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【書籍9巻&ジュニア文庫2巻発売中】この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い【web版】  作者: 暁 晴海
第二十章 帝国との対決編

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狂人化と悪夢

この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻及び、ジュニア文庫2巻も発売中です。よろしくお願い致します!

通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。


※書籍9巻の特典です※


◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』

◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』

◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』

◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』

三人の獣人姫達の目が、一斉に私へと向けられる。


『――ッ!』


目と目が合った瞬間。ジェンダとロジェは、無機質だった表情をガラリと変え、犬歯を剥き出しにしながら、フーッフーッと荒い息をつく。その姿はまるで本物の獣のようだった。


そして、妹姫達が私達に……いや、私に憎悪を向ける中。レナーニャだけは、赤く染まった瞳孔にねっとりとした喜色を灯しながら、オリヴァー兄様だけを見つめ続けている。


――『娶りの戦い』で、まさかの敗北を味わわされた屈辱と憎しみ。そして『番』に対する愛情と執着。


彼女達はシリルの『魔眼』によって、己の中の『欲』と『本能』に突き動かされ、動いているようだ。


「……獣人王国で王侯貴族だった生き残り達を管理している部族から、処刑寸前に彼女達が突然消えたと連絡が入っていたが……。まさか、こんなところにいたとはね。王宮の『影』達が足取りを掴めなかった訳だ」


オリヴァー兄様はそう呟くと、チャキ……と、刀を構え直した。


「いいだろう。あの時から続く忌々しい因縁、今この場で断ち切らせてもらう!……エレノア。僕が戦っている間、結界を張って自分の身を守るんだ」


そう言い放ったオリヴァー兄様の横顔は険しく、燃えるような深紅に変わった瞳は、真っすぐにレナーニャへと注がれている。でも、その瞳に宿る感情は、レナーニャのソレとは真逆なものであった。


「ははっ!流石は本能に忠実な獣人だ。『番』に対する執着が、憎い仇への殺意を上回るか!さあ、お前達!!僕が与えた『力』を存分にふるい、本懐を果たすがいい!!」


言葉と同時に、シリルの金色になった瞳が怪しく光る。その直後、レナーニャ達と、目の前にいた筈のオリヴァー兄様の姿が消えた。


「――!?」


硬質な金属がぶつかり合う音が、周囲に響き渡る。


気付けば私の目の前で、オリヴァー兄様とレナーニャ。イーサンとジェンダ。そしてティルとロジェが、それぞれ真向から対峙していた。私もオリヴァー兄様に言われた通り、結界を張ろうとする。


だがその時、信じられないものが目に飛び込んできた。


「え!?あ……れは!?」


シリルの『魔眼』によって『狂人化』された影響からなのか。なんと、私が切り落とした筈のレナーニャの尾が九本全て再生しており、それらが一斉にオリヴァー兄様へと襲い掛かった。


「オリヴァー兄様ッ!!」


「エレノア!何をしている!!早く結界を!!」


「――っあ!?」


オリヴァー兄様が叫んだと同時に、シリルが目の前に迫り、思わず身体が硬直してしまう。


『エレノアちゃん!』


だが次の瞬間。青銀色の球体が私の周囲に展開し、私へと伸ばされたシリルの腕を弾き飛ばした。


「――!?……チッ!」


「奥方様!!」


見れば、私の胸元に白い半透明のカメが張り付いていた。……い、一体いつの間に!?


