反撃開始!
皆様、今年も一年お付き合いいただき、本当にありがとうございました!
来年も更新及び書籍作業頑張りますので、よろしくお付き合いくださいませ!
『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発及びジュニア文庫2巻発売中です!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
あの後。綿密な話し合いの末、私達はゼフちゃんが私を発見した場所へと戻ってきていた。
あ、因みにですが、刺客がやって来た場合に備え、ゼフちゃんとチェルシーさんは復活したハーゲンさんと共に小屋の中で待機です。
もしもの時は、私達を囮にして逃げるか、息を潜めて見付からないようやり過ごしてと言ってある。ハーゲンさん、私のペンポポスミレを体内に取り込んでいるから、『彼女達』の怨念にとり殺されるって事はないだろうからね。
「……だいぶ、花が少なくなっていますね」
「うん。君を見つけた時は、これの数倍は咲いていたからね」
オリヴァー兄様やゼフちゃんが言うところによれば、実にこの周囲一面がペンポポスミレで埋まっていたんだそうな。けれども今現在は、野球場のピッチャーマウンドぐらいにしか咲いていない。
「何百年にもわたる怨念溢れる土地だ。君の、あのしぶとさを誇る無敵な野花達が枯れてしまっても仕方がない。寧ろこれだけの花が残っている事の方が、僕は凄いと思うけどね」
「オリヴァー兄様……」
オリヴァー兄様の言う通り、『彼女達』は自分達を苦しめた『帝国』そのものに対して強力な呪詛を吐き続けている。その呪いは確実に、この霊園一帯の大気や地面に浸透しているのだろう。
それを証拠に、ここにはペンポポスミレ以外の草木が一本も生えていない。……いや、良く見てみると、ペンポポスミレが咲いていたであろう場所にだけ、産毛のように頼りなさげな草がチラホラ生えていた。
……これってひょっとして、ペンポポスミレによって、ちょっとだけ土地が浄化されたって事なのかな?
『ええ、多分ね。それにしても……。普通の状況であれば、エレノアちゃんが野花を咲かせたら、まるで禿げた頭に超強力な育毛ポーションを振りかけたかのごとくに、青々とした草がビッシリ生えているところなのに……。何百年もかけて魔力汚染された土地では、これが限界って事なんでしょうね』
やっぱりそうか……。
流石に、九頭大蛇に魔力汚染された土地を浄化した時とはレベルが違うな。
そして奥方様。今日も絶好調に私の思考を読み取っていますね!?……まあ今回に限り、一々説明しなくて済むから楽でいいんですけれども。
にしても、やっぱりこの世界でも育毛系のグッズってあるんだ……。
そういえば、この世界で覚醒してからこっち、禿げた人を見た事がなかったけど、あれってDNAを高めて禿げ因子を淘汰したって訳ではなく、ちゃんとそういった裏技があったって事なのかな?
う~ん。とっても気になるけど、今は全力でスルーさせて頂く。でもって、無事この局面を乗り切った暁には、詳しく説明して頂くのでお覚悟を!
「……エレノア、ガチガチだね。顔色も悪い。……当然か。緊張するよね」
「え?」
オリヴァー兄様の指摘にドキリと心臓が跳ねる。
どうやら現実逃避とばかりに、奥方様の言葉のどうでもいいところに意識をもっていっているのがバレてしまったようだ。
オリヴァー兄様はそんな私を抱き上げると、唇にそっと口付けを落とした。
「んっ!?」
こんな時だというのに、ボフンと顔から火が噴いた。ってか兄様!バードキスと見せかけて、一瞬で濃厚なご挨拶をするのは止めてください!!
ううう……。ただでさえ心臓バクバクなのに、これ以上動悸息切れ眩暈が酷くなっちゃったらどうするおつもりなんですか!?……って、うひゃぁっ!妖艶な微笑みを浮かべながら唇舐めないでー!!お巡りさん!うちの兄がセクハラ中です!!
「大丈夫だよ。たとえ『浄化』が失敗しても、僕達は全力で君の事を守るから。だから君も全力で、『彼女達』を救ってあげてくれ。それがこの場にいる者達全員の望みでもあるのだから」
「……!……兄様……!」
お色気セクハラ仕様から一転、慈愛のこもった優しい言葉と笑顔に、思わず呆けてしまった後、涙腺が緩みそうになってしまった。
こ、この絶妙なメリハリ……。おかげでガチガチだった身体から、良い感じに力が抜けました。全くもって流石です兄様!
