護りの付与魔法
『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発売中です!そして、ジュニア文庫2巻も、12/1に発売予定ですので、よろしくお願い致します!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
「……は、母上ッ!!エレノア嬢がこっちに来ているって、どういう事ですかー!!?」
「し、しかも弾かれた……ですって!?だ、大精霊様!!エ、エレノア嬢は……!エレノア嬢は生きているのですか!!?」
今度はアーウィンとジルベスタが、アシュルからリュエンヌを奪い取ると、必死の形相で詰め寄る。
「ち、ちょっ!貴方たちっ!!」
「母上!!どうか大精霊の御力で、エレノア嬢の居場所をお探しください!!」
「母上の魔力が足りないのでしたら、俺の魔力を全部持っていっても構いませんから!!」
長男とその友人に詰め寄られ、諫めようと口を開いたリュエンヌだったが、そこにシーヴァーとベネディクトも参戦し、捲し立て始める。
更には……。
「う、嘘だろ!?」
「ああああっ!!せ、聖女様がっ!!」
「エレノア嬢ー!!」
「め、女神様ー!!どうかお慈悲をー!!」
……などと、当然というかエレノアを崇め奉っている学院生達も、大精霊の爆弾発言を受け大パニックに陥ってしまった。そして、クライヴやディランも……。
「うわあああっ!!エレノアがー!!というか、つまりはオリヴァーも一緒に弾かれたってかー!!?う、嘘だろっ!!?」
「エルが……エルが弾かれただとー!!?し、しかも帝国のどっかにー!!?」
と、皆と似たり寄ったりなパニック状態となってしまっていた。
更にはその横でも……。
「今すぐ探しに……って、リアム!!その手を離しなさい!危険だから!!」
「やだ!!フィン兄上!!俺も一緒に連れてってください!!」
「リアム殿下!!それだけはどうか、お留まりを!!代わりに私が、フィンレー殿下にご同行いたしますから!!」
「ちょっとマテオ!ちゃっかり抜け駆けしないでくれる!?フィンレー殿下!!行くなら、是非僕も一緒に!!」
……などと、兄弟同士で揉めるフィンレーとリアムに対し、マテオとセドリックが詰め寄るというカオスが発生していた。
というか本来であれば、『帝国に転移』『魔神復活』でショックを受け、大騒ぎになるところを、『エレノアが行方不明』という点で最もパニックになっているところが、『女性至上主義』であるアルバ男のアルバ男たるゆえんであろう。
「えぇぃ!!貴方達、落ち着きなさい!!」
アーウィン達の腕からスポンと逃れたリュエンヌが、カメらしからぬ俊敏さで息子達やクライヴ達の間を飛び跳ねながら、後頭部をヒレでスパパパパーン!と叩きまくる。
「うわっ!」
「いてっ!!」
「わっ!は、母上!?」
「ち、ちょっ!!大精霊様!?」
最後に。一人だけ冷静だったアシュルの頭にシュタッと着地すると、リュエンヌは足(?)を踏ん張りながら腰(?)にヒレを当てた。
「いい年した男達が、ギャアギャア騒ぐな!!いい!?落ち着いてお聞きなさい!エレノアちゃんは無事よ!!」
大精霊の言葉に、一瞬大聖堂中が静まり返った後、大きなどよめきが上がった。
「はっ、母上!!」
「大精霊様!!それは本当ですか!?」
「ええ、本当よ!だから、落ち着きなさい!!」
「……大精霊様」
アシュルは自分の頭からリュエンヌを両手で掴んで下ろすと、真剣な表情で目を合わせる。
「エレノアが無事というのは、一体なにを根拠として仰っておられるのでしょうか?」
アシュルの言葉を受け、皆が固唾を呑んで見守る中、リュエンヌはヒレでペシッと自分の胸(腹?)を叩いた。
「あのね、私が憑依しているこのウラシマは、エレノアちゃんの従魔なの。だからエレノアちゃんに何かあれば、当然ウラシマの心身にも影響が表れるわ。でも、ウラシマの心は凪いでいる。という事は今現在、エレノアちゃんは無事って事よ!……現に、今こうしている間も、エレノアちゃんとの魂の繋がりを感じるもの」
「なんと……!そう……だったのですね」
リュエンヌの言葉に、アシュルはホッと溜息をつく。それに追従するかのように、その場の全員が安堵の溜息を吐いたのだった。
「それとね。もし貴方達がエレノアちゃんを探しに行こうとしても、多分王立学院から出られないわよ」
リュエンヌの言葉に、再びアシュルの表情が厳しいものへと変わった。
「……それは、外にいる『邪神』の所為なのでしょうか?」
「いいえ。『聖女』の御力によるものよ」
「え!?」
予期せぬリュエンヌの返答に、アシュルの目が丸くなった。
「『聖女』の御力……!?大精霊様、それって、まさか……母上が!?」
「いいえ。エレノアちゃんの『大地』の魔力よ」
「――ッ!!エレノアの……!?」
告げられた言葉に、再び大聖堂内が騒めく。
