夢の中のメッセージ
夢の中のメッセージ
登場人物
色野 茜 いつも元気な女の子。
丸内 林檎 いつも丁寧口調だかかなり毒舌の女の子。
天海 葵 アンティークショップを経営する女性。
緑風 空太 気弱だけど心優しい男の子。
野和 健 いつも陽気な男の子。
黒崎 誠 アオイの知り合いの青年。今回の元凶。
天海 水希 いつもボーッとしている男の子。アオイの弟。
黄瀬 楓夢 アイドルに憧れるお嬢様口調の女の子。
荒谷 橙真 なんでも器用にこなせる趣味多彩の男の子。
林原 緑 野球部のイケメン先輩。
日紫喜 怜太 少しイヤミなメガネくん。
その他の人物
語り手S やあ、みんな!いきなりだけどみんなは《夢》ってあるかな?例えば、将来こんな仕事をしたいこんな大人になりたいなんていう夢、一度は考えたことあるんじゃないかな?え?なんでそんな質問をするのかって?そうだねあまりいえないけど強いて云うならこの物語のテーマだからかな。どういうことかって?そうだね教えてあげたいのは山々だけどネタバレになっちゃうからな~小説を読む時は最後のページから読むって?わたしもそうだよ君たちとは気が合いそうだ。おっと、もう少し話していたいけどそろそろ時間が来てしまったみたいだね。さて、この物語は夢に向かって進み考える人々の物語。最後までお付き合い下さい。おや?これは失礼、自己紹介がまだでしたねわたしはこのストーリーの案内人『S』と申します以後お見知り置きを…
暗転
明転 学校の教室内この物語の主人公 色野 茜が机の上に置いてある箱を見つめている。
アカネ う~ん、これどうしよう
マル どうしましたアカネ?
アカネ あ、マル!実はね学校に来る道でこんなモノを拾ったんだ(箱を手渡す)誰かの落とし物かと思って持ってきたけど名前が書いてなくて中身を確認しようにも全然開かないんだ。
マル (箱を受け取り)そうですね、確かに見た感じどこにも名前らしきものが書いてありませんね。でしたら、クラスのみんなに聞いてみましょうか。
キノセ 話は聞きましてよ
マル おや?キノセさん
キノセ 箱が開かないという話でしたらワタクシが叩き割ってあげますわ
アカネ ダメだよ、誰のかまだ分からないのに叩き割るなんて
キノセ こんな頑丈そうな箱きっとこの中には宝石などがあるに違いありませんわ。そして、それをワタクシが頂きますわ
マル すごい堂々と強奪宣言していますがダメですよ。
キノセ そこまで云うなら仕方ないですわね。それなら、男子に無理やりこじ開けさせますわ。そこの、御二人さんちょっとよろしくて?(箱を持って近くで話していた二人の男の子に話かける。)
ミズキ ?
クウタ どうしたの?キノセさん
キノセ ちょっとこちらの箱を開けていただけませんか?
クウタ え?
マル いきなりすいませんね。カクカクシカジカなんですよ。
クウタ なるほど、それならぼくよりもみっくんのほうが力があるから。みっくんやってもらえるかな?
ミズキ ん、わかった(箱をキノセから受け取る)………ムリ。
マル 諦めが早いですね。
トウマ なにしてるの?
マル おっ、金庫などを開けるのが得意そうなトウマくん丁度いいところに。
トウマ 誤解を招きそうな言い方だね
マル まあ、とにかく説明は割愛でコレを開けてください。
トウマ よく分からないけど任せて。(ミズキから箱を受け取る)こういうのはね何処かにボタンなどがあってそれを押すと開くようになっているはずだよ。だから、隅々まで探せばきっとボタンが…ボタンが…ないね
キノセ なんですの、期待させておいて役に立ちませんわね
マル そうですよ、一体今まで何の為に金庫あさりをしていたんですか?
トウマ なぜかすごい辛辣なことを云われているんだけど…それと、金庫あさりなんてしてないよ
レイタ 全く君たち朝から騒がしいよ。仕方ないね僕がその箱を開けて上げようじゃないか
キノセ いえ、結構ですわ
レイタ なんで?
マル 恐らくメガネくんにも無理だと思われます。
タケル そういえば、ボタンじゃないけどこの箱、何か付いているよね
アカネ うわっ!びっくりした!
マル タケル、急に出てこないでくださいよ。
タケル じゃあ、今度から徐々に出てくるとするよ
マル そういう意味では…まあ、それは置いておいて付いてるってこの星のマークのことですか?
タケル そうそうそれ(トウマから箱を受け取る)蓋のところにいくつかあるよね
アカネ 確かになんだろうこの星のマーク。
マル 気になりますが分からないものは仕方ありません。とにかく持ち主が特定できる物さえあればいいのですが。
ハルキ もしかしたら、ねえ、なら分かるかも…
アカネ そっか、ミズキのお姉さんって確かアンティークショップを開いていたよね
マル アオイさんならこういったものは詳しかった気がします。
アカネ じゃあ、決まりだね。学校が終わったらアオイさんのところに行こう
暗転
明転 放課後校内のグラウンドの前をアカネとマルが歩いていると突然ボールが飛んできた。
アカネ うわあっ!!(ボールが手に持っていた箱に当たり箱を落とす)
マル 大丈夫ですか!?アカネ!
アカネ うん。わたしは大丈夫
ハヤシ ごめんね!君たち(駆け寄ってくる)怪我はないかい?
マル アナタは確かハヤシ先輩でしたか?急にボールが飛んできたものでびっくりしました。
ハヤシ 本当にごめんね、打ったボールがまさか後ろの柵を越えるとはね…はい(箱を拾いアカネに渡す)
アカネ ありがとうございます
マル でも、飛んできたボールが柔らかいボールでよかったですね。
ハヤシ ああ、たまたまソフトボールを使っての練習でよかったよ
キャッチャー おい、ハヤシ!早く戻ってこい
ハヤシ ああ、今行く!とにかく怪我がなくてよかったよ。じゃあ、僕は練習に戻るよ
マル はい、練習がんばってください。
アカネ ねえ、マル。今の知ってる人?
マル 知ってる人と云ってもちょっとしか知りませんけどね。ほら、あそこ観てください。
女1 きゃー、ハヤシ先輩今日もステキー
女2 今日もすごい球魅せてくださーい
女3 やったーストライクよ
男 あのキャッチャーいい音鳴らしやがる
マル まあ、ああいったようにハヤシ先輩ファンクラブが出来る程知名度があるので私も噂程度ですが知っています。
アカネ へーそうなんだー
アカネとマルその場を後にする。その後タケルがその場を通りかかる。
タケル あれ?これって(地面に落ちていたモノを拾う)
暗転
明転 アンティークショップで箱を見てもらっている。そこには、アカネ、マル、アオイ、猫のシロがいる。
アカネ どうかな?アオイさん
アオイ そうだね、見たことある気がするよ
マル やはり、アオイさんはこの箱のことをご存じでしたか。
アオイ 確かにどこかで見たことがあった気がするんだけど詳しくは覚えてないな…でも、その箱を開けるには特別な手順をしないといけなかった気がするな
アカネ 特別な手順?
アオイ うん、でも、すごいうろ覚えなんだけど開けると楽しくて大変なことが起きるって何かの本で見たんだよね(箱を机の上の飼い猫シロの横に置く)
アカネ 楽しくて?大変なこと?
マル 矛盾していますね
アオイ まあ、今は誰のか分からないならワタシが一旦この箱預かっておこうか?
マル そうですね、ここなら置いておいても安全かも知れませんね。もしかしたら、落とした人がここならあるかもしれないと来るかもしれません。
アカネ そういうことなら、アオイさんおねがい
アオイ 任せて
マル それにしてもアオイさんのお店って変わったモノやどこか懐かしく感じるモノが一杯置いてありますね。例えばこのダイヤル式の電話機とか昔おじいちゃんが使っていた覚えがあります。
アカネ わたしはこれとかかな、(それを手に取る)このゲーム機小さい時に一杯遊んだ覚えがあるよ
アオイ それね、ミズキが小さい時に遊んでいたゲーム機なんだ。
マル 思い出の品って事ですか?
アオイ うん、ミズキにとって思い出のモノだね
マル それなら何故お店に並べているんですか?
