下準備②
ブクマ&評価ありがとうございます!そろそろ頭打ちかなぁ…なんて思っていたので、数字が増えているととても喜びます。特に宣伝もしていない辺境の連載を応援してくれる読者さんがいるという事が何よりの励みです!!(>▽<)頑張ります!!
『ノブレス・オブリージュ』この言葉に嘘はない。
ただこの『貴族の義務』(意訳)をうちの子たちの未来の為にちょこっと利用させてもらおうってね。
というのも。
『星巡り回廊の眠り姫』その攻略キャラであるうちの子たちには学園入学時から既に通り名やそれに準じた共通の認識が存在していた。その主な理由は為人を表すため…謂わばキャラクター属性である。
一応お茶会など昼の催しにより、一定の評判は定着しているうちの子たちだが、あくまで御家柄を基準にした表層的なものでしかなく、イマイチ【メインキャラクター】足り得るような有名税…灰汁…もとい箔には今一歩及ばない。
だから今!不謹慎かもしれないけれど、この有事を利用して彼等を有名にしてしまおうと目論んでいるのだ。
だって、うちの子たちは貴族学園の生徒たち有象無象から頭一つ飛び抜けたアイドル性がなければいけないからです!皆が一目置く、それと同等の個性がある。それがメインキャラクターというものでしょう?埋没してちゃステラに見つけて貰えないじゃない!
そこで既存の有名人、王太子殿下に御名を冠する栄誉を賜ったわけです。これで目立たないはずが無い!そしてやる事とは慈善活動。結果、ラルフへの国民感情もうなぎのぼり!一石二鳥なのです!
さあ、私の頑張り所ですよ~!!
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今回私たちが向かう先はダンデハイム領とは真逆にある王族の直轄領。何故か国境にほど近い山間を含む辺鄙な場所に飛び地として存在している場所だ。
マル爺曰く、嘗て一代貴族の褒賞として下賜された場所らしいが――その人の出身地だった――、辺境という環境でその後続く功績をあげられず、同格の身内も出現しなかった事で敢え無く――文字通り一代限りで――絶えてしまったとか。直ぐに国に返還された土地は未だに貰い手も無く王族管理となっているらしい。
「兄上の話では、重要性も然程高くない領地だから、気軽に褒美として与えられるよう遊ばせてある…と聞いた」
クロードがそう裏事情を補足してくれた。
「そりゃそうだよね……。荷馬車引き連れての移動で、王都から5日の距離だもん。欲しがる人もいないよねぇ」
王太子殿下の勅使として旅立った私たちは、それは立派な馬車で移動していた。客室の作りも大きいため、その一台に大勢で乗り込んでいる。……警護の都合上一纏まりという部分もあるのだが。
時間はたっぷりとあるので、道中これから向かう村についての話をしていた所だった。
メンバーはく~ちゃん、シルビア、ユーリ、レイ、そしてマル爺とミケル、ダンデこと私。大人で6人乗りといった所だろうか。まだ子供の私たちには少し余裕があるくらい。
マル爺はご意見番として、ミケルはハンナが私の世話につきそって同道するので一緒に連れてきた。それぞれ使用人たちは後続の馬車でついてきている。
山裾に点在する小さな村の一つが今回の目的地。
何でも獰猛な野生動物が集落付近に下りてきたという奏上があった為、騎士団が討伐に動くという話に便乗させてもらったのだ。
私たちは辺境の集落の被害状況の確認と村落内での支援活動が主なお仕事となる。
コンコン
馬車の窓が叩かれ、そちらを向くと、騎士団に混じって馬で並走していたロンがいた。
「もうすぐ今日の宿場町へ到着だそうだ」
用件だけの簡潔な伝言が窓越しにくぐもって届いたのに了承のジェスチャーを送るとロンが頷いて窓から離れていく。
ロンだけ外にいるのはジェイルさん……父親である騎士団長から鍛錬の為に乗馬を義務付けられたからだ。本人も異論はないらしく、実に飄々と護衛のメンツに混じっている。ポーカーフェイス故澄まして見えるが、あれは結構興奮してるな。瞳の奥が爛々としてるもの。
やがて街に到着すると、領主に先触れを出していたこともあり大歓迎を受けた。王都を出発して三日目、つまり三つ目の宿場町なのだが、前二つも同様の有様だった。
それも仕方のないことだろう。だって、王族の勅使なんだもん。しかも王太子殿下の名代で第二王子殿下であらせられる『クロード・クロムアーデル』その人が随伴なさっているのだ。
そこに住む人々はく~ちゃんを一目見ようと大騒ぎだった。
馬車から降りたく~ちゃんに黙って付きそうロンとレイ、その後ろに控えるのは見目麗しいシルビアとユーリ。いやぁ目立つ目立つ!……え、私?私はマル爺、ミケルと一緒に固まる事で使用人としてしか認識されていません!嬉しい誤算ですよ。
歓迎の挨拶をする領主にクロードが歓待され、令嬢然と取り澄ましたシルビアが奉仕活動と称してクロードと共に街中を慰問する。旅の目的を明らかにして町人たちから支援物資の援助を乞えば、たちまち感銘を受けた民衆からの献上品で溢れた。
実際、こんな事をしなくても此度の遠征に必要な物資は十分に用意してある。
じゃあ何故行く先々でこのような事をしているのかというと、『王家は国民を見捨てない』と印象付ける為。
国の頂点が貴賤を問わず率先して身を粉にする。しかもそれを担っているのは次世代である王太子殿下と同世代のジュニアたち。となれば、今代に留まらず、次代にも同様の治世が続くという事だ。
更に、民衆を巻き込むことで当事者に仕立て上げ関心を持たせる。
自身も関わったとあればそこには説得力が生まれ、有事の際に王家は自分達を守ってくれるという確固たる安心感が芽生える。事実、こうして王子自ら行動したという記憶から、いずれ自身にも返ってくるものだと期待するだろう。情けは人の為ならずってね!
そもそも、王都から離れた町村で暮らす国民にとって王族とは雲上人。一生お目に掛からないなんてざらだろう。乱暴に言えば架空とは無いと同義だ。
そんなものを信じられるわけがない。でもそれでは困るのだ。
何せこの後にはまだ試練が待ち受けているのだから。その苦難と戦うための国政へ意味も無く反発されては困るしね。
―――そんなこんなをしながら5日目にして、私たちは目的地へとたどり着いたのだった。
本編連載と関係ない宣伝でごめんなさい。
読んでくださった方もいらっしゃるかもですが、筆者、短編を二本執筆しております。
どちらもサクッと読める内容&文字数となっておりますので、読書の秋に是非ご活用くださいw
ブクマ&評価がある程度回るようなら続編もあるかも?
よろしくお願い致します!
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