第十三戦闘示唆 火山と砂漠
〜ブラックの場合 其の捌〜
「魔王陛下、四王剣が一人ハージュン・テンマー罷り越しまして御座います」
「魔王陛下、コー・ジターマご用命により、参上いたしましゅ……ましたです」
「オーマ、ご苦労だった」
「いえ、あなたの為ですから、造作もありせん」
「さて、呼び立てた皆に遣いを申し付ける。ハージュン、お前は北に行ってもらいたい」
「北……ニムル・ホルネンで御座いますか?」
ブラックはジャングルこと「ハの国」にレッドがいる事を知った。拠って他の国にも“元”ジャスティスファイブの面々がいると考えたのである。
「ハージュンには北の大地に向かってもらう。北の大地には龍人の国があると言っていたな?そこに、私と同じような姿をした者がいるかを探せ。更にはその道中で地図を作ってもらいたい」
「地図……で御座いますか?」
「今後、本格的に侵略行動を起こす際に必要になるからだ。行軍ルート、野営可能地、食料の確保が出来そうなポイントなどを明記したモノを、北の大地に到達するまでに作って欲しい」
「かしこまりました、仰せのままに遂行してみせましょう」
——北の大地「ユの国」に於けるジャスティスファイブ探しと、そこに至る地図作りをハージュンに——
——西の砂漠「スの国」に於けるジャスティスファイブ探しと、そこに至る地図作りをオーマに——
——南のお花畑「カの国」に於けるジャスティスファイブ探しと、そこに至る地図作りをコーに——
各員それぞれにブラックは指示を出し、指示を出された全員が出発して行った。
ブラックは誰もいなくなった玉座の間で一人物思いに耽っていた。
「レッドが「ハの国」にいて……あの様子ならばそれなりの要職にいる可能性も考えられる……。だったら、わざわざ侵攻せずとも食料の目処は立つのではないか?」
ブラックはそんな事を呟き頭を横に振った。もうゲードゥが「ハの国」と事を構えている。この現状でそんな交渉など成立する筈がない……と。
「国政とは、なかなか難しいモノだな」
それから数日が経った頃、遣いに出した者達は各々戻って来ており、ブラックは驚愕の事態に陥る事になる。
「ハージュン……それは本当の事……なのか?」
「はい。もう既に龍人族の国、「ユの国」は滅亡しておりました」
「何故滅んだと結論付けた?」
「街や城に龍人の姿は無く、付近に遷都した形跡も御座いません。家屋の中には食料や水などが残されており、城の中には放置された武器や焼け焦げた壁など、何かしらの戦闘行為があったものと推測されます」
「北の大地へ、蟲族は侵攻しない……そうであったな?」
「はい。その為、城壁や城門などはありません。龍人は農耕や酪農によって食料を自給していたらしく、それらも残されたままになっておりました」
ブラックは解せなかった。街や城に崩壊の痕跡は無く、戦闘痕があったのならば災害や天災の可能性は無い。だが、戦闘痕だけと言うのも可怪しい。
国家が滅びるような惨劇があったのなら、躯の一つ、血痕の一つも残されていない事は不可解過ぎた。
そして、更に不可解なのは、ハージュンがその道程で作った地図だった……。
「コーが行った「カの国」には、桃色の者がいたと言っていたな?」
「はい、魔王陛下。鳥人は目が良く、潜入には手間取りましゅ……たが、確かに魔王陛下に似た姿で桃色の者がおりましゅ……ましたですッ」
「ふむ、それならば……と言うか、これは地図……なのか?」
ブラックはコーが描いた画伯な地図で呆気に取られていた。ハージュンが描いたモノの後に見た事でより一層、画伯度は高く思えた。
そしてピンクがどうやって、空に浮かぶ城に行ったのかは分からなかった。謎は残っているが、ブラックはピンクなら手玉に取れそうな予感がしていたのは事実だ。
だが、侵攻するとなると、どうやって空飛ぶ城を攻めるかと言ったその手段は皆目検討も付かない。
「最後はオーマだな。「スの国」の様子は如何がであった?」
「はい、あなた。先に「スの国」の現状ですが……。わたしが行った「スの国」では内乱が起きておりました」
〜ブルーの場合 其の“ Ⅶ ”〜
「ほう、クジ……わたくしに刃を向けると?」
「えぇ、ギョリ様。この身はもう、ギョリ様に従いたくないんですよ。だから反旗を翻さしてもらいますねッ」
ある日突然、クジはギョリに向けて刃を向けた。それはブルーとの取り引きであり、利害が一致した結果だった。
「へぇ、キミ……見ない顔だね?それになんだろう……どこか懐かしいニオイがする」
「(気配を消していた、わたしに気付くなんて……)」
「キミはどうやって、ここに入って来たの?ここには、ギョリが一緒じゃないと入って来れないハズなんだけど?」
「(あの方の依頼は既に達成出来た。気付かれた以上、早々に退散するのが得策ですね……)」
「あの方って誰?」
「(ッ!?心を読んでいる……の?)」
「そうだよ。キミの心は防御が薄いから、クジより分かりやすい」
ブルーが隔離されている離宮に忍び込んだのは、ブラックから遣わされたオーマである。
オーマは変化の魔術を使い、水人族の姿を写し取ると、そのまま怪しまれる事無く街に潜入した。
更にオーマはブラックの“聖技”に拠って新たに得た魔術を使い、この国に居座る違和感が離宮にある事を知り、そこに向かった。
離宮の扉の鍵開けなど、オーマの魔術の前では造作も無かったと言える。
「キミは僕を殺しに来たのかな?それとも、僕の力が欲しいのかな?」
「わたしはただ、アナタに会いに来ただけです。会えたのでわたしの役目はこれでおしまいです」
「そうなの?それじゃあ、ゆっくりしてってよ。これから、面白いショーが始まるからさ。それにショーが終わるまで、ギョリは来ないから安心だしね」
「面白い……ショー?」
「そうだよ。ギョリvsクジの対決さ。ギョリもクジも、僕が強化してあげたんだ。二人とも僕の最高傑作。僕が作り上げた二つの作品の内、どっちが強いかを決める最終決戦。二人にはそれぞれ相手と闘う理由があるから、それをつついて刺激してあげれば、勃発するのは目に見えているでしょ?」
「アナタ、意外といい根性してるんですね?」
「褒められると照れるなぁ。キミにも見えるようにしてあげるから、終わるまで楽しんでいってよ!その後は帰るのを引き止めたりはしないよ」
ブルーはただ、興味を持ったからオーマをこの場に留めようとしただけだった。それくらい、この場に入って来た闖入者に興味が湧いた。
この離宮はギョリの命令に拠って、誰であっても立ち入る事は許されていない。故にギョリの命令に逆らう水人族の皮を被ったナニカに、大変興味を持ったのだ。