アオイ ミズキが今は使わない自分よりも使ってくれる人に渡ったほうが良いって云っていたからかな
アカネ 確かに古いモノもきっと誰かに使ってもらえれば幸せだね
アオイ そう、ワタシがこの仕事をやっている理由はね、最近は新しいモノに目移りしがちだけどその新しいモノが出来た過程には必ず古きモノがあってそれを少しでも知ってもらえる様にそしてその懐かしいモノを使える様に修理して少しでもいいから興味を持って欲しいんだ
マル そうですね、今の電話機はとてもコンパクトに成りましたがそれに到るまでは色んな種類が出ましたからね、この電話機もその過程ということですね
アカネ うん、そうだね、きっとこの箱も誰かの大切なモノかも知れないから早く持ち主を見つけないとね
アオイ (ほほ笑む)
アカネ それにしても、この箱こんなに頑丈に蓋が開かないなんてそんなに大事なモノが入っているのかな?(箱を手に取り埃を払うように擦る)
マル まあ、先ほどアオイさんが云っていたように開けたら楽しくて大変なことが起きるらしいので出来るだけ箱を開けないようにしましょうか。
アカネ そうだね、あっでも、もしかしたら『開けゴマ』で開いたりしてね
マル この期に及んでそんなベタな呪文で開くわけ…
マルが云い終わる前に突然箱が光り出す
アカネ うわああ!なに!?突然光り出したよ!?
マル ええ!?そんなベタな展開なんですか!?
アオイ まさか、思ってたより条件緩かった感じ!?
三人 うわあああああああ!って、あれ?
しかし、なにも起こらなかった。
アカネ なにも起こらなかったね…
マル 私はてっきりこの後異世界に飛ばされる展開かと…
アオイ あ!でも見て箱が開いているよ
アカネ ホントだでも…なんにも入ってないね
マル これを見たらキノセさんは残念がりますね
アカネ それにしても、なんだったんだろうねさっきの?
アオイ まあ、とりあえず何事もなくて良かったね
マル そうですね、異世界に飛ばされなかったのは残念でしたが…
アオイ あっ二人とももうそろそろ日が暮れそうだよ
アカネ ホントだ、もうそろそろ帰らないと
マル では、アオイさん今日はこれで失礼します。
アオイ 気を付けて帰ってね
暗転
明転 語り手S登場
語り手S さて、本当に何も起こらなかったのだろうか?厳密にいえば『まだ』何も起こっていないだけだったんだけどね。この後一体何が起きるのかって?じゃあ、続きを観てみようか
暗転
明転 次の日は休みでアカネはマルと遊ぶ約束をしていてマルとの約束の場所に向かっていた。
アカネ (背伸びをしながら)今日もいい天気だな~こんな日は魚も羽が生えて空を飛んでいそうだな、なんてね魚が空を飛ぶわけないんだけどね~あはは(空をみる)
アカネが空をみると羽の生えた魚がアカネの上をイキイキと飛んで行った。
アカネ ………………うん、気のせいだよね
キノセ あら?アカネさん、ハトがマシンガンを食らったような顔をしてどうしましたの?
アカネ あっ!キノセさん今ねすごいモノをみたんだ…って、うええええ!?
アカリが振り向くとキノセの周りに数人のムキムキイケメンがいた。
アカネ …キノセさんその男の人達はだれ?
キノセ この方達はワタクシを守る親衛隊の方々ですわ
親衛隊1 うっす!
親衛隊2 えっす!
親衛隊3 おっす!
アカネ …どうも
キノセ で、先ほど仰っていたすごいモノってなんですの?
アカネ あ、えっと、うん、なんでもないよ今もすごいモノをみているから
キノセ 変な方ですわね、まあ、いいですわ。用がないならワタクシはこれで失礼いたしますわ
アカネ うん、気を付けて
親衛隊1 ではっす!
親衛隊2 これでっす!
親衛隊3 失礼いたっす!
キノセと親衛隊達去っていく。
アカネ …………………うん、なにアレ?
マル 待ってくださーーーーーーーい!
今度はなにかと振り向くと手足の生えたリンゴが走って目の前を通り過ぎて行った。
アカネ !?(言葉にならない驚き)
マル あっ!アカネ、手足の生えたリンゴを見ませんでしたか?
アカネ うん、見たけど!!もうやめて!!ツッコミが追いつかないからーーーーーー!
マル 少しは落ち着きましたか?
アカネ うん、全然…
マル そうですか。
アカネ ねえ、マル、言葉にするのも変なんだけどさ…なんで手足の生えたリンゴを追いかけてたの?
マル 面白いこといいますね。
アカネ ビンタしていい?
マル 冗談ですよ。実は、アカネとの約束の場所に向かっている途中にふと、手足の生えたリンゴのことを考えていたんです。
アカネ なんでそんなこと考えてたの?
マル 小さい子供達を笑顔にするマスコットを考えていたんですよ。
アカネ いや、あんなのがマスコットって子供達泣くよ?
マル そしたら、私の思ったまんまの『走るリンゴくん』が目の前に現れたんですよ。
アカネ 安直!しかも、もうほぼ名前が妖怪だよ!
マル もう、アカネ、人の最高の芸術作品にケチを付けないでください。
アカネ ごめんけど、アレはマルの美的センスを疑うよ!
アオイ やっとみつけたーーー!
アカネ 今度はなに!?(声のした方に身構える)
アオイ どうしたの?アカネ、そんな戦闘態勢なんかとって。
マル まあ、カクカクシカジカです。
アオイ ああ、なるほど。
マコト フッ、まったく…厄介なことになったな…
アオイ 誰のせいだと思ってるの?
マル アオイさんその隣で縄に縛られているいかにもこの状況の犯人っぽい人は誰ですか?
マコト いきなり失礼だな
アオイ この人はワタシの昔からの知り合いの黒崎誠って云うんだけどね…まあ、一言で云うと『この箱の持ち主』かな。
アカネ あ!昨日の箱だ
マル その箱は一体何だったのですか?
マコト その箱はな、とある森の祠に封印されていた『開けると夢の世界に閉じ込められる箱』だ。それを俺が持ってきてどこかに落とした
マル なんちゅーもん落としてるんですか
アオイ ワタシもはじめ聞いた時は思わずモンゴリアンチョップを決めてしまったよ
マコト フッおかげで両肩がクソ痛いがな
アカネ なんでカッコつけてるの?
マル どうします?アカネ、私達もダブルラリアットぐらい噛ましときます?
マコト やめてくれ
アオイ まあ、落ち着いてワタシのスクリューパイルドライバーが効いてるみたいだから勘弁してあげて
アカネ めっちゃボコられてるじゃん
マコト だが、この『夢箱』を開けるにはかなり複雑な手順を踏まないといけないはずだがお前達は知っていたのか?
アカネ 複雑な手順?
マコト ああ、確か祠に一緒に置いてあったこのメモによれば『まず、はじめに五人以上箱に触れて、その後にボールに当ててまだ箱に触れていない二人が箱に触れて最後に箱を擦り「開けごま」というと箱が開き夢の世界へレッツゴー』だそうだ
三人 ………。
マコト どうした?
アカネ マスターあちらの方に
マル コークスクリューブローを
アオイ 了解
マコト ちょっとまて
クウタ あのぉ
4人 !?
クウタ あっえっと…お取り込み中すみません
アカネ あれ!?クウタ
クウタ あっ、どうもこんにちはアオイさん、イロノさん、マルウチさんと…………何だかかわいそうなお兄さん
マコト 何故か初対面で同情されたぞ
アオイ クウタくんもココに閉じ込められちゃったの?
クウタ 閉じ込められた?
マル はい、ざっくり説明しますとあーなってこーなったんです。
クウタ なるほど
アオイ クウタくんは何かオカシナことあったかな?
クウタ オカシナことと関係あるか分からないんですけどそういえば、さっきキノセさんが変わった人に囲まれて歌っていました
アカネ それバリバリ関係あるよ!
マコト 何を云っているか分からないがとりあえずそこに行ってみるか
アオイ そうだね、クウタくん案内してもらってもいいかな?
クウタ え?はい
暗転
ポップな曲とともに明転
親衛隊達 ハイ!ハイ!!フッフフー!!!
タケル ハイ!ハイ!!フッフフー!!!
キノセ 今日はワタクシの素晴らしいステージに来て頂き誠に感謝感激雨霰ですわ。皆さんの気持ちに応える為にも最後までワタクシについて来てくださいな ミュージックスタート!
親衛隊達 ハイ!ハイ!!フッフフー!!!
