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私の幼なじみ  作者: 美咲優也
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 雨の中、色とりどりの傘が並ぶ学校までの道。

 私は駅から学校までそんなに遠くない距離を何故か春希と一緒に歩いていた。


「いつもより早いじゃん」

「違うよ、いつもより遅いんだよ」

「なんで? 今8時だよ?」

「俺いつも7時に学校来てるから」


 春希の言葉が信じられなくて、私は眉をひそめた。


「はぁ? どうして?」

「いつもは朝練があるから」


 

 ますます腑に落ちない。



「朝練って? 部活?」

「部活以外に何があるんだよ」



だって、春希が部活やってるなんて知らなかった。



 春希とはクラスが違う。しかも、春希のクラスは1年の階には無く、2年生の階に一クラスだけあった。

だから、春希と学校で会う事は殆ど無く私は春希が何をしているか、まったく分からなかったのだ。


「部活って何やってるの?」

「バスケ」

「バスケ?! あんたがバスケ?」

「なんだよ、俺がバスケやってたら悪い?」

「悪かないけど……」

 


 春希がバスケやってるなんて知らなかった。



「あ、山本だ! じゃね紗智!」


 春希は前に居たクラスメイトを見つけると、走ってそばまで駆けていった。



 春希がバスケ、春希がバスケ……。 何だ、最近モテるようになったのはバスケのせいか?



 どんだけ背が高くなろうが、バスケをしようが、春希は春希だ。たかがバスケをしているだけで

 アイツがモテるなんて、私には分からなかった。





「紗智、おはよう」

 

 後ろから声をかけられ、私は振り返った。


「おはよう、桜」


 白地にピンクの水玉模様の傘をさした女の子、白鳥桜シラトリサクラ12月生まれの15歳。桜とは中学からの友達で、今はクラスは違えど大の仲良しだ。

 サラサラのロングヘア。お姫様カットがよく似合うお嬢様。


「今走って行ったのは、人の部屋で勝手に寝る単細胞?」


 のわりに言葉遣いが悪い、見た目とは正反対な性格の持ち主だった。


「そうなんだよ、アイツ昨日も人の部屋で寝てたんだよ」

「乙女の部屋に勝手に入るなんて、いつか天罰が下るわね」

「下れ下れ!」


 二人で春希の悪口を言いながら、私達は校門まで一緒に歩いて行った。






「そういえばさ、桜は春希がバスケやってるの知ってた?」

「春希くんがバスケ? お化けの間違いなんじゃなくて?」


 とんちんかんな事を言う桜に


「違うよ~、バスケだよ。春希がバスケやってるんだって」


 私は笑いながら言った。


「初耳だわ。春希くんって運動音痴じゃなかったかしら?」

「確か、そのはず」

「その運チの春希くんがバスケをやっているの?」



 運チって……。桜も、もうちょっと口が良ければもてるのに……。



「みたいよ。いつも一緒に学校来ないからてっきり遅刻魔かと思いきや、実は毎日朝練で早くに来てたんだって」

「意外だわ、春希くんがバスケをやってるなんて……」

「しかも、最近クラスの女子によく聞かれるんだよ」

「何を聞かれるの?」

「『高橋くんって、彼女居るの?』って」

「……」

 




 桜は信じられないと言わんばかりに、目を丸くした。やっぱり昔から春希を知る人物には、最近の春希の人気っぷりは納得がいかないらしい。


「でしょ? やっぱり、信じられないでしょ! なんでアイツがモテるんだろうね?」

「トロくて、メガネで、気が小さくて、泣き虫だった春希くんが女の子にモテるの?」



 桜、そりゃ言いすぎだ…。



 私は桜が普段、春希をどう見ているのかが分かった気がした。


「分けわかんないよね。アイツの何処がいいんだろう?」

「まぁ、今はメガネもポイントも一つに入るみたいだし、そういうのが好きな子もいるのよ」


 ふ~んと、傘をくるくる回しながら私は少し考えて


「今日春希んとこの部活、覗いて見ようかな~」


 誰に言うのではなく、なんとなく呟いた。





「春希くんが気になる?」

「気になるって言うか、ん~、何だろう。幼馴染の私が知らないで、周りのみんなが知ってるって何か変」


 眉をひそめて、口をへの字にして、私は思った事を桜に言った。


「紗智は、春希くんの事全部知りたいの?」

「知りたいっていうか、知ってて当たり前だったから、最近一緒にいないせいか違和感があるんだよ」

「ふ~ん」


 校門を抜けて下駄箱で靴を履き替えていた桜は、突然私の前に来て


「春希くん、スキなの?」


 真顔で答えた。


「はぁ? 何でそうなるの?」


 私はビックリして靴を落としそうになった。





「だって、春希くんの全部、知ってたいんでしょ? それってスキだからじゃないのかしら?」

「違うよ~、春希は家族みたいなもんだよ? ってか弟? ん~、子分?」



 あれ? 子分じゃ桜よりヒドイか?



 上履きに履き替え、教室に向かおうと階段を上る間も話は続く。


「だから、私が春希の事を知らないのっておかしいじゃん?」

「そうかしら? 誰だって知らない部分はあると思うわ」

「そうかな~? だって私、春希がいつオムツが取れたとか、いつ歯が生え変わったとか、初恋の相手とか成績がどのくらいとか、

身長、体重、性格、ぜ~んぶ知ってるんだよ? なのに、最近のアイツが分からないんじゃ完璧にならないじゃん。私の情報」

「情報って…、紗智は春希の分析がしたいの?」

「そうじゃないよ。んー…、なんて言ったらいいのか」


 自分でも何が言いたいのか分からなくなって、頭を抱えた。




「とにかく、私が春希の事を知ってるのは当たり前なの。だから、最近の春希の事も調べるの!」


 言い切った私に、桜は何とも言えない複雑な顔をした。


「紗智がそういうなら、それでいいんだけどね」

「よし! じゃぁ、今日部活見に行こう!」

「え? 私も付き合うの?」


 教室の前で驚いた桜に、私は


「当たり前! 授業終わったら迎えに行くね♪」


 そう言って、桜に手を振り自分の教室に入った。


 


   



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