印籠になりました。
すみません、今回ちょっと短めです…(;△;)
く~ちゃんに誘われてお茶しに来たはずなのに、何故か王様にとっ捕まりました。…ナターシャです。ごきげんよう。
「王妃もそなたに会いたがっていたぞ。近々呼び出されるかもしれぬなぁ」
朗らかに笑う王様。…冗談じゃない。変にフラグを立てないでよ、王様っ!!
「あの…。それで、陛下のご用件とは何でございましょうか?」
さっさと終わらせてさっさと立ち去ろう、うんそうしよう!
私は思い切って王様に切り出した。
「…ダメだな。」
腹にズシンと低く響き、鋭い声が降ってきた。ひぃぃっ!!この短時間に私粗相しちゃった?やっぱり話しかけたの拙かった!?
心臓がキュッと縮まり鼓動が早鐘を鳴らす。浅い呼吸で相手の様子を窺えば、それはもう真剣な表情の王様が――気難しく眉を顰め――顎に手を添えている。
(……オワタ)
自暴自棄になった辺りで王様の口が開いた。
「…ナターシャ嬢。余の事は是非『おじ様♡』と呼びなさい。あと、エルバスと接するように話してくれ給え。畏まる必要はない。」
「……へ?」
想定外のセリフに間抜けな声が漏れる。そんな私を気にすることなく、王様がとっておきのウィンクを投げかけてきた。
「いいかい?これは命令だ。」
(うわ~…親子。紛れもなくラルフの親だわ。同じこと言ってる……)
――『そして私の事は『ラルフ』と呼ぶように。これは命令だ、良いな?』――
在りし日の記憶が甦る。…たった数年前の事なのに、やけに懐かしく感じるものだ。
回想に引きずられて思わず顔が綻んだ。
「…おじ様♡」
解れた気持ちの勢いで呼び掛ければ、陛下が口元を手のひらで覆い顔を背けた。肩がブルブル震えている。
よく分からんがお気に召したらしい。……う~ん、親子だ。
この様子ならいけるかもしれない。私はゴクリ生唾を飲み込み、恐る恐る陛下に問いかけた。
「…あの、おじ様?実は私…ご相談したい事がありましたの。」
「うんうん、何だい?おじ様が何でも聞いてあげよう!」
いや、ダメでしょ。安請け合いし過ぎでしょ!せめて内容聞こうよ!?…大丈夫、王様!!?
「あ、ありがとうございます…。それが、クロード殿下の事なのですが……」
「愚息がどうかしたかな?」
「あのぅ……もう少し外出の機会をお与えいただけませんか?」
「構わんよ」
「…ですよね……って、えっ!?良いんですかっ!!?」
「それを其方が望むのであれば好きにしなさい。…但し、ナターシャ嬢。必ず其方が同道する事が条件だ。きちんと報告してくれるのであれば、後は自由にしなさい。」
「陛下…あ、ありがとうございます!」
「お・じ・様、だよ?」
「へぁっ!?…お、おじ様……ありがとうございますぅ……」
「どういたしまして。…ところでナターシャ嬢。なかなか面白そうな試みを始めたようだね?是非私にも教えてくれないかな?」
…それは職業訓練所の事でしょうか?よくそんな事ご存じですね…。
「君が皆に配り歩いていた石鹸や香油はとても興味深かった。今度は何を企んでいるんだい?」
「企んでなんかいません!?…あの、ホントに、特に大した事は…。ただ、王都で暮らす人々との交流の場が欲しかったのです。」
「……交流、ねぇ」
王様の眼が妖しく光った。いやホント含みは無いですよ!
「成程。…それは良いな。うむ、名案だ!――ではナターシャ嬢、余とも交流しようじゃないか!」
「えっ!!?それはどういう……」
「なぁに、時々で構わないから、おじ様に市井の世間話を聞かせておくれ。必要であれば倅どもを上手く使うと良い。そなたが思う通りにやってみなさい。余はそれを支持しよう。」
…私を間諜に据えて利用しようと?それにしては諸手をあげての賛成っぷりが恐ろしいのですが……?
「確認なのだが、其方は先日、ダンデハイム領の東のご隠居に呼び出されたのであろう?」
「…はい。ライメイお爺様がどうかなされましたか?」
「ふふ、彼はね、かつて余の父の友だったのだよ。」
「そ、そうだったのですか!!?」
衝撃の事実発覚!大師匠は思う以上にとても凄い人なのかもしれない。次に会うのが楽しみだ!
「色々あって今は隠遁なされているがね。余も世話になった。…彼から何か言付かってないかい?」
「……?いえ、特には……?」
「そうか……。ならばな尚の事、しっかり励みなさい。…楽しみにしているよ。」
言うだけ言って王様は立ち上がり、政務へと戻って行かれました。最後の方は何だったんだろう?よく分からないけど、私もく~ちゃんの元へ急ごう。
私は部屋付きの侍従さんにお願いして、クロードの元へと案内して貰った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「…という訳で、く~ちゃん。私と一緒なら出掛けて良いらしいので近々約束のピクニックに行こう!」
「アーシェ、ち、父上に会ったのか!?」
「会ったというか拉致された?」
(…そういえば私最近そんなのばっかりね……)
私が首を傾げると、寂しそうに肩を下げるクロード。どこ吹く風のシルビアが楽し気に笑った。
「なかなか来ないから何事かと思えば、クロの外出許可を取ってたなんて、流石ナターシャね!」
(…完全に成り行き上の棚ぼただけどねぇ)
「しかし何故アーシェと一緒なら出掛けても良いんだ?」
(きっと陛下はダンデハイムの隠密部隊をご存じなのだわ…)
ライメイとの関わり。ソウガが抱える禁則事項。まだ分からない部分が多いけれど、私に何かさせたがっているのだけは解った。私的には都合が良いので大いに利用させて貰おうじゃないか!
「う~ん…。私が兄様を見て育ってるからじゃない?」
「成程な!」
く~ちゃん、それで納得できちゃうの!?素直過ぎるというのも……この子の将来が心配だ。
「冗談はさておき、陛下に報告義務があるから、隠れて護衛は付いてくると思うけどね。物々しくはならないと思うよ。…く~ちゃん、早速明後日出掛けない?軽く遠乗りしようよっ!」
「賛成さんせ~い!私も遠乗りしたいわっ♪」
シルビアが食い気味に乗っかってきた。クロードは何か思案しているようだ。
「明後日…。しかし稽古事の予定が……」
「バカねクロ。ナターシャの話を聞いてなかったの?そんなの、『ナターシャが一緒なんで』って言えば問題無いじゃない!」
え~…それ、私がどっかの御家老どころかその紋所みたいでやだなぁ……。
「そうか。…父上がそう許可しているんだもんな。」
「そうよ!」
…まぁ、二人が嬉しそうだからいっか。
…おっさんが好きなんです(告白)
次回は幼馴染のほのぼの回…になると良いなぁ。




