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【書籍9巻&ジュニア文庫2巻発売中】この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い【web版】  作者: 暁 晴海
第二十章 帝国との対決編

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呪詛の声

本日、ジュニア文庫2巻が発売となっております!

一巻同様、書籍版と違ったかっこ可愛らしい登場人物達や、書籍にはなかったシーンの挿絵なども多数掲載されておりますので、興味のある方は是非!!


『……る……ない……』


――んん?誰かの声が聞こえる?


『……ゆ……さ……い……』


――にしても、断片的だなぁ……。この声、女の人だよね?というか、なんかあちらこちらから聞こえてくるから、相当人数いるのかも。


『……ゆる……さ……ない……!』


――うん?


『ゆるさ……ない!……ゆるさない……!許さない!!』


――ち、ちょっと待ってください!!許さないって何が!?……って、ひょっとして私が何かしましたか!?


『許さない許さない許さない許さない!!』


――あわわっ!!し、しばしお待ちを!!え?わ、私ってば本当に何したっけ!?


はっ!!そういえば一昨日、ウィルとティルの手引きで厨房に忍び込んでおにぎりゲットした事ですか?!そ、それともパト姉様に強請られ、禁断の焼き芋祭りをした事かな!?で、でもあれは賄賂として王家の皆様方にも横流ししたから、実質セーフな筈では!?


『絶対に……許さない!!』


――そ、そんなー!!ほんの出来心だったんです!どうかお許しください!!


『私達を元の世界から奪った事、絶対に許さない!!』


――……え?元の世界……って?


『私達はお前達の奴隷でも家畜でもない!!』


『絶対に許さない!!私達を不幸にしたように、お前達にも同等の不幸を!呪いを与えてやる!!』


『土を荒廃させよう!』


『実りを無くそう!』


『空気を淀ませよう!』


『穏やかな心を、時間を、人と人との絆を奪ってやろう!!』


『奪われた分、お前達の全てを奪ってやる!!』


……ちょっとテンパっていたけど、これって私に対する怒りではないよね?というか、凄まじいばかりの怒りと負のオーラが溢れかえっていて、息苦しい。


……でもそれ以上に……。


――まるで、泣いているみたい。


女性達の発する、相手への尽きぬ恨みと呪詛が、『苦しい、悲しい、誰か助けて!』って泣き叫んでいるように聞こえて……。そんな悲痛な声を聞き続けていくうちに、段々と胸が痛くなってきた。


――あの、済みません。いったいどういう事なのか……。貴女達が怒っている理由を、私に話してくれませんか?


そう声をかけてみるも、返ってくるのは『許さない』と繰り返される呪詛の声だけ。


「あのっ!」


思わず大声を出した瞬間、意識がグンと浮上した。





◇◇◇◇





「……あれ?」


目の前に広がっているのは曇天。……というか空が見えるって事はつまり、私ってば寝転んでいるって事ですよね?何故に?


『ひょっとして、夢を見ているのかな?』と、何度もパチクリと瞬きを繰り返すも、やっぱり目に映る光景は灰色の曇り空な訳で……。


『おかしいな……。今日は快晴だった筈だよね?』


そんでもって、急に湧き上がってきた不安感に居ても立っても居られず、兄様達を探しにイーサン達と学院に乗り込んだ……筈なんだけど……。


――って!そういえばあの時……!!


オリヴァー兄様と手を繋げようとしたあの瞬間、凄まじい衝撃が襲ってきたんだった。


『え!?ひょっとして私、あの時の衝撃で外に吹っ飛ばされたの!?そ、それじゃあオリヴァー兄様とクライヴ兄様は!?』


もしや、私と一緒に外に投げ出されたのだろうか。いや、ひょっとして倒壊した建物に巻き込まれたのかも!?


