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【書籍9巻&ジュニア文庫2巻発売中】この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い【web版】  作者: 暁 晴海
第二十章 帝国との対決編

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眠り姫との邂逅【?side】

『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発売中です!そして、ジュニア文庫2巻も、12/1に発売予定ですので、よろしくお願い致します!

通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。


※書籍9巻の特典です※

◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』

◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』

◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』

◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』


「……さむ……」


どんよりとした曇天の中、ブカブカな服を身に纏った一人の少年が、おぼつかない足取りで枯れた大地を彷徨うように歩き回っている。


年の頃は十歳程。灰色の髪は短めに切られているが、前髪だけは不自然に長く、口元以外を覆っていて表情が分からない。


ハーッ……と、少年は凍えてヒビだらけの掌に息を吐きかける。


けれども。身体の芯から冷え切ってしまって、息まで凍えてしまっているからなのか、全く温かみを感じられない。


「……今日は、何か見つかったらいいな……」


草木一本生えていない、枯れ果てた大地の上に建てられた、名も無き墓石の間を抜けながら、少年はそう独り言ちた。




◇◇◇◇




()の名前はゼフ。本当はもうちょっと長い名前なんだけど、その名前を使うのは母さんの前でだけって、母さんと約束している。だからたまに、ちゃんとした名前を忘れてしまいそうになるんだ。


僕が物心つく頃には、父さんはいなかった。


僕が二歳になった年の頃。性質の悪い風邪が大流行して、父さんはそれにかかって亡くなっちゃったんだって。


母さんは悲しくて辛くて、毎日泣き暮らしていたんだそうだ。……でも、ある日突然。女神様から『贈り物』を貰ったんだって。


その話をしてくれた時、「きっとあの人が、女神様にお願いしてくれたのよね」って、母さんは悲しそうに笑っていた。


それから母さんは僕を連れ、今の村に移り住んで小さな食堂を始めたんだって。


僕は生まれてこのかた、母さんの料理しか食べた事がなかったから分からなかったんだけど、母さんの料理は、他の人が作るものとはちょっと違うみたいだった。


どこがというと、ありふれた料理でも、母さんが作るものは物凄く美味しいんだそうだ。


デザートも、大きな町のお菓子屋さんでも見た事が無い、ちょっと変わったものが出てくるって評判で、村の外からも沢山の人が、母さんの作る料理を食べにやって来るぐらいだったんだ。


この世界は物凄く女の人が少ないから、母さんが一人でお店をやっている……なんて知られたら不用心だからって、村のお爺ちゃんやお婆ちゃん達がいっぱい手伝ってくれた。だから母さんは、厨房で料理を作る事だけに専念していた。


僕も、大きくなってからは料理を運ぶのを手伝ったりして、村の人達や常連のお客さん達に凄く可愛がられていたんだ。


だから僕は、父さんがいなくても平気。皆優しくて大好きだし、世界中で一番奇麗で優しい母さんが傍にいてくれているんだもん。


でも、そんな穏やかで幸せな日々は、ある日突然壊されてしまったんだ。


「何をするんです!離してください!!」


「母さん!!」


ある日、急に知らない男の人達がやってきて、母さんと僕を無理矢理連れていこうとしたんだ。


僕も母さんも必死に抵抗したけれども、強い衝撃と共に意識を失っちゃって……。気が付いたら母さんと二人、船に乗せられてしまっていた。


男達は母さんの事を『転生者』と呼んだ。


僕も一緒に連れてきたのは、その『転生者』の子供だからだそうだ。


『転生者』は、凄く特殊な魔力を持っている。だから僕も、その力を継いでいるかもしれないんだって。


――え?母さんが魔力を持っているって本当?


魔力って、王様や貴族の人達ぐらいしか持っていないんだと思っていた。というか、僕も魔力が使えるの!?


……でも僕の魔力は、ほんの少しだけしかなかったらしい。


「お前程度の奴は、帝国には腐るほどいる。本来であれば打ち捨てているところだが……喜べ。お前の母親が輿入れする予定の、さる高貴なお方が、お前も受け入れてくださるそうだ。尤も、下働きとしてだがな」


その貴族は、母さんが『馬鹿なことをしないための人質』として、僕を引き取るんだそうだ。それを聞いた母さんは、「……ざけんじゃねーぞ、ゲス野郎どもが!」って小さく呟いていた(凄く恐かった)。


