え!?ワーズじゃなかったの!?
「エレノア嬢。ブランシュ・ボスワースとの戦いで、君はその『大地の魔力』を用い、アシュルやクライヴ・オルセン。そして、オリヴァー・クロスとフィンレーの傷を癒し、ブランシュ・ボスワースの力を封じ、完全討伐への道筋をつけた。…そうだな?アシュル。そしてクライヴ・オルセン」
「はい、父上。相違ございません」
「その通りです、国王陛下。私もアシュル殿下も、間違いなくこの目で確認致しました」
「ち、ちょっと待って下さい!!殿下方や兄様方の傷を癒したって…全然癒されてませんでしたよね!?治したの、聖女様ではありませんか!!」
そう、私が目覚めた時、アシュル様やオリヴァー兄様方、集中治療室でボロボロの状態だったじゃないか。それが何で、私が癒した事になるんだ!?
「エレノアちゃん。私が彼らを治す前に、致命傷になっていたであろう、身体の深部にある傷だけが、癒えていたのよ。…正直、それが無かったら、この子達は助かっていなかったかもしれないわ」
「え…!?」
聖女様曰く、アシュル様とクライヴ兄様は、ボスワース辺境伯に地面に叩き付けられた時、折れた骨があちこちの内臓を傷付けていたんだそうだ。
そしてオリヴァー兄様も、ケイレブに刺された傷は想像以上に深く、しかも肝臓部分を刺し貫かれていた為、焼いて止血しても一時しのぎにしかならなかったらしい。
フィン様も、あまり鍛えていなかったのが災いして、全身のあちこちの骨を骨折したうえ、地面に叩き付けられたショックで心臓が停止寸前だったとの事だった。
私は改めて、殿下方や兄様方が、どれ程危機的状況だったのかを再認識し、身体を震わせた。そんな私の頭を、オリヴァー兄様の手が優しく撫でてくれる。
「君が気に病む事は無いんだよエレノア。愛する女性を守る為に負った傷など、アルバの男にとって、名誉の負傷以外の何物でもないんだから」
オリヴァー兄様のお言葉に、力強く頷く聖女様以外の男性達…。いやだから、そういうトコがいかんのですよ!!そもそもそんな傷、負わないで下さい!…あっ!聖女様の顔が引き攣っている!分かる、分かりますよその気持ち!!
「エレノア。僕とクライヴが目を覚ました時、地面から生えた幾本もの蔓が、僕とクライヴ…そして、オリヴァーとフィンの身体を覆っていたんだ。…いや、あれは蔓…だったのかな?とても、温かくて、まるで生き物のようだった」
「そんで、お前があの男に襲われそうになっていた時な。お前の祈りで地面からその蔓が生えて、たちまち太い幹となって、奴に絡み付いたんだ。その時、お前の身体は全身金色に輝いていて…。そんな場合じゃなかったってのに、思わず見惚れた」
アシュル様とクライヴ兄様の言葉に、私は木の幹に絡め取られていたボスワース辺境伯の姿を思い浮かべた。…え?あれって、私がやったの?ワーズが何かしてくれたんじゃなくて?
