第六戦闘配備 第五種戦闘配置 鳥人族との決着の果てに
〜ピンクの場合 其の参の四〜
「果たしてどうかな?余が負けるとでも?だがもしも余が負けたなら褒美を取らせよう。——四刀聖序列第一位チッカ・ノーアル……いざ参らん!」
「ご褒美?凄っごく楽しみにしてるわぁ。じゃあ、いつでもいいから掛かって来て」
「では……壱の太刀・淡雪」
ごぅんッ
どごッ
チッカの初手はテーバメと同じく技からだった。しかしその技は速度に特化したものでは無く、チッカが放ったその剛剣は闘技場の大地を割り、ピンクがいた場所には窪みが誕生していた。
「テーバメちゃんと同じ作戦かしら?でも、テーバメちゃんより大分遅い……これなら目を瞑ってても躱せるわね」
チッカは一つ目の技の後、剛剣を次々と繰り出して行くが、その斬撃はどれ一つとしてピンクを捉える事は無かった。
チッカの剛剣は大地を割り空を裂きピンクに迫るが、ピンクはひらひらと躱すだけで一向に当たる気配は無い。だがチッカは焦る気配すら見せず、敢えて自分の太刀筋を教え込ませるように入念に剛剣を振るっていった。
「弐の太刀・細雪!」
ごわしッ
どごわッ
その威力と全く異なる名前の剛剣が再度振り下ろされ、闘技場の地面は穴ボコだらけの見るも無残な姿に変わって行く。
一方でピンクは余裕綽々の笑みを浮かべながら躱して行くが、チッカの表情は冷静を装っている。
「何かを企んでいるか、それとも表情に出さないようにしている……のかしら?本来なら焦りが冷静さを奪うモノだけど……でも、いいわぁ。冷静を装っているその表情を乱して、その快楽に身を委ねるようにトチ狂った哭き声を上げさせたい!絶対にそのイケメン顔を淫らに歪ませてやる」
「今だ!陸の太刀・幻月!」
チッカの瞳は鷹の目と呼ばれる特殊な魔眼であり、視たモノの性質を見極める力がある。性質を見極める以外にも視力が良かったり、色々と使い勝手が良い“目”である事に変わりは無い。
そしてその鷹の目はピンクの慢心を見抜いていた。だからこそチッカは次の一手に出たのである。
一介の剣士に過ぎないセズーメやテーバメと、一線を画している違いは思慮深さであり、常に最善の策を立案するその頭脳こそがチッカを鳥人族の王足らしめる特徴と言える。
しゃりんしゅッ
「えっ?これは……?」
ピンクの慢心……それは、チッカが剛の剣使いだと勘違いし、速さが無いと考えた事だった。確かに剛の剣は例え防御してもその防御ごと粉砕するので一撃必殺だが回避されると元も子もない。
そしてそれがチッカの本質だと刷り込ませるのがチッカの策略であり、ピンクはその策略にまんまとハマってしまっていた。
要するにチッカの次なる一手は、剛の剣から速度重視の剣撃に変えた事にある。
「ちぃッ!」
しゅたッ
「ヤるわね、チッカちゃん。まんまとハメられたわ。アタシじやなきゃその一撃、貰ってたわね。剛剣以外にもそんな技まで使えるなんて、褒めてあげるわ」
「当たらねば意味は無いさ」
同じ速さで単調な攻撃を仕掛け続けていれば、誰だってその速さに慣れてしまい、それが「躱せる」と思い込ませる事で油断が生じ、それが慢心に繋がる。その一瞬の為にチッカは無駄に剛剣を振るっていた。
そんな不意の一撃であってもチッカの太刀筋はピンクを捉える事は出来なかった。しかしチッカは口惜しそうなセリフを紡ぐことなく冷静に次なる一手を模索していく。
「まだまだ参るぞ!負けを認めるなら今のうちだ、ピンク殿!」
「アタシに負けを認めさせたいなら、イケメン食い放題くらい用意する事ねッ」
「よく分からない事をッ!肆の太刀・朧月。参の太刀・深雪」
それは緩急を付けた技の連撃だった。速の太刀筋から剛の太刀筋へと至る剣撃。まなじ達人なら、初手は躱し次手は受けたい技の構成。だが速の太刀は躱すには速過ぎ、剛の太刀は受ければ剣ごと肉も骨も断たれる。
