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異世界転生したサポート令嬢はうちの子たちを幸せにしたい  作者: 神那梅雨
ナターシャ・ダンデハイム
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奥さまは新しいものがお好き

 リンデンベル孤児院でのチャリティーパーティー前日。私は最終的な打ち合わせの為、ベイン男爵邸を訪れていた。


「何から何までご指南頂きありがとうございます、ベイン男爵」

「いや、こちらこそこんな可愛らしいご令嬢とご一緒出来て光栄だよ」


 見るからに人の良さそうなおじさんが柔和に笑む。

 『リッツ・ベイン男爵』この王都で下位の文官として王宮に出仕している貴族の一人だ。趣味は福祉活動。

 私は何度かベイン夫人主催のお茶会に足を運び、夫人経由でベイン男爵と渡りをつけてもらった。そこでベイン男爵に今回のチャリティー企画のプレゼンをしたのだ。男爵はかなりの興味を示してくれた。

 私がまだ8歳で大きく動く事が出来ないことを理由に、ベイン男爵に助っ人を願い――体の良い隠れ蓑ゲット!――快く了承を得た。


(ベイン男爵はとても良い人だわ!レイもきっと大事にしてもらえるはず…)


 恐らくこの催しで彼等親子は対面するだろう。そうすれば、レイモンドはベイン男爵に引き取られる筈だ。

 …ベイン夫人も朗らかで優しい人であるし、この家には子供がいない。レイがどのように紹介されるのかは分からないが、レイモンド自身明るく気持ちの良い少年であるし、新しい家族として仲良くなれるだろう。


 話は戻るが、この世界での奉仕活動といえば炊き出しや寄付だ。

 私はベイン男爵に新たな奉仕活動のスタイルとして、『チャリティーバザー』という『そこに暮らす人々が手持ちの物を持ち寄り、市の真似ごとをする事で得られた収益を寄付として納める』という概念を提供することで、今回の協力者となってもらった。

 今回の孤児院での企画はお茶会の延長という形で、バザーとはまたちょっと違うが、簡単に説明すると、

『孤児院の庭で開くお茶会に貴族のゲストを招き、手作りの記念品を配る対価として孤児院に材料費を寄付をしてもらおう』という――塵も積もれば作戦――もの。

 ゲスト側は貴族として民に施すという当然の奉仕活動で矜持が満たされ、ホストとして立って貰うベイン男爵にも新しい奉仕活動のパイオニアという評判が生じる。

 孤児院には臨時収入が入り、みんなハッピーという算段だ。因みに今回は様子見で、寄付額は投げ銭にしてみた。お貴族様の矜持に期待。

 私はあくまで発案者としての立ち位置のみ。殆どの権利はホストとして協力してもらうベイン男爵に譲渡している。その中でたった一点、

『個々の知識及び技術は個人の財産であり、それを不当に奪う事能わず』

これだけは固く了承してもらった。

 これにより孤児院の子どもたちの就職先が増えたらいいなぁと目論んでいたり。

 私は今回、孤児院へ寄付してもらう対価にハーブ石鹸や美容液などを渡す予定でいる。でも、そのレシピを独占するつもりはないし、それで商売をしようとも思っていない。得た知識で子どもたちの衛生状況が向上するのは喜ばしい事だしね。

 ただ、その知識を個人的に欲するならば、正規雇用として孤児院の子どもを召し抱える、若しくは情報に見合うお代を払って頂戴ね♪

 逆に子供達が自分の武器として商いするというならばお好きにどうぞ♪……といった具合。

 そんな状況を実現するため、――念のための保険に――貴族の横暴反対!!を明文化したというわけだ。

 まぁ、美容品の類は自然物のみで保存料など入っていないから――使い切り前提で作成している――長持ちしない。なので常用希望者の為にも定期的にこのチャリティーイベントは行うつもりでいる。

 現状基礎化粧品の販路もないし、ご婦人がたの喰いつき方も半端無かったから暫くは問題なく続けられるでしょう。

 あくまで奉仕活動の態だから、見栄や体裁至上主義のお貴族様の矜持も保たれるしね。


 私は宣伝に回ったご婦人方のお茶会で、このイベントの日時と趣旨を伝え、招待状などは特に無く出入りは自由であること、記念品として孤児院の子どもたちが作った香りよい美容製品を配布する予定だと触れ回っていた。


 さて。

 庶民と触れ合うこのイベント。吉と出るか凶と出るか……非常に楽しみですな。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そうして迎えたチャリティーパーティー当日。

 ……結果を言えば、恐ろしいほどの人入りであった。


 ―――早朝から孤児院に出向き、ユージンさんを従え――ダンデスタイルで――子どもたちと会場の準備をしていく。

 テーブルの上にはエルダーシャンパン――ミントを加えたものと二種類用意した――ハーブティー各種、ハーブクッキー、ハーブを使ったサラダや惣菜。その他軽食や菓子を用意してメイン広場は完成。

 人の流れをある程度操作する為、広場奥の礼拝堂前に記念品贈呈コーナーを設置し、受け取った方は寄付を渡して――勿論無くてもOK――出口へという形にした。

 孤児院の子どもたちは年長組を中心に、石鹸やハーブ用品の品出し、製品紹介や使用方法のレクチャー、物品の受け渡しをしてもらう。サリーさんは子どもたちの監督と、寄付金の授受を任せた。