慌ててガバリと起き上がった私の目に映ったのは、見慣れた学院でも瓦礫の山でもなく……。


「お……お墓!?」


どんよりと靄がかかったような空間。枯れ果てた草木。剥き出しの大地。そして、至る所に建てられた、朽ちて倒れそうな墓石の数々……。


そこには某ホラームービーのような、今にもゾンビかなにかが闊歩していそうな程、おどろおどろしい光景が広がっていたのだった。


「……え?なにこれ?ひょっとして私、まだ夢の中にいるとか??」


「エレノアッ!!」


「ぴゃっ!!」


あまりにもホラーな景観に慄いていた矢先、大声で名を呼ばれて思わず飛び上がった後、恐る恐る振り返ってみる。するとそこには……。


「オ、オリヴァー兄様……?」


驚愕の面持ちでこちらを見ているオリヴァー兄様と、オリヴァー兄様に刀を突き付けられ、へたりこんでいる子供の姿があったのだった。


『いや、ちょっと待って!!なにこの状況!?』


ホラー映画も真っ青な墓地の中、子供を刀で脅しているオリヴァー兄様。……うん、夢だな。ここは夢の中で決まりだ。そうと決まったら、とっと目を覚まして……。


「エレノアッ!!無事で良かった!!」


「ふぐっ!!」


光の早さで刀を鞘に仕舞った兄様は、やはり光の早さで私の傍へとやってくると、締め技のようにガッチリ私を抱き締めた。


「ああっ!!気が付けば見知らぬ場所で、君もクライヴも傍にいなくて……!イーサンとティルは、『ここは帝国だ!』って訳の分からない事を言うし、無頼漢どもはどこからともなくワラワラ湧くし。もうどうしたらいいのか分からなくて、取り敢えずそいつらをぶちのめしながら、イーサンに君の気配を探らせていたんだよ!そしたら、こんな不吉な場所に君がいるって言うし。もう、何が何やら!……でも、本当に君がいた……!!女神様!感謝いたします!!」


「……に……にい……さま……!」


……この苦しさで目を覚まさないという事は、どうやら今のこの状況は夢ではなく現実らしい。


そしてこのまま、荒ぶっている兄様に締め上げられていたら、私は本気で夢の国へと旅立つ事になってしまうに違いない。


――……なんて、薄れゆく意識の中でそう思っていたら、いつもの見慣れた黒い触手が、兄様の腕の中から私の身体をスポーンと引っこ抜いた。


「エレノアお嬢様!よくぞご無事で!!」


「イ……イーサン……」


闇の触手に巻かれ、ふよふよと浮きながらスーハスーハと肺に空気を入れている私を、イーサンが滂沱の涙を流しながら優しく見つめる。


「……イーサン。筆頭婚約者から愛しい女性を奪うとは、どういう了見なのかな?」


「奪ったのでは御座いません。我を失い、ネジの飛んだ番狂いの魔手から救出したのです。どうか、そのどうしようもなく沸騰し切った頭を冷やし、冷静におなりあそばされませ」


あっ!オリヴァー兄様の背後から暗黒オーラが噴き上がった!!対するイーサン、怯む事無く、眼鏡のフレーム指クイしながら不敬発言ぶちかましてる!!……よく分からない状況だけど、いつものこのやり取り……和むわぁ……。


「オリヴァー様ってば、お嬢様キチなイーサン様より早くお嬢様の元にすっ飛んでくなんて、有り得なくないっすか!?これが万年番狂いパワーってやつなんっすね!?マジ尊敬!流石は次期ご当主様!最高!!あ、お嬢様ー!ご無事そうでなによりですー!!」


あ、ティルだ。


オリヴァー兄様とイーサン、揃ってティルを睨んでいるんだけど、ティルの方は全然動じてない。うん、このやり取り。なんだか本当にホッとするなー。


そこで、私はハッタと気が付いた。……オリヴァー兄様、さっき物凄くとんでもない事を口にしていたような気が……?


「それで?イーサン。ここは帝国のどこらへんか分かったか?」


「は。私も直接足を向けた事が無かったので、すぐに判断出来ませんでしたが……。我々が飛ばされたこの場所は『嘆きの霊園』でありましょう。ゆえに、ここは帝都で間違いないかと」


「あー、やっぱり?どうりで身体重いなーって思ってたんすよ!あの言い伝えって、ガセじゃなくてマジだったんっすね!」


……はい?…………え??


「て、帝国ーー!!?そして、帝都ーー!!?」


思わず、素っ頓狂な叫び声を上げてしまった私に、その場の視線が一気に集中する。


「え!?なに!?わ、私達、さっきまでアルバ王国にいたよね!?それがなんだって、帝国なんかにいなきゃいけないの!?ゆ、夢……!?夢だよね!?誰か夢って言ってー!!」


「エレノア!落ち着いて!!」


「これが落ち着けますかー!!寧ろ、なんでオリヴァー兄様ってば、そんなに冷静なんですかっ!?」


「いや、僕も十分混乱している。だけど、君の無事が確認出来た瞬間、驚く程心が凪いだだけだ」


「ええ。エレノアお嬢様がご無事でいらっしゃったならば、全ての現象は瑣末(さまつ)な事で御座います」


「そうっすよ!俺らにとって、お嬢様が健やかである事こそが最重要案件っすからね!!」


いやいやいや!!オリヴァー兄様もイーサンもティルも、そんな良い笑顔で、何をとち狂った事言ってんですか!?ティルに至っては、サムズアップまでしているし!!


