第五戦闘配置 初夜の果てに
〜レッドの場合 其の“ Ⅳ ”〜
第一夫人の権限は強い。夫が第一夫人以外の別の女性を寝室に呼ぶ場合は、夕食までに第一夫人とその該当女性に伝えておかねばならない。ただし第一夫人が同室同衾を認めた場合はその限りではない。
第二夫人以降は、朝になる前に上位の夫人が寝室を離れた際に入室出来るが、その際も序列通りになる。
しかしそんなルールがある事を、レッドは知らない。
「サッカ姉……アタイも一緒にあるじ様の寝室に行きたいんだけど?ダメかな?」
「えぇ、いいですわよ。アッヌが言いに来たってコトはイッマの差し金でしょうけど、なんならイッマも連れていらっしゃい」
そしてその日の夜、ドキドキしながらイッマとアッヌはサッカと共にレッドの寝室に入って行った……。
結論は言わなくても分かるだろう。
「——女王陛下、以上の件をお願い致したく存じますわ」
「こうなるとは思ってました。予想以上の反響ですが……ですが、可愛いお前達の望みです。布告を出しておきましょう」
「有り難う御座いますわ。女王陛下。これでやっと、やっと……」
レッドは連日のように来客があり、それを理由に初夜が迎えられないサッカは一計を案じる事にした。全ては自分の為のサプライズであり、それがこの国を揺るがす事態となろうとは一計を案じたサッカも予想だにしていなかった。
〜二日後〜
「サッカ、ちょっと待ってくれ。一体俺をどこに連れて行く気だ?それに今日は来客が無かったからゆっくりと寝ていたかったんだが……」
「今日は、だんな様の為にアテシが用意したサプライズですわ」
「サプライズ?」
俺は朝になって叩き起こされると、そのままサッカに引きずられるように家を飛び出させられ、城の方へと向かって行った。
まぁ、この街の正確な地図とか把握してないから土地勘とか全く無いけどな。だから城の方へ向かってる気はするけど、本当に城に向かっているのかは分からない。
「なんだこりゃ?何かの競技場……か?」
「ここは闘技場ですわ、だんな様。もうイッマ達は来ていますから、アテシ達も早く参りましょう」
「闘技場?ボクシングとかプロレスが見られるのか?今日はどんな試合が?どんな競技をやるんだ?」
日々来客対応に忙しい俺を連れ出してくれた先が闘技場……。ここで何かの格闘技を観戦して息抜きしようと連れ出してくれたって事か……。
サッカ……本当はいいヤツだったんだな……。色ボケしてる綺麗なおねえさんだと思ってた俺を殴ってやりたくなったぜ。
でも、格闘技よりはスポーツ観戦の方が俺的には好みなんだが、娯楽が格闘観戦しか無いならそれはそれで仕方ないよな?どっかの国みたいに「国技が格闘技」って事があるのかもしれないし……。
案内された闘技場。そこで俺を待ち受けたのは大歓声と大観衆。俺はサッカと共に場内へと入って行った訳だが、そこは客席ではなかった。
「皆のもの。レッド殿が参られた。これよりルールを説明する」
「ルール説明はボクがするよ!」
「へっ?イッマ?ルールって何?」
騙された……本当にサプライズだ。俺は観客じゃなくてその逆。闘わされる方って事だ。
だが、イッマが説明したルールに拠れば、ここで挑戦した者は今後俺に対して挑戦する権利を失うって内容にはメリットを感じた。連日同じ奴が来客だったりしたから、今後はそれがなくなるって事だもんな。
そんでもってルールの中には俺が驚く内容もあった。それは「女性の参加も許可する」って事だ。えっと……今回は四姉妹をNTRたいヤツ以外も参戦するって事?四姉妹は女性にも大人気って事?いやいやいや、でもその場合って精を受けられないから子作り出来ないよな?
どうなってんの?
「女性の参加は、だんな様に対するアピールですわ。この国は男性の比率が少なく、“番”を持てる男性は少数……女性の方が強い種族故に番を持てず未婚の女性も多い……。だから女性は強い男性に憧れを持ち、チャンスがあれば強い男性と番になりたいのですわ」
「えっ?ここに参加する女性は、俺が目的な訳?」
「そうなりますわ。でも……」
「でも?」
「アテシ……だんな様がおモテになるのは構いません。ですが、他の女性を抱いている時でも、アテシの事だけは忘れないでおくんなまし……よよよ」
「サッカ……」
俺は日本にいた時、自慢じゃないがモテた事が無い。カノジョと呼べるのは前に話した黒歴史の女の子だけだ。だからモテる男がこんな時になんて言うのか分からない。
だから俺は涙を流しながら「自分を忘れないで」って言うサッカになんて言っていいか分からなかった。
「ねぇ、イッマ姉……サッカ姉ってやっぱりズルいよね?」
「アッヌ、それは今に始まった事じゃないんじゃないかな?それにちょっと前にも同じような話しをしたんだよ?」
「だってだって、サッカ姉が第一夫人なんだから、他の女性を抱いてる時……なんて、あり得ないじゃんかッ!アタイ達が行ってもいいって言われたあの日、抱いてもらえないの分かってるからサッカ姉は「いいよ」って言ってくれたんじゃないの?」
「アッヌ……サッカ姉は凄い打算的で計算高いんだよ。だから今もごしゅじん様に対して必死に演技して好感度爆上がりさせてるんじゃないかな?」
サッカの事を良く知る二人だからこそ、サッカに対する恨みつらみが爆発仕掛けていた。レッドが現れるまでは仲の良かった姉妹が一人の男性によって、その関係性にヒビが入ったと言えなくも……ない。
「アイツが来てから全部が可怪しくなった……アイツさえいなければ。必ずヌッコはアイツをこの国から追い出してやるんだ」
「——男達よ!自分の番を奪られたくなければ必死に闘え!四天王を娶りたいならその強さを示せ!」
「——女達よ!番を求めるなら、自らをアピールせよ!四天王を倒す程の腕前を持つ男を虜にしてみせよ!」
女王エレファのその発言に拠って、闘技場の興奮は最高潮に達し、一対三千のバトルロワイヤルの火蓋が切られたのである。




