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戦隊ヒーロー異常アリ!?  作者: 酸化酸素
転機は天気と共に

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第八戦闘示唆 タベスギイエロー

〜イエローの場合〜



 多分戦隊ジャスティスファイブのイエローこと、タベスギイエローは戦隊解散の憂き目に遭った後、紆余曲折を経て郷里に帰る事にした。

 自分から求めて戦隊ヒーローになった訳ではなかったが、自発的に「辞める」のと、「辞めさせられる」のでは心に刺さった棘は後者の方が深く、イエローは「無気力症候群」とでも言える状態に陥った事を発端として、田舎に引っ込む事を選択したのである。




 「過疎地域の限界集落」その言葉は二十二世紀の日本に於ける地方自治の終焉を招いて行った。全人口の八割が都心や発展した街に住む事を“是”とし、二十一世紀から問題視されていた国内の人口減少は過疎地域の拡大に努め、限界集落は日本全域にまで広がってしまっていた。

 当時の政府は様々な政策を打ち出し、人口減少に歯止めを掛けようと藻掻いたが、自分勝手な政治家が作る的外れな政策に因って地方自治は衰退の一途を辿り、二十二世紀になると財政破綻を発表する市区町村も跡を絶たなかった。



 拠ってイエローが幼少から過ごした郷里は、一昔前まで数万人規模の人口を有する街だったが、現在では限界集落の大波に飲まれている真っ只中にあり、急激に人口が流出した結果、最盛期の1/100以下になるなど人口減少の憂き目を見ていた。

 斯くして急激な人口減少は、財政を逼迫させるだけでなく、様々な問題をそこかしこに浮き彫りにさせたのである。



「たかだか数年離れていただけなのに、家が随分と減ったんだな……店も失くなってるし、顔見知りもほとんどいなくなってる。家()()は残ってたけど、いつの間にか周り近所は更地になってるし、実家も買い手が付かないまま放置って感じだったな……」


 頼りにしていた実家の玄関には「売り家」の貼り紙が貼られており、庭は辺り一面の雑草畑となっていた事から家族がこの街を離れて長い月日が経っていると実感させられた。

 イエローは途方に暮れる余り、幼少の頃に駆けずり回った山にある、少し大きめの岩に腰を掛け、寂しくなった街並みを見下ろして現実逃避をしていたのだった。



「ねぇ、オジサン……誰?そこ、うちのお気に入りの場所なんだけど?」


「オジッ?!いやいや、おいどんはこれでもまだ20代……」


「おいどん?何それ?変な言葉使う()()()()。いいから退いてよ」


 最近のガキは年上に対して、敬語も使えないのか……。なんて事を思ってもみたけど、いくら注意したところで()()()()意味は無いと思う。

 それにこんなに人が減った街に、小学生くらいの子供がいるのは貴重だとも思うし、逆に下手な事を言えばそれはそれでカドが立つだろう。

 だから、おいどんは素直に座っていた岩を譲り、山を降りて行った。



「あれ?オジサン、なんでうちの家にいるの?まさか、うちが可愛いからってうちの後を付けて来たストーカーなの?大変ッ!ママに言い付けてケーサツ呼んで貰わないとッ!ママーーーッ」


「はぁ……なんでこうなった……その前に後を付けて来たのなら先に家の中にいるのは……って、そんな事どうでもいいか」


 おいどんは実家が売りに出されていたから、頼りにする事が出来ず、久し振りに会った顔見知りを頼るしか無かった。

 実家の家族がどこに行ったのかは上京してから連絡を取っていなかったおいどんが悪いから何も言えないが、いつまでもこの家にお邪魔してると、本当に警察を呼ばれそうで怖い。