しかしそんな技の構成であってもピンクは、それこそ緩急が付いた速さで躱していく。流石のチッカであっても、それには驚いた様子を一瞬たけ覗かせていたが、直ぐに更なる手を模索していった。
「漆の太刀・徒花。玖の太刀・艷花!」
「速さと力を兼ね備えた剣撃……か。チッカちゃん、なかなかヤり過ぎ。ゾクゾクが止まらない……そんなにアタシをゾクゾクさせたらもう、グチョグチョになっちゃう」
「続けて、拾の太刀・雪月花」
「なっ?!嘘、ヤバッ!流石にそれは避けられ……!?」
二連撃から更なる追撃の一手。それは格子状に計9本の斬撃を放つ技。漆の太刀と玖の太刀を躱しきった先に追撃の一手が迫る状況だった。
「もらったぞ、ピンク殿!それは避けられまい!」
にたぁぁぁぁぁぁぁ
「えっとぉ……こうだったかしら?アタシの可愛いリボン!」
がきいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんッ
「な、なんだと?それは、テーバメの!?」
「残念、似て非なるものよ。テーバメちゃんの猿真似だけど、斬撃の質が違うのは分かるでしょ?だから全く同じではない。だから威力も段違い……よ?」
ばしゅうッ
「なっ?!ぐはッ……馬鹿な」
ピンクが繰り出したのは、テーバメが先程使った秘剣・鳥獣伎楽であり、翼が無いピンクでも撃てるようにしれっとアレンジした技だ。
だがその威力はオリジナルを優に超えており、チッカの斬撃を打ち破った後、チッカですら気付いていない内にチッカの肉体に届いていた。
「どう?まだやるのかしら?そのダメージじゃ、もう満足に技を撃てないでしょ?」
「確かにな……。余の負けを認めよう……」
「じゃあ、ご褒美ちょうだい!」
「約束したからな……何を所望する?」
「そうね、セズーメちゃんとテーバメちゃんが欲しいなッ」
ピンクのその言葉に、少し離れた場所から「ひっ」とサラウンドで短い悲鳴が発生していた。それはピンク指名の二人ともに正気を取り戻していた事を示しており、ピンクから名指しで呼ばれた事が、先程弄ばれた記憶を呼び覚ましたのかもしれない。
「ピンク殿、二人は四刀聖で政務もある。故にピンク殿の側仕えは流石にさせられぬ」
「大丈夫よ。これから明日の朝まで貸してくれるだけでいいの」
再び響く短い悲鳴……。二人はチッカに対して勢いよく首を振り合図を送っているが、チッカはその様子を見て見ぬフリでピンクに対して快諾した。
「ありがとう、チッカちゃん。じゃあ、二人は借りて行くわね」
「「ひィッ」」
ぱぱしッ
「さぁて、逃げようとしても無駄よ。ほら、行くわよ、二人ともッ!」
その場から逃げ出そうとした二人を捕らえたのはピンクのリボンであり、捕らえられた二人はそのまま引き摺られながら闘技場を後にしたのだった。
「すまぬな、二人とも……許せ」
チッカは泣き叫びながら引き摺られていく二人に対して、慚愧の念に堪えない様子で見送っていた……。
ぱたんッ
「ぴぴぴ、ピンク殿……某達に、いいい、一体何をするつもりなの……ですか?」
「えへへ、二人にはアタシの性技をたぁっぷり堪能してもらいたくって、連れて来たの。オモチャはたぁっぷりあるから、とぉっても可愛い声を聴かせてね。にたぁぁぁぁぁぁぁ」
「「イヤぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」」
レッド同様にピンクもまた、“異端”のヒーローと言える。戦隊ヒーローが「正義の味方」であるとするならば、レッドは「凄技の味方」でありピンクは「性技の味方」と言えるだろう。
よってそこに「正義」はなく、自分本位の体現者と呼べるかもしれない。
だが、ピンクには更なる秘密があるが、それはまだこの場では明かすべきではない。