「ええ。この王立学院の建物には、エレノアちゃんの魔力が張り巡らされている。これが結界となって、悪意ある者の侵入や魔力干渉を防いでいるのよ。そして、その結界は逆に、内側から外に出られないようにもしているの」
「エレノアが……!?」
「……そういえばエレノアの奴、学院のあちらこちらに自分の魔力を付与しまくっていたな……そうか。あん時、窓が壊せなかったのはその所為だったのか」
驚き、目を見張るアシュルの傍で、クライヴが納得したような表情を浮かべた。
「……実は僕も、外に転移しようとしたのに出来なかったんだよね。……そっか……。エレノアが、僕達の事を守ってくれていたのか……」
クライヴとフィンレーの言葉に、リュエンヌはコクリと頷く。
「ええ。それにここにいる全員、エレノアちゃんの魔力を付与されたものを身に着けているでしょう?強制転移の際にかすり傷一つ負わなかったのも、そのおかげだと思うわよ?」
リュエンヌの言葉に、その場に居た全員がハッとした様子で、それぞれがエレノアから魔力を付与された私物へと手を触れた。
「聖女様……!」
「エレノア嬢……!有難う……ございます!!」
彼らは次々とその場に膝を突くと、自分達を守り続けてくれているエレノアに対し、感謝の祈りを捧げた。
「…………」
クライヴも、自分の腰に差してある刀の鞘へとソッと手を当てる。そこにはエレノアが祈りを込めながら付与してくれた、複雑に絡み合うペンペン草とタンポポが咲き誇っている。
『クライヴ兄様!私、頑張って沢山実践したから、兄様達のものには、ちょっと複雑なものを付与しますね!』
「……エレノア……!」
胸の底から溢れてくる愛しさと切なさに、口元にほろ苦い笑みが浮かんだ。
思えば命の危機が迫った時、助けが必要な時……。あの子はいつだって、こうして自分達を守ってくれていた。
敵国のど真ん中に飛ばされ、更には人類の天敵たる『邪神』までもが復活している、絶望的ともいえる危機的状況。
なのに、こうしてエレノアの魔力を感じるだけで、こんなにも勇気や希望、そして安心感が湧き上がってくる。
気が付けば、自分も含めてこの場に居る全ての者達全てが落ち着きを取り戻していた。
「でも、エレノアちゃんには感謝しかないわ!もし、あの子がこの建物に自分の魔力を『付与』してくれていなかったら、ウラシマに憑依する前に『邪神』の魔力に精神体が消滅させられてしまって、私は今この場にいなかったかもしれない……!」
そう言うと、白いカメ……もといリュエンヌは、ヒレで自分の身体(甲羅?)を抱き締めるようなポーズを取り、ブルッと身体を震わせた。
「…………」
両手でリュエンヌを抱き上げているアシュルは、再び襲ってきた脱力感を、小さく首を振ってなんとか耐えた。
これが神々しく美しい大精霊の姿であったとすれば、「なんとお労しい……!!」となったのであろうが、この姿では、真面目であればあるほど滑稽で笑える絵面になってしまうのだ。
――大精霊様といいエレノアといい。『聖』属性を持っている者達は、何故皆こんなタイプばかりなんだろう……?と、心の中で首を傾げるアシュルだったが、周囲の面々もそう思っているのか、皆の視線がやけに生温かい。特にヴァンドーム兄弟の脱力っぷりが半端なかった。
「……あ、ちょっと待って!今、アリアから思念が飛んできたわ!」
「――ッ!!」
母の名前に、アシュルの表情が引き締まり、ディラン達やクライヴ達の表情にも緊張が走る。
「きっと、『邪神』の魔力を突き破った時の『道』が、まだ生きていたのね!……ええ。大丈夫、皆無事よ。ちょっとエレノアちゃんが行方不明だけど……あ、落ち着いて!そっちも大丈夫っぽいから。……え?国王陛下から勅命?……いいわ、伝えてちょうだい」
そう言った後、リュエンヌの全身が金色に光り輝き始める。そしてその口からは、威厳のこもった男性の声が発せられ始め、大聖堂中へと響き渡る。
『アルバ王国国王の名のもとに、勅命をもって伝える。こちら側の掃討が完了次第、帝国へ援軍を送るので、それまでは全員建物内に待機せよ。そして、もし我らの到着前に結界が破られた時は、その場の者達が一丸となり、一人でも多く生き残るように死力を尽くせ』
「おお……!」
「国王陛下……!!」
頂に座す、敬愛すべき絶対君主の力強い声を聞き、クライヴやセドリックを含む学院生達は勿論、職員達や騎士達は感極まり、次々とその場に片膝を突いて頭を垂れる。
『また王家直系は、騎士ならびに魔導師達と共に、一人でも多くの者達を守り抜くように。……全員、アルバ王国国民として。また女神様の信徒としての誇りと矜持を忘れるべからず』
「……御意!」
胸に手を当て、頭を垂れたアシュルに続き、ディラン、フィンレー、リアムも次々とそれに倣う。
国王からの『勅命』を受け、その場の全員が心を一つにする中。帝国の『とある場所』では、ひっそりと『奇跡』の芽が芽吹き始めていた。
カメ様、絶好調ですね!
そしてエレノアですが、どうやら無事のようです。
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