「ふん、ヴァンドーム公爵家の大精霊か。……だがその姿、精神体だな?……ふ……。いくら神聖力に長けた大精霊であろうとも、この瘴気の中、いつまで保つかな?」


そう言って嗤いながら、シリルは結界を破壊せんと魔力の斬撃を次々と繰り出していく。それに応戦すべく、私も結界を強化しようとするが、すかさず奥方様に止められた。


『ここは私に任せて!エレノアちゃんは「浄化」に専念しなさい!!』


「――!!」


咄嗟に、結界の外で呪詛を吐き続ける『彼女達』へと目を向ける。


『……そうだ。一回失敗したぐらいで諦めるな!それに、「彼女達」を救う事が、結果的に皆を助ける事に繋がっていくんだから!!』


私は再びその場に跪くと、両手を目の前で組み祈り始めた。





◇◇◇◇





「……ふむ。これがお嬢様と敵対したという肉食系獣人ですか。『魔眼』の支配を解けば、少々楽になると思ったのですが……。どうやら見た目の通り、だいぶ脳筋な方のようですね。驚く程理性が欠片も残っていない」


そう言いながら、イーサンは次々と繰り出されるジェンダの拳を『闇』の触手で防ぎつつ、全身に巻き付かせようとする。が、そうなる前にジェンダの拳に叩きつけられ、『闇』の触手は次々と霧散していってしまう。


「やれやれ。ここまで相性が悪い相手は久し振りです」


眉間にクッキリと皺を寄せ、『闇』の触手と己の身体能力でジェンダの攻撃をかわしているイーサンの姿を目の端に映しながら、オリヴァーは鋼鉄のような強度を持つレナーニャの尾を刀で弾き続けた。


『……あの「娶りの戦い」の時と同様……いや、それ以上のパワーだ。しかも、反射速度までもが驚異的に上がっている!』


しかも、精神に直接作用する『闇』の魔力を物理で破壊しているのだ。確かにイーサンにとって、厄介極まる相手だろう。


だが、イーサンはバッシュ公爵家本邸を預かる『影』の総帥。『闇』の魔力を使わずとも、物理攻撃はクライヴと張る程の実力を持っている。実際、一通り交戦した上で、『闇』の触手は防御に回し、武術での攻撃をメインにするよう決断したようだ。


「チッ!!ちょこまかと、すばしっこい猫だな!!」


ティルの方はと言えば、その卓越とした素早い剣技と『雷』の魔力を使い、ロジェを仕留めようとしている。……だがジェンダと同様、『狂人化』させられた影響からか、気配すらも感じ取れない程の圧倒的なスピードで、刃と魔力の攻撃をかわし続けている。


「――ッ!!」


しかもそれだけではない。ティルの纏ったローブや剥き出しになっている肌を、ロジェの爪が容赦なく切り裂いていく。


『雷』の魔力は広範囲に影響する為、巨大な敵や大人数の敵をまとめて仕留めるのに向いてはいるのだが、尋常ではない素早い動きをする単騎の敵を討ち取るのには向いていない。


そう考えると、ジェンダと対峙しているイーサンと同様、ティルにとってロジェは、圧倒的に相性の悪い相手なのだろう。


だが、流石はイーサンの片腕。驚異的なスピードを誇るロジェの攻撃を紙一重に避け、自身を切り裂こうとする長く尖った爪を、『雷』の魔力を宿した刃で砕く。……だが。


「――チッ!やはり再生したか!!」


砕け散った筈のロジェの爪が、瞬く間に伸びて元通りになっていくのを目の当たりにし、ティルが忌々し気に舌打ちをした。


イーサンと対峙しているジェンダの方も同様で、『闇』の触手で手足を貫こうが、手刀で首を折ろうが胴体を切断しようが、瞬く間に再生してしまっているのだ。


――『魔眼』の力によって相手の願望や欲望を増幅させ、その身体能力を極限にまで高める。更には生命力を糧に、一時的に驚異的な再生能力を使えるようにする。これこそが、『狂人化』の恐ろしい能力なのだ。


自分も先程から、幾度もレナーニャの尾を断ち切っているというのに、その度次々と新たな尾が生えてくる。……というか、流石はイーサンとティル。敵とはいえ相手は一応女性であるというのに、その攻撃に躊躇も容赦も一切ない。


「……まあ、それは僕も同じだがな!!」


オリヴァーは、エレノアの周囲に展開している結界を破壊しようと魔力を叩きつけ続けているシリルをチラリと見やると、ギリ……と奥歯を噛み締めた。そして、最愛の者の元へ一刻も早く駆け付けるべく、目の前の障害(レナーニャ)からの攻撃をかわしながら、最も効果的かつ確実に相手を倒すタイミングを見極める。


――今だ!!