タケル ハイ!ハイ!!フッフフー!!!天空から地上に舞い降りたキラキラ笑顔のフームちゃァァァァんアイッダアアァァァァァ!?(後頭部を引っ叩かれる)
マル 何ナチュラルに混じってるんですか
タケル なんだ、マルちゃんかぁ急に叩くなんてビックリしたよ。おや?よく知った顔と知らない顔がいるね
アオイ アカネこの子は?
アカネ わたしたちの同じ学校でクラスメイトのタケルだよ
マル タケル、こちらの女性がアマミくんのお姉さんのアオイさんでその隣でペットみたいに縄で縛られている人が今回の事件の主犯の『ま』ったく『こ』まった『と』らぶるさんことマコトさんです。
マコト さっきからひどい云いようだな…俺に恨みでもあるのか?
マル 手短に云うとカクカクシカジカです。
マコト さっきからそれで通じてるのか?
タケル なるほど、だからさっきから変なのを見かけるんだね~
マコト なんで通じてるんだ?
アオイ 変なの?
親衛隊達 ハイハイ!フッフフー!
タケル ハネが付いた魚が空を飛んでたり手足の生えたりんごの妖怪に追いかけられたんだ~
アカネ・マル …(目を逸らす)
クウタ 何それコワイ
マコト 何言ってるんだ?
親衛隊達 ハーイハーイ!ロ・マ・ン・ス!!
タケル そうなんだよ~めちゃくちゃ怖くてさぁ夢に出てきそうだよ
マル 今が夢の中ですけどね。
親衛隊達 ソレソレソレソレ!ハイ!ハイ!
マコト うるさいな!さっきから
マル そうですね、さっきから視界の端が気になってしょうがないです。
クウタ アレも夢の影響なのかな?
アオイ マコト、あの光る棒を振り回している人達はあの子の『夢』が造り出したものってことでいいんだよね?
マコト ああ、そうだな
アカネ え?どういうこと?
マル つまりはキノセさんに今の状況を『夢』と気付いてもらって目を覚ましてもらわないといけないってことです
アカネ なんだそれならカンタンだね。おーいフウム
マル あっアカネ不用意に近づいては
親衛隊1 なにやつ
親衛隊2 我らのアイドルフームちゃんに気安く近づくとは
親衛隊3 我々が許さない
クウタ いろのさんが光る集団に囲まれちゃった
アオイ ネーミングがダサいね
マコト いってる場合か!取りあえず助け…
キノセ (マコトの言葉を遮るように)親衛隊の方々お待ちのなってくださいな
親衛隊1 でゅふ、フームちゃんがオデに話掛けてくれた
親衛隊2 何云っているでごわすかオダだ
親衛隊3 否、それがしで候
親衛隊達 (親衛隊達揉めている)
キノセ アカネさん達ではありませんのもしかしてワタクシのステージを観に来てくれましたの?
アカネ あ、えっとねフウム今のこの状況は夢でねフウムに目を覚ましてほしいんだ
キノセ なにを意味の分からないことを言っていますの?
アカネ え?
キノセ もしかして、ワタクシのステージの邪魔をしに来られたんですわね
アカネ いや、ちが…(勢いよく遮られる)
キノセ 親友だからってワタクシの今までの努力を否定するなんて許しませんわ!覚悟してくださいな!
親衛隊1 フームちゃんの邪魔だてをする奴は容赦しない
親衛隊2 我らの愛を魅せる瞬間
親衛隊3 そう我らが名は
親衛隊達 フーム親衛隊!(キメポーズ)
一同 ………。
タケル ぼくも混ざっていいかな?
マル ややこしくなるのでやめてください。
アオイ これは困ったね。聞く耳持たずだね
マコト 相手がそのつもりならこちら側も受けて立つだけだ
アオイ え?
マコト 相手はたかが筋肉ダルマ三人だ。それに比べ俺たちは六人だ(意気揚々と前に立つ)
マル もしやこの人は女性に喧嘩に参戦しろという気ですかね?意気地無にも程がありますね。
マコト ………よしなら、まだ男が三人いる問題ない(拳を構える)
クウタ すみません、ぼくはケンカ弱いので遠慮します
タケル ぼくも物騒なことはあまり好きじゃないからエンリョーしとくよー
マコト フッ三対一か面白い…(戦闘態勢に入りしばらく様子をうかがう)………一旦出直そう(アカネたちのもとに走ってもどる)
マル なにしにいったんですか?
マコト フッ…命拾いしたな(威勢よく指をさす)
アオイ キミがね
クウタ どうしますか?
タケル ぼくにいい考えがあるよ
アカネ え?なに?
タケル まず、お兄さんに3人を相手にしてもらってぼくたちでキノセちゃんをちゃちゃっと抑えればいいんだよ
マコト 面白い冗談はさておき作戦とやらを聞こうか
マル タケルくんいい作戦ですね。
マコト よし、お前は頭を冷やせ
アオイ 頼んだよマコト、しっかり足止めしてよ
マコト なんだ?お前等俺に恨みでもあるのか?
アオイ この状況は誰のせいかな?
マコト ここは俺にまかせていけ
アオイ よし、まかせた
マコトは3人の男に立ち向かっていく。その隙に5人はキノセのもとに向かう。
キノセ 皆さんいったいなんなんですの?そんなにワタクシの邪魔をしたいんですの?
アカネ 違うよ!わたしはフウムに目を覚ましてほしいだけで
キノセ 夢をみるなっていいたいんですの?
アカネ いや、そういうわけじゃ…でも、夢から覚めてほしくて…
マル 難しいですね。説得しようとすると言葉に矛盾が発生してしまいます。
キノセ ワタクシの夢を否定しないで!
一同 !?
キノセ ワタクシはキラキラと輝いていて人々を笑顔にできるアイドルに憧れているんですの、だから、今度はワタクシがみんなを笑顔にできるアイドルになるっていう夢があるんですの!
アカネ …ど…どうしよう…
タケル まあ、夢から覚ます。つまり、現実に引き戻すってことだからある意味残酷なことをしているのかもね
アオイ だけど、このままこの中にいるわけにもいかないし…
マル せめて話ができればいいのですが。
クウタ もしかして、物知りなレイタくんならできるかも
一同 !?
クウタ きっとレイタくんなら説得できるよ
キノセ …レイタですって?なんでその名前がでてくるんですの?
マル …?反応しましたね。
クウタ ほら、キノセさんとレイタくんっていつも口喧嘩して仲がいいからきっと話してくれるよ
アオイ それって仲がいいの?
マル 喧嘩するほどなんちゃらです。
アカネ でも、レイタは今この場所にはいないよ
レイタ 呼んだかい?
アカネ え?
一同声のした方に振り返るとそこにはレイタの姿があった。
キノセ な!?なぜメガネがここにいるんですの!?
レイタ いちゃ悪いかい?ていうかキミはいったい何をしているんだい?
キノセ 観て解りませんの?ワタクシのステージですわ
レイタ ………はあ…くだらないね
キノセ !?
レイタ こんな《夢》に浸っているなんて呆れて言葉もでないよ
キノセ どういう意味ですの!?
クウタ レイタくんそんな言い方はちょっと…
マル …妙ですね。
クウタ え?
アカネ 妙って?
マル もう少し様子をみましょう。
レイタ この状況が現実ではないことぐらいキミなら気づいているんじゃないかい?
キノセ デタラメを言うなですわ!それに、アナタには関係ありませんわ!
レイタ 確かに関係ないが夢なんかに囚われている哀れなキミをみていると口を出さずにはいられなくてね
キノセ なんですって!?
マル なぜメガネくんはこの状況を把握しているんでしょうか?
クウタ いわれてみれば確かにそうだね
マル 私達は先程あちらでムキムキの3人にボコられているお兄さんに説明されるまでこの状況を理解出来ませんでした。それなのになぜメガネくんは一発でキノセさんの状況を夢だと分かったのでしょうか?
アカネ それは、レイタが物知りだから?
アオイ それはそれで知り過ぎてるね
クウタ あの…そろそろお兄さんを助けたほうがいいですかね?
アオイ 気にしなくていいよ
レイタ だいたいなんだい後ろの台は?
キノセ これはワタクシのステージですわ!
レイタ ふん、くだらない
ステージがポンッと消える。
アカネ え!?ステージが消えたよ!?
レイタ それにあのムキムキの3人は誰だい?
キノセ あの方達はワタクシの親衛隊ですわ
レイタ 親衛隊ねぇ…ちなみにキミは彼らの名前を言えるのかい?
