世界の理と敵の来襲
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻及び、ジュニア文庫2巻も発売中です。よろしくお願い致します!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
「――ッ!!」
自身に襲い掛かる衝撃に耐える為、瞼を閉じたまま、全身に力を入れて身構える。その一瞬後。
バチバチバチ!と、激しく火花が弾けるような音が周囲に響いた。……が、何故か私の身体には衝撃はおろか、少しの痛みも感じる事が無かった。
恐る恐る、閉じていた瞼を開く。すると、目の前には信じられない光景が広がっていた。
「え……!?」
私が絶体絶命な時。そして大切な人達を守りたいと祈る時、必ず出現する光の蔓。それがまるで、私を守るかのようにドーム状に展開し、『彼女達』の攻撃を防いでくれていたのだった。
しかも、今回はそれだけではなかった。
「……へ!?わ、私……!?」
なんと、私を小人サイズに縮ませたような二等身キャラが、その背に私を庇うように、スコップを構えて踏ん張っていたのである。
「おおっ!手に持っていた武器(?)が変形したぞ!?」
「うおぉっ!!なんだかよく分からねぇけど、お嬢様かっけー!!」
背後から、オリヴァー兄様とティルの興奮した声が聞こえてくる。
……えっと、ちょっと待って。
つまり、先程から二人がドン引きしていたのって、『コレ』がいたからなんですかね?ってかそもそも、私そっくりな『コレ』って一体何なの!?
私が盛大に戸惑っていると、小人サイズの自分がクルリと振り向く。そして、先程まで構えていたスコップを片手で持ち、もう片方の手で小さな親指をグッと立てた。……小さいくせに、やけに漢らしい。
しかもその表情はまるで、『ここは私が抑える。お前はお前の成すべき事をしろ!』とでも言っているかのようだ。あ、コクリと頷いた。つまり、本当にそう言っているんだね!?ってか、こんな得体のしれないナニかにまで思考を読まれる私って一体!?
「ッ!!」
再びの衝撃が空気を震わせる。
荒ぶる『彼女達』が金色の蔓で構築した『結界』を壊そうと、四方八方から瘴気をぶつけてきているのだ。
『と、取り敢えず、この子が何者か詮索するのは後回しにしよう!!それに、私そっくりだっていう訳じゃないけど、どう見たって無害そうだし……って、えええっ!?シャベルがコンクリート破砕機に変わったー!?そんでもって、地面を掘り始めたー!!しかもそのヘルメット、どこから取り出したんだ!?』
色々とツッコミが追い付かない私を置き去りに、小人な私が地面を掘り進めるにつれ、『土』の魔素が噴き上がって『彼女達』の攻撃により綻んだ箇所を修復していく。
「…………」
瘴気による攻撃から私を護るべく、なんだか物凄く健気に頑張っているその姿に、私はツッコミを封印し、再び両手を組みなおす。そして今度は瞼を閉じる事無く、『彼女達』と視線を合わせた。
怨嗟と苦悩に満ちた表情。そして、深淵の闇のような真っ黒い瞳。まさに『負』の集合体とも言えるその姿。
少しでも気を緩めれば呑まれてしまいそうになる感情に引きずられないよう、私は瞼をゆっくり閉じ、彼女達の魂が安らかになるように……と、ひたすら祈り続けた。
けれども、『彼女達』の抵抗は想像以上だった。まるで固く分厚いコンクリートの壁に阻まれているかのように、全くと言っていい程祈りが浸透していかない。
『そういえば……』
