行動開始
遂に、拙作への感想を頂きました~!!舞い踊っております♪ドンドコドンドコ♪
ブクマ&評価も本当にありがとうございます!カウントが上がる度ニヤけております。
まだまだ頑張りますので、どうぞ今後もお付き合いくださいませ!!
親愛なるナターシャ
こちらはすっかり荷解きも終り、新しい生活にも慣れてきました。
そちらは如何お過ごしですか?
僕はラドクリフ殿下と同室を割り振られ、毎日気苦労が絶えません。
今まで他人事のように思っておりましたが、王子という立場は中々に大変だと感じています。
先生方は階級の差別なく厳しく指導にあたってくれますが、生徒たちはそうもいかないようです。
なまじあの外見で何でもこなしてしまうので、早くも教祖の如く崇拝され始めています。
先日『ファンクラブ』なるものの名誉顧問に誘われました。
とりあえずそいつは外庭に埋めておきました。
入学して間もないですが、早くも長期休暇が待ち遠しく思います。
帰省の際は是非この可哀想な兄と遠乗りに出かけてください。僕はそれを励みにもうしばらく頑張ろうと思います。
寄宿舎より愛をこめて
ナハディウム・ダンデハイム
追伸
ナターシャにもらった勿忘草のハンカチととてもよく似たデザインのハンカチをラルフが大切そうにしていました。
どういうことか説明してもらえる事を楽しみにしています。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ハッ!!」
早朝のダンデハイム家裏庭に気合いの声が響く。
私は師匠と絶賛組手中。
私が繰り出した右の突きをソウガは身体の重心を少しずらしただけで避け、身体を捻って繰り出した高い裏蹴りを素早く屈んで避わされる。師匠は低い体勢のまま長い足で私の足を掬うように回し蹴りを繰り出す、それを反射的に飛びあがって回避。空中でソウガの両肩に手の平を置き、師匠を跳び箱の要領でとび越え着地と同時に後ろ回し蹴り。師匠は振り返りもせず片腕でそれを受ける。素早くもう一方の手で足首を掴まれ、ブゥンッ!!と盛大に投げ飛ばされた。
「キャァ~~~~~~~!!」
地面とぶつかるスレスレで辛うじて受け身をとった私は、そのまま転がり続けて衝撃を逃がす。
やがて転がりつくすと仰向け大の字に寝転がった。
「う~~~!また負けた~~~~~!!」
上がる息でそう零すと、ソウガは破顔一笑。
「姫さんにそんな簡単に負ける様じゃ、頭領なんてやってないぜ!」
師匠が豪快に笑う。…ヘロヘロの私に対し、相手は息一つ乱していないどころか汗もかいていない!!
(…く、悔しい。)
「でもま、だいぶ様にはなってきたんじゃねぇの?」
伸ばされたソウガの手を遠慮なく借りて起きあがった。
5歳の時、父様について領地視察から戻ってきてすぐに『暴漢に襲われた時、とっさに反応出来るようになるため』と称して師匠と組手を始めた。
毎日の訓練の成果で、もし街中で大男に突然殴りかかられても、その腕を取って投げ飛ばすくらいの事は出来るようになっていた。…ええ、護身術の範疇ですとも。
「ねぇ師匠、今日もお昼を食べたら城下街に出かけたいんだけど良いかな?」
「へぃへぃ、姫様の仰せの儘に~」
頭の後ろで手を組んだ師匠が適当に返事したのに笑って、第二の出入口と化した『寝室の窓』へとジャンプした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キョロキョロしながら賑わう城下街のメインストリートを歩く。
馴染みになった菓子屋でおやつ用の焼き菓子を大量に購入した所で声をかけられた。
「よう、ダン!奇遇だな、何してるんだ?」
「レイ!ちょうど良かった。今からそっち行こうと思ってたんだ」
すっかりダンデ姿が板についてきた私ことナターシャは、昨年あたりからダンデ姿で街を散策する事を覚えた。今では顔馴染みの人たちも増えて、ダンとして上手く街に溶け込めていると思う。
そんな中で出会ったのが彼『レイモンド』だ。
レイモンドは城下町唯一の孤児院で暮らしている。そこの子どもたちのちょっとしたトラブルに偶然巻き込まれた時に知り合った、うちの子だったりする。
▶レイモンド・ベイン
ベイン男爵の落胤。8歳まで孤児院で過ごす。
レイモンドが8歳のある日、慈善活動として孤児院に寄付に訪れたベイン男爵が、かつて愛した女性の面影を強く持つレイモンドを見かける。調べた結果己の落胤だと判った男爵は、レイモンドを養子として引き取ることを決意した。
孤児院時代に培った図太さで、レイモンドは蔭口にもビクともせず新しい生活を受け入れていた。
