
〜ブラックの場合 其の拾弐〜
「全く、何をやっておるんぢゃッ!仲間内で争うなんざ、「セイギノミカタ」のする事ぢゃないわいッ。おいっ、聞いておるのか?」
「七人目のジャスティスファイブ……なのか?」
巻き上がったモノ全てが再び地面の上に降り積もると、そこには大人しくなったイエローの首根っこを掴み、まるで仔猫を叱っているような金色に輝くヒーローがいた。
私はその姿を見て咄嗟に、その金色がホワイト同様ジャスティスファイブの七人目だと直感したのだった。
「貴方もジャスティスファイブ……なのか?」
「んほ?あぁ、イエローと争っておったのは、ブラックぢゃったな。お前さんにも言わなきゃならん事があるッ!」
「イエローは自我を失っていた。だから、闘いたくなくとも闘わざるを得ない状況だった」
私はなんとなく、金色ヒーローの話しが長くなりそうな予感があった為、出鼻を挫く事にした。そのお陰か、金色ヒーローは「言わなきゃならん事」とやらを飲み込んだらしい。
「そういう事ならノーカンぢゃな。ワシはトウチョウゴールドぢゃ。気軽にゴールドと呼んでくれぃ」
「やはり、ゴールドもジャスティスファイブなのか?」
「正確には違う……が、結果的にジャスティスファイブになった……。と言うのが正解ぢゃて」
「結果的に?それは一体……」
「ワシとホワイトは元々、兵器として開発される予定ぢゃった」
私はさぞかし驚いていただろう。ゴールドが発した言葉にはそれくらいの衝撃があり、冷静ではいられなかった自信がある。
「待ってくれ!兵器と言うからには、人間では……ないのか?」
「何をバカな事を言っておる!人間が何千年も生きていられるワケが無かろう!そもそも、お前達ジャスティスファイブは何故に二十二世紀から姿を消した?何故にこの時代に生きておる!ワシはそっちの方がよっぽど不思議ぢゃて」
「何を……?やっぱりここは……この世界は……」
「そうぢゃ。ここはお前達が暮らしていた“地球”であって、お前達が暮らしていた頃の地名で言えば“日本”ぢゃ」
完全に言葉に詰まってしまった私に対して追い打ちを掛けるような言葉を発したゴールドだったが、その事にはもう既に気付いている部分がある。
あの地図を見た時から……。
ハージュンが作成した地図には陸奥湾と思しき内湾と、鳥の足を思わせる半島の先に函館山と思しき山が描かれていた。他にもそこに至るまでに縦断する形で山があったり、山の北側の拓けた陸地の先にある海など、日本地図と似通い過ぎている違和感があったのだ。
更にオーマが作成した「スの国」に向かう地図。二つを合わせた事で浮かび上がったのは日本の本州全域と言える。コーが作成した画伯地図には四国と九州らしきナニカが描かれていたから、画伯部分を考慮してもここが日本である事は想像に難くなかったのだ。
だからこそ私が掛けられた追い打ちは、「何千年」や「時代」という“言葉”であり、この日本は私達の生きていた時代より遥か後の未来なのだと悟ったからだ。
「私達が何故、この時代に流れ着いたのかは分からない。気付いた時にはここにいたからだ。だが、ゴールドはこの時代に至るまでの全てを知っているのか?」
「そうぢゃな。お前達が消失した後から、ワシが眠りに付くまでの間。そして、ワシが再び目覚めてからの事は分かる。だから全てではない。しかし観測機としての記録は残っておるから、掘り返せば今までの全てを知る事は出来る。長くなるが、語ってやろうかの?」
「場所を移す必要は……あるか?」
「ホワイトの事か?それならば大丈夫ぢゃろ。それに、この辺りに蟲族はおらん。お前達を害するようなヤツはおらんて」
そう言ったゴールドは私とイエローを交互に見ていたが、イエローは気を失っている様子だ。今の所、暴れる気配も無い。
このまま意識を取り戻したら再び襲って来る可能性は否めないが、その時は二人掛かりで取り抑えれば問題は無いだろう。
「ワシとホワイトは本来であればお前達、“多分戦隊ジャスティスファイブ”を補佐し、いずれより強大になるであろうアクトウダンの脅威を和らげる為に開発が進められた兵器ぢゃったワケぢゃが、お前達は忽然と姿を消した。その鎧と共に……な」
「……」
「スポンサーは必死になって探したんぢゃよ、ジャスティスファイブの面々を」
「待って欲しい。私達はそのスポンサーから……」
「皆まで言うな。分かっとるわい。ぢゃからワシの話しを最後まで聞け」
得心が行かなかった。自分達の都合で解散させておきながら、探すなんて都合が良過ぎる。私の顔は不服と不満で支配されていたからもしれないが、それをブチ撒く事は止められてしまった。
「スポンサーもお国には勝てなかった……と言うコトなんぢゃよ」
「待ってくれ。何故、国が……日本が出て来る?戦隊ヒーローは裏で国が管理しているとでも言うのか?」
「そぉぢゃないわい。急かすのぅ……。戦隊ヒーローは協会が認めればなれるし、資格が必要でもない。資格が問われるのはスポンサー方ぢゃ。ぢゃが、お前達ジャスティスファイブは違う。お前達は“特別”なのぢゃ」
「私達が特別……?」
「お前達五人の中に眠る力……それに対して身に覚えがあるぢゃろ?特にブラック……お前さんなら」
私は納得した。ゴールドが言おうとしている事に心当たりがある。他のメンツがその事を知っているかは分からないし、話した事も無い。だが確かに心当たりがある。
私同様に、今は眠っているイエローも確かに“覚醒”していたからだ。
「お前達は国が悪の組織を根こそぎ壊滅させる為、秘密裏に実験を重ねて造り上げたサンプルで、これまた秘密裏にスポンサーに払い下げた結果……と言えば分かって貰えるかのぉ?」
「私達がサンプル……?いや、待ってくれ。そんな実験に付き合った記憶は無い」
「そりゃそぉぢゃ。正確にはお前達自身に直接何かをしたワケぢゃないからのぉ」
「ゴールド、意味が分からない。私達は何をされたんだ?」
「これに見覚えはないかのぉ?」
ちゃぷんッ
ゴールドはそう言うと一本の液体が入った小瓶を私に見せた。私はその小瓶に見覚えがある。そう、それは子供の時から定期的に摂取していた栄養ドリンクだからだ。
「これには“悪の種”と呼ばれる因子が入っておる。その種が発芽するかはその子供次第。発芽条件は分かっておらず、発芽時期は概ね十四歳前後……。それを国はバラ撒き国策としたのぢゃ。表向きは子供の成長を促す補助栄養ドリンクと称して……な」
「そんな事をして、何になる……?」
「日本の国民はバカとしか言いようの無い民族ぢゃ。貰えるモンならそれがゴミでも喜んで貰う。ぢゃから当時、対象となる子供を持つ親は喜んで貰いに行ったようぢゃ」
「だから、それに何の意味がッ!」
「あったんぢゃよ。“悪の種”を発芽させた子供に、“悪の因子”をより強める鎧を着させ、悪の力を以って悪の組織を壊滅させるダークヒーローにする構想……と言うモンがのぉ。まぁ、そんな鎧を本当にせっせと開発したスポンサーもスポンサーだと思うんぢゃが……企業努力と言うのは悲しい性なのかのぉ」
私は目眩がする思いだった。それが本当なら本当の“悪”は日本と言う国であり、私達は踊らされていたと言う事になるからだ。




