異世界人召喚の真実
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【あいつは……!】
【あの腐臭に満ちた邪悪な魔力!皇家直系か!!】
【よくも私達を……!】
【殺せ!息の根を止めろ!!】
帝国の行った『異世界人召喚』に巻き込まれ、辛酸をなめ尽くし、この国を呪う怨霊となり果ててしまった『彼女達』。
その『彼女達』が最も憎み呪う対象である、皇家直系がこの場に現れた事により、再び怨嗟と呪詛という『負』の感情が『彼女達』を飲み込んでいく。
「――ッ!!お、落ち着いてくださいっ!!」
私は慌てて祈りの力を強化した。けれども先程と同じく……いや、それ以上に強力な『負』の感情が祈りの力を弾き返してしまう。
しかも、先程まで広範囲に咲かせていたペンポポスミレが瘴気により、次々と萎れ消滅していってるのだ。小人の私も頑張っているが、圧倒的とも言える憎しみの波が強烈な瘴気と化し、容赦なく周囲に撒き散らされていく。
『……折角、「彼女達」を救うと同時に、「邪神」の供給源を断てる筈だったのに……!このままでは「邪神」の力を削ぐどころか、更に「邪神」の力が増してしまう。そうしたら、あちらにいる皆が……!!』
しかも、ここに因縁の敵であるシリルがいるのだ。事態は振出しに戻ったよりも最悪な方向へと向かっている。まさに四面楚歌。
『でも、こんな状況下だからこそ、私がなんとかしなくては……!!』
それに、オリヴァー兄様やイーサン、そしてティル達が私を守ってくれている。だから……大丈夫だ!!
戸惑いや恐怖、絶望といった『負』の感情を無理矢理押し込め、私は荒ぶる『彼女達』に少しでも届くよう、全力でもって女神様に祈りを捧げ、浄化の要たるペンポポスミレを咲かせていった。
◇◇◇◇
オリヴァーはそんなエレノアを背後に庇いながら、自分の愛刀を手にシリルへと対峙する。そして、殺気のこもった眼差しを向けた。
「……僕の愛しい婚約者に対し、その不快な言葉と不躾な視線を向けるのは止めてもらおうか。帝国第四皇子シリル。というか、生きていたんだな。てっきり、作戦が失敗した責任を取らされ粛清されたかと思ったが……。先の皇帝陛下は、存外お優しい性質だったようだ」
侮蔑と怒りのこもった低い声と共に、赤と黒のオーラがオリヴァーの全身からゆらりと立ち昇り、まるで灼熱のマグマのように相手を焼き付くさんと猛り狂う。
だがシリルの方はというと、そんな状態のオリヴァーや、彼が口に出した挑発に動じる事無く、蔑んだような表情を浮かべながら嗤い続けていた。
「ふ……。敵陣の真っただ中。しかも、己の力を全力で出せないこの状況下で、威勢の良い事だ。ははっ!その麗しい顔が絶望と屈辱と鮮血に塗れ、のたうち回る様を見るのが、今から楽しみでならないよ!!」
その瞬間、『闇』の触手が四方八方からシリルへと襲い掛かり、その身体に巻き付いていく。
「……貴様ごとき下郎が、我が絶対的主君とその御夫君を侮辱するとは。不快極まる!!」
「……『闇』の魔力使い……か」
触手に巻き付かれながらシリルが呟く。
そして、巻き付いた『闇』の触手が敵の四肢を引き裂かんとしたまさにその時。シリルの身体から漆黒のオーラが突如として噴き上がり、自身の身体に巻き付いた触手を瞬く間に消滅させてしまったのだ。
「――ッ!?」
イーサンの目が驚愕に見開かれる。
その隙をつくように、シリルの背後に控えていた男達……いや、武装した騎士達が次々と纏っていたマントを脱ぎ捨て、一斉にイーサンへと襲い掛かった。が、音もなく目の前に飛び出したティルの刀により全身切り刻まれた上で電撃を受け、その場に崩れ落ちる。
「――なっ!?」
だが、『雷』の魔力を纏わせた刀で傷付けられたにも係わらず、彼等は即座に態勢を整えると、そのままティルに襲い掛かってきたのだ。
「ッチッ!!」
ティルが舌打ちをしつつ、更なる魔力を刀に纏わせ応戦する。その光景を鋭い眼差しで見つめながら、イーサンは眼鏡のフレームに手を当てた。
「……どういう事なのでしょうか?帝国の男……しかも王侯貴族がこの『嘆きの霊園』の中で、あのような力を出す事が出来るなどと……。完全に予想外です」
そう。『彼女達』の呪詛は帝国の……特に『男性』に対し、悪夢のような効力を発揮する。
特に王侯貴族に至っては、その大なり小なりが実際に自分達を召喚し、弄んだ者達であるが為に、向けられる呪力は一般の男性達に向けるものの比ではない。普通であればハーゲンのように、即座に呪いに蝕まれ死の危険に晒される程だ。