キノセ ………ムキタ…ムキロウ…ムキタロウ
レイタ 今考えただろう…
キノセ うっ…
ムキムキの3人がポンッと消え地面に倒れていたマコトは何事もなかったように静かに立ち上がる。
マコト フッ造作もない
アオイ キミってバカだよね
レイタ こんなこともぼくに指摘されないと分からないのかい?ホントキミって奴は哀れだね
キノセ キイイイイイイ!なんでメガネなんかにこんなにいわれなきゃいけないんですの!?わかったわよ!わかった!これは《夢》!!夢ならさっさと覚めやがれですわ!そして、覚めたらメガネ!アナタを殴らせろ!ですわ!!
一瞬暗転の後キノセとレイタの姿がなくなっている。
アカネ ええ!?フウムとレイタが消えちゃったよ!?
マル やはりそうでしたか。
アカネ え?
アオイ どういうこと?
マル あのメガネくんはキノセさんが作り出した幻だったということです。だから、本来なら知るはずのないことを知っていたんですね。
クウタ でも、キノセさんはどこにいっちゃったのかな?
マコト 恐らくだがここが夢だと気がついて『現実世界』に帰ったと考えるべきだろうな
タケル それならなぜぼくたちは戻れないのかなぁ?
マコト お前、もしかしてだがコレを持ってないか(ポケットから星の形をした飾りを取り出す)
タケル あ!?それって(ポケットから同じモノを取り出す)
マル それってもしや箱についていた星型の飾りですか?
マコト ああ、そいつを持っていれば夢箱が開いても夢に囚われずにすむと書いてあった
マル タケルくんそれをどこで?
タケル 昨日学校のグラウンドの近くに落ちてたんだ
アカネ あ!?もしかしてあの時落としたんだね
アオイ あれ?わたしたちは持ってないよ?
マコト 夢箱が開いたのを見た人物も影響を受けないらしい
マル なるほどお兄さんとタケルくんは箱についていた飾りを持っていたからそして、私とアカネとアオイさんは箱が開く瞬間をみたから夢箱の影響を受けなかったということですね。………あれ?では、そうなると。
クウタ ぼくはなぜ影響を受けてないんでしょうか?
マコト なに?
クウタ えっーと、タケルくんのもっている飾りをもってなければ箱の開く瞬間をぼくはみてません
マコト それは知らん
アオイ 即答だね
マコト いや、このメモに書いてないからわからんものはわからん
マル せめてそれっぽい理由をちゃんと考えてください。
マコト そうだな…夢がないってことじゃないか?
アオイ 失礼だね
クウタ もしかしてかもしれないですけど、他のみんなの夢を覚ましたら覚めるってことですかね?
アカネ それってどういうこと?
クウタ たぶんだけど夢に囚われている人達を目覚めさせたらみんな外に出られるってことですよね?
マコト ああ、そうだな。夢をみている人を目覚めさせれば俺達は現実世界に帰れるらしい
クウタ じゃあ、たぶんですけどぼくも同じ条件なんじゃないですか?
マコト まあ、そう考えられるかもな
クウタ それかぼくが無意識に夢をみているんだとしたら後回しにしてみんなを先に目覚めさせたほうがいいと思います
マル そちらの可能性もありますね。ですが、クウタくんの云う通り他の人を目覚めさせたほうが効率がいいかもしれませんね
アオイ じゃあ、そうと決まれば今この世界に誰がいるかの確認をしたほうがいいかもね
アカネ うん、そうだね
マコト この世界にいるのは箱を触ったモノらしい
アカネ えーっと、箱を触ったのがたしか、わたし、マル、フウム、クウタ、ミズキ、トウマ、タケル
マル ?
空太 ?
マル 後、ハヤシ先輩、とアオイさんだったはずです。
アオイ さっき目覚めたフウムちゃんとわたしたちを除くと後はミズキ、トウマくんそして、ハヤシ先輩だね
マコト 3人か…なら手分けして探したほうが効率がいいな
マル それがいいですね。
クウタ どうやって決めますか?
タケル グーチョキパーでいいんじゃない?
アカネ うん、そうしよう!
アオイ じゃあ、みんないい?せーの
アオイのかけ声でみんな同時に出す。
アカネとクウタがグー
マルとタケルがチョキ
アオイとマコトがパーをだす。
マル キレイに分かれましたね。
タケル やったーマルちゃんとデートだね
マコト フッお前とかやはり俺とお前は切れない縁で繋がっているみたいだな
アオイ 気持ち悪いこと云わないでくれる?
アカネ がんばろうねクウタ
クウタ うん
アオイ じゃあ、みんな気をつけてね
マル ご武運を
アカネ みんなもがんばってね
3組に分かれて暗転
明転 語り手S再び登場
語り手S 3手に分かれて行動をはじめたアカネ達。さて、彼女達はいったいどんな《夢》と遭遇するのでしょうか?続きを見る前にわたしのことが気になるって?それは、まだいえないかな。おっと、誰が来たみたいだね。じゃあまた後で
暗転
明転 マルとタケルが登場
マル ?(少し周りを見回す)
タケル マルちゃんとのデート楽しみだなぁ~
マル これはデートではなくて夢から出る為に一緒に行動をしているだけです。
タケル もぉーわかってるよ~ノリわるいな~
マル 分かっているなら探してくださいよ
タケル 誰がこようがちゃちゃっと片付けちゃうよ~
マル まあ、おおよそ誰がくるか分かってますけどね。
タケル え?どういうこと?
マル 彼のもとへ向かっているが正しいですね。
タケル それがこの森ってこと?
マル はい、彼はウォッチングつまり自然観察が好きで休みの日はよくここにくるといっていました。なので、ここにいる確率が極めて高いです。
タケル へー周りをよくみてるね~
マル みてるというか単にみんなの趣味に興味があるってだけですけどね。
タケル ふーん、あれ?あそこにいるのって
マル 噂をすればなんとやらですね
彼に近づくと彼は二人に気づき振り返る。
トウマ おや?マルちゃんにタケルくんじゃないかどうしたの?
マル ウォッチングを楽しんでいるところすみませんね。
タケル ぼくたちキミを探してたんだよね~
トウマ ぼくを?
マル はい。少し説明が難しいのですが実は…
トウマ? おや?マルちゃんにタケルくんじゃないかどうしたの?
マル トウマ !?
突然もう一人トウマが現れ二人は驚く。そのトウマは双眼鏡ではなくけん玉を首にかけている。
マル ………なるほど、理解しました。
タケル やっぱりそうだよね?
マル トウマくんは双子だったと。
タケル たぶん違うね
マル 決めつけはよくありませんあれはきっとトウマくんに似た双子の弟ユウマくんです。
トウマ あっトウマけん玉の練習はどうだい?
トウマ2 ああ、順調だよ。トウマこそウォッチングはかどってるかい?
タケル おかしな会話だね~軽くホラーだよ
マル ですが、元を正せばつまり夢と気づかせればいいだけです。トウマくん…
トウマ3 おや?マルちゃんにタケルくんじゃないかどうしたの?
腰にカードケースをかけたトウマ登場。
マル ………なるほど、トウマくんは三つ子だったと。
タケル 現実逃避しないで
トウマ4・5・6・7 おや?マルちゃんにタケルくんじゃないかどうしたの?
さらに4人のトウマが出てくる。(4サッカーボールでリフティングしながら5ステッキから花をだしながら6スケートボードで滑りながら7バク転しながら)
タケル ………七つ子だったとはね~
マル 何言ってるんですか?現実をみてください。普通に考えて夢箱の影響に決まってるじゃないですか?ちゃんと考えて発言してください。
タケル あれ?なんでそんなに辛辣なのかな?
七人のトウマは互いに話出す。
マル しかし、これは困りましたね。
タケル なんでトウマが七人もいるのかな~?
マル 恐らくですが、夢が沢山あるということだと思います。
タケル 夢が沢山?
マル トウマくんは基本的に色々なことをそつなくこなせます。なのでその分《夢》も多いいのだと思います。今はまだやってみたいことや趣味に近いものだと思いますがそれが顕著に現れたんです。
タケル ふーん、でも、夢を持つってそういうことでもあると思うけどな~
マル まあ、そうですね。では、試しに…
タケル ?
マル おーい、トウマくん!
トウマ達 なに?
タケル うわっ!クラスに同じ苗字を呼ばれた人の反応だ~
マル トウマくんは確かテニスや剣道もやりたいって云ってなかったですか?