そして港に到着した時、母さんは自身の『転生者』としての『力』を使って、僕を連れて逃げたんだ。


あ、因みに母さんが使った『力』って、使った相手のが1番望んでいる夢を見せる事なんだって。

成る程。だから船の中にいた男達が、立ったまま幸せそうに白眼を剥いていたんだ。


そうして僕達は薄暗い裏路地に逃げ込んだ。けれど、瞬く間に薄汚れた数人の男達に取り囲まれてしまったんだ。


母さんは、船の中で魔力を使い切ってしまったから、夢を見させる事が出来ない。


もうダメだ……と思った時、ある人が現れ、あっという間に男達を叩き伏せ、僕達を助けてくれたんだ。


「あんたら、一体なぜこんな所に!?」


その人は安全な場所まで僕達を連れて行った後、そう尋ねてきた。


いきなり拉致され、帝国に連れて来られた僕ら親子に頼れる人など居なくって。藁にも縋る思いで事情を説明したら、その人は僕らを匿ってくれるって約束してくれたんだ。


「悪いが仕事の関係上、今すぐここを離れる訳にはいかない。……でもいつか必ず、あんた達を故郷に帰してやるから!」


そう言って、申し訳なさそうに頭を下げるその人の姿に、僕も母さんもなんだかホッとして、思わず大泣きしてしまったんだ。


そんな僕達を見ながら、蒼白になってオロオロしている姿が可笑しくて、最後は泣き笑いになっちゃったんだけどね。


そうして気が付けば半年の月日が流れて……。


大柄で強面だけど、優しくて不器用なその人の事を、僕はいつしか「父さん」と呼ぶようになっていた。


母さんも、「もしこの国を出る時は、この子と一緒に貴方の故郷に連れて行って」と、笑いながら話して、それに父さんも「ああ!必ず二人とも連れて行くよ!」と相槌を打っていた。


歪な状況下での、束の間の幸せ。でも、その平穏は再び奪われてしまった。


「お前達の存在がバレた!今すぐ逃げるぞ!!」


そう言うと、父さんは僕と母さんの両方を腕に抱えながら、路地裏を、木々の間を、そして時には家の屋根に飛び乗り、まるで風のように駆け抜けていった。……今思えば、父さんは『魔法』を使っていたんだろう。


その間、次々と襲い掛かってくる刺客を屠り倒していく父さんの表情はまるで別人のようで、僕は少しだけ恐かった。


「――ぐっ!!」


刺客の一人が放った魔力の弾が、父さんの身体のあちこちに当たり、血が大量に噴き出す。


「きゃあああっ!ハーゲン!!」


「父さん!!」


その場に崩れ落ちてしまった父さんは、それでも落とした武器を拾い、僕達を背に庇うように立ち上がる。


「……っ……!……チェルシー……ゼフ……に……げろ!!」


「嫌よ!!逃げるぐらいなら、私もあなたと一緒に戦うわ!!」


「ぼ、僕も……!!父さんを置いてなんていけない!!」


立っているのもやっとな父さんを、母さんと僕は両脇から支えるように抱き着いた。


四方八方から襲い掛かってくる刺客達。……その時、母さんの身体から眩い光が放たれ、気が付けば僕達は三人とも、不気味で広大な霊園の前へと移動していたのだった。


そこは、昼間でも薄暗く、常に靄のような悪いモノ(後でそれは『瘴気』だって分かった)が周囲を覆っていて、朽ちかけ、倒れそうになっている墓石が敷地内の至るところに建てられていた。


「……チッ!く……そっ!下級……ポーション以外は……割れて……しまったか……!」


震える指で、胸元から小さな小瓶を取り出した父さんは、中身を一気に(あお)る。


薬のお陰か、父さんの出血は止まったものの、怪我は完治しなかった。母さんは自分が身に着けていたエプロンを裂いて、父さんの傷に包帯代わりに巻いていた。


そうして、墓守の小屋だったであろう朽ちた建物を発見した僕達は、そこに身を潜める事にした。幸い、埃をかぶっていたものの、ベッドや最低限の生活用品も揃っていたから、父さんも休ませてあげる事が出来た。


父さん曰く、この霊園に近寄る者は皆、心身に異常をきたす事が多いのだそうだ。


それゆえ帝国内では『不浄の地』と忌み嫌われていて、訪れる人は滅多にいないから、身を隠すのには好都合なんだって。


でもだからなのか、父さんの傷は全く良くならず、母さんも熱を出して起き上がる事が出来なくなってしまったんだ。


幸い井戸があったから、水だけは確保できたんだけど、父さんが持ってきた携帯食も残り僅かになってしまった。


それを知ってか、父さんも母さんも「お腹が空かないから」って言って、食事を摂ろうとしてくれない。でもこのまま食事を摂らなかったら、父さんも母さんも益々体力が落ちていってしまう。


