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【書籍10巻&コミック1巻予約販売中】この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い【web版】  作者: 暁 晴海
第十六章 帝国の影【バッシュ公爵領編】

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全く癒されないお見舞い【クリス視点】

クリス視点二回目です

「……ティル。お前、なんでここにいんの?」


僕は、自身に与えられた部屋のベッドに横たわりながら、サイドチェアにどっかりと座り、ムシャムシャと見舞いの果物を貪っている部下に対し、冷ややかな眼差しを向けた。


「えー?見舞いっすよ、み・ま・い!」


「へぇ……。見舞いねぇ……?そう言う割に、なんで手ぶらでやって来てんだよ、お前!挙句、僕が(・・)お嬢様から頂いたお見舞いの果物を勝手に食いやがって!!」


今現在ティルが腕に抱え込んでいる果物籠は、先程エレノアお嬢様が見舞いに来た時、わざわざ持って来てくれたものだ。


『他の果物はともかく、この苺はフリーズドライにしてあるから、腐るのを気にしないで、食べたい時に食べてね!』


そう言って、他の果物とは別にした、やや小ぶりの果物籠に山盛りにした苺を持って来てくれたのだ。


『……だというのに、このクソ馬鹿野郎は……!!』


隣に色とりどりのフルーツが盛られた籠があるというのに、なんでよりによって、真っ先にその苺から食っていくのだ!!嫌がらせか!?そうなのか!?だとしたら今すぐ滅びろ!!


「いや~、俺がお嬢様から頂いた分は、既に食っちまったし、あのまま自分の部屋にいると、ここぞとばかりに俺をボコりにやって来る連中がウザくって!……あ~、やっぱマジ美味い!本当、こんな最高なブツ生み出しちゃうお嬢様って、マジで女神様の御使い!」


「他の騎士連中が襲撃してくるのは、お前の日頃の行いのツケだろが!……ってかお前。まさかと思うが、見舞いと称してここに逃げ込んで来たんじゃないだろうな?」


「んな事、ある訳ないじゃないっすかー!も~、団長ってば!可愛い部下を疑うなんて、人間不信拗らせすぎ!」


いや、たった今お前、諸々自白したよな!?


「拗らせてないし、可愛い部下などこの場にいない!!いーから、それ返せ!!」


そう言いながら、ティルから苺を籠ごと奪い返す。


この苺はそもそも痛みやすい為、生の状態ではバッシュ公爵領の者とはいえど、そう容易く入手出来ない程の貴重品だ。

その為、一応高給取りである騎士になった今でも、滅多に口にする事は無かった。


だが、味は極上で取り扱いの難しいこの苺は、エレノアお嬢様の発案された製法により、このように画期的な商品として生まれ変わらせる事が出来たのだ。


お嬢様曰く『こういうの、品種改良……いや、違うか。ん-と……あ!『改善』って言うのかな?』だそうだが、まさにうってつけの言葉だと感心しきりだ。


味も良く、日持ちする上、見た目を裏切りスナック感覚で食べる事が出来る。


そのうえ、輸送コストもかからない上、様々な加工品に使えるであろうから、多少形や色が悪くても商品とする事が出来る。その結果、廃棄も殆ど出ない。


クリスは、奪い返した籠の中、半分以下に減ってしまった苺を一つ摘まむと、口元へと持っていく。


シャクッと、小気味いい音と歯応え、そして口腔内に広がる甘さ。


そのまま咀嚼していると、口の中の水分と合わさり、嚥下する頃には瑞々しい食感に戻った果肉が喉を滑り落ちていく。


美味しい上に、摩訶不思議な食感の変化をも楽しめる。この苺はきっと、今迄以上に価値が高まるに違いない。


しかもこの技術、他の果物だけではなく、加工食品にも応用出来るかもしれないというのだから驚きだ。

集積市場での構想といい……。バッシュ公爵家はまさに、エレノアお嬢様のお陰で、無限の可能性と、今まで以上の巨万の富を得る事が出来るに違いない。


騎士達や領民達が言う通り、まさにお嬢様はこのバッシュ公爵領にとって、豊穣の女神そのものだ。


苺を食べながら、そんな事をつらつらと考えていると、ふと視線を感じ顔を上げる。


すると、ティルがいつもとは違う真剣な表情で、こちらを見つめている事に気が付いた。


「……なんだよ?」


なんとなく居心地の悪さを感じ、眉根を寄せながらそう問いかけると、ティルは唇に微かな微笑を浮かべた。


「少しは、元気出たようですね?」


「――!?」


「あんた、周囲が思ってる以上に、一途で愚直で面倒くさいくらい不器用だからさ。未だに死んだ男想ってグジグジしていると思ったんだけど、安心しました。やーっぱ、エレノアお嬢様ってば、マジで偉大だわ!」


「……ティ……ル?」


常とは違った違和感を覚えながら、自分の目の前にいる男を見つめる。


いつものヘラヘラした口調や雰囲気は鳴りを潜め、何かを悟ったような表情や物言いは、達観した思考を持つ者のソレだ。


ふと、脳裏にアリステアの姿が浮かび、ティルと重なる。


寡黙だが、仲間思いで忠義に篤い騎士だと思っていた。なのに彼は帝国の間者で……。


「まさか……お前……」


そんな筈はないと思ってはいても、あまりにも普段とは違うティルの姿に、疑念と不安が湧き上がってくる。


そんな自分と目を合わせたまま、不意にティルの唇からフゥ……と、溜息が漏れた。


「……ダメダメっすね……」


「は?」


「いつもの団長なら、『はぁ!?何言ってやがる!!てめぇのような脳筋が、知ったような口利いてんじゃねえよ!!』って、口と一緒に手が出てるとこなのに……。パン粥みたいにふやけてて、拍子抜けっすよ!」


「……おい……?」


「いつものように俺を罵倒しているのに、傷付いた身体は思うように動かせない……。そんな団長を強引にベッドにねじ伏せ、抵抗虚しく羞恥と屈辱に顔を歪ませる……って、最高のシチュエーション狙っていたのに!これじゃあ勃つもんも勃たねぇ!くっそう!どーしてくれるんっすか!?」


「…………」


ワナワナと、知らず身体が震え出す。


「……ティル……。お前……お前という奴は……!」


だが、そんな僕の態度を気にするでもなく、ティルは超良い笑顔でサムズアップした。


「って訳でぇ、弱っている今の団長は、押し倒し甲斐がないから襲いません!だから早く元気になって下さいね!」


ブチッと、何かがキレる音がした後、「ふざけんなーー!!」の怒声と共に、僕は渾身の一撃を食らわせ、ティルをドアごと部屋から叩き出したのだった。

ティルなりの気遣いでした。


ですがクリス団長の言う通り、日頃の行いが災いしてしまったと……。ティル、ドンマイ!


観覧、ブクマ、いいねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!

次回更新も頑張ります!


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― 新着の感想 ―
[良い点] ティルは何処まで行ってもティルだったw 怒涛の日々の中、『変わらないモノ』があるっていい事ですよね。クリスが元気になって良かった。(そうじゃない) [一言] エレノアちゃんがエレノアちゃ…
[良い点] クリス団長、ティルごとドアを吹っ飛ばす! (#゜Д゜)=○)´3`)∴ 怪我は大丈夫そうで良かったですw [一言] ここにエレノアがいたら、ティルの普段とは違った表情とか、BとL的美味しい…
[良い点] クリス団長は苦労人ぽくて、いつもティルのお守りをしているイメージでした。なので、勝手にもっと器用な人だと思って見ていたので案外不器用なんだなあ、と感慨深かったです。不器用で一途(ティル談)…
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