「エル、覚えているか?お前が俺と初めて逢った時、やっぱりその力で、クリスタルドラゴンの動きを封じた事があっただろう?」
ディーさんの言葉に、あの時の事を思い出す。…そういえば、そんな事があった。でもあれも結局のところ、ワーズが力を貸してくれたから出来た事なのではないだろうか。
「えっと…。多分それ、私の力じゃありませんよ?」
全員の目が、一斉に私へと注がれる。
「あの時も、ボスワース辺境伯の時も、たまたまワーズがいて、私に力を貸してくれたから、出来た事だと思います」
だって私、騎士や治療師の真似事は出来るけど、そもそも魔素集めは大の苦手だし、『土』の魔力で花を咲かせた事も無いのだ。なのにそんな、大掛かりな治癒とか、ましてや大地を潤すなんて芸当、出来る筈ないではないか。
「…ふむ。例のダンジョン妖精か。だがアレから聞いたところによると、ダンジョンでは力を貸したが、今回は自分は関わっていないとの事だったぞ?」
「え!?」
国王陛下のお言葉に、私は思わず勢いよく起き上がり…。眩暈を起こして、再び倒れ伏してしまったのだった。
「エレノア!しっかり!」
「だ、大丈夫です…オリヴァー兄様…。あ、あの、陛下。ひょっとして、ワーズと話をされたのですか!?」
「うむ。アイザックが用意した、採れたて新鮮の果物の山に釣られて出て来たアレを、フィンレーがすかさず捕え、メルヴィル渾身の作、『魔力封じの檻』に封じた後、聞き出した。ギャアギャア煩いので、一緒に果物を入れてやったら、文句を言いながらも瞬く間に完食していたがな」
…ワーズ…。あんた本当に、どんだけ果物好きなんだ。ハッキリ言って、チョロすぎる以外、言うべき言葉が見付からないよ。こんなん繰り返していたら、いつかとんでもない事になるからね、マジで。
「まあ、そういった訳で、君は『大地の魔力』保持者…もしくは、素質があるという事が判明した。…つまり、君には『聖女』としての資質がある…という事だ」
「は!?せ、聖女…!?」
な、なんか、姫騎士よりも大掛かりな事になってきたんですけど!?
「そうだ。『聖女』は女神の正統なる御使いとされ、その身分は王族と同等。よって、君が真の『姫騎士の再来』と皆に認められれば、公妃とならずに、王家直系と婚約する事が出来るという訳だ。…それに、聖女に重きをおかぬ、他国の者達はともかくとして、聖女に手出しをするような不埒な輩は、このアルバ王国にはいないだろう。ゆえに、今後の憂いがかなり減るのは間違いない」
「えええ!?ち、ちょっと待って下さい!!わ、私にその『大地の魔力』があったとして、意識して使った事ないし、そもそも使えなかったらどうするんですか!?」
というか、絶対そんなご大層な属性、持っていないって!持っていたとして、癒しの蔓草なんて、どうやって生やせばいいんだ!?どう頑張ったって私の実力では、ぺんぺん草しか生やせないって!
「大丈夫よ、エレノアちゃん。私が貴方の魔力を引き出すお手伝いをしてあげるから。お母様のマリアさんも王宮にいるし、お勉強の後は、こっちにお泊りして、女子会しましょうね!獣人メイドさん達も一緒で!ああ…今から楽しみ!!」
聖女様が明らかにウキウキしながら、そう提案して下さったが、そこにすかさず、オリヴァー兄様が口を挟んだ。
「聖女様!エレノアは学院に行かねばなりませんから、週末の二日間だけ、こちらに通わせます!更に言わせて頂ければ、泊りがけは許可しません!日帰りでお願い致します!!」
「ええ~!じゃあ、せめて一日だけでも…」
「筆頭婚約者として、断固お断り致します!!」
オ…オリヴァー兄様、遂に聖女様にまで、容赦なくバッサリと…!ああ、ほら!クライヴ兄様とセドリックが、青褪めていますよ!?
いや、でも女子会…。なんかめっちゃ惹かれるワードだなぁ…。しかもお泊りって事は、モフモフ交えてパジャマパーティー…!?うわぁ…。まさにモフモフ天国!
「…エレノア?「何かちょっと楽しそう」とか、考えている…?」
ああっ!オリヴァー兄様のスキル、『心読』が発動したー!!(ちなみにこのスキル、私が勝手に命名しました)
「い、いえっ!兄様、そんな事、決して考えておりません!!」
「ふぅん…。そう?じゃあ帰ったら、改めて今考えていた事を、話して貰おうかな?」
『ひぇぇぇ!!』
めっちゃ黒い微笑を浮かべるオリヴァー兄様に、思わずガクブルしてしまうのは許して欲しい。そして聖女様!「まぁ。これが噂に聞いていた、オリヴァー君の『万年番狂いの狭量』なのね!」って言いながら、感心していないで下さい!
あっ!オリヴァー兄様!か、顔ッ!笑顔恐い!青筋引っ込めてーっっ!!
エレノアの周囲の誰もが、ワーズの取説を理解した模様。
観覧、ブクマ、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
次回更新も頑張ります!




