第十七戦闘配置 ほくそ笑む
〜ピンクの場合 其の“ Ⅸ ”〜
「じゃあ、とっとと始めましょ」
「えぇ、四刀聖序列第二位キーラス・ウーノマーネ、推して参ります。——捌の計・金烏!玖の計・頸烏!」
しゅばばばばばばッ
「ッ!?」
キーラスさんの迫力が凄くてアタシ、ちょっとだけびっくりしちゃった。でもキーラスさんが放った技の内、どれが本命かはアタシ程の天才になれば簡単に分かるけどねッ!
「本命はこっち……でしょ?」
「う……そ?初手であれを見抜けるなんて……。ワテクシはアナタの前で闘った事など無い筈です」
アタシが躱さず受け流さず二本の指で挟むように掴んだのは、小さい匕首。「匕首」なんてカッコつけて言っちゃったけど、要するに小さい“ドス”ってコト。えっ?“ドス”って言わない?うーん、それじゃあなんて言うんだっけ?
「アタシは天才だしッ。だから、初見だろうと対応出来るんだしッ。それにキーラスさん遅過ぎて、超余裕って感じ?」
「ワテクシをコケにするのですね……それならば、見せて上げますッ!」
ちょっと煽り過ぎちゃったかな?てへっ。でも前にブラックが言ってた。勝負はアツくなったら負けだって!ブラックはイケメンだから言ってるコトは絶対に正しいし、アタシはイケメンの言葉は忘れずに覚えてるだけだし!
「鳥獣伎楽・猿に烏帽子!!」
「えっと、こうだったかな?えいッ」
ぱきいぃぃぃぃぃぃぃん
アタシはキーラスさんの技を見てからリボンを取り出すと、見よう見まね技を撃ってみた。
テーバメさんの技だと威力があり過ぎるから、今度はチッカさんが前に見せてくれたヤツを真似したんだけど、思ったよりも威力があったみたいな感じ?
「おーばーすぺっく」とか言うのって、必殺技みたいな感じでしょ?それに対してアタシが撃ったのは「なんとかのタチ」ってヤツなんだよ?
まぁ、そりゃ「なんとかのタチ」が必殺技と互角だったら驚いて当然っちゃ当然だよね。キーラスさんには悪いけど、ぷぷぷ。
「なッ?!それはチッカ様の「雪月花」?!何故にアナタがその技をッ?!それにそれは準備が無ければ撃てない技ですのに……」
「アタシが天才だからじゃないかな?」
「そんな……ワテクシが……いえ、まだです。まだまだですッ!アナタに勝って調教してもらわなければ、ワテクシは破滅してしまいます」
「ぴきっ。へぇ……それじゃあ、キーラスさんがアタシに負けたらどんな風に悔しがるのか楽しみね?にへらっ」
「ワテクシは負けませんッ!鳥獣伎楽・闇夜の烏、雪に鷺!」
アタシの挑発に見事乗ってくれたキーラスさん。色々な技を見せてくれてありがとうって言いたくなったから、キーラスさんがとっても嫌がりそうな技を返す事にしてみた。
「えっと、こうだったわよね?おーばーすぺっく・ふぇいくきんぐなんとか!」
ばっばばばばばばばばばばばばばばッ
ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅんッ
ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅんッ
「なッ!それはセズーメの?」
まぁ別に技名とか言わなくても良かったんだけど、なんとなくそっちの方がキーラスさんのダメージになりそうじゃない?
超絶可憐ピンク系美少女に対して散々「調教して」とか言うなんて、風評被害になり兼ねないから、ちょっとだけお仕置きって感じ。
自分の為に人の風評被害はいいだなんて、アタシは断固反対だモン!アタシの為に人の風評被害は別にオッケーだけどッ!