『彼女達』は『こんな世界で生まれ変わりたくなどない!』というような事を口にしていた。……ひょっとして、『彼女達』が『浄化』を拒んでいるのは……。
『それならば……一か八か!』
私は深呼吸を一つすると、瞼を開け、再び『彼女達』と視線を合わせた。
「……皆さん、どうか私の言葉を聞いてください!」
すると、ほんの少しだけ瘴気の攻撃が弱まった。全く祈りが通じていないと思っていたけど、ほんの僅かばかりでも『彼女達』に届いていたのかもしれない。
「この世界に生まれた者。またはこの世界で生きていこうと決めた者は、この世界の理……すなわち『生命の循環』に組み込まれる……と、私は以前、私の義母となる方に聞いた事があります」
『私がこの世界で夫達と生きていくと決めた瞬間、カチリ……と、私の「魂」がこの世界に嵌ったような、不思議な安心感を感じたの』
それはまるで、迷子になって彷徨った末、『自分の在るべき場所』に辿り着いたような感覚だったという。
『多分だけど、あの時私は完全に「あちらの世界」ではなく、「この世界」の人間になったのね』
そう言って、アリアさんは穏やかな表情で笑っていた。
「ならば、無理矢理『この世界』に連れてこられ、『生命の循環』に入る事を拒否している貴女がたは、『この世界の理』から外れた存在。……すなわち『この世界の女神様の子』ではない……という事になります」
【貴様!私達を異物扱いか!?】
【好き好んで、こんな世界などに来た訳ではないのに!!】
【ふざけるなよ小娘!!】
【殺す!!】
【コロス!!】
【死ね!死ね!シネ!!】
私の言葉に、『彼女達』の魂が更に荒ぶり、瘴気による攻撃が激しさを増す。小人な私が頑張るが、破損に対して修復が追い付いておらず、綻びから漏れ出てきた瘴気が頬をチリッと掠めた。
「いっ……!!」
鋭い痛みに一瞬息が詰まる。けれどもそんなものに気を取られる事なく、私は言葉を続けた。
「そうではありません!貴女方は『この世界の女神様の子』ではなく、『貴女方が元居た世界の神様の子』なんです!!」
【【【【【【――ッ!?】】】】】】
私が言い切った後、『彼女達』が息を呑んだ……ような気配を感じた。
「……大精霊様が仰っておりました。『女神様は、自らが生み出したこの世界とこの世界に生きる子らに干渉する事が出来ない』……と。つまり、『女神様の子』ではない貴女方に対してならば、女神様は干渉する事が出来るという事です!」
【【【【【【…………】】】】】】
「だから、女神様の愛し子たる『聖女』である私が、貴女方の代弁者として女神様にお願いします!……『貴女方を、元の世界に帰してあげてください』って!!」
遂に、『彼女達』からの攻撃が完全に止んだ。
しかも先程までとは違い、私を『敵』として排除しようとするのではなく、一人の人間として認め、言葉をちゃんと聞いてくれている事が分かる。
『彼女達』の凝り固まった恨みの感情が無くなった訳ではない。
それでも、恨み一辺倒だったその感情の中に、『戸惑い』『期待』『不安』といった別の感情が芽生えているのが確かに伝わってくる。
――……でも、威勢よく啖呵を切っちゃったけど、これってあくまで私の憶測を元に、ハッタリかましたようなものなんだよね。
それに、他人より特殊な『力』が使えたとして、私はまだ女神様の言葉も御心も直接感じた事がない『聖女』未満の存在だ。……そんな私が、『彼女達』の処遇を何とかしてほしいって女神様にお願いしたとして、果たして聞き入れてもらえるのだろうか?
