第二話 動乱2
「……メタ・ワールド到着。お疲れさまでした。エージェント・ワタナベ」
機械音声が流れると共に、次元の裂け目を切り裂くようにして空間が現れ、ワタナベ、ティモン、そしてティナの3人が姿を現す。真っ白な無機質な空間では、マミが最初に声をかける。
「ワタナベさんこの子は?」
気絶した少女の体を抱きかかえ、ワタナベは口を開く。
「すぐにベッドへ。次元航行の一時的なストレスによる気絶だ。この子は重要参考人として聴取する必要がある」
「何か分かったのかしら?例の次元について」
パソコンを叩くと、数分でベッドを運んできた医療スタッフが現れる。ティナの体をその上に乗せると、彼らは別の建物へと移動していった。その間、ワタナベは先ほどまであった次元のことについて頭を整理する。
「現場を見る前に『侵入者』共の襲撃に遭った。多くは下級生命体だが、一部は明らかにオーバースペックだ」
「彼女の身元は?」
「襲撃された村の生き残り。名前は……」ティモンが思い出そうとするが、聞き忘れたことをいまさらのように思い出した。「ま、あとで聞きます」
「…また頭痛の種が増えたわね。次元内の住人をメタ・ワールドに連れてくるのは基本的に規約違反よ。認められているのは例外だけで」
「その例外が今回だ」ワタナベはまたか、といった感じであたりを見回した。
「俺たち第七課は残飯掃除が仕事だが、どうやらこの件、一筋縄ではいかなさそうだ」
「その根拠は?」マミが目を細めて言う。
「それを確かめる。すまんが、大図書室の入室手続きをしてくれ。大至急だ」