第六戦闘配置 初夜再び
〜レッドの場合 其の“ Ⅴ ”〜
バトルロワイヤル開始から二日後。獣人族の挑戦者は2/3程度まで減っていた。これは驚異的な速さで勝敗が決まった事になる。
レッドは格闘技の経験がない訳ではない。それ故にその経験を活かして「ほぼ秒殺」で一つ一つの試合を終えていた。格闘技の経験と鎧の性能ゆえに為せる技……とも言える。
ただこのバトルロワイヤルの全日程は、全ての挑戦者がいなくなるまで……だ。拠ってその間の夜もまた、レッドを巡る熾烈な抗争は起きる筈もなく、相手にされない三人は枕を涙で濡らしていた。
斯くして誰もレッドに対して一撃を入れる事なく秒殺され、バトルロワイヤル開始から六日後になって漸く全ての挑戦者はいなくなったのである。
「終わったぁ……これで、俺への挑戦者は……」
「レッド殿。妾がいるぞッ!」
「ふぁッ!?女王サマ?いやいやいや、待ってくれ」
「問答無用!妾を見事倒してみせよッ!」
どごぉッ
べきべきべきべきッ
どおぉぉぉぉぉぉぉぉぉんッ
おいおいマジかよ?女王サマまで俺と闘うってどういう事?ってかその前に、女王サマの一撃でリングが粉々になったんだが……どんだけパワーあんだよ。
「なかなかやりますね、レッド殿!全身全霊の一撃を受けてみなさい!猛獣戯画——」
「ちょッ、なんかヤベぇ感じしかしねぇ。こうなったら先にッ」
ぱしッ
くるッ
どぉぉんッ
「なっ?!妾の技が発動する前に?」
しゅッ
「俺の勝ちでいいか?」
「ぐっ……」
「なぁ、女王サマ。さっきの開始早々の女王サマの一撃でリングが粉々だ。技を使えばそれ以上の威力だよな?ここでそんな大技撃ったらここが壊滅して、観客から何からガレキの下敷きになっちまうだろ?だったらそんな事は“セイギノミカタ”の俺がさせたくねぇ」
キマったと思う。俺は女王サマが技を発動させる前に“呼吸投げ”で女王サマを投げて、驚きを隠せず動揺している隙に喉元に向けて拳を寸止めにした。そして決め台詞。
これで負けを認めないヤツはいないと思ってる。もしも抵抗するようならその時はその時だが、女王サマは抵抗する気配を見せなかった。
「レッド殿……妾の負けだ。その……なんだ、妾を倒したのだから妾もレッド殿の“番”にしてくれるか?」
「あぁ、いいぜ……って、えっ?!」
はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。完全にやっちまった……。その場の勢いでOK出しちまった……。こうなったら後には引けねぇって言うか、サッカ達に合わせる顔がない……。俺はあの家から追い出されちまうのかなぁ……。
据膳食えない恥の上塗りに続いて、不能なクセに浮気者とか思われたら俺はもう……立ち直れないと思う。
「皆のもの、聞いたか?妾は“番”を得た!そして、妾を倒したレッド殿こそ、この国の新たな王に相応しく思う。拠って妾は王位を禅譲する事にするッ」
女王サマの突飛な発言に驚いたのは俺。俺が王サマになる?いやいやいや、なんでさ?いくら強い者に従う種族だからって、俺は獣人族じゃ無い。種族を超越して新たな王サマになれば、それこそ悲惨な結末になると思うんだが……。
そんな俺の心持ちとは裏腹に闘技場は大歓声に包まれていた。要するに俺が新たな王サマになる事に国民が賛同してるって事になる……のか?
「ちっ……まんまとやられましたわ……女王陛下にいっぱい喰わされましたわね……」
女王エレファの禅譲発言に闘技場が湧き上がる頃、それに対して顔を引きつらせていたのはサッカだ。サッカは女王エレファが自分達夫婦を案じ、今回のバトルロワイヤルを開いた訳ではないと悟ったからこそ、苦虫を噛み潰したような顔で憎々しげに女王エレファを見詰めていた。
女王エレファはこの国の最強であり、故に番を作る事が出来ない。前々から番に対して憧れを抱いており、突然現れたノーラ四姉妹の番=レッドに淡い期待を寄せていた。
そんな折、サッカが話しを持ち掛けて来たのだ。それに乗らない手はないと確信し、期待以上であれば王位禅譲も考えていた。
一方のサッカは、女王エレファが番に憧れを持っている事は知っていたが、バトルロワイヤルに参加して来る可能性を見越していなかった。
更には女王エレファ自らがレッドに対して告白した際には、レッドがOKを出すとは思ってすらいなかった。
こうしてサッカの生命線……第一夫人の座はエレファに移ったのである。
「そんな……アイツが国王に?これじゃ、ヌッコがいくら頑張っても、アイツをこの国から追い出せない……。やっぱりアイツが全ての元凶なんだ……。アイツがいなければ、アイツさえ現れなければッ!」
俺はこの国の王……「新王」になった。と言っても王サマとして何をすればいいかなんて知ってる筈も無い。俺はただの“元”戦隊ヒーローの隊長で、政治家じゃない。国の運営なんか出来る訳も無い。
だから、俺が政治を覚えるまでの間は“元王”の女王サマが政務を行ってくれる事になった。あれ?そうしたら俺が政治を覚えなければ何も今までと変わらない気がする……。やっぱり俺が王サマにならなくてもいいんじゃね?
その日の夜、俺の前には全身の体毛を剃りあげ、見事なまでにツルツルの全裸になったサッカがいた。
「だんな様……だんな様が新王に即位されれば、もうこの家から出て行ってしまわれる。その前に……その前にどうか御慈悲をッ!アテシにご寵愛をッ!あの日の夜のように、アテシの中にたくさん、だんな様の精を下さいませ」
「サッカ……その、何か着てくれないか?目のやり場に……困る」
「着る?何を……で御座いますか?」
俺は初めて思い知らされた。この国には「服」が無い事を。確かに体毛があれば本来なら見せてはいけない場所とかを隠せる訳で……いや、そうだとしても……だ。
まぁ、動物園にいる動物は服を着てないから、自然体と言えば自然体なんだが……。でも、体毛を剃ってしまえば、ケモミミ・ケモシッポ・ケモアシなだけのただの女性にしか見えない。それも非常に綺麗な女性だ。
そんな綺麗な女性が本来ならば俺に言い寄って来る事なんてないと思ってた。
「サッカ……聞いてくれ。俺は記憶が本当に無いんだ……。サッカ達とその……ヤった記憶も無い。昔から俺は、人の血を見ると意識を失ってしまうんだ。だからサッカ達と……ヤったとされる日、俺はサッカの背中から流れる血を見て、その後の記憶が無い」
「だんな様……アテシに魅力がありませんか?アテシはだんな様の事を愛しております。だんな様の記憶があろうと無かろうと、アテシはだんな様に操を立てました。それに嘘偽りはございません。だんな様、アテシを愛して下さいまし!だんな様のマグナムがそそり立つように、アテシが精一杯ご奉仕致しますから……」
こうして夜は更けていく。サッカは温かいその手、柔らかく豊満な胸、ぷっくりした色ツヤの良い唇、ザラザラしてねっとりと絡み付く舌……全身のありとあらゆる部位を使って誠心誠意レッドを、文字通り奮い立たそうとした。
だが、レッドは身体を小刻みに痙攣させ、可愛らしい声を漏らしながらも、その期待に応える事は出来なかったのである。