『それに、もし私の憶測通りだったとしたら……』
『彼女達』と同じく、こちらの世界にやって来てしまったアリアさんだって、国王陛下方を本気で愛する前は、魂が『こちらの世界』に根付いていない状態だった筈。なのに何故、アリアさんの『元の世界に帰りたい』っていう願いは叶わなかったのだろうか。
『……ひょっとして、帝国が無理矢理召喚した「彼女達」と、アリアさんや、へーちゃん、チェルシーさんのように女神様が召喚した『女神様の愛し子』とは、根本的に違う存在なのかもしれない』
実際、『こぼれ種』として帝国に連れてこられたであろう人達は全員、『これで、やっと故郷に帰れる』『あの人の……家族の元に戻れるわ』と、私に対し感謝を告げながら『浄化』されていった。
だからこの場に残っている魂は全て、『異世界人召喚』で無理やり帝国に連れてこられた女性達だ。
『うう……っ!考えれば考えるほど、分からなくなってくる。……恐い……!』
思わず思考が負のループに入りかけたその時、ふと何かが触れた感覚に、ハッと我に返って視線を落とした。
すると小人サイズの私が、まるで宥めるように私の腕をポンポン叩きながら、ジッと見上げていた。
その大きな黄褐色の瞳は驚く程力強く輝いていて、まるで「グダグダ考えていないで走れ!進め!!」と私に喝を入れてくれているようだった。
『――そうだ!これだけ啖呵を切っておいて、今更弱気になるな!!』
それに、この世界に女神様がいらっしゃるんなら、私が前世にいた世界にだって、神様の一人や二人や三人ぐらいいる筈だ!しかも、私が住んでいた国では森羅万象あらゆるものに神様が宿っている。その数およそ八百万!(未確認だけど)更に最高神は、なんとこちらと同じ女神様なのだ!
だから、もしこちらの女神様が『済みません、この方々そちらからの迷子です!』って呼びかけてくれたら、絶対引き取りに来てくれる……はず!!
私は再び彼女達へ向け、言葉を発する。
「――あ、あのっ!ひょっとしたら、今すぐ貴女方を帰してあげる事は出来ないかもしれません!でも、何年かかっても、絶対貴女方が帰れるように頑張ります!!だからお願いです!私を信じてください!!」
『彼女達』の戸惑うような感情が強くなる。そしてそれに比例するように、『負』の感情が弱まっていく。
「……それに、貴女がたが吐き出す呪詛が、この国の人間達を従える、諸悪の根源たる『邪神』の餌になっちゃっているんです」
途端、『彼女達』の纏う空気が騒めき出した。
『彼女達』が『負』の感情を吐き出し続けていたのは、帝国を呪い尽くさんが為。なのに、それがまさか帝国の祖とも言える『邪神』を利する事になっているだなんて、誰が想像するだろう。
「私も『転生者』として、この国に色々酷い事をされました。『こぼれ種』なんて言われ、拉致されかかって……。だから、貴女がたがこの国を恨む気持ちは凄くよく分かるし、『恨むな』なんて絶対言えません!……でも、その感情が結果的に、貴女方が憎んでいるこの国の親玉を利する事になるだなんて、悔しいじゃないですか!!」
私の言葉を受け、『彼女達』が葛藤している気配を感じながら、私は再び瞼を閉じ強く祈った。
『女神様、お願いします。「彼女達」の魂を、どうかお救いください!』
――そして、『彼女達』が焦がれてやまぬ、本当の故郷へと帰してあげてください……!!
荒ぶる気配が少しずつ落ち着いていく。それに合わせてフワリ、ユラリと漂う空気が軽くなっていくのを感じ、少しだけ肩の力が抜けた。その時だった。
「やあ。こんな所にいたんだね。会いたかったよ……心の底から……ね」
どこまでも冷たく、そして愉悦に塗れた不快極まる声と、複数の異質な気配に全身に冷や水を浴びせられたような衝撃を受ける。
「……貴様は……!!」
低く唸るようなオリヴァー兄様の声を受け、咄嗟に目を見開く。そして、声のした方向へと目を向けた。
「――ッ!?」
そこには、屈強な男達を背後に従えた第四皇子シリルが、オリヴァー兄様と対峙していたのだった。
「……おや?」
「――ッ!!」
視線が交わる。
シリルは驚愕の表情を浮かべた後、一つだけ残っていた眼を眇めた。
「これはこれは……。君までもがこちらに来ていたとは。ようこそ帝国へ。僕の『こぼれ種』」
そう言うと、シリルは邪悪な表情を浮かべながら口角を上げ、嗤った。
遂に、因縁の対決が開始します!
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