第四戦闘配置 初夜
〜レッドの場合 其の“ Ⅲ ”〜
「着きましたわ、だんな様。ここがこれからアテシとだんな様との愛の巣ですわ」
「いやいや、アタイ達もいるけど?」
「そうだよ、サッカ姉さん。みんなの愛の巣だよ!」
「ヌッコは除外して。別にヌッコは愛してない」
俺は晴れて“番”になったノーラ四姉妹の家にお邪魔する事になった。
その家は“家”と言うよりは“豪邸”と言った方がしっくり来る。それこそこんな豪邸がジャングルの中にあると思うと違和感しか無い。
まぁ実際は、城壁があって外のジャングルは見えないから、違和感は無いんだけどな。
「なぁ、この家にはお前達四人しか住んでないのか?」
「そうですが、どうかしましたかあるじ様?」
「だって、お前達は姉妹なんだろ?それなら、お前達の母親には“番”がいるって事になる。もしかしたら母親が全員別の可能性も考えていたんだが……」
「だんな様は惚れ惚れするくらい聡いですわね。ですが、アテシ達は一人の母親から産まれた四人姉妹。父親はその強さを持って、当時の四天王の一角だった母親を倒して晴れて“番”になったのですわ」
俺的にはちょっと驚いていた。だからサッカに聞きたかった「遺伝って知ってるか?」って。だって、俺からしたら四人共違う動物にしか見えないからだ。
まぁ、俺の常識が通用しないなんて、今に始まった事じゃないんだが……。
その後サッカの口から語られたのは、四姉妹の両親の馴れ初めで、その両親は蟲族の襲来に因って生命を落とした……と。更にはその襲来の折に、四天王が蟲族の親玉と相討ちになって全滅し、四姉妹が強さ的に次の四天王になったって事だった。
「だから、この家はアテシ達しか住んでおりませんわ。気兼ねなく自分の家と思ってくつろいでおくんなまし」
「あぁ、ありがと」
「じゃあ、早速ごしゅじん様、ヤっとく?」
「あ……あの……あるじ様……その……アタイと……」
とまぁ、イッマはいつも通り過ぎて俺は何も言えない。家に帰って来るなりサカリのついた馬って感じだ。アッヌもイッマに負けじと何か言いたそうだが、モジモジしていてそれはそれで可愛らしいと思う。
そんな時だった。
「たのもーーーーーーう!」
「何だ何だ何事だ?」
「早かったですわね……」
「へっ?サッカ……何か知ってるの?」
「きっと、だんな様にお客様ですわ」
「へぁっ?」
俺がこの国の住人になったのは今日。俺が知ってる獣人族は四姉妹と女王サマだけだ。なのに、俺に客?意味が分からん。
俺に客と言われたので俺は息つく暇もないまま、玄関に出たのだが、そこにはたくさんの獣人族が長蛇の列を作っていた。
「ふぁッ?!」
「貴公がレッド殿か?いざ、尋常に勝負されたしッ」
俺の頭に浮かんでいるのがナニカ分かるか?簡単だよな?「?マーク」だ。これから暮らす事になる家に初めて案内されて、その家に入った直後に来客……そして玄関開けたら長蛇の列。
更に言えば、その長蛇の列全員が俺の客で、勝負を挑んで来るってどう言う事?そんなに獣人族ってのは戦闘狂なのか?
いや……待てよ?女王サマが「覚悟」って言ってたよな?新たな住人になった者への洗礼的な何か……なのか?
「なんで俺に勝負を挑むんだ?理由を教えてくれ。この国の新たな住人になった俺に何の恨みがあるって言うんだ?」
「貴公を倒し、サッカ様の“番”になる為だッ!」
「おれはイッマ様に癒やされたい!」
「オレはヌッコ様に噛まれたい!」
えっと……これってつまり……NTR希望って事?いやいや、どう見ても聞いても変態混じってるだろ?それにアッヌって人気無いのか?これじゃ、アッヌが可哀想だ。
「アッヌってやっぱり人気無いみたいだよッ!サッカ姉さんが一番人気なのかなぁ?やっぱり男共は“おっぱい”なのか?やっぱり、ごしゅじん様もそうなのかなぁ?」
「イッマ姉!それを言ったらなんでヌッコは人気があるんだ?ヌッコにはおっおお、おっぱいが無いじゃないかッ!」
「それはねアッヌ。そう言う趣味の殿方もいるってコトですわ。諦めなさいアッヌ。だんな様もきっと、アテシの魅力にメロメロですわ。この豊満な胸でだんな様を癒やして差し上げるのはア・テ・シ」
レッドが玄関先で対戦相手に気を遣いながら倒している頃、豪邸の二階の窓からその光景を覗き見ていた三人の会話がコレだ。
ヌッコはこの場にいないが、ヌッコがいたら家の中でも修羅場が発生していた事だろう。
女王・エレファが言っていた「覚悟」とはこの事であり、強き者に従う獣人族にとって、新参者が四天王全てを娶ったと言う事実は光の速さで畏敬と羨望と怨恨を全国民に振り撒いていったのだ。
拠ってこれから朝から夜までレッドは連日のように来客に見舞われる事になる。
そしてそれから数日経ったある日の夜……。
「だんな様……今日もご寵愛を賜れず、アテシは寂しいですわ」
「すまん、サッカ……。朝から夜までひっきりなしの来客で疲れているんだ……もう寝かせて……くれ。がくッ」
まぁ、連日の来客で疲れていたのは事実だが、俺が「据え膳食えぬ恥塗りの男」と蔑まれないように俺は極力早く寝るようにしていた。
サッカは色仕掛けで俺を攻めて来るが、俺のムスコは何の反応もしなかった。ちなみに俺の部屋に入って来るのは常にサッカ一人だけ。俺の“番”になった嫁は四人なのに常にサッカのみだ。
まぁ、ヌッコがやって来る事は無いと思っているが、あんなにせがむイッマすら来ないってのは、やっぱりリップサービスなのかなって……俺は悲しくなる毎日だった。
それにアッヌは恥ずかしくて入って来れないんだろうって勝手に思う事にした。
「ねぇ、イッマ姉……サッカ姉ズルくない?毎日毎日、あるじ様の部屋に籠ってさ……」
「仕方ないよアッヌ。だって、サッカ姉さんが序列第一位。第一夫人なんだよッ。第一夫人が満足して部屋から出て行かなければボクも入れないし……あーあ、ボクも早くごしゅじん様のマグナムを挿れて欲しいのに!」
「イッマ姉!アタイは真剣に悩んでいるのッ!それにサッカ姉の次はイッマ姉……結局アタイはその後じゃないかッ!アタイの番はいつになるのさッ!」
「それならさ、サッカ姉さんにボク達も一緒に行っていいか聞いてみたら?第一夫人が許可くれれば、ボク達も一緒に挿れてもらえるかもよ?」
レッドの部屋に入れない二人と、入れても相手にされない一人。そんなこんなでいつになっても全員に初夜は訪れず、全員のフラストレーションが溜まるそんな結婚生活だった。