だからこそ、この場は帝国最大の『忌み場』として忌避されてきた。本来であれば、皇家直系であるシリルがこの場に現れるなど、自殺行為としか言いようのない暴挙であるのだ。
「それにあの男……。いくら魔力が高くとも、『魔眼』の天敵たる私の『闇』の魔力を、あのように容易く打ち破るなどと……」
『……あの少年、「邪神」の加護を受けているようね』
肩に乗っている半透明の白いカメの言葉に、イーサンは「やはりですか……」と眉間にきつく皺を寄せた。そして攻撃を仕掛けた自分ではなく、オリヴァーと睨み合うシリルを忌々し気に睨みつける。
『おそらく、あの少年の部下達にも、彼を介して加護が注がれているんでしょう。……不味いわね。「邪神」の加護を得ているという事は、「彼女達」の呪詛が効かない。それどころか「負」の感情そのものが糧となってしまう』
つまり、理性を失った『彼女達』がシリル達を呪い殺そうとすればするほど、シリル達の力は増してしまうのだ。
しかも、それだけではない。
宿敵が現れた事により、理性を無くした『彼女達』の『負』の感情はかつてないほど膨れ上がり、『邪神』へと流れ込んでゆく。その結果『邪神』の力は更に肥大化してしまい、クライヴ達の命を危険に晒すという最悪な負のスパイラルを形成してしまったのだ。
『……エレノアちゃんは気が付いていないけど、エレノアちゃんの祈りが「彼女達」の「負」の感情を包み込んで、あの皇子達へ流れていくのを半減させているの。だからこそ、あちらの方も、なんとか持ちこたえている状態よ』
「流石はお嬢様です。……ところで大精霊様。あのお嬢様の傍らにいる、壮絶に愛らしい存在は私の目の錯覚ではありませんよね?」
『いいえ。完全に貴方の目の錯覚よ!』
白いカメとイーサンが、一瞬無言で見つめ合う。
「……たいへん不本意ですが、そういう事にしておきましょう」
やや不服そうにそう言うと、イーサンはティルに加勢すべく、敵の……恐らく『魔眼』持ちであろう騎士達に向けて『闇』の触手を撃ち込み、その身を刺し貫いていく。更に、ティルの電撃を纏った刃が、予測不能な攻撃をかわす騎士達を次々と切り裂いていった。
「……ふぅん……。あのオマケ連中、中々やるじゃないか。というか、あそこまで怨霊達を抑え込むとは。流石は僕の『こぼれ種』……っと!」
オリヴァーが繰り出した灼熱に近い魔力の斬撃を、シリルは咄嗟の動きで避ける。
「言葉を慎め下郎!!エレノアは貴様の『こぼれ種』などではない!!そして『彼女達』も怨霊などではなく、貴様らによって生み出された、悲しい被害者達だ!!」
「おお、恐い恐い!流石は女に甘いアルバ王国の男だ。……だが、アレらはお前達の言うところの『犠牲者』などではなく、『栄誉民』だ。我が帝国をより輝かせ、発展させる為に選ばれた……ね。そこを間違えてもらっては困るな」
「……貴様……!!」
背後で『彼女達』の怒りが高まったのを感じ、オリヴァーはギリ……と奥歯を噛み締めた。
エレノアと『彼女達』のせめぎ合いは一進一退。ほぼ互角といった状態だ。
それゆえに、わざと自分を……いや、『彼女達』の怒りを煽る為、挑発するような発言を繰り返すシリルを、オリヴァーは苦々しく見つめる。
「そうそう。ついでに良い事を教えてあげよう。我が国の繁栄の一助とすべく、長年に渡って続けられてきた『異世界人召喚』……あれはね。封印され、僅かな『力』を『神託』として下ろすしか出来なかった『魔神』様が、時の皇帝に吹き込んだんだよ。『異世界から女を呼べ』ってね」
「――ッ!?『邪神』が!?」
「ああ、そうだよ。折しも、女神による世界への介入によって秩序が狂い、その弊害で女の出生率が極端に低くなっていた。『魔神』様はそこをつき、皇帝に神託と、『召喚』の術式を授けたんだ」
驚愕の真実に、愕然としているオリヴァーを見ながら口角を上げたシリルが、再び口を開く。
「『異世界人召喚』により、魔力の高い女と、異世界の知識を潤沢に得る事が出来るようになった帝国は、大繁栄していった。そして、召喚された女達の嘆き、怒り、恨みといった『負』の感情が、『魔神』様を復活させる糧となった。……ああ!なんて合理的で素晴らしい仕組みなんだろう!ねえ?『君達』もそうは思わない?」
【【【【【【【――ッ!!】】】】】】】
口角を上げ、シリルは心底楽し気に残酷な事実を告げる。
「――ッ!!だ、だめっ!!!」
その言葉が起爆剤となり、エレノアの祈りによって抑えられていた膨大な『瘴気』が、まるで爆発したかのように一気に噴き上がった。
サラリと暴露された最悪の真実です。
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次回更新も頑張ります!