「うそ嘘ウソッ!ワテクシの技がセズーメの技に飲み込まれて……これじゃまるでアノ時の……がくっ」
じゅん……
にたぁぁぁぁぁぁぁ
セズーメが使う技に負けた事で窮地に立たされたキーラス。格下と思っていたセズーメに負けた事で自尊心を砕かれたキーラス。
ピンクがその技を使った事に“意図”があったかと問えば、嫌がらせ程度の“意図”しかないので「無かった」と言われるだろうが、“意味”は確かにあった。
キーラスはピンクが使ったセズーメの技に自尊心を砕かれた事がフラッシュバックし、再び自信を喪失し膝を地面に付いていた。その様子を見たピンクの口角は歪みサディスティックな笑みを浮かべていたのだった。
「さぁ、キーラスちゃんまだヤる?それとも降参?アタシはどっちでもいいけど、アタシ飽きちゃったから、ヤるなら次で終わらせてあげるわ」
ぞくっ
キーラスは背筋が悪寒に包まれて行った。少なくともピンクの様子が変わった事に気付いていた。何が変わったのかは分からないが、模擬戦の時や将軍・ヴェスピーネの時に感じたモノと同じ感じがしたと言える。
「ワテクシの負け……です」
「そう?賢明ね。それじゃ、アタシは部屋で待ってるから、何かくれるんなら早めに持って来てねぇ」
「くそッ。ワテクシが何たるザマ……勝てると思って意気込んで、あっさりと返り討ちにあってしまった感じになってしまうなんて……」
こうして勝負はキーラスの惨敗で終わり、もう打てる手が無かった。キーラスは打開策を見付ける事が出来る訳もなく、賭けた品を持ってピンクの部屋に行く事しか出来なかったのである。
こんこん
「開いてるわぁ」
「持って来ました。これが秘蔵の酒です」
「そう。ありがと。それじゃあ、そこに置いてって」
「あの……ピンク殿。いえ、ピンク様ッ!ワテクシに調教をして頂けませんか?」
にへらっ
「なんでアタシがアナタに調教しなきゃならないの?キーラスちゃんは、アタシのコトがキライなんでしょ?キライな人から調教されたくなんて、無いと思うんだけどぉ?」
「それは……」
ピンクの発言はキーラスから言葉を奪った。何故ならそれは正論だからだ。
キーラスはピンクの部屋に着くまでに策を巡らせ色々なシミュレーションを重ね、策を弄してでも“調教”をしてもらえるように説得するつもりだった。
だが……たった一言の正論で万策尽きたとはこの事であり、キーラスは涙ながらに訴える事しかもう何も出来なかった。
一方でピンクは言葉に詰まったキーラスが流す涙を、ほくそ笑みながら見ており、そのまま追い打ちを掛けるように言葉を紡いで行く。
「涙を流して堕ちるのは、ドーテーくらいなモンよ?アタシには効かないわ」
「そんなッ……これはッ……」
「まぁ、キーラスちゃんがそこまでして調教して欲しいって言うなら、ヤってあげても構わないけどぉ。絶対にイヤがらない?イヤがったらそこで終了するわよ?」
「はいっ!是非ッ!嫌がる事なんて絶対にありませんッ。お願いします、ピンク様」
「そう?じゃあ、様子見がてらソフトなヤツから試してみようかしら?」
しゅるッ
ぱしッ
「えっ?これは?一体何を?」
斯くしてキーラスは訳も分からぬままに、リボンに拠って締め上げられて行った。
手首足首はさる事ながら、キーラスの大きくたわわなバストを強調するように……ハリツヤの良い太ももの内側から引き締まったヒップに掛けて……割れたウエストや色気のあるうなじに至るまでリボンはまるで、蛇が肢体を舐め回すように絡み付いて行く。
それに驚いたのは当然の事だがキーラス本人だ。
この状況に置かれ脳裏に過ぎったのは模擬戦で同じ状況になっていたセズーメとテーバメの甘い叫びであり、ここで漸く“調教”とは何なのかを垣間見たのである。