だから僕は、毎日墓地の中を歩いて、食べられるものが無いか探している。……でも、木も草も枯れてしまっていて、木の実の一つも見つける事が出来ない。


だからといって、墓地の外に食べ物を探しに行く事も出来ない。そんな事をすれば、追手に見付かってしまうに違いないから。


「…………はぁ……」


空腹と絶望で足が前に進めず、地面にへたり込んでしまう。ポロポロと零れた涙が、乾いた地面に落ちて消えていく。


「女神様、お願いです!お母さんとお父さんが元気になれるように、ほんの少しでいいから、食べるものをお恵みください!どうか……お願いします!!」


両手を組み、必死に祈り続けると、フワリ……と、温かい風が頬を撫でた気がして瞼を開く。


「……あれ?」


乾き切ってひび割れた地面から、いつの間にか白くて小さな花を沢山付けた草が一本、目に飛び込んできた。


「え?な……に?さっきまでこんなの、生えてなかった……よね?」


でも、なんか凄く甘い匂いがして、思わずゴクリと喉が鳴った。


恐る恐る、草を引っこ抜いて鼻に近付けると、更に甘い匂いがして、思わずパクリと口に含んでしまった。


「――ッ!!」


その草は、驚く程甘くて美味しかった。しかも口に入れた瞬間、まるで飴のように溶けて消えてしまったんだ。


見れば、同じ白い花を付けた草が、ポツリポツリと咲いていて、僕は夢中でその草を摘んでは口に入れていった。


すると空腹も落ち着き、あれ程寒くて仕方がなかったというのに、まるで春の日差しを受けたかのように、身体が内側からポカポカしてきた。


……この不思議な草はなんなんだろう?ひょっとして、女神様が僕の祈りを聞き届けてくれたの?それとも、前に母さんが話してくれた物語みたいに、人食いの魔女が仕掛けた罠……?


「よく分からないけど……。でも、これを食べたらきっと、母さんと父さんは元気になるよね?」


そうだ!これは魔女の罠ではなく、女神様のお恵み!……そう結論付けた僕は、母さんと父さんに持っていく為、点々と生えている草を摘んでいったのだった。……が。


「――え?……えぇっ!?」


いきなり目の前に広がった白や黄色や紫の花畑を前に呆然と立ち尽くしてしまう。


しかもその花畑の中心には、ハシバミ色の髪の……まるで絵本の中に描かれた天使のように、すっごく可愛い女の子が、眠るように横たわっていたのだった。


「……ひょっとして、物語に出てくる『眠り姫』?でも、なんでこんな墓地に?」


キョロキョロと、他に誰かいないか確認する。……誰もいないみたい。


「どうしよう……」


だって、いくら眠り姫でも、こんな寒空の下で寝ていたら風邪をひいちゃうよね?でも小屋まで運ぼうにも、僕一人じゃ無理だし。


確か物語では、お姫様は王子様のキスで起きていたけど、王子様いないし……。


「声……かけてみたら、起きるかな?」


おずおずと近寄って、覗き込んでみる。うわぁ……お肌すべすべ。薔薇色の頬に薄紅色の唇。しかも、見た事ない程奇麗なドレスを着ている。やっぱりこの人、お姫様なのかなぁ?


「あ、あの……。もしもし?」


そっと手を伸ばした、その時だった。


「――その子に近寄るな!!」


「きゃっ!!」


突然、男の人の声が聞こえたかと思うと、何かがお姫様と僕の間に降り立った。しかも目の前に、銀色に光る剣の切っ先が突き付けられてしまい、恐怖のあまりに固まってしまう。


「……え?子供……!?」


剣の切っ先を向けたまま、戸惑うような声をあげたのは、黒髪黒目の……。まるで発光しているみたいにキラキラした、すっごく奇麗な男の人だった。


今度は恐怖ではなく、驚きのあまりに、頭の中が真っ白になる。


「……お、王子様……。やっぱり……いた!」


僕の口から出た間抜けな言葉に、目の前の男の人は「王子様?」と言いながら首を傾げた。


エレノアとオリヴァー兄様登場!

そして新情報発覚!ペンペンは甘かった!


観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!

評価して頂けるとモチベに繋がります!

次回更新も頑張ります!

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◇書籍1巻表紙です◇
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◇書籍2巻表紙です◇
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◇書籍3巻表紙です
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◇書籍4巻表紙です
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◇書籍5巻表紙です
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◇書籍6巻表紙です
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◇書籍7巻表紙です
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◇書籍8巻表紙です
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◇書籍9巻表紙です
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― 新着の感想 ―
レイバンって確か、竜人(ドラゴニュート)の族長の名前だったような?変装??同名の別人??
あ、良かった!もしやゼフ君の成れの果てが魔神かと思ってドキドキしながら読んじゃいました。お父さんもお母さんも間に合いそうでε-(´∀`*)ホッ ペンペンは甘かったんですね…。エレノアちゃんグッジョブで…
ショ、ショタだぁぁぁーーーーー!!!!!!!!( ^▽^)( ^ω^)( 〃▽〃) こうしてエレノアに魅了される人が増えていく.... このゼフって子供は庭師のひとかと思ったけど全然違いましたね。 …
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