トウマ2 そういえばそうだったね
トウマ3 なら
トウマ4 増やしちゃおっか
そういうとテニスラケットを持ったトウマと面と胴を付け竹刀を持ったトウマが現れる。
トウマ8 これで
トウマ9 問題ないね
タケル 大ありだね~マルちゃんなんで増やしちゃったの?もしかして、楽しんでる?
マル 思いのほか楽しいですね。
タケル 楽しいって認めちゃうんだね~
トウマ5 これならぼくの好きなことを沢山出来るね
トウマ6 もし、足りなくなったらまた増やせばいいし
トウマ7 そうそうこれで《夢も叶えられるね》
マル それはどうでしょうか?
トウマ え?
マル けん玉、カードゲーム、サッカー、マジック、スケボー、ダンス…沢山《夢》があるのは理解しました。ですが、夢はそれで終わりでしょうか?トウマくんは確か他にも水泳、楽器、読書など沢山やりたいことがあると云っていましたよね?やりたいことが100個に増えたら100人に増えますか?先程のように人数を増やしてそれは夢を叶えたというのでしょうか?
トウマ そ、それは
トウマ2 夢ややりたいことは増えるから
トウマ3 しょうがないんじゃないかな?
マル そうです。夢ややりたいことは無限に増えていくんです。だから、人数を増やしたところで根本的な解決にはなってません。
トウマ …
マル それと正直私は増えたトウマくんをみて寂しいと思ってしまいました。
トウマ 寂しい?
マル トウマくんが私達のことを忘れているいうな気がして。
トウマ4 忘れるなんてそんな
トウマ5 マルちゃんとタケルくんのことはしーっかりと覚えてるよ
トウマ6 忘れるわけないよ
マル 私達の《友達のトウマくんは一人だけ》ですよ。
トウマ達 !?
マル 私とタケルくんは一人なんです。これから私達はどのトウマくんと遊んだり話したりすればいいのでしょうか?
トウマ そ、それは…
マル それとも、私達と遊ぶトウマくんを増やしますか?それじゃあ、残りのトウマくんとどう接しればいいんですか?
トウマ …マルちゃん
マル もう一度いいます。私達は一人ずつだし私達の友達のトウマくんは《一人しかいない》んです。だから、私達のことを忘れてこんなに増えてもらっちゃ困ります。
トウマ7 …そっか
トウマ8 …そうだね
トウマ9 自分のことに夢中で
トウマ マルちゃん達のこと忘れてたよ
一人ずつトウマは消えていって最後に本物のトウマだけが残る。
トウマ マルちゃんぼくは先に目を覚ますね。ありがとう。また、今度ね
マル はい。また。
最後の一人も消える。
タケル すごいよマルちゃん、トウマの目を覚ますことが出来たよ
マル …なぜだか上手くいきました。
タケル え?
マル 私は思ったことを言っただけなんですけどね。
タケル きっと、マルちゃんの気持ちが伝わったってことだよ
マル なら、よかったです。
タケル よーし、次いくよ~
マル あまり走り過ぎると転びますよ。
語り手S トウマを目覚めさせることが出来たマルとタケル。さて、次はこっちをみてみようか
マコト おい、アオイお前は今どこにむかっているんだ?
アオイ どこってミズキのところだよ
マコト ミズキってあのやるきのない目をしてなにを考えているのか分からなくてうすのろなお前の弟のことか?
アオイ それ以外にだれがいるの?しかも、姉の前で弟の悪口をいうなんていい度胸してるね。もう一度縛られたい?
マコト ふん、やれるもんならやってみろ。このガラクタ製造機
アオイ ほう、キミはそうとう死にたいようだね
マコト !?(なにかに気づく)おいアオイ、あれを見ろ
アオイ なに?その手には引っかからないよ
マコト そんな小賢しい手は使わん
アオイ そうやってわたしを…!?
後ろからなにかのエンジン音が聞こえる。
アオイ え!?こんなところに飛行機!?しかも。こっちにむかってきてる!?
マコト とりあえず避けるぞ!
二人は飛行機を避けると飛行機が目の前に止まりそこから一人の少年が出てくる。
ミズキ …ねえ、なにやってるの?
アオイ ミズキ!
マコト この飛行機はなんだ?
ミズキ …自家用の飛行機
マコト ほう、大層なものだな
アオイ そうだ、ミズキいきなりでわるいんだけどこれは夢でね。ミズキに覚めてもらいたいんだ
ミズキ …夢?
アオイ そう、だからこの飛行機もキミの創りだした幻想なんだ
ミズキ …そうか、ザンネンだ
アオイ それにこのままだとアカネちゃんやクウタくんが困まっちゃうからさ
ミズキ …そうなのか?
アオイ え?
ミズキ …ここにいたらアカネやクウタが困るのか?
アオイ そうだね。ミズキを含めてみんな夢から出られなくなっちゃうんだ
ミズキ …そうか、アカネやクウタが困るなら仕方ない
ミズキはヘルメットを取るとどこかに行こうとする。
マコト おい、どこに行く?
ミズキ …帰る
マコト は?
ミズキ …みんなの為にここから帰る
マコト ずいぶんといさぎいいな
ミズキ …夢ならいつでもみれる
マコト そ、そうか…こちらとしてはありがたいがあっさりすぎるな
アオイ …
アオイ、ミズキの背中を見つめる。
アオイ ねえ、ミズキ
ミズキ …なに?
マコト ?
アオイ ミズキの《夢》ってなにかな?
ミズキ ?
アオイ よかったら聞かせてくれないかな?
ミズキ ………
ミズキしばらく考えた後飛行機に近づく。
ミズキ …いつかじぶんの飛行機で世界中の空を飛ぶ
マコト …世界中
ミズキ …そして、青い海を空から眺める
アオイ 教えてくれてありがとう。ミズキのその夢おねえちゃんいっぱい応援するよ
ミズキ …ありがとう
ミズキ消える。
マコト ずいぶんとあっさりだったな
アオイ なに?もしかして、飛行機に縛って宙吊りで飛ばされたかった?
マコト いや、遠慮しておく
アオイ じゃあ、終わったしいこうか
マコト ああ
語り手S こちらは意外とあっさり片付いたみたいだね。おや?あちらはそうはいかないみたいだ。
アカネとクウタは呆然と立っている。
アカネ …ねえ、クウタ
クウタ なにかな?いろのさん
アカネ ちょっと聞いてもいいかな?
クウタ いいよ。でも、ぼくに答えられるかな
アカネ 大丈夫、状況確認も交えてるから…
クウタ わかった…なにかな?
アカネ ここって学校の野球グラウンドだよね?
クウタ そうだね、たぶん
アカネ なんで畑になってるのかな?
クウタ なんでだろうね?あのなすおいしそうだね
アカネ うん、おいしそうだね…あれ?あそこにいるのって?
アカネの目の先に手足の生えたリンゴが畑を走っている。
アカネ まだ、走ってたんだ
クウタ あれってなにかな?
アカネ あれはね、止まることなく走り続ける『走るリンゴくん』だよ
クウタ なにそれこわい
ハヤシ なんだ!お前!新種の外来種か!?
アカネ クウタ !?
ハヤシが走って現れ走るリンゴくんをしばく。
クウタ ああ…走るリンゴくんが無残な姿に…
アカネ マルには黙っておこう…
ハヤシ おや?キミは確か昨日の
アカネ あ、ハヤシ先輩この畑はなに?
ハヤシ これはぼくが耕した自慢の畑だよ
アカネ え?これがハヤシ先輩の夢?
クウタ ハヤシ先輩ってプロ野球選手を目指してるものと思ってました
ハヤシ 目指してるよ
クウタ え?
ハヤシ もちろんプロも目指してるけどぼくは《その先》をみてるのさ
アカネ その先?
ハヤシ うん、プロになって有名になれば親のつくる野菜が沢山売れて沢山つくれるようにしてあげるのがぼくの夢の先なんだ
クウタ すごい、立派です。ぼくも人の為になることがしたいんですけどまだなにをしたいか自分でもわからなくて
ハヤシ 夢をみつけるのに早い遅いなんてないからじっくりと考えればいいさ
アカネ そうだ、ハヤシ先輩いいにくいんだけど今ハヤシ先輩は夢をみていて目を覚ましてほしいんだ
クウタ そ、そうだった
ハヤシ ?この畑はぼくの夢ってことかい?
クウタ はい、いいづらいですがそうです
ハヤシ あの手足の生えたリンゴもかい?
クウタ はい、それはいいづらくないのでいいますが夢です
ハヤシ そうか、なら目を覚ますとするかな
アカネ え?いいの?夢をじゃましにきたわたしたちをバットでメッタメタにしなくていいの?