 やがてベイン男爵一行が到着。

 会場の主な運営は彼らに任せる手はずになっている。細かい説明はユージンに託して私は孤児院を一時離脱。大急ぎで屋敷に戻り、ナターシャ令嬢武装を整えて帰還した。

 子ども達を奥まった一か所に集めたのはナターシャとして鉢合わせないため。

 私はパーティー中は会場の中央でベイン男爵とお客様対応をする予定だ。


 開始時刻が迫った頃、シルビアとクロード、母様がやって来た。彼らには会場内でサクラをやってもらう予定。折角作った料理を口にしてもらえなかったら悲しいからね。

 シルビアは初回以降、個人的にも頻繁に孤児院に通っていたらしく、子どもたちとすっかり馴染んでいた。……連れてきたクロードを置いて颯爽と子どもたちの元へと走り去っていく。


「二人でこんな面白そうな事していたなんてズルイぞ!」


 シルビアに放置されたく~ちゃんが拗ねている。

 だって、く~ちゃん曲がりなりにも王子様だから連れ出すの大変なんだもん。…別の機会にご機嫌伺おうと思う。ごめんね。


「これがナターシャの言ってたお花のシャンパン?」


 母様がキラキラした瞳で問いかけてきた。


「はい母様、是非飲んでみてください」


 白い花弁を浮かべたグラスを手渡す。躊躇なくグラスを呷ったライラの表情がパッと綻んだ。


「何これ、美味しい!それにいい香り~」


 どうやらお気に召した模様。是非ともこの後のお客様方に宣伝してくださいね、母様。


 ―――そうこうしてる内に開催時刻となり、チラホラと従者をつれたご婦人方がやって来た。…一先ず胸を撫で下ろした私。


(良かった~!足を運んでくれるお客様がいて……)


 私はベイン男爵とともにご婦人がたに挨拶をして回る。


「…お帰りの際はあちらにプレゼントを用意しておりますのでお立ちより下さい。お好みのものを各種1つずつお持ち帰り頂けますわ」


 来場のご婦人がたと談笑していると、何だか会場内が賑わってきた。ふと表門を見やると、そこには大量の馬車が!!そして次々下りてくるご婦人たち!!!

 孤児院の広場はあっという間に煌びやかなご婦人で溢れ返った。

 あまりの来場者の多さに最後は記念品が足りなくなり、あぶれたお客様には次回のイベントで優先的に配布する事を約束して、予定よりも随分早く第一回のチャリティーパーティーは閉幕。

 ハーブ料理もとっても喜んでもらえた!


 後から母様に聞いた話だが、万年娯楽不足で退屈しているご夫人がたの間で今回のイベントはとても物珍しく映ったらしく、あっという間に話題となり、追い討ちをかけるように私の渡したサンプルの効果が覿面だったあまりに、記念品――という餌――の入手希望者が殺到。…この様な集客をもたらしたらしい。


「ナターシャ嬢、とても楽しいひと時だったよ!こんなに盛況なら王都以外でも試したいものだね。」


 ベイン男爵も満足気だ。そして、ここの子どもたちにも改めて挨拶がしたいと申し出た。


「私が呼んできてあげる!」


 こちらの返事も待たず近くにいたシルビアが駆けだす。…ヤバい、どうしよう。


(ダンデは声色も変えてるし、シークレットブーツで身長も伸ばしてる。私とは親戚って話にしてあるから顔が似てたって不自然じゃない、…はず。今はお化粧もしてるし、扇で顔を隠して、離れ気味でいれば誤魔化せるよね……)


 私は広げた扇で目元だけ残して顔を隠し、ベイン男爵とクロードの後ろに隠れるようにして立った。

 程無く孤児院で暮らすみんながぞろぞろやってくる。それぞれ疲れの色が見えるが、どこか遣り切った達成感に満ちていた。楽しんでくれたなら良かった…。

 寄付金はかなりの額が集まったらしい。興奮したサリーさんが何度も何度も男爵に頭を下げていた。

 そんな男爵はサリーさんなど目もくれず、一人の少年を驚愕の表情で凝視していた。

 …そう、レイモンドである。

 そしてレイモンドは男爵の視線になど気付かず、めっちゃ私を見ている。視線が刺さる!痛い痛い!!


(わ~ん、やっぱりバレちゃったかなぁ!!?)


 内心冷や汗をかきながら、目はにこやかさをキープ。広げた扇を強く握りしめた。シルビアを視線で呼び、バレる前に退散する旨をこっそり告げる。まだ茫然としているベイン男爵に「クロード殿下を送り届けるから」とこの場を去る挨拶をしてそそくさと孤児院を後にした。

 片付け等々の打ち合わせは先んじて済ませてあるから問題ないだろう。





 ―――そして数日後、ベイン男爵が孤児院から養子を迎えたという話が社交界を駆を巡った。

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2020/6/26
あの、中年聖女がリターンズでございます!
新作☆中年『トーコ』の美食探訪!その二の巻
今日も元気だビールが美味い!~夏といえばビールでしょ~

+++

こちらも引き続きよろしくです☆

唸れ神那の厨二脳!
『親友(とも)を訪ねて異世界へ~ReBirth Day~』
巻き込まれ女子大生の異世界奮闘記
『Re:トライ ~指名依頼は異世界で~』
中年『トーコ』の美食探訪!
今日も元気だビールが美味い!

宜しければ是非応援してください☆
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