「大丈夫。クライヴもセドリックも……当然、アシュル殿下方も、君とのスキンシップをキス止まりで終わらせる気はさらさらないだろうからね。どんな手段を用いても、根性出して生き残るだろうさ。僕も君との間に出来た子をこの手に抱くまで、絶対死なないから安心してくれ!」
「に、兄様……!」
とってもいい笑顔を浮かべながら、力一杯宣言するオリヴァー兄様の姿を見ていたら、思わず滲んでいた涙が引っ込んでしまいました。
……あの……。なにげに、ちっとも安心出来ないのはどうしてなのでしょうか?
『――ッ!でも……。そうだよ、私だって……!』
ただでさえ前世において、彼氏いない歴=年の数という悲しい過去を背負っているのだ。この世界に来てまで、穢れ無き乙女のまま終わってたまるか!!
「に、兄様!わ、私も、婚約者修行頑張る為に、全力で生き残ります!!勿論、私だけではなく全員で!誰一人欠ける事無く!!」
途端。オリヴァー兄様の笑顔が、これ以上はない程に輝きを増した。し、しかも、目力による圧が凄い!
「エレノア……!嬉しいよ!!勿論、婚約者修行はまず、筆頭婚約者であるこの僕が、手取り足取り懇切丁寧にじっくりと協力するからね!!」
「……お、お手柔らかにお願いします……」
あっ!奥方様が宙に浮いたまま、ジト目で『エレノアちゃん。貴女……詰んだわね』って不吉な事呟いている!!
「エレノアお嬢様、ご安心くださいませ。我々もエレノアお嬢様をお助けすべく、全力で使命を全うさせて頂く所存に御座います!」
「そうっすよ!『貴婦人』をお守りするのは騎士の務め!……エレノアお嬢様とお嬢様の大切にされている方々は、この命に代えても守り抜くと、この場でお誓い申し上げます」
そう言うと、イーサンは家令として。そしてティルは騎士としての礼を執った。奥方様も私の肩の上で、『そうそう!私も大精霊の名にかけて、誰一人欠ける事無く皆を守り抜くと誓うわ!』と言って頷いた。
「イーサン、ティル、有難う!!そして奥方様、感謝します!!」
あ、因みにだけど奥方様、私達を転移させる時の為に魔力を温存しなくてはならないので、今回はあくまでサポート役に徹するんだそうだ。
奥方様、『はぁ……。エレノアちゃんの傍にいると、すっごく爽やかな気持ちになるわ~!』って呟いているんですけど、ひょっとして私、奥方様にとっての空気清浄機かなんかなんでしょうか?
◇◇◇◇
私は枯れずに残っていたペンポポスミレ達の中心で跪くと、両手を組んで祈りの姿勢を執った。オリヴァー兄様はそんな私からやや距離を取りつつも、いつでも行動を起こせるよう全神経を研ぎ澄ませている。
イーサンはというと……。護衛としてティルに周囲を警戒させ、静かに目を閉じ精神統一していた。しかもその肩には、奥方様がちょこんと乗っかっている。
「……では、いきます!!」
私は瞼を閉じ、汚染された土壌のもっとずっと下。深層部に向けて意識を集中させる。
『満開になぁれ!!』
いつものように、周囲にペンポポスミレが次々と咲いていく気配を感じる。……そしていつもと違い、自分の身体からも魔力が放出されていっているのを感じる。
『……まだ微量なので影響はないけど、これが続くとかなり不味いかも……』
胸によぎった不安を無理矢理押し込めながら、私はまず、この霊園の土地そのものを浄化させる為に、ひたすらにペンポポスミレを咲かせ続けた。
そうして、ある程度ペンポポスミレを咲かせたその時だった。
『――ッ!!』
突如として黒い思念が私に向け、奔流のように襲い掛かってくるのを感じ、咄嗟に腹に力を込める。
まるで浄化を拒むかのように、『彼女達』のであろう怒りと憎しみの波動が、大きな雨粒のように容赦なく身体に叩きつけてくる。更に、先程咲かせたペンポポスミレの気配が次々と消滅していくのを感じ、負けじと祈りを強くしていく。
