魔力探知
『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発売中です!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
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「そういやアシュルの奴。確か、直接大聖堂の方に向かうって言っていたな……。だとすれば、殆どの教師陣や学院生達は、あそこにいる可能性が高いか」
そう踏んだクライヴは、ひとまず大聖堂を目指す事にした。
「……にしても本当に、一体何がどうなってやがんだ?」
元々アルバ王国は魔獣の大量発生以外で、大規模な災害が起こった事例は周辺諸国に比べて格段に低い。
「しかも、『聖女』が顕現した土地はあらゆる災害が発生しなくなる……って言われているしな」
父であるグラントや、メルヴィルが言うには、確かに聖女アリアが『転移』してきて以降、王都には災害はおろか、小規模な流行り病すら起こっていないのだそうだ。
そして、新たに『大地の聖女』と認定されたエレノアが生まれたバッシュ公爵領も、十三年間一度も異常気象に見舞われないばかりか、作物の質も量も年々上がっているとの事だった(アイザック談)。
つまり、女神様の使徒たる『聖女』が生まれるか顕現した土地は、それだけで祝福を受けるという事なのだろう。
なのに、その『聖女』がいる王都で天変地異が起こった……という事は……。
「……つまり、これは天災とかじゃなくて……帝国から、なんらかの攻撃を食らったかもしれないって事か?……いや、まさかそんな事が……」
帝国との開戦を機に、王都は王宮を中心に宮廷魔導師団によって、アルバ王国のどこよりも強力な防御結界が展開されているのだ。
その上、『魔眼』の天敵とされている『聖女』アリアの祈りが、防御結界に編み込まれている。そんな中、王宮の目と鼻の先に建っている王立学院に、このような大規模な攻撃を加える事など、果たして出来るのだろうか?
そんな事を考えながら、クライヴは何気なく窓の方へと視線を向けた。
「――……は!?」
思わず、間の抜けた声が洩れる。
「な……んだ!?え!?こ、ここって、王立学院……だよな!?」
足を止め、窓辺に寄って確認する。だが、そこから見える景色はいつもの見慣れたものではなく、まるで夜の闇が広がっているかのような、漆黒の壁が聳え立っていたのだった。
慌ててその場から駆け出し、窓を凝視しながら走り続ける。だが、壁は延々と続いており、終わる気配が無い。
「おいおいおい!薄暗かったのって、この壁が原因かよ!!」
この異常な状況を確認すべく、クライヴは外に出ようと、目についた片上げ下窓に手を掛けた。……だが何故か、窓は鍵がかかっていないのにも拘わらずビクともしない。
「……ひょっとして、さっきの地震で窓枠が歪んだか?」
ならばと、魔力を拳に纏わせ窓を破壊しようとする。だが拳が窓に当たる寸前、バチッと火花が散るような音と共に拳が弾かれてしまう。
「なっ!?」
ひょっとして、魔力操作を失敗したか……と、今度は拳のみで、渾身の力を込めて窓に叩きつけるが、弾力のあるクッションに拳を突っ込んだかのような感触の後、拳どころか身体ごと窓から弾き飛ばされてしまった。
「は!?ち、ちょっ!?……くそっ!本当に、どうなってやが……」
言葉が終わる直前、『外側』から凄まじい衝撃が襲い、建物が激しく軋む。
「――ッ!!?」
なんとかバランスを取り、転倒するのを防いだクライヴが窓の方を確認すると、壁ではない、漆黒の『何か』が窓の外で生き物のように蠢いているのが見えた。
「フィンレー殿下の『闇』の触手……?いや、違う」
だいたい、フィンレーの触手は、形状自体はアレだが、魔力の質そのものは美しい波動に満ちている(敵対した相手にとっては、悪魔そのものであろうが)。対して、窓の外に見える魔力はというと、見ているだけで怖気立つ程に禍々しい気配を放っているのだ。
そこでふと、クライヴが気が付いた。
「……窓が……割れていない……!?」
そう、かなりの衝撃だったにも拘わらず、窓には少しの傷もついてはいなかったのだ。しかも、うっすらと淡い金色の光を放っている……ような……?