ハヤシ そんなことしたら野球選手の風上にもおけないね。それに夢は叶えてこその夢さ
アカネ ?
ハヤシ こんな面白い夢をみれたのもなにかの縁だからね。心の中に留めておくとするよ
クウタ ぼくも先輩のような立派な夢みつけてみせます
ハヤシ ああ、がんばってね
ハヤシ消える。
クウタ ぼくの夢か
アカネ いつかクウタにもすごいのがみつかるよ
クウタ うん、そうだね
語り手S こちらも見事解決出来たようだね。この後はみんな集まるはずだけどもうすこし様子をみてみようか。
タケル ねえねえ、マルちゃんの夢ってなにかな~?
マル いきなりですね。
タケル 気になったからね~
マル そうですね。わたしの夢はおじいちゃんの様な探偵ですかね。
タケル 探偵って事件とかをビシッと解決するあれ?
マル 世間からしたらその認識で間違いないと思いますが、本来は人探しやペット探しが多いいと思います。
タケル 地味だね
マル まあ、そんなものですよ。だけど、私はその地味なことでも真剣にやるおじいちゃんに憧れたんです。
タケル ふーん
マル タケルくんはどうなんですか?
タケル え?
マル 私に答えさせておいて自分は答えないなんて無しですよ。
タケル か~こりゃまいったね~
マル さあ、答えてください。さあさあ。
タケル 《命を救う人》かな
マル 命を救う?お医者さんとかですかね。それか、レスキュー隊もありますが。
タケル 後者かな
マル レスキュー隊の方ですか?
タケル マルちゃんも知ってると思うけどぼくって《もう家族がいない》からさ
マル …はい、昔とある災害事故でタケルくん以外のご家族は亡くなってしまったと…。
タケル ぼくって普段のんきぶってるけど本当はただの怖がりの弱い奴なんだよね~
マル ………。
タケル あの時救えなかった命をぼくは救いたいあの時ぼくを助けてくれた人みたいにね
マル ………。
タケル ………
マル タケルくん、私は君を道を選べる人だと思っています
タケル え?どういうこと?
マル 先程君は自分はのんきぶっているただの怖がりだといいましたがそれは自分の弱さを理解しているということです。
タケル それってかっこわるくない?
マル 寧ろ逆です。自分の弱さを知っていればどっちの道を進めばいいか分かるつまり道を踏み外さないということだと私は考えています。だから、自分を信じてあげてください。
タケル …ありがとう、マルちゃん
マル 辛いことを思い出させてすみませんでした。
タケル 全然いいよ、むしろ話したことですっきりしたかな~
マル なら、よかったです。
語り手S なるほどね、じゃあちょっと面白いことをしようかな
突然なにもないところに出るタケル後ろを向くがマルの姿がない。
タケル あれ?マルちゃん?
もう一度周りをみる。
タケル どこにいったんだろう。野糞かな?
カケル よお!タケルこんなとこにいたのか
タケル …え?………なんで?
カケル なにがだ?
タケル だ、だって…に、にいちゃんは…いや、かあさんだって…
カケル かあさんなら家で飯つくってまってるぞ
タケル !?…いや、違う…これは夢だ
カケル 夢でもいいんじゃないか?
タケル え!?
カケル 人間誰しも夢をみたくなるものだ。夢の中だけでも自由にしていいんじゃないか?
タケル …自由に…
カケル お前はよくがんばったよ。なにもかも失って一人になったんだからな。だから、もう自由になろう
タケル …そうだよね…もう、なにも抱えこまなくていいんだ
タケル、カケルの方へ歩み寄ろうとするが脳内でマルからいわれたことを思い出す。
マル 『タケルくん、私は君のことを道を選べる人だと思っています。』
タケル ………
カケル どうした?
タケル にいちゃん悪いけどまだそっちには行けないや
カケル !?
タケル ぼくはまだここに残りたいな(力強く後ろをみる)
カケル …そうか。…ひじょーにざんねんだな~ひさしぶりに家族との時間を過ごせると思ったのにな~
タケル かあさん達に謝っといてくれないかな
カケル 気にするな。ちゃんと伝えるよ《自分の居場所をみつけた》ってな
タケル ごめんね
カケル 謝るな。自分の決断を恥じるな
タケル ありがとう
カケル もし、自分の行動や生き方を信用出来ないっていうなら幽霊になって説教しに行ってやる
タケル はは、出来れば今回だけにしてほしいな~
カケル (何も云わずに微笑みながら消える)
立ち尽くすタケルのもとにマルが駆け寄ってくる。
マル タケルくん大丈夫ですか!?
タケル え?
マル 急にいなくなるものだからびっくりしました。
タケル あはは、ごめんね~野糞野糞
マル 夢の中なのにしたくなるものなのでしょうか?
タケル あいかわらず鋭いね~
語り手S なかなか面白い結果になったね。では、今度はあちらにちょっかいを出してみようか。
アオイ ねえ、マコト
マコト なんだ?
アオイ 素朴な疑問なんだけどさ、なんで、夢箱をみつけたの?
マコト なんでそんなことを聞く?
アオイ いや、深い意味はないけどなんか気になって
マコト そうだな、結論からいうとおれにも分からん
アオイ え?
マコト 自分でもなにを云っているのか分からんが呼ばれた気がしたんだよ
アオイ 箱に呼ばれたとでもいうの?
マコト もしかしたらトレジャーハンターの性かもな
アオイ キミって昔っから財宝だのお宝だのいってたもんね
マコト お前こそ骨董品で喜ぶ古臭い奴だったじゃないか
アオイ そんなこといったら財宝もお宝も似たようなものじゃないか
マコト バカをいうな財宝は男のロマン骨董品は腐ったマロンだ
アオイ キミ今すごい冒涜をしたよ、今度覚えといてね。かなり本気でメッタメタにしてあげるから
マコト ふん、やれるものならやってみろ
アオイ ほう、キミはわたしがキミに勝てないとでも思っているようだね
マコト おれが本気を出せばお前なんか古壺の様に粉々にできるぞ
アオイ 面白い冗談いうね
マコト …
アオイ …
二人睨み合うがアオイがなにかに気づく。
アオイ ねえ、マコトあれ!
マコト なんだ?そんな分かりやすい手におれが引っ掛かるとでも?
アオイ キミじゃないんだからそんな小賢しいマネはしないよ
マコト 甘いな、おれはそんなことでは…
アオイ いいからみろ(無理やりマコトの首を後ろにむける)
マコト ぐう…首が!お前はゴリラか!おれの首をもぎ取る気か!?…ってなんだあれ?
マコトとアオイの目の先になにかの建物がある。二人はそこに近づき確認する。
マコト なんだ?なにかの店か?
アオイ 『アンティークトレジャーショップ』って書いてあるね
マコト 遊園地のアトラクションかよ
アオイ ちょっと気になるしはいってみようか
二人ショップにはいる。
アオイ へえーなかなか面白いものがおいてあるね
マコト ふん、あいかわらず古臭い奴だ…お!これは高そうなものだな
アオイ キミこそ光ってればいいなんて考えが青いんだよ
マコト おれにはその価値が分からんからな、分からんものを語られたところで到底理解出来ん
アオイ まあ、強要させるつもりはないけど否定はしないでほしいな
マコト 否定なんてしていない思ったことを云っているだけだ
アオイ その考え方は否定しないけどたまには寄り添ってもいいんじゃないかな?
マコト しかし、ここはなんなんだ?
アオイ 聞きたいことがあるんだけどさ、これってさキミの《夢》だったりする?
マコト は?どういうことだ?
アオイ いや、わたしはこんなこと《想像》してないからさもしかして、キミの《想像》かと思ってさ
マコト おい、まさかとは思うが…
アオイ その、まさかかもしれないね
語り手S なにかに気づいたみたいだね。さて、お次は…
アカネ 後はみんなと合流すれば万事解決だね
クウタ そうだね
アカネ いろいろ驚いたけどちょっと楽しかったね
クウタ うん、みんないろんなことを夢みてるんだなって思ったよ
アカネ そうそう、わたしも夢にむかってがんばらないとね
クウタ いろのさんの夢?
アカネ うん、わたしの夢はね《すてきなおとな》になることだよ
クウタ すてきなおとなってなにかな?
アカネ え?えっとそれはね、背が高くてキレイですてきな人かな?
クウタ ほかには?
アカネ えーっと、運動ができて頭がよくてだれかに助けてもらわなくてもなんでもできる人かな?