その結果、呪詛に満ちた『負』の感情が僅かながら浄化されていくのが分かった。
『イーサン、今よ!』
「お任せを!」
奥方様の号令により、イーサンの身体からブワリと黒い魔力が噴き上がった。
ただし、ソレはいつものような触手として現れる『闇』の魔力ではなく、なんというかこう……。もっと禍々しい、マグマのような『怒気』に満ち溢れているナニかだった。
「ふふふ……。今でも鮮明に思い出せますよ!アイザック様。貴方様の手により、私の天使が奪われたあの日あの時の絶望を……!!」
……なんて呟きが耳に届き、思わず身体に震えが走った。
『……こ、これが……。イーサンが父様に抱いている『負』の感情……!?』
きっと今のイーサン、怨霊もかくやとばかりなすさまじい表情を浮かべているに違いない。
『闇』の魔力保持者は執念深いって聞いた事があるけど……。イーサン、赤ちゃんだった頃の私と引き離された事、心の底から根に持っていたんだな。
――実はこれ、オリヴァー兄様が思い付いた対応措置なのである。
怨霊と化してしまった『彼女達』が、私の祈りによって浄化されていけば、当然『邪神』へと流れていた『負』の感情が少なくなってしまい、結果として霊園の事がバレてしまうだろう。
だから減少した『負』の感情の分だけ、イーサンの『負』の感情ならぬ、『過去における恨み節』でコーティングした『闇』の魔力を混ぜ込む事にしたのだ。
『闇』の魔力は『光』の魔力と対極とされている。
しかもその特性上、どうしてもマイナスのイメージが付き纏いやすいのである。フィン様も子供の頃は、色眼鏡で見られる事がよくあったらしいからね。
だけど、『光』の魔力と同様、『闇』の魔力は『魔眼の天敵』とされている。
何故なら、『光』の魔力が、あらゆる邪悪を浄化する事が出来るのに対し、『闇』の魔力はその特性の一つである『鎮静』の力によって、荒ぶる感情を鎮め、精神を穏やかに安定させる事が出来るからだ。
『闇』の魔力は『負』の感情とは似て非なるもの。……つまり『闇』の魔力とは、『邪神』にとって、ご馳走に見せかけた猛毒に等しい。
それゆえオリヴァー兄様は、知らずの内に『邪神』に『闇』の魔力を取り込ませ、その力を弱体化させてしまおうと考えたのだ。
うん。イーサンのこの凄まじい『恨み節』でコーティングされているならば、まず間違いなく、『邪神』は疑う事無く『闇の魔力』を取り込むに違いない。
この作戦をオリヴァー兄様に聞かされたイーサンは、「なんという斬新かつ悪辣な策であることか!流石はオリヴァー様です!!」と大絶賛し、「私の『負の感情』で宜しければ、存分にお使いくださいませ!!」とノリノリで了承した。
ティルとハーゲンさんはというと、「なんというえげつなさ……!」と、二人揃ってドン引きし、奥方様は『流石は隠れ病み属性!ナイスな黒さだわ!!』との褒め言葉(?)を口にし、それぞれがオリヴァー兄様のこめかみに立派な青筋を立てまくらせていた。
あ、因みにゼフちゃんはよく分かっていなかったっぽいけど、チェルシーさんは「やったれ!やったれ!」と言いながら、拳を振り上げていました。
そうだよね。チェルシーさん、危うく『彼女達』と同じ運命を辿りかけたんだもん。そりゃあ諸悪の根源に対する恨みは深いよ。
ともかく、戦いの火蓋は切って落とされた。
私が『彼女達』を浄化するのが先か、『猛毒』が『邪神』に気付かれるのが先か……!いざ勝負だ!!
食用キノコに、猛毒キノコを混ぜる戦法…(;゜д゜)ゴクリ…
そして前書きでも書きましたが、今年も一年お付き合いいただき、本当にありがとうございました!
また来年も、更新及び書籍作業頑張りますね!
観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
評価して頂けるとモチベに繋がります!
次回更新も頑張ります!