レナーニャの身体を守っていた数本の尾を同時に切り裂いた一瞬の間。無防備に全身が晒されたそのタイミングを逃さず、詠唱を唱えたと同時に思い切り刀を振り被る。


「紅の炎よ。全てを焼き尽くす業火の矢となりて敵を貫け!『紅蓮の矢(クリムゾン・アロー)


炎の矢がオリヴァーの刀から、光の速さでレナーニャに命中する。


【ギャアアアアァー!!!】


爆発音と共に赤から青へ。凄まじい火柱が立ち昇り、絶叫が響き渡った。


「……生命力がある限り再生するというのであれば、再生出来ない程に破壊し尽くしてしまえばいい」


火柱の中、徐々にレナーニャであろう人影が、ボロボロと崩れていく。


【……リ……ァー……クロ……オリ……ヴァー……わらわ……の、ウンメ……ィ……】


途切れ途切れに漏れ聞こえてくる声に、一瞬だけ眉を顰めた後。オリヴァーはその場から踵を返した。


『あんな過去の幻影に構っている暇はない!早くあいつ(シリル)を排除して、エレノアを救わなくては!!』


見れば目を瞑り、ひたすら祈りを捧げているエレノアの周囲に展開している結界が、シリルの攻撃で所々ひび割れてしまっているのが見える。


「エレノアッ!!」


カッと頭に血が上り、シリルに向け刃を一閃すると、紙一重でかわされる。更に踏み込むと、シリルの方も素早く抜剣し、自身に振り下ろされるオリヴァーの刀を受け止め弾いた。


「おやおや、せっかくの『運命』との感動の再会なのだから、もっとゆっくりすればいいのに」


「生憎だが、僕の『運命』の相手はエレノアだけだ!!」


憤怒の表情を浮かべるオリヴァーを更に挑発するように、シリルは嘲笑を浮かべる。


「自分を慕う女に対し、情け容赦のないその態度。君って本当、アルバの男というより、我々帝国人に近いんじゃないのか?」


「ぬかせ、外道!!」


シリルの、目にも留まらぬ剣捌きに防戦一方になりながらも、オリヴァーはエレノアを背に庇うような位置に立つ。見ればシリルの金色に輝く瞳の中、縦に割れた瞳孔が赤く染まっていた。


『この男……!ひょっとして、自分自身にも「狂人化」を……!?』


「――ッ!?」


不意に凄まじい殺気を感じ、オリヴァーの意識が一瞬だけ逸れてしまったまさにその時。白刃がオリヴァーの胸元へと突きたてられたのだった。


エレノア廃はエレノアの敵に容赦しません。


観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!

評価して頂けるとモチベに繋がります!

次回更新も頑張ります!

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◇書籍1巻表紙です◇
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◇書籍2巻表紙です◇
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◇書籍3巻表紙です
i775851

◇書籍4巻表紙です
i806366

◇書籍5巻表紙です
i835027

◇書籍6巻表紙です
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◇書籍7巻表紙です
i921558

◇書籍8巻表紙です
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◇書籍9巻表紙です
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― 新着の感想 ―
わー!!オリヴァー兄様がー!! 無事だと信じて更新待ちます!
オリヴアー兄様も皆も大ピンチです。 続きが気になりすぎますよ。なる早で 次の更新お願いいたします(無茶なお願い十分承知です)私の愛するオリヴアー兄様が心配です。
ええええー!オリヴァー兄様がぁ〜! 突き立てたと思わせといて実は…ってやつですか? それともそれとも、オリヴァー兄様の瀕死にエレノアが更に覚醒するパターンですかっ!(動揺)
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