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ベストを尽くしている。大丈夫だ。

プロットは出来ていませんが。書くことにしました。

走りながら考えていきます。

いつものスタイルです。

 物心とは何か、それを教科書で知った時はもうすでに物心がついてしばらくたった後だった。その時は自分というものがいることは知っていたが目的は何も与えられなかった。それがどんなに恐ろしい事か、その時点では自分では気づけなかった。


 鏡の前に立ってみる。ストレートな髪の毛は上品さを感じさせる。小ぶりの顔に大きな目はアニメキャラのようなくっきりとした輪郭で密集したまつ毛がアイラインを際立たせていた。もちろん二重瞼だ。鼻すじはまっすぐでそこそこ高く、口元はりりしく一文字に結ばれている。一応、申し分のない顔立ちだった。子の顔ならば、女生徒に好印象を与えそうだ。僕は微笑んだ。眉毛が下がり目が細く湾曲したが問題のないさわやかな笑顔だった。クラスメイトで1、2を争う美人の弓削彩夏(ゆげさやか)に告ってもOKをもらえそうだ。僕は浮足立った。体温が2度ぐらい上昇したような気がした。


「それがどうした」


 謎の声が聞こえる。一瞬背筋に冷たいものが走った。なんだろう今の声は、空耳かと思って気にしないことにした。なぜか、考えるつもりもなかったのに弟のことが頭をよぎった。勇樹(ゆうき)は一つ下だが全然僕に似ていない。外見もだが性格もだ。髪の毛はくせ毛でまとまらず、ゲジゲジ眉毛の下に奥まった一重まぶたの小さな瞳。鼻は横に広がって大きく、歯は乱杭歯だった。これでもう少し性格がまともなら良かったのだけど、外見に比例して暗くて愚痴っぽい性格だった。正直に言うと弟はいるだけで嫌な気分になった。弟は勉強も運動もできず、何より努力嫌いでいつも寝てばかりいた。そんな愚鈍(ぐどん)な弟がいることは、できれば隠しておきたかった。だから学校では極力弟の話はしなかった。


 実際に僕の通っている高校は進学校でもあるし、弟の学力ではとうていたどり着けないだろう。その点では安心していたし、そんな弟に勉強を教える気もしなかった。もう少し幼かったころ、二、三度教えてはみたけど、ものすごく呑み込みが遅く、かつやる気も感じられなかったので呆れた僕は二度と弟の勉強をみるまいと心に決めた。


 僕の人生は、このまま進学していい会社に就職すれば将来は約束されたものだろう。今の日本はとても厳しい状況なのだが、上に上がってしまえば被害は最小限で済む。あとは人生を謳歌していけばいい。でも弟はどうなるのだろうか、勉強も運動も駄目で容姿も悪く、とりたてて人より秀でた才能も何もない弟、そんな弟の人生は……。まあいいや、自己責任だ。


 ところで、僕も弟も何で生きているんだろうか。僕には将来の夢や目的があるが、弟は何を目指して生きているんだろうか? まさか毎日見ているアニメ番組だけを(かて)に生きているんじゃないだろうな。いやそれもありえるか。とここで弟の志の低さにげんなりした。


「おまえはなんだ」


 また変な声が聞こえた。二度目だ。いやこれは、たまたま雑音がそれらしく聞こえているだけだと思って無視することにした。おまえはなんだ。僕は、将来的には医療関係の企業に就職して、医療機器を開発しようと思っている。もちろん、病気で苦しむ人たちのために。高校生にしては十分すぎるぐらいまっとうな将来の夢だろう。誰も文句はつけられないはずだ。


「ただいま。今帰ったわ。那佐(なさ)、勉強してた」

 母がパート先のグループホームから帰宅した。そしていつものセリフ。はいはいわかってますよ。でもその言葉は弟に向けてくれないかな。勇樹の方が受験だろ。大変な時だから。気になった僕は弟の部屋を覗いた。彼は寝っ転がってゲームをしていた。懲りない奴。


「同僚の小野さんがまたミスしてねぇ。あの人向いてないわ」

母の愚痴が始まる。同僚の小野さんは母より一回り上の男性だがパート職員でもある。経験が浅いのもあるんだけどとにかく要領が悪くて、何度教えても同じミスを繰り返している。ただ、介護業界は人手不足も手伝ってそんな役立たずでも置いてもらえる職場だった。


 母の相手もそこそこにして、僕は自分の部屋に戻った。弟はまだゲームをしている。「おい。勉強はどうした」と語気を強めると彼は首をすくませた。弟の身の上が案じられた。あいつは将来どうするつもりなんだろうか。まさか、僕を頼る腹づもりではないだろうな。やってられるか。僕は気持ちを切り替えて参考書に集中した。理性的な心で将来を見据えて計画を立てて進んでいけば、よほどのアクシデントがない限り順風満帆で進めるはずだ。だから僕は安心して学園生活を送れる。ただ現時点で将来が定まっていない弟が心配だった。僕は中学校にいた時点で将来の進路という物を意識して高校を決めた。果たして弟はそこまで考えているんだろうか。


 時計が時を刻む音をかき消すように勉強に熱中した。参考書のフレーズが頭を占領するが脳は記憶の力で難解な言葉を咀嚼して海馬に送り込む。その一連の動きが心地よい。たったこれだけの作業なのになぜ弟は勉強もせずゲームに浸るのだろうか。僕はひらめいた疑問を横にどかすと再度脳の記憶作業に取り掛かった。



 

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