ベイン男爵は絵にかいたお人好しで、慈善活動にとても積極的な人だった為、レイモンドも育ての孤児院に足繁く通い、子どもたちの世話を焼いていた。
翌年に貴族学園へ入学を控えた年に王国中に大きな被害を及ぼす大寒波が猛威を振るった。
孤児院へも少なくない被害が及び、レイモンドは途方に暮れる。
孤児院に暮らすみんなを何とか助けたくて、学園で打開策を模索する日々。
そんな時、レイモンドは図書館の裏庭でステラと出逢う……
―――ステラがレイ攻略ルートに入れば、孤児院主体の商売を思いつき実行。紆余曲折を経て卒業までに商売が軌道に乗り、ベイン男爵家は慈善事業のパイオニアとして名を残す…。
でもそれが成されなければ、生まれに差別を持つアホ子息令嬢たちに虐げられ続けて貴族に失望。
卒業後、貴族を標的とした義賊として恵まれない子ども達の為に立ち回り、やがて行方知れずになる…。
(まさかこの格好の時に出くわすとは思わなかったけどね~…)
レイはまだベイン男爵とは出会ってないようだった。
その事実を知った時、自分の都合も混ぜ合わせてちょっとした事を思いついたのだ。
ステラを待たず、今の内に色々揃えてしまえば良いのだと。現在その仕込みの真っ最中だったりする。
「これ、今日のおやつ。皆にあげて。」
「わり~な、いつも…。でもお陰でチビどもも、お前が来るのを首を長~くして待ってるぜ!」
レイがはにかんで笑う。
彼は天涯孤独の不遇にも負けず、とても気持ちの良い性格の少年だった。
茶色のちょっとクセのある髪、栗色の瞳。その顔には等身大の溌剌とした笑みが浮かび、こちらまで元気をもらえる気がする。
そんなレイモンドに影を落とさせるわけにはいかない。
そして彼の幸福の為には孤児院の救済が急務であった。
「レイに遇えてちょうど良かった。僕、実はこの後予定があってさ。すぐ行かなきゃならないんだ。
それでおやつ渡しついでにお願いしたい事があったんだけど、今聞いてもらえる?」
「別にかまわないぜ?…なんだ?」
「あのさ………」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――――ガタンゴトン
私は馬車に揺られている。――隠密部隊には御者さんもいたのだ!師匠伝いで即行私専属にしてもらいましたよ!!…お陰でかなり行動範囲が広げられたのです。
馬車の中でダンデからナターシャ装備に着替えていた。
一度自宅へ戻り、お忍びスタイルからしっかりとした令嬢装備に着飾らせてもらう。
準備が出来た頃、美しい母様が現れた。
「ナターシャと二人だけでお出かけするなんて初めてね!」
まるで少女のようにコロコロ笑う母様可愛い!
私は母様の手を取ってにっこり笑い、一緒に馬車へと乗り込んだ。
行先はベイン男爵家。
本日そちらで開かれるベイン男爵夫人のお茶会に連れて行ってもらうのだ。
―――ベイン夫人はちょっとふくよか目の優しそうなご婦人だった。
「まぁまぁ、噂に違わぬお可愛らしいご令嬢だこと!」
「ダンデハイム家が娘のナターシャです。
本日は急な申し出だったにも関わらず、私も参加させて頂きありがとうございます」
可憐にカーテシー。
横で母様が優雅に微笑んでいる。
「ベイン夫人、私からもお礼を申し上げるわ。
…最近この子が慈善活動に興味を持ちましたの。…そちらの旦那様はその辺お詳しいでしょう?是非お話してやってくださいな。」
「ええ、ええ、それは素晴らしいですわ!さ、お二人ともお席はあちらでございます。是非楽しんでいらしてね。ナターシャさんも、後で沢山おしゃべりいたしましょう?」
令嬢修行もたゆまぬ努力を続けていて良かった!
私はまだ正式にお茶会を開ける年齢じゃない――この国では10歳でデビューするしきたりだ――ので、公式の催しには家族の付添としてしか参加できない。母様は普段とっても優しいけれど、立ち居振る舞いやマナーに関しては誰より厳しかった。
それが公式の場ともなれば、ライラの許可なく出歩くことなど許されないのである。
(早朝稽古やダンデの事がばれたら殺されるな私……)
時折抜き打つように飛んでくる母様の、私の様子を審査する視線に身を引き締めた。
落ち着け、令嬢スイッチを固定するのよ私!!……ボロを出したら詰む!
(私は女優…私は女優…私は女優…仮面を被るのよナターシャ!!!)
今回の目的を達成する為にはライラの協力が絶対に不可欠なのだ。ここで母様の信用を失うわけにはいかない!!
私は今生一番の緊張やらなにやらを纏めて内心の底の底に隠し、柔らか朗らかなご令嬢を演じきった。