クウタ …それってステキっていえるのかな?
アカネ え?
クウタ あっごめんね!いろのさんのいうことを否定したいわけじゃなくてそれはそれで《寂しい》なと思って
アカネ 寂しい?
クウタ うん、うまくいえないけど完璧でなんでもできちゃったら周りからこの人は助けがいらないんだなって思われちゃって本当に助けてほしい時に助けを呼べなくなっちゃうかもしれないと思って
アカネ …
クウタ それに、ひとりでなんでもできるようになりたいっていわれてちょっと寂しくなちゃうな。だから、頼りないかもしれないけど困ったときは頼ってほしいな
アカネ ありがとう、クウタ。わたしちょっとだけ勘違いしてた。そうだよね!なんでも自分でできるようになるよりトモダチを信じて頼るのがステキなことだよね
語り手S なるほどね、なかなか面白い考えだね。完璧にならなくてもいいきっと彼はそういいたいんだね。なんでもできることが完璧ではない。助け合っていくことで完璧とはいわなくても人は成長できるってことだね。さて、もうそろそろみんな集まるみたいだね。最後の仕上げといきますか。
アカネ おーい!みんなー!
アオイ アカネ無事だったんだね。よかった
アカネ え?
マル まあ、詳しい説明は省きますが、私達は先程不思議な体験をしたので。
アカネ フシギな体験?
マコト 恐らくだが、夢の妨害だ
クウタ 夢の妨害?
タケル そうそう幽霊みたいなのをだしてタチがワルイよね~
クウタ それはこわいね
アカネ でも、それがどうしたの?夢の影響ってことかな?
マル いえ、恐らくですが《もうひとり》いるんです。
アカネ もうひとり?
マル はい、《夢をみている人物がもうひとりいる》んです。
アカネ えっ!?
クウタ それってぼくのことじゃないのかな?
マル 私もはじめはそう思っていました。ですが、気づいたことがありまして。
アカネ 気づいたことって?
クウタ クウタくんって夢箱に触れましたか?
アカネ え?触れてなかったっけ?
クウタ え?ぼく箱には触ってないよ?
マコト なに!?
マル やはりそうでしたか
アオイ え!?どういうこと?
マル 私もアカネの言葉が少し引っ掛かっていたんです。
アカネ わたしの?
マル アカネは箱に触れたのはアカネ、私、キノセさん、ミズキくん、《クウタくん》、トウマくん、タケルくんと云っていましたが恐らくその前提が間違っていたんです。
タケル あれ?でも、ならなんでクウタはここにいるのかな~?
マコト そうだ、箱に触れてなければこの場所にいないはずだ
マル 私もはじめは気付かなかっただけでクウタくんは箱に触れていたと考えていました。ですが、先程の答えで確信しました。やはりクウタくんは《箱に触れていない》と。
アカネ えっ?ええ!?
アオイ ちょ、ちょっとまって!?ということはこのクウタくんは《ニセモノ》ってこと!?
クウタ に、ニセモノ…!?
マル いえ、それは恐らく違います。
タケル でも、キノセちゃんみたいに無意識に幻を造ってる可能性もあるよね
マル 私もその可能性を考えましたがキノセさんの造りだしたメガネくんは何故かすべてを知っていました。それは、何故でしょうか?
アオイ それは《その時》に造ったから?
アカネ え?どういうこと?
マル その時つまり状況把握をした上で造ったのとせずに造ったのじゃ大きく考えが変わると思います。
タケル まわりくどい言い方をするな
マル では、クウタくんと会った時の状況を思い出してください。
アカネ 確かわたしたちがこの状況に驚いていたんだよね?
マル その時なにを考えていましたか? クウタくんの事を考えていましたか?
アカネ 頭がパンクしててなにも考えられなかったよ
アオイ あっ!ということは!
マル はい、その時誰もクウタくんの事を考えてないのにクウタが現れたということは彼は本物です。
クウタ よ、よかった
マコト だが、待て!じゃあ、何故こいつはここにいる?
マル ここは思った事を実現出来る場所ですよね?
マコト は?御託はいいからハッキリいえ
マル なに簡単な事ですよ。答えは単純明快です。《誰かがクウタくんを連れて来た》んですよ。
マコト なにぃ!?
アオイ ということはつまり…
マル ここまで云えば解りますね?そろそろ出てきてください!
マルは誰かに向かいいう。すると、ひとりの人物が姿を現す。
語り手S おや?バレちゃったみたいだね
アカネ キミはだれ?
語り手S さあ?誰だろうね?
マル しらばっくれるのはやめてください。
アオイ え?マルは気づいてるの?
語り手S え~アナタに気付いてもらえないなんて軽くショックだね~
アオイ え?
マル アオイさん貴方のよく知る人物…いえ、よく知る子です。
アオイ わたしの?
マル 私の考えた結論ですが、恐らく夢箱の影響を受けるモノは《人だけではない》可能性があります。
アカネ 人だけじゃない?
マル アオイさん昨日貴方はどこに箱を置きましたか?
アオイ あの時は確か机の上に置いてその近くに…あ!
マル 気付いたようですね。
アオイ もしかして、《シロ》!?
語り手S せいかーい!そうワタシはアナタの飼い猫シロなのです。
アカネ ええ!?
マコト はあ!?猫にも影響するだと!?
タケル つまりキミは擬人化してぼくたちを持て遊んだってことかな~?
シロ まあ、正しくはワタシのカラダを貸してるかな。
アカネ 貸してる?
シロ キミ達が夢箱って呼んでいるその箱には本当はナニかが入っていたんだよ
アカネ え?なにもはいってなかったよ?
マル なるほど、あの光ですか。
シロ そう!あの光の中には本当は《魂》が入っていたんだ。
マコト 魂だと?
タケル でも、その魂はどこに?
クウタ あ!もしかして!
シロ そう、その魂は今《ワタシの中》に入っているんだよ。
アオイ シロの中に?
シロ そうだね、ひとつずつ説明するのは面倒だから一通り説明しようか。
シロ ことのはじまりはアナタの飼い猫のシロが夢箱に触れたところがことのはじまりだね。そして、あいことばを云ったことにより夢箱が開いてしまったんだ。そして、その中に入っていたワタシこそ『夢の魔物』がシロの中に入ってきたんだよ。そして、夢の魔物の意志にしたがってワタシはキミ達を夢の世界に閉じ込めたのさ
マコト なんでそんなことをしたんだ?
シロ 夢の魔物は昔から様々な人々の『夢』をみてきたんだよね。それが、彼の『存在理由』だから。
アオイ 存在理由?
シロ そう、例えば人間の生活には『生きる為のモノ』がいるよね?家に住む為には家を造る大工がいる。食べ物を買う為にはスーパーがいる。寝る為には布団がいるそしてそれを作る人がいるみたいに日常を過ごすつまり生きる為に必要な人達、仕事っていうのは絶対あるんだよね。その人達の『存在』が絶対生きていく為には必要なんだ。つまり、『夢をみること』もそれと同じなんだよね。
マル つまり、夢をみること、『夢をみせる』ことが夢の魔物の仕事ということですか?
シロ そう、本来夢っていうのは寝ている人『だけ』がみれるものなんだけど。夢の魔物はそれらを『繋げる』のが仕事なんだよね
アカネ つなげてどうするの?
シロ 繋げることで人々の夢って広がっていくんだよね
アカネ どういうこと?
マル 他人に影響を受けるつまり夢への『憧れ』を創るってことですか?
シロ そうだね、それが夢の魔物の意志だね
クウタ でも、なんでぼくはここにいるの?『夢のない』ぼくが
シロ それだよ
クウタ え?
シロ 夢がないと思っている『思い込んでいる』んだよね
クウタ 思い込んでる?
シロ キミは気づいてないみたいだけど、それか気づかないフリをしているのかな?
クウタ !?
マル それがクウタくんを呼んだ理由ですか?
シロ いいね!さすがの観察眼だね
アカネ クウタの夢って?
クウタ そ…それは…
シロ 『みんなが幸せになること』
クウタ !?
マコト みんなが幸せだと?
シロ 彼は実は誰よりも大きなそして純粋な『夢』を持っていたんだよ
アオイ 持っていた?