「クライヴ・オルセン」
「うわっ!!」
いきなり名を呼ばれ、思わず抜刀し身構えた先には、なんとフィンレーが憮然とした表情で立っていたのだった。
「……折角迎えにきたっていうのに、随分なご挨拶だね」
不機嫌そうな声を受け、慌てて刀を鞘に仕舞う。
「あ!す、済みません!!ち、ちょっと考え事を……って、迎え!?というか、アシュル……いや、他の殿下方はご無事なのですか!?」
「うん、無事だよ。あの『地震』があった時、幸いにも僕を含めたアシュル兄上達や学院の職員達、そして学院生達の多くは大聖堂に集まっていたからね」
「そ、そうでしたか……!」
フィンレーの言葉を聞いたクライヴは、ホッと安堵の溜息をついた。
「ついでに言うと、近くまで移動中だった者たちは、『影』達が回収済み。で、瓦礫なんかに埋まっていたり、動かすのが困難な程の重傷を負った者がいたら不味いから、僕が魔力探知して、生存者を探していたんだよね。……尤も、感知したのは君とカメだけだったけど。あ、因みにカメはもう保護済みだから」
『俺と……カメ!?』
思わず、「因みに色は?」と聞こうとしてしまったクライヴだが、そんな場合ではないと踏みとどまる。
「正直、君なら勝手にこっちに来るかなー?って思って、放置しようと思ったんだけど、『万が一の事があるかもしれないから!』って、アシュル兄上に怒られちゃった。ま、結果的に兄上の言った通りになったけどね」
そう言いながら、フィンレーはチラリと窓の方へと視線を向けた。
「……フィンレー殿下。外の『アレ』について、なにかご存じありませんか?」
「……」
窓の外の『魔力』を暫し見つめた後、クライヴへと向き直ったフィンレーの表情は、嘗てない程険しいものへと変わっていた。
「外の『アレ』についてだけど……。僕もアシュル兄上も、確信は持てていなかったんだ。それに、信じたくないって気持ちもあってね」
「それって……」
「ああ。あの魔力の波動は、限りなく『魔眼』の力に近い。先程の地震も含め、これらは全て、帝国の攻撃によるもので間違いないだろう」
「……!!」
やはりそうだったのか……と、クライヴは奥歯を噛み締める。そんなクライヴを見ながら、フィンレーは静かに話し続ける。
「……気になるのは窓の外のあの魔力。以前感じた『魔眼』とは比較にならない程、強力で邪悪な力に満ちているという点だ。僕の連れて来た魔導師達や『影』達の誰もが、外部と連絡がつかない状況だし、僕も王宮に『転移』しようと試みたんだけど、弾かれちゃったんだ」
「……そう……ですか」
「だから、今現在王宮や王都がどうなっているのか分からなくてね。……なんとも歯痒い事だ。なにより、母上やエレノア達が心配だよ」
「――ッ!!」
『エレノア』という言葉を聞き、クライヴは瞬時に青褪めた。
――そうだ……!この人はさっき、なんて言った!?
「フィンレー殿下!!エレノアとオリヴァーの魔力は、探知出来なかったんですか!?」
いきなり血相を変え、自分の両肩を掴んできたクライヴに対し、フィンレーは怪訝そうな表情を浮かべた。
「は!?君とカメしか感知出来なかったんだけど……にしても、なんでエレノア?オリヴァー・クロスなら分かるけど。っていうかあいつ、学院にいたんだ?君しか魔力探知出来なかったから、てっきり学院にいないとばかり……」
「いえ!オリヴァーはこの地震が起こる直前まで、俺と一緒にいました!!エレノアの奴も、何故か地震が起こる直前、学院にやって来ていて……!!だから俺は、二人とも学院のどこかで一緒にいるものだとばかり……!!」
だが先程、フィンレーは『自分とカメしか』魔力探知出来なかったと言っていた。それが示すところは……。
「……は?なんだって!?」
クライヴの言葉を受け、フィンレーの顔色も、みるみるうちに青く変わっていく。
「まさか……二人とも……!?いや、そんな事ある筈ない!!待ってろ、クライヴ!今すぐ魔力探知の範囲を広げ……」
その時。クライヴとフィンレー目掛けて、窓の外の魔力が凄まじい力でぶつかってきた。
「うわっ!!」
「くっ!!」
先程と同様、窓にはヒビ一つ入っていなかったが、凄まじい衝撃により、フィンレーとクライヴの身体が床に叩きつけられてしまう。
更には天井の壁が崩落し、瓦礫がクライヴとフィンレーの頭上に雨のように降り注いだ。
「フィンレー殿下!!」
咄嗟に、クライヴがフィンレーを庇い覆いかぶさる。
瓦礫がクライヴに直撃する瞬間、『闇』の触手が傘のように広がると、二人の身体を包み込み、消えた。
緊迫シーンが続く中、さり気なく投入されたカメ…。
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