 しかしそんな事は杞憂だった様子で、自称可愛い女の子は何故か、おいどんに懐いてくれた。

 名前は夏蜜(なつみ)、おいどんは特別に「なっちゃん」と呼んでいいと言われたので、そのありがたさを享受する事にした。


 その反面、「顔見知り」と言うだけでいつまでもこの家を頼りにするのは悪いとも思っていた。だから少しばかりの生活費を、今まで貯めてた貯金を切り崩しながら入れさせてもらって体裁を保ちつつ、おいどんは慎ましやかに生活し、得られた小さな幸せに満足する事にした。

 いずれは自分の進む道を探さなければならないが、今はこれで良かった。「無気力症候群」が少しでも快方に向かってくれる事を祈りながら、小さな幸せに満ち足りていた……ハズだった。



 あの日の夜までは……。




「な……なんだコレ?なんで、街が燃えているんだッ!」


 おいどんの眼下に広がる小さな街は激しく燃えていた。


 ——おいどんはその日の朝、久し振りに連絡を取った家族の元へと行った。事情が知りたかったからだ。なんでこの街を皆が捨てたのか、それが知りたかった。

 生まれ育った故郷を、そんな簡単に捨てられるなんて思わなかったからだ——



 ——結果は散々だった。街の皆はお金に負けたと聞いた。ここまで急速に人口が減った理由は、どっかの誰かが意図的にお金をばら撒き、そのお金に釣られた結果、皆は街を捨てた。それが急激な人口流出に繋がったらしいと言う事だった。

 財政破綻する寸前だった街に大量の資金を投入した結果、人が街からいなくなり完全に財政破綻した形になる。

 それこそ蜘蛛の子を散らすように人は近隣の都市部へ移住したようだ。ばら撒かれたお金を握りしめて……。


 だからこそこの街はもう既に行政が機能していない。拠って消防も警察も駆け付けない。要するにこの街は国から「見捨てられた街」になっていた。


 その事に気付いたおいどんは実家から逃げ出すように街に帰って来たんだが、思ったよりも時間が掛かり漸く辿り着いた時には、夜の帳に逆らうように街は赤々と燃えていた——



「なっちゃん……どこだ?どこにいるんだ?なっちゃんッ!返事をしてくれッ」


がらッ

 どががッ


「そんな……なんで、こんな事に……」


 おいどんは燃え盛る家に辿り着くと、大急ぎで玄関をぶち破って、なっちゃんの部屋に向かった。

 火が回ってから、もうかなりの時間が経っているのかも知れない。床も壁も天井も焼け焦げて崩れ、更には煌々と燃え盛る炎に邪魔されて先へ中々進ませてくれない。おいどんの心に暗く淀んだ焦りだけが募って行く。

 それでも熱さを気にせずに炎を掻き分け、なっちゃんの部屋がある二階へと、おいどんは急いで向かった。


 やっとの事で到達したなっちゃんの部屋……そこには崩れた天井の下敷きになって、隙間から頭一つだけ出して苦しそうな、なっちゃんの姿が見えた。



「オジサン……ストーカーなら……ちゃんと、うちの事を見張ってないと……ダメだ……よ」


「なっちゃん!待ってろ、今助ける」


「オジサン……ありがと。助けに来てくれて……うちは……もうちょっと……だ……け……」


「ッ?!そんな……なっちゃん!?ダメだッ、目を開けてくれッ」


 おいどんは必死になって、なっちゃんを助け出そうとした。自分の手が火に巻かれようとも気にする事なく、熱さも痛さも振り切って、ガレキに埋もれたなっちゃんを必死に必死に救い出そうと素手で掻き分けて行く。



「なんでだ……なんでだよぉ……なんで、こんな時に(アクティブスーツ)が無いんだッ。おいどんはヒーローだッ。女の子一人救えないヒーローなんて……そんな事……」


 やっとの思いでガレキの底から救い上げ無我夢中で外へ出る事に成功したおいどんの腕の中には、安らかに眠る少女の姿があった。

 その表情は苦しみに歪む事無く、煤に塗れた顔はどこか幸せそうに微笑んでいたようにも思う。


 それだけが唯一の救いだった……。

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