シロ そう、彼は優しかった。しかし、それが災いして沢山の人にイジメられ夢も否定された。だから、『夢がない』と思うことにしたのさ
タケル なんで、諦めちゃったのさ
クウタ それは、ぼくなんかにはできなかったから…
タケル ………
クウタ ぼくは、みんなが幸せになることを心から願っていたんだ………だけど、途中で気づいたんだ………みんなの嫌がることを押し付けられて、沢山バカにされて罵られて殴られて………ぼくの目指してきた『夢』はこんなものだったのか?って
一同 ………
クウタ だから、こんなに苦しいならいっそのこと『忘れて』しまおうって
シロ これが彼の心のそこに刺さっていたものだよ
一同 ………
アカネ また、はじめよう
クウタ え?
アカネ また、はじめよう!いちからでもいいここから何度だってはじめれるよ!
クウタ ………はじめる?………ぼくにできるかな?
アカネ きっとできるよ!クウタいってくれたよね!完璧じゃなくてもいいって!トモダチと助け合ってこそステキだって!だから、何度転んでも立ち上がればいいんだよ!
マル アカネの云う通りです。転んでも立ち上がればいいんです。ひとつ大人になるたびにわたしたちは成長できます。
アオイ そう、人生は苦労が付き物!だけど、それを乗り越えた先に幸せがついてくるよキミのいうみんなの幸せそしてキミ自身の幸せがね
タケル まあ、それでもくじけそうならいくらでも弱音を吐いてもいいと思うけどね。進んでるわけだし
マコト これでも、お前は無理だと諦めるのか?
クウタ ………………やってみます………ううん、やりたい!もう一度夢に向かって走りたい!
シロ 覚悟は決まったみたいだね
クウタ うん!ぼくはもう一度ここからはじめるよ!
シロ さて、ワタシの役目はここまでだ
アカネ え?
シロ 彼を連れてきたのはワタシだけどその後は彼の決断は彼にあったからね。そして、キミ達や夢をみた彼たちもね
マコト これはお前が仕組んだことではないと
シロ ああ、最後に決めるのは自分、わたしは夢を見せたに過ぎない長い人生でのほんの一瞬の『夢』をね
暗転、
明転、アカネは友人のマルとの待ち合わせ場所にむかう為に目的地に向かっていた。
アカネ 今日もいい天気!こんな日は魚に羽が生えて空を飛んでそう!………!!
慌てて空をみるけどなにもなかった。
アカネ さすがに、もう大丈夫だよね?
キノセが走りながらやってくる。
キノセ あら?アカネさんおはようございます
アカネ あ、キノセさん。おはよう、ランニング?
キノセ ええ、なんだか、今日はいつもよりがんばれる気がしまして
アカネ へえ、そうなんだ。なにかいいことでもあったの?
キノセ なんだか、変な夢をみた気がして
アカネ それって、どんな夢?
キノセ それが、なぜだか思い出せないんですの
アカネ そーなんだ
キノセ まあ、とにかく目が覚めたら夢のアイドルになる為にいつも以上にかんばれる気がしたんですの
アカネ うん、きっとキノセさんならなれるよ!がんばって!
キノセ ありがとうございます。それじゃあ、ワタクシはこれで……
レイタ やあ、二人ともおはよう
アカネ あ、おはよう、レイタ。昨日はありがとね
レイタ 昨日?なんのことだい?
アカネ あ、なんでもないよ!気にしないで!
レイタ キミはたまに変なことをいうね。まあ、いいさ。僕は、今から図書館に勉強をしに行くところさ。キノセ、キミは相変わらずカラダを鍛えているのかい?頭の方の鍛錬は不足しているんじゃないかい?
キノセ ………
レイタ おや?
キノセ ……なんでしょう…こんなムカつくことを言われているのに今日は怒る気になれないというか
レイタ ?
キノセ むしろなんというか例えていうなら恥ずかしいところを見られてしまったような?そして、なんだか危ないところを助けてくれて感謝しないといけないような?そんな不思議な気持ちですわね…なぜかしら?ヘンね………
レイタ お、おい、どうしたんだいキノセ?風邪でもあるんじゃないのかい!?
キノセ まあ、いいわ。ワタクシはそんなことに腹を立てている暇なんてありませんわ。ワタクシは将来キラキラと光る大舞台でみんなを笑顔にさせる為にもっとがんばらないといけないんですもの
レイタ ちょ!?キノセ!?待ちたまえ!今日のキミは本当におかしいぞ!
走り去って行くキノセをレイタは追いかける。
アカネ がんばってねー!
マル おはようございます。
タケル おはよう~
トウマ おはよう
アカネ あ、三人ともおはよう、あれ?今日はトウマくんとタケルとも遊ぶの?
タケル ぼくは待ち合わせだよ
トウマ ぼくは新しい趣味でもはじめてみようとこれからサイクリングに行くつもりだよ
タケル トウマ、また新しい趣味はじめたの?
マル 趣味が沢山あることはいいことです。でも、もう何人も増えたいなんて考えないでくださいよ?
タケル ちょ!?マルちゃん!?
トウマ 実は昨日までそんなこと思っていたけど不思議と今日はそんなこと思わないかな
アカネ え?そうなの?
トウマ ぼくは一人しかいないし、それに、その沢山の趣味を追いかけてその中のひとつの『夢』を見つけるのも悪くないかなと思ってね
マル いいこといった!成長しましたね!トウマくん!
トウマ え!?どういう意味!?
マル いえいえ、お気になさらずこちらの話です
トウマ すごい気になる言い方だね!?………まあ、とにかくぼくはこれで
トウマその場から立ち去る。
ハヤシ よーし!みんな次の大会は絶対に優勝するぞ!!
部員 おお!!!
マル あれは、先輩達の練習ですね。物凄い気合が入ってますね。
女1 きゃー先輩ー!がんばってー!
女2 全国制覇いけるわー
女3 すごいわ!消える魔球よー!
男 あのキャッチャーいい音鳴らしやがる
マル 先輩も『夢』に向かってがんばっているんですね。
野球部の練習場を過ぎる。
クウタ おまたせ!ごめん!またせちゃったね。タケルくん
クウタとミズキがやってくる。
タケル 全然大丈夫だよ~
アカネ おはよう、クウタ
クウタ おはよう、いろのさん、まるうちさん
ミズキ …おはよう(空を見つめる)
アカネ どうしたの?空になにかあるの?
ミズキ …なんか、楽しい『夢』をみた気がして
アカネ そうなんだ
タケル じゃあ、ぼくらはこれで失礼するね~マルちゃん昨日はありがとうね~
マル ええ
タケルとミズキ去って行くがクウタは首を傾げてその場にとどまる。
アカネ どうしたの?クウタ
クウタ あ、えっと、なんというかなぜだかわからないけどいろのさんにお礼をいわないといけない気がして
アカネ え?わたしに?
クウタ でも、なんでなのか思い出せないんだよね…
マル ………
アカネ そうなんだ、でも、わたしもクウタにお礼がいいたいんだ。『ありがとう』
クウタ え?
マル 思い出せなくても気持ちが伝わればいいと思いますよ
クウタ ………そうだね、うん!こちらこそ『ありがとう』!
アカリに気持ちを伝えたクウタはその場を去る。
その後、クウタと入れ替わる形でアオイとマコトが入ってくる。
アカネ アオイさん、マコトさん
マコト 遠目から夢箱の影響を受けた奴らの様子をみていたがタケル以外はやはり『忘れている』みたいだな
アオイ これで心配する必要はないみたいだね
マコト だが、当事者にしてみれば残念だったな
アカネ え?なんで?
マコト せっかく『夢が叶った』のに『全て幻』だったからな
アカネ んー?そうかな?
マコト ?
アカネ 今回みんなの夢をみたでしょ?それをみて夢っていきなり叶えちゃうものじゃないのかもと思って…
マコト は?どういう意味だ?
アカネ 夢にむかって努力するみんなはすごくてステキで『夢』は『見続けるモノ』でもあるのかなと思って
マコト はあ?わけのわからんことをいうな、夢は、すぐ叶ってしまうことに越したことはないだろう?
アカネ えっと、そうかもしれないけど…
アオイ わたしはアカネの気持ちはわかるな。夢を叶ってしまったみんなよりさっきみた『夢に向かう』みんなの方が素敵にみえたってことでしょ?
マル ええ、夢を追いかける内に自分もどんどん成長していく、『夢』ってそういうものかもしれませんね
アカネ そう!それっ!二人ともありがとー!
暗転、アカネ以外掃ける。
アカネ わたしの夢は『すてきな大人』になること!でも、昨日まで思い描いていたものとは変わっているかもしれない。だけど、トモダチと助け合ってもっともっと成長していく、それが、わたしの夢見る『夢』、『夢の中のメッセージ』だよ!
おしまい