再びダンデハイム領へ
今回ちょっと短めです。申し訳ありません…(><;)
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ポーチに着けられた馬車から待ち人は現れた。
悠然と地に足を付け、出迎えの住人を一瞥して笑いかける。
久々に見る静寂を湛えた美しい笑みに一同から「ほぅ…」とため息が漏れた。
「お帰りなさいませ、兄様」
完璧なカーテシーを見せた私の身体がふわっと宙を舞った。
「ただいま、ナターシャ!!」
高らかに私を抱えあげたナハトがくしゃっと少年らしく笑った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
兄様が夏季休暇で帰ってきました!
この日、屋敷で仕事をしていた父様に早速挨拶に向かった兄様。
私はサロンでお茶の準備をしていた所――自家製ブレンドのハーブティだ――私も執務室に行くよう知らせが来た。
「失礼します。あの、父様…私に御用ですか?」
「来たか。お前もこっちに座りなさい。」
応接ソファに対面してかけている親子。私は兄様の隣に言われるまま腰かけた。
「さて、ナハトには帰って来たばかりですまないが、私からの手紙は読んだかい?」
「はい父上。今回の視察代行、謹んでお請け致します。」
「視察代行?」
私は兄様、父様の顔を順番に見やる。
父様が頷いた。
「そうだ。なかなか私の手が空かなくてね。ナハトにも少しずつ領主業務を教えていきたいと思っていたし、今回の領地視察はナハトに任せようと思う。…ナターシャ、遠乗りの話をしていただろう。この機会に一緒に行ってきなさい。但し、お前がやりたいと言ったのだから泣き言は無しだよ?」
「勿論ですわ父様!ありがとうございます!!」
(お膳立てはしてあげたから、後は上手くやりなさい)
(流石父様、感謝いたします!)
私と父様の間で無言の会話が飛ぶ。
それには気づかない兄様が私の頭を優しく撫でた。久々の感触に思わず笑みが零れる。
「ふふ、良かったねナターシャ。でも領地まで遠いよ?疲れても知らないからね。」
「まぁ兄様、見くびらないでくださいまし。私こそ、兄様がへこたれたなら置いて行きますわよ!」
兄妹は顔を見合せて笑いあった。
仲睦まじい子どもたちの様子にエルバスも自然と目尻が下がる。
「さ、話は一旦ここまでにして、食事にしようか。ライラが首を長くして待っているよ。」
父様の合図で私たちは母様の元へと足早に移動した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「…で?何でラルフがここにいるわけ?」
これから暑さを増すであろう晴れた日のお昼前。
玄関前のポーチ先で、白馬に跨った金髪碧眼のキラキラ王子様をジトリ半眼で睨みつけた。
「おや、忘れたのかい?…昔約束しただろう?いつか遠乗りで一緒に出かけようと。」
「そうね、確かに言ったわね。でも今日あなたがここにいるのは何故?」
「だって遠乗りに出かけるのだろう?」
「あのね~…!あなたが帰省してから私たちが会うのは今日が初めてよ。…何時知ったの?」
「ごめんナターシャ、嬉しくてつい…」
「兄様の仕業かいっっ!!!仲良しかっ!!!!」
思わず兄様に裏手突っ込みをかましてしまった…。
「兄様…。連れて行くの?殿下も?」
私たちは厩舎から愛馬を連れてきた所だった。…あとは家族に挨拶をして、領地へと出発するだけという所でまさかの乱入者である。
領地までのルートは例年の通り。約三日かけて領邸へ向かう。
私と兄様は単騎で駆けるが、途中疲れたり馬が負傷しても大丈夫なように、後ろから4頭立ての馬車を駆るカーティスさん、車内に侍女のナキア、案内役としてユージンさんが並走する。
因みに今回護衛は隠密部隊のみ。大所帯での移動を私が嫌がったからである。…だからこそラルフの同道はちょっと都合が悪い。
(護衛らしい人間が一人もいない中、王子様を連れまわすとか無理でしょう!!?)
何とか今回は諦めて欲しい。ラルフとも久々の再開だが、もう少しハウスをお願いしたい。
(兄様、何とかして下さい!!)
私は視線でナハトに訴える。
兄様は何とも言えない苦笑を浮かべていた。
「ラルフ、どうやって城から出て来たんだ?」
「ん~?父上にちょっとダンデハイム領でナハトと遊んでくると言ってきたよ?」
私はぎょっとしてラルフに視線を向けた。
目が合わさった彼が意味深に笑う。…そうか、気づいているのか。これだから頭のいい奴は厄介だ!
「…護衛は出さないわよ」
私がボソリ呟くと、ラルフがしたり顔で笑った。
「そんなのがいたらナターシャとの逢瀬を楽しめないだろ?」
「私もおりますよ、殿下?」
兄様が凄絶に笑っている。あ、久々のダイアモンドダスト……ガタブル…
「俺の仕事の邪魔するなよ。」
「勿論。私はナターシャと楽しく過ごすさ。」
「やっぱ城へ帰れ、厄病神!」
喧々囂々。言い合いながら兄様たちは勝手に出発してしまった。
(え~…どういうことよ~~~!!)
私は盛大に溜息を吐いて何処とも知れない師匠に独りごちる。
「父様と母様に報告お願い。出発の挨拶が出来なかった事、詫びていたと伝えて。…私はすぐに兄様たちの後を追うわ。また向こうで会いましょう。」
返事は待たず、ヒラリ馬に跨り駆けだした。
横目にユージンさんが肩を竦めたのが映る。
「カーティスさん、ナキアをお願いね!」
静かに頷くカーティスに軽く笑って、兄様たちを追いかける。
あの主従、仲が良すぎるだろまったく…。
「兄様、ラルフ、いい加減にしなさーーいっ!!」
未だ言い争う仲良し主従に向かって私は抗議の声をあげた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
王宮の奥。王族のプライベート区画。
クロードは頬を紅潮させ軽やかに廊下を駆けていた。向う先は敬愛する兄、ラドクリフの私室。
「兄上っ!!今日こそ私と過ごして下さいっっ!!!」
取り次ぎを待っていたらまた逃げられてしまう。
折角ラルフが一時帰省しているのに、まだ軽く挨拶程度しか話せていないのだ。
話したい事が山ほどある。是非ともゆっくりお茶でもしたい。
逸る気持ちそのままにラルフの部屋の扉を開け放った。
「……誰も…いない……?………??」
褒められたものでは無いが、そのまま勝手に兄の部屋に入室したクロードはキョロキョロ辺りを見回す。
そして談話スペースのテーブルの上に手紙を見つけた。
表に大きく『クロードへ』と書かれている。嫌な予感しかしない。
ただ便箋を四つ折りにしただけのそれを手に取り上げゆっくり広げた。
『クロードへ。兄は少し旅に出ます。探さないでください。』
読むまでもない簡潔な三行。
クロードはその場に崩れ落ちる。…四つん這いで項垂れた姿は人様に見せられない、王子にあるまじき体勢である。
「あ、兄上ぇぇぇ……」
泣きっ面のクロードは程無くやって来たシルビアに為すがまま引きずられて行ったという……。
く~ちゃん、どんまいw




