喧噪すらも心地よい(ドヤっ!!)
ブクマの増減に一喜一憂の作者です、お待たせしました><
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クロスネバー学園生は寮生と通いの生徒がいる。
その内通いの生徒は殆ど馬車通学――勿論私も毎朝カーティスさんが御する馬車に揺られて登校してます!――その為学園の正門前には結構大きな馬車止まりが作られていて、通いの生徒は皆ここで馬車を降り校舎まで徒歩で行く。
多くの生徒が正門を潜り前庭を抜け校舎へと向かう登校時間、入学から半年を超えた今では新入生の浮足立った気配も消え、それぞれが静々と平坦なルーチンとして消化するだけの時間だったのだけれど……。
―――最近はちょっと様子が変わってきていた。
私が正門をくぐると、遥か正面先から熱波が押し寄せてきた。続いて聞こえる黄色い歓声。
「「「「「キャーーーーーーーー♡」」」」」
耳を劈く音圧を避けて道脇の茂みへ飛びのくと、人だかりの隙間から朝日を反射して何かが光っていた。私は心当たりのあるその光源へと目を眇める。クロードが陽に煌く金髪を揺らしていた。
「……どけ、邪魔だ」
囁き程度の静けさなのに低く良く響く声主は孤高の狼(笑)ことロンだ。性別関係なく主の障害になる人垣へと威嚇を飛ばし睨みつけ道を開いていく。
この光景自体はクロードの貴族学園入学以降で習慣化されたものだった。
だって同期に王子様だよ!く~ちゃんには同情するけど、何処ででも注目されるのは仕方無いよね。気づくと出来る人だかりの中心にはだいたいく~ちゃんがいるの。本人も諦観しているからよっぽどでない限りは周囲の気の済むようにしてるしね。
「あの鋭いまなざし!」
「厳しいお声も堪りませんわ~♡」
そして日に日に人山が大きくなるのにはロンの人気も一役買っていたり。
「騎士×殿下なんて尊いの!」
「解っていないわね、逆よ!!!!」
……一部別の意味でのファンもいる模様。
ま、まあここまでは平常通りと言ってもいい範囲。変化といった要因は―――
「きゃあ! レイモンド様よ!!」
「ああ、殿下ともあんなに親しげに話しているなんて大したものだ」
「……三角関係……泥沼………イケるっ!!!」
はいそうです!! 我らがレオーネの商会長、レイモンドっっ!!!
うちの子たちの本気は想像以上だった。何だかんだと始めたばかりの事業をあっという間に軌道に乗せてしまったのだから。
その評判のお陰でレイの知名度もウナギ登り!
今では一人で学園内を歩いていると瞬時に囲まれてしまうため、ああしてく~ちゃんと行動を共にしていた。
「来たぞっ!!!!!!」
誰かの掛声が正門前に響いた。
私も隠れて正門の方へ振り返る。ちょうどイースン家の馬車から人が降りて来るところだった。
するとどこに隠れていたのか正門を中から囲むように沢山の男子生徒が沸いて出てきて……
「はぁ……今日も可憐だ」
陶酔のため息が重なってかなりの音量で響く。
先に降りたハルマにエスコートされたステラがタラップを踏んでいた。
「出自に負けず努力で奨学生となった頭脳、護ってあげたくなる儚げな美貌……」
「野花の自然美に惹きつけられるのは装飾された偽物ではないからだな」
決して近く無い距離、遠巻きにステラを見守る彼等は通称『星観の会』という。最近発足されたステラの親衛隊らしい。……基本内気な低位貴族子息で構成されているため、視線の鬱陶しさを除けば無害な団体だ。というか、ステラにちょっかいを掛けると影でハルマから制裁されるので――身分差的にも――メンバーは近づけないのだとか。因みにハルマは姉たちに害虫駆除を厳命されているため逆らえないらしい。
それを更に遠巻きに見つめるのはハルマファンの女の子たち。
ハルマは女の子至上主義の八方美人の為女子にモテる。だからこそ特別大事にしている――様に映る――ステラが注目を浴びれば悪目立ちするわけで。愛憎入り乱れた視線が正門前をびゅんびゅん飛び交っていた。う~ん……昼ドラな予感。
なんて益体無く思った所で、今度は校舎への入口辺りでどよめきが起こる。
「クロ! おはようっ♪」
「ああ、シルヴィーおはよう。……ユーリも」
「ふふ、おはようございます。殿下」
大勢を引き連れたクロードが校舎の入り口にいたシルビアとユーリに合流した模様。
「はわっ!」
「うっ!! 胸がぁ……」
クロードに挨拶したシルビアの素顔と激しいギャップのある笑顔をくらった生徒たちがバタバタ倒れる。
「本日も我らが冬姫は健全であられる」
「そこが良い!」
冬姫とは一部で呼ばれているシルビアの二つ名。シルビアの容貌と天真爛漫な性格からつけられたらしい。シルビアは見ただけだと冷たい印象を与えてしまうけど、くるくる変わる素直な表情に、男顔負けに剣を振るう苛烈さ、公爵令嬢で第二王子殿下の婚約者候補という威厳、そして先ほどの天使のスマイルと魅力あふれる顔をいくつも持っている。更に竹を割ったような性格とくれば人気が出ないわけがないのだ。
シルビアの人となりに気付いた人々は『殿下と冬姫を見守る会』を結成し、温かい眼差しを向けてくれている。
「や、やめてくれ~~~~~!!!」
「私は、私は、女の子が好きなんだぁぁぁ!!!!」
「男、おとこ、あれは男……」
不穏な呟きが聴こえるな……。
絶対聴こえているだろう嘆きを綺麗な笑顔で――楽しそうに――黙殺しているのはユーリ。
年齢に見合った成長の為女装を封印していた彼はこの度、レオーネでの仕事中に限り女装を解禁した。
大好きなリボンだのレースだのを抑制して『似合うもの』を厳選した結果、以前のお人形さんのような少女から妖艶な超絶美人にクラスチェンジを果たしたのだ。
これがもう市井で大人気!
レオーネの製品売り上げに多大な貢献をしている。流石営業部長ですよ!
そうして再び好きな事を日常に取りこんだからか、ええ、もうね。
……普段からの色気がましましなんですよ、マジで。
学園ではきちんと男子生徒の格好なのにね。何でだろね?中性的な美貌に磨きがかかって最早魔性なんですわ。
そんなユーリはお茶会デビューした貴族子息たちの初恋キラーだった。
深窓の令嬢とは斯くやという少年期だったからね……(遠い目)
貴族子息たちはユーリに一目惚れ→思い募った辺りで性別を知り一方的に失恋
という負の方程式を成り立たせ、社交界を震撼させていた。
その黒歴史を漸く思い出に変えられた頃に、初恋の君がパワーアップして再襲来ですよ! その被害者の多い事多いこと。
私は物陰に隠れたままほくほく顔になる。
うちの子たちが見事学園を席捲しているのだ! 頬が緩むのもしかたないでしょ?
―――ゲーム内のうちの子たちと似て非なる幸せな光景。
これを見つめて悦に浸るのが最近の私の日課に加わったのだった。
いつも読んでくださりありがとうございますっ!!