「……あ、あの……お姫様……」


「え?」


か細い声が聞こえ、反射的に視線を向けると、小さな男の子が震えながら私を見上げていた。……この子って確か、さっきオリヴァー兄様に刀を突き付けられていた子だよね?というか、『お姫様』って私の事!?


「えーっと……。ひょっとして、私に話しかけてくれていますか?」


そう聞くと、男の子はコクリと頷いた。あ、やっぱりお姫様って私の事でしたか。


「お姫様。帝国の人じゃないの?それで、この魔女さんとはお友達なんですか?」


そう言って指差したのは、まさかのイーサン!


途端、「ぶはっ!!」とティルが噴き出すと、間髪入れずに闇の触手がティルを吹っ飛ばした。


にしても、イーサンが魔女って……。ひょっとして、全身黒いからかな?でも、こんなガタイの良い魔女、なんか嫌だ。


「……ご令嬢。私は魔女ではなく家令です」


「かれい?」


「そうです。そして性別は男ですので、お間違え無きよう」


ああっ!眼鏡のフレームを指クイしているイーサンの眉間のシワがとんでもない事に!!……って、え?ご令嬢……?


「ええ、お嬢様。この子は女の子です」


「えええーっ!?」


ど、どう見ても男の子にしか見えませんが!?……え?『影』はそういったものを見破る訓練を受けているから間違いない?


そういえばヒューさんに初めて会った時、男装していた私を一瞬で女の子だって見破ったって言っていたっけ。凄いな『影』!


「……ッ!!な、なんて事だ……!僕はこんな幼気な少女に、刀を突き付けてしまったというのか……!!ああ……っ!アルバの男として失格過ぎる!!」


あ、オリヴァー兄様のレディーファースター魂が打ちのめされている!兄様、どんまい!誰にでも間違いはあります!というか、私も男の子だと思っていましたし!


「で?ご令嬢。我々になにか?というより、何故貴女のような方がこのような場所に?」


「――ッ!……あ……あっ、の……か、かあ……さ……」


あ、イーサンの迫力に、少女が怯えまくって言葉に詰まっている。いや、そうだよね。イーサンってばナイスミドルなんだけど、いかんせん迫力が凄いから。


「……時間が無いので、失礼いたします」


そう言うと、イーサンが闇の触手で少女の頭をスルリと撫でた。どうやら直接、少女が言いたい事を読み取るつもりらしい。


「――ッ!!」


けれども次の瞬間、イーサンの顔色が変わった。


「オリヴァー様、お嬢様をお願いいたします」


そう言うと、イーサンは私をオリヴァー兄様の腕の中にそっと落とした。そして唐突に、自分の目の前で涙目になっていた少女の身体を横抱きにする。


「イーサン!?」


「イーサン様!?年端もいかぬ少女をいきなり拉致っすか!?ひょっとして、お嬢様愛が拗れて幼女趣味(ロリコン)に目覚めましたか!?」


「……ティル。時間が無いので、貴方は後で処します。オリヴァー様、少々急ぎますので、どうか後れを取られませぬよう」


その言葉を言い終わると同時に、目にも留まらぬ速さで駆けていったイーサンの後ろを、オリヴァー兄様とティルは慌てて追いかけた。

ゼフ君、女の子でした!

そして、エレノア菌に罹患した末期患者が三名……|д゜)


観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!

評価して頂けるとモチベに繋がります!

次回更新も頑張ります!

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◇書籍1巻表紙です◇
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◇書籍2巻表紙です◇
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◇書籍3巻表紙です
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◇書籍4巻表紙です
i806366

◇書籍5巻表紙です
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◇書籍6巻表紙です
i890730

◇書籍7巻表紙です
i921558

◇書籍8巻表紙です
i979601

◇書籍9巻表紙です
i1009541

― 新着の感想 ―
エレノアちゃん、お帰りε-(´∀`*)ホッ 怪我がなくて良かったです。 しかし、一緒に飛ばされた3人なかなか強烈……いえ、大変心強い組み合わせですね! あれ、でもストッパーがいないような……。クライヴ…
エ.....エレノア....焼き芋パーティーとか、やってたの...? 私も、焼き芋パーティー、したい、です。 ゼフくん....く、「君」じゃないじゃん!!!!王子様じゃないって思ったのは、女だからだ…
エレノアちゃん!元気そうで良かったヽ(=´▽`=)ノやっと、ホッとしましたよ。 (そして相変わらずの食いしん坊万歳エピをwww) オリヴァー兄様もイーサンもティルも無事で何より。こちらも変わりなく